西村広平(にしむらこうへい)さんは2007年に弁護士登録、企業法務を中心に活動されてきました。15年以上におよぶキャリアを積み重ね2023年2月に独立開業。西村広平法律事務所を立ち上げ、ますます充実した日々を歩まれています。
弁護士として精力的に活動してきた西村さんは、新型コロナウイルスの流行で疲弊する地元長崎の姿を目の当たりにしました。このままではいけないと自分に何ができるのか模索を続ける中で志師塾への入塾を決意します。
志師塾を修了した西村さんは、ホワイト企業構築・戦略パートナーの肩書を掲げ、得意とするクレーム対応や労務問題に加え、法律領域を超えた経営コンサルティングで顧客の信頼を集めています。従来の弁護士の領域から大きく飛躍し、経営者に寄り添う伴走型の弁護士として活躍している西村さんにお話をうかがいました。
1.経営者に徹底的に寄り添う弁護士
1.1 顧問弁護士の三大不満を解消
経営者が持つ顧問弁護士に対する三大不満として、「相談しにくい、コストパフォーマンスが悪い、アクセスが悪い」があると西村さんは言います。その理由は、一般的な法律事務所の顧問弁護士が保険型のサービス、すなわち、何か法的な問題が起きたときに備えて顧問料という対価を支払ってもらうというサービスを提供しているためです。
複雑さを増している事業環境において企業の問題は幅広く、単純に法律の枠組みではくくれなくなっており、顧問弁護士に相談すべきかどうか経営者が迷われることも少なくありません。また、通常の顧問契約では、何も起きなければ顧問料を払うだけになり、経営者にとっては、毎月かかる費用という認識を持つのも無理はありません。
問題が起きないに越したことはありませんが、弁護士にとってはいざというときでなければ知見を提供しにくい、という状態にあります。従来の弁護士像は何かあったときの備えとして相談待ちの姿勢でしたが、西村さんはそのようなあり方に歯がゆさを感じていました。
顧問弁護士に対する三大不満を解消すべく、西村さんは「待ちの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」を打ち出しました。
1つ目は、法律問題に限らず経営者からの話を聞くようにして相談のしやすさを作りました。
2つ目は、毎月の巡回相談やZoomによるオンライン相談で定期的に経営者と接点を持つようにしました。
3つ目は、LINEやMessengerなどSNSの活用や携帯への直接電話を可能にして経営者が相談しやすい体制にしました。
こうした取り組みにより、西村さんの親しみやすさが経営者から支持されています。
1.2 運用・伴走型サービスを提供
従来の保険型サービスでは経営者と関係性を築きにくい、と西村さんは考えています。保険型サービスがゼロをマイナスにしないものだとすると、ゼロをプラスにしていける運用・伴走型サービスの提供を目指されています。顧客と従業員のマネジメントについて徹底的に経営者に寄り添う姿勢は、経営者にとっても弁護士にとっても望ましい形と考えました。
運用・伴走型サービスのマネジメントとして、西村さんは、顧客マネジメント、従業員マネジメント、会議マネジメントという3本の柱を立てています。
顧客マネジメントでは、クレーマーへの対応やクレーマーをリピーターに変えるにはどうしたらよいか、という指南をします。
従業員マネジメントでは、育成をどうしたらよいか、社内の風通しをよくするにはどうしたらいいか、という組織にとって普遍的な悩み事に対処されています。
会議マネジメントでは、アイデアが飛び交う活発な議論をするにはどうしたらよいか、といった相談に対し、自らファシリテーターとして会議を主催し、会議手法を変える具体的な手法を提示しています。
このようなサービスは、従来にはなかった弁護士としての活動スタイルで、西村さんは数多くの顧問契約を獲得しています。
2.地元長崎にかける思い
2.1 大手法律事務所で激務をこなす
西村さんは長崎県のご出身です。大学進学時に東京へ移り住み、そのまま大手法律事務所に就職しました。最初に手掛けた案件は訴額400億円の大規模訴訟です。この訴訟の元となった事件はニュース等でも大きく取り上げられました。
華々しいキャリアのスタートとは裏腹に、大手法律事務所での業務はハードなものでした。朝9時に出社し、翌朝5時まで働くという20時間労働の日々が続きます。
西村さんは過酷な就労環境の中で精力的に業務に励み、胆力をつけていきました。ただ、仕事自体は充実していた一方、大手ということもあって裁量に限りがあり、西村さんは窮屈さを感じるようになります。
2.2 地元長崎を弁護士の立場から支援
西村さんは裁量の大きい環境を求めて地元長崎に戻ります。2009年のことでした。若手でもさまざまな業務に携われる弁護士4人の事務所に入所します。
元々司法修習を通じてある程度の業務を把握していた西村さんは、新しい事務所で企業間紛争、契約トラブル、交通事故、離婚・相続、破産・債務整理、刑事・少年事件などほぼすべての弁護士業務を経験しました。13年間で800以上の案件、数千件におよぶ法律相談で長崎を支え続けてきました。
弁護士会の活動で暴力団対策を行う民事介入暴力対策特別委員会にも10年間ほど所属しています。同委員会では委員長を務め、関連書籍を出版し、反社対策に力を注がれています。企業法務をやるうえで反社対応は必須、どの業界も力を入れていると西村さんは言います。
警察の取締強化と反社会的勢力排除の社会的気運の高まりにより、暴力団員が大きく数を減らす一方、昨今は、企業や行政に対する一般人のクレーマーが増加傾向にあります。
西村さんはこれまで培ってきた反社対策のスキルをクレーマー対応に活かしてきました。さらには、クレーマー対応が顧客に対するマネジメントだとすると、従業員に対するマネジメントとしてハラスメント対策も重点的に行ってきました。パワーハラスメントを中心としてハラスメントの問題はきちんとした対策を取らなければ企業に大きなダメージを与えるケースが多くあります。
西村さんは長崎を支える弁護士として着実に経験と実績を積み上げてきました。全国的にも大きく注目を浴びた諫早湾干拓開門差止訴訟において、弁護団の事務局長として難しい対応にもあたってきました。
地元住民、農業者、漁業者らの期待を背負い、行政との折衝や法的な処理を果断なく進め、最終的には、最高裁を含むすべての訴訟で「開門してはならない」という判決を得て、勝訴することができました。
さまざまな案件を精力的にこなしていく西村さんに転機が訪れます。新型コロナウイルスの流行です。
3.志師塾で調和型の弁護士像に気づく
3.1 自身の専門性を求めて志師塾へ
新型コロナウイルスにより地元長崎の経済は大きな傷を負いました。長崎企業の業績悪化を目の当たりにして西村さんは強い無力感を抱きます。
「地方の何でも屋」として精力的に長崎を応援してきましたが、法律だけでは企業の業績改善、課題解決への貢献は難しいという考えに至りました。
「マイナスをゼロに戻す損害賠償請求や、現状をより悪くしないよう契約書を用意しておくといった予防法務は行えるが、ゼロをプラスにしていく仕事は法律だと難しい。改めて自分の専門性は何か」と、コロナ禍は自己を見つめ直す契機となりました。
十年以上弁護士として走り続けてきた西村さんは、長崎経済が疲弊していく中で「何がやりたいのか、何ができるのか」と熟考を重ねた末に、志師塾へとたどり着きます。
3.2 リアル参加で深い学びを得る
志師塾への入塾は2022年6月のことでした。オンライン受講も可能でしたが、より深い学びを得るため、西村さんは長崎から毎回東京へ通います。
飛行機を使って東京へ飛び、講義を受けてまた飛行機で長崎へ戻るという、慌ただしい日もありました。ただでさえ弁護士業務で多忙な中、時間を捻出して非常に刺激ある時間を過ごされています。
志師塾の講義においては自己の棚卸しを行いました。質問形式で3万字にもおよぶ自分自身の振り返りを通じて、西村さん本人も気づかなかった強みやこれまでの経験を掘り起こしていきます。他の受講生とコメントを述べ合うことで、より多面的に自身の棚卸しができました。
講師のアドバイスもあり、「弁護士として争いを好まず、その前段階として調和を図るコンサルティングに向いているのではないか」という結論に至ります。
3.3 自分を知り、コンテンツを磨く
自分自身のコンテンツを作るべく、仮説検証も繰り返しました。練り上げたサービスをチラシなどに落とし込んで、実際の企業に提案したり感想を聞いたりする初めての経験です。それまで待ちの姿勢がごく自然であった西村さんは、大きな刺激を受けながら自分という「商品」をひたすら磨き上げていきます。専門性を探していく中でビジネスモデルが徐々に明確になっていきました。
また、西村さんは、志師塾で河田真誠さんの講座を受講し、「問活」(トイカツ)を使ったコンサルティング・スキルを習得しました。
「問活」とは「個性を活かす質問活動」のことで、経営者や従業員が、質問に答え、それをシェアし、深めることで、自ら課題に気づき解決策を引き出す新しい形のコンサルティングスキル。このスキルをもとに、実際の弁護士業務において企業の課題解決につながるよう、会議のファシリテーターや、経営者や従業員との面談などを行うサービスを展開されています。
「問活」というコンサルティング・スキルは、従来型の組織運営をしてきた企業の従業員マネジメントや会議マネジメントを刷新する非常に有用な手法であると自負されています。
3.4 弁護士の枠組みを越え、新しいネットワークを構築
志師塾で出会った受講生たちは西村さんの大きな財産になりました。志師塾においては講師の話を聞くだけということはなく、実践を通じて仲間たちと議論を深めていきます。
30名程度の受講生で5、6人のチームを組み、お互いに自己を高めます。チームミーティングを毎週Zoomで開催し、チーム課題にも取り組んだことは西村さんにとって大きな経験になりました。同期とのつながりは講義修了後もネットワークとして生き続けています。
3.5 志師塾がきっかけで独立志向に
自分が何をやりたいのか、西村さんの中で明確になります。「長崎に生まれ育ち、長崎で弁護士をやっている以上、長崎の企業を元気にしたい。それだけでなく、長崎から発信して日本の企業を元気にしたい」と思うようになりました。どう実行していけばいいか、志師塾で具体的な形まで構築できました。
志師塾での学びを通じて西村さんの中で独立開業へと意識が変わっていきます。入塾当初、西村さんは独立を考えていませんでした。売上増加や集客を考えての入塾です。
実際に入塾し、講義や受講生との交流がきっかけで徐々に考えが変化しました。依頼される事件を処理する、こなしていく、助言していく、という受け身とも呼べる姿勢から、自分から積極的にやりたいことをできるようにする、という攻めの姿勢を目指すようになりました。独立を考えた西村さんの行動は早く、開業の準備に励みます。
独立にあたって西村さんは志宣言を立てました。「らしく、愛される会社を創る〜風は西から吹く。長崎から日本の企業を元気にします!〜」というコピーは、長崎に生まれ育ち、長年地元に貢献してきた西村さんの決意表明でもあります。
「長崎には歴史的に異文化を受け入れてきたという背景はあるが、ここから新しいものを『発信』していくことは苦手で控えめな県民性がある」という西村さんの言葉には、魅力があるのに人が減っているという長崎の実情を変えたい、もっと魅力を発信して長崎を元気にしたい、という力強い気持ちが込められています。
経営コンサルティングを行う弁護士はまだ少なく、西村さんはその点でもご自身に独自性があると考えています。弁護士に法律的なアドバイスを求める経営者がほとんどで、弁護士側も法律相談以外は受けない、あるいは踏み込まないことが多く、西村さんは経営コンサルティングのできる弁護士として確固たる地位を築こうと奮闘されています。
こういったポジショニングの発想に至ったのも、志師塾での気づきがあったからこそで、他業種の受講生と交流したことも新しい発見や考えの転換につながりました。
4.「戦わない戦略」を採ることのできる弁護士を目指す
企業同士で訴訟となった場合、弁護士はどちらかの立場で代理となりますが、より大きな視点で眺めると、どちらの会社のためにもなっていないことがあります。解決したとしてもマイナスがゼロになるかどうかで、結論に至るまでの精神的・経済的な労力を考えると、必ずしもプラスとは言えないケースが少なくありません。
西村さんは志師塾で得た気づきをもとに、企業コンサルティングを中心的な業務にして、「戦わない戦略」を採り、企業内の調和を図ることができる弁護士を目指されています。
特に、経済が低迷し、企業の事業活動が困難に直面したときなどに、事業縮小による整理解雇を行ったり、債権回収を図ったりすることは弁護士として大事な業務ですが、その業務自体は、会社の根本的な課題解決になっていないことが多い、とも西村さんは考えています。
ハラスメント対策も同じで、ハラスメントが起きる背景には、会社の中でどのような立場の人であっても、言いたいことが言える風通しのよい職場づくりができていれば問題は起きません。クレーマー対応についても、課題の本質を見誤ると顧客は悪質クレーマーにもなりえますが、適切な対応を行えば、リピーターにもなりえます。
企業経営という広い視点から、弁護士としてもっと企業の力になれることがあるはずだ、ホワイト企業構築・戦略パートナーとして、西村さんは、弁護士の新たな将来像を見据えています。
最後に、志師塾への入塾を考えられている方に卒業生としてのメッセージをいただきました。
「知識を得るだけではなく、行動に移すことがもっとも大事だと思います。自分がこうなりたいという理想像があり、こういう課題があって解決したいと思って受講しようとしているならば、志師塾での一つ一つの課題に真剣に向き合って、失敗を恐れず実践に移してもらいたいです。
素晴らしい仲間や講師がいるので、それを最大限活用して時間を有効に使ってほしいと思います。参加の仕方、行動に移せるかどうかで収穫が大きく変わってきます」
文:石川慶成(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部
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