医療事務の専門家である平井さんは、14年ほど前に在宅医療の世界に飛び込みました。
しかしそこは、複雑な事務処理に日々一人で立ち向かわなければならない、困難の多い世界。多くの医療事務員が同じ苦しみに直面していることを知り、その人たちを助けたいと在宅医療事務員の育成コンサル事業を立ち上げます。そして、持ち前の共感力と行動力で新たな市場を切り拓き、顧客の期待に応えてきました。
その結果、サービスのリピート率は何と約100%。この仕事が楽しくて仕方がないという平井さんに、在宅医療を取りまく状況、ご自身のこれまでとこれからのこと、そして志師塾での学びについて、たっぷりとお話をうかがいました。
1.在宅医療に寄せられる期待と課題
人生の最期の時をどこで迎えたいですか。ある調査によると67歳~81歳の60%の方が「自宅」を希望していると言います。(*) しかし、現在在宅医療を行えるのは医療機関全体の10%程度。しかもその多くが小規模クリニックです。
その要因にあるのは在宅医療ならではの対応の難しさ。介護や福祉の制度と複雑に絡み合う中、地域の行政やさまざまな関係機関との調整を行いながら、24時間365日あらゆる病気への対応が求められます。結果として、在宅医療に社会的意義を感じる小さなクリニックの先生方が、多くそれを担う構図となっています。
それは在宅医療事務においても同様です。外来診療とは異なり、サポートする業務の幅も広く診療報酬請求も複雑です。しかもその診療報酬制度は2年に一度改定が入ります。
それに対応するため医療事務員は、日々の仕事の合間をぬって制度の習得をしなければなりません。在宅医療に携わる多くの事務員は小さなクリニックの中で一人、ミスなく請求処理を行うべく大きなストレスを抱えながら格闘しているのが現状です
2.実体験と共感で人々を救う
2.1 同じ目線で共に歩む
そんな在宅医療事務員をサポートし、心へゆとりをもたらすサービスを提供しているのがHomeCareLinkの平井久美さんです。「誰一人見放さない。諦めない。」をモットーに、実際の現場で事務員さんと机を並べ、一緒に頭と手を動かしながら支援を続けています。
「先生にしてもスタッフにしても、経営や事務処理などに忙殺され心のゆとりを失った状態では、患者さんに寄り添った在宅医療を提供することはできません。医療事務のサポートを通じて事務員さん、そして先生を支えたいのです」
2.2 ある先生との出会い
一貫して医療業界に携わってきた平井さんが在宅医療の世界に飛び込んだのは14年ほど前。在宅医療の素晴らしさを実感したきっかけは、当時勤務していたクリニックの院長先生でした。病気ではなく、その人や生活に興味があるといって在宅医療に従事していたこの先生は、ある時4歳の末期がんのお子さんと出会います。
小児科の場合、高齢者とは治療法もご家族のケア方法も異なるため、対応できるクリニックが限られます。その子の両親も受け入れ先が見つからず困り果てていました。
回りまわってやってきたその両親に先生が掛けた言葉が、「大丈夫ですよ、私にも孫がいますから」
治療や手続きのことではなく、両親の心に言葉を投げ掛けた先生に対して
「医師以前に、人として患者さんやご家族と全力で向き合うつもりなのだな、こういう先生についていきたい」そう感じたと言います。
その頃から、在宅医療の素晴らしさを多くの人に知って欲しい、そして在宅医療を支える先生方の力に少しでもなりたいと思うようになります。
「振り返ると、今の仕事をする原動力であり、私の人生を大きく変えた出来事になりました」
2.3 一人では抱えない
そんな平井さんも在宅医療に携わり始めるとすぐに、その事務処理に困り果てることに。しかしここでも持ち前の行動力が発揮されます。独りで抱え込むことをせず、
「近隣で在宅医療事務をやっている人たちに電話をしたり、会いに行ったりして自分と同じ境遇の仲間を集め、声を上げてみたのです」
そしてその声が行政に届き、同じ悩みを持っている同業者を集め会合を開いてくれることになりました。程なくしてこの輪が大きくなり、自分たちでスキルアップや情報共有ができる場を作ろうと、「在宅事務連携会」を立ち上げます。そこで定期的に勉強会や情報交換会を催すようになっていきました。
しかし、コロナ禍で状況が一変します。クリニックの診療業務が多忙を極め、会合どころではなくなってしまったのです。このままではこの会も立ち消えになってしまう、そんな時「今こそ在宅医療の勉強を必要とする、困っている方たちの助けになりたい」そう思い至ります。そして勤務先の後輩が成長したタイミングで卒業し、独立する決断をします。
2.4 信じる道を突き進む
独立に不安はつきものです。平井さんはというと、
「近隣クリニックさんへ新たに取り組むサービスの説明をさせていただいた際、『こんなサービスを待っていた』と、涙ながらに言っていただいたのです。その時、大丈夫、私はやっていける、そう確信しました。独立にあたり不安がなかったと言ったら噓になるかもしれません。しかし私の中で、これでいこうと思い切れていたので、副業ではなくきっぱり辞めてこの仕事に飛び込むことができました」
そして、ひたむきに一人ひとりに寄り添う支援の道を歩み出していきました。
3.志師塾での出会い、そして学び
3.1 入塾のきっかけ
その後も関係機関からの紹介により、顧客を増やしていくことになる平井さんですが、独立して1年が経った2023年5月ころ、志師塾の門を叩きます。
「1年目はお世話になったクリニックさんからの紹介もあり、手探りでも何とかやっていくことができました。ただ、育成事業は顧客がスキルを身につけ自立することが目標であり、喜ばしいことなのですが、そこで契約関係が終了してしまいます。サービスを提供できる期間が限られているのです」
「ですから、紹介だけではやがて事業が頭打ちになると感じていました。しかし自ら新規顧客を開拓するには、自分のサービスをしっかり言語化することに課題がある。そんなことを考えている時に、自分のサービスを自分の言葉で必要な人に伝える『伝達力』を学べる志師塾の存在を知ったのです」
3.2 志師塾での学び
実際に入塾してみると、それは実りの多いものでした。
「塾長の五十嵐さんはいろんな言葉を伝えてくれました。決して押し付けではなく、私の中にスッと入ってきたので素直にやってみようと思えたのです。そのため出された課題にも抵抗なく取り組め、程なく成果にもつながりました」
例えば平井さんが悩んでいたことに、自身のサービスの値決めがありました。類似サービスが存在しない中、何を基準に価格設定をしたらよいのか、軸となる価格の考え方を持てていなかったのです。しかし、志師塾に入って大きな気づきを得られることに。
「売り上げは感謝の総量、そう五十嵐さんに教えられたのです。値段に見合ったサービスコンテンツをしっかり作りこみ、それをお客様が喜んでくださるなら、私自身が受け取ってうれしいと思う金額でいいのだな、そう思えるようになりました」
その後サポーターの方々のアドバイスをもとに価格設定を微調整し、今の価格に落ち着かせました。自分の本気度とお客様が得られる成果にコミットするため、決して安価な設定ではない、双方にとって喜べる価格を実現させました。
3.3 何ものにも代えがたい仲間
学びの場に参加する際、横のつながりもまた欠くことのできない魅力の一つです。平井さんにとって、志師塾での同期との出会いも有益なものでした。志師塾では入塾後、5名ほどで構成される班に分かれ、自主活動をすすめられます。平井さんの班は朝会を毎週開催し、現状の課題や成果について報告し合い、相互に高め合っていきました。
この班の名前は「鳥チャンス!」。語源となったのは講義の中にも出てきた「渡り鳥の法則」と「プラス受信」です。
まずは「鳥」について。渡り鳥はV字に隊列を組んで飛行します。これは疲れたら先頭を変わりながら体力を温存し、群れとして長い距離を飛んでいくためのフォーメーションです。このように「鳥」にはチームとして助け合いながら飛躍する意味が込められています。
実際、平井さんにもこの群れのような出来事がありました。
「入塾して1か月、早くも成果が出そうなところまでいきました。渡り鳥の先頭のポジションにいたのですね。私自身も胸を躍らせていたのですが、なんと土壇場で契約をキャンセルされたのです。その時は大きなショックを受け、途方に暮れてしまいました。今では敗因は自分のプレゼンの甘さだったと笑って言えますが、当時は班のメンバーが励まし続けてくれたのが救いとなりました」
まさに後方に下がって回復を待つという、群れの仲間からのサポートのありがたさを肌で感じた出来事でした。
もう一つ、「チャンス」の語源となったのが「プラス受信」という言葉です。誰でもマイナスな出来事に直面すると、弱い心があらわれネガティブになってしまうもの。しかし、何があってもポジティブに受け止める転換力、それが「プラス受信」です。志師塾にはこの転換力を端的に表した合言葉があります。
「ピンチの時こそ、チャンスと叫べ!」「チャンス」にはこの思いが込められています。
渡り鳥のように飛び続けながら、ピンチをチャンスに変えていく。そんな仲間たちとの勉強会は、今でも続いています。
4.未来を見据えて微笑もう
4.1 独立を目指すみなさんへ
平井さんは志師塾で学んだ過去を振り返り、こう言います。
「独立にあたり、特にビジネスの初心者の方は考え方や作法が身についていないことも多いと思います。ですから、共に学べる場所、共に学べる仲間がいることはとても心強く、事業の立ち上げに向けて強力な後ろ盾になると思います。ぜひ一緒に学べる仲間を見つけることをおすすめします」
4.2 夢はまだ始まったばかり
そんな平井さんが今後挑戦していきたいこと、それは自分のサービスの仕組み化です。
「これまではお客さんのニーズにとことん寄り添っていくことに無我夢中でした。その結果気づいたら、サービスのバリエーションが増えすぎてしまっていたのです。今後は個々のサービスを線としてつなげ、在宅医療クリニックを多面的に末永くサポートするビジネスモデルを構築していきたいと考えています」
仕組みができたらパートナーを増やして全国展開ですね、そう水を向けると、「まだまだそこまでは考えにも及びません」
そう言って微笑む平井さんですが、思い描く在宅医療の未来に迷いは見えませんでした。
文:湯山聡(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部
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