勤務弁護士卒業!年収アップにつながる独立開業

司法修習を終えたのち、弁護士登録をしてしばらくの間は、勤務弁護士として所属している法律事務所から配点される事件を処理することだけで毎日が過ぎていくという状態となります。しかし、何年か経験を積めば、事件処理について自信がついてくると思います。事件処理について一定の自信がついてきたら、気になるのは年収です。

そこで、この記事では「独立しようか悩んでいる」「そろそろ独立したい」と考えている勤務弁護士の方が、独立開業を検討することの重要性やどのようにして収入につながる事件を確保するのかについて、ご説明します。

1.弁護士の独立開業と収入

最近は企業内弁護士や任期付公務員になる弁護士が増えてきています。とはいえ、司法修習が終われば、固定収入を得て法律事務所に勤務する勤務弁護士として所属して事件処理を学ぶというのがまだまだ一般的ではないでしょうか。(余談ですが、かつては勤務弁護士のことを、イソ弁(居候弁護士の略)とも呼ばれるのが一般的でしたが、最近はアソシエイト弁護士という言い方をすることが多いようです。)

弁護士登録をしてからしばらくしてからは、法律事務所から配点された事件をこなすので精一杯の日が続きますが、ある程度の経験を積めば、事件処理にも慣れてきて、一通りのスキルも身についてきます。

しかし、弁護士として一通りのスキルを身につけることができたとしても、まだまだ安心することはできません。弁護士は裁判官や検察官とは異なり、必ずしも収入が保障されているわけではなく、自分で収入を得る方法を考えていく必要があるからです。そこで、本稿では、勤務弁護士にとって独立開業を考えることの重要性や、独立開業後の収入確保のためにどのような点を検討すべきかについてご説明したいと思います。

2.最近の勤務弁護士の年収や独立の事情

勤務弁護士は、給与又は委託報酬という形で事務所から年俸制など形で固定収入をもらいつつ、数年で独立開業を行うというのが一般的なキャリアとなっています。

2.1  二極化が進む弁護士の独立開業の時期

新司法試験制度が開始する以前は、おおむね3年から5年ほどアソシエイト弁護士として法律事務所に勤務した後に、独立開業をするというのが一般的でした。3年から5年ほど弁護士として経験を積めば、よほど専門性の高い事件でない限り、一通りの対応ができるようになるからです。

近年では、登録後2年程度で独立する弁護士もいる一方で、登録後10年たっても独立しない弁護士も増えてきています。すなわち、弁護士の独立開業の時期について、2極化が進んでいるのです。これはどのような原因によるものなのでしょうか。

2.1.1  早期に独立する弁護士の傾向

2年程度で独立する弁護士には大きく2つの傾向が見られます。1つは、スタートアップ志向の弁護士です。人から指図されることを好まず、少しでも早く自分の力で稼いで高い年収を得たいと考える弁護士がこれに該当します。このような弁護士は自分なりの経営戦略を立てており、高い年収を得ている場合も多いと思われますが、全体的に見てスタートアップ志向の強い弁護士はかなり少ない印象です。

2つ目は、以前に所属していた法律事務所を何らかの事情により退職せざるを得なかったケースです。早期に独立する弁護士は、こちらの方が割合的には多いと思います。

2.2.2  なかなか独立しない弁護士の傾向

他方、なかなか独立しない弁護士は、安定を志向しているものと思われます。昇給などの待遇の向上は見込めないとしても、所属する法律事務所から安定した年収が保障されていること、事件を自らの手で獲得する必要がなく、専ら事件処理さえしていれば良いこと等から、今の法律事務所にずっと勤めたいと思っている弁護士です。司法試験合格者が減少している今もなお、弁護士の数が大幅に増加している都市部では、弁護士同士の競争が激しいことから、このような考えの弁護士がかなり多くなっているように感じられます。

2.2  いつまでも勤務弁護士でいられない?―自分の年収を考えることの重要性

あなたが、さきほどご紹介した安定を志向する弁護士であるならば、注意すべきことがあります。それは、いつまでも勤務弁護士でいることはできないということです。

なぜならば、所属している法律事務所の経営者弁護士(ボス弁とかパートナー弁護士とも呼ばれます)はいつまでも現役でいられないからです。ある日、経営者弁護士が突然病に倒れ、そのまま弁護士を引退するということもありえます。弁護士事務所は、経営者弁護士の看板のもとに顧客が集まっている場合も多いため、突然の経営者弁護士の引退により顧客が離れ、従前からの年収が確保されないことも十分考えられます。

最近は、そのようなことがないように法人化をする法律事務所もありますが、その場合であっても、所属する弁護士間の考えの違いから法律事務所が分裂することもありえます。

「いつまでもあると思うな親と金」ということわざがありますが、弁護士の場合は、「いつまでもあると思うなボスと事件」といったところでしょうか。結局のところ、自分の身は自分で守るしかありません。その意味では、当面は独立開業をするつもりがない勤務弁護士であっても、いざという時に年収をどう確保するのかを考えておく必要があるといえます。

3.どこで独立するか―地域密着型法律事務所のメリット

独立開業する弁護士の最近の傾向として、地裁本庁や支部の所在地ではない市に法律事務所を開業することが挙げられます(以下「地域密着型法律事務所」といいます。)。

最近は、争点整理手続をMicrosoft Teamsで行う裁判所も増えてきました。このため、今後は、裁判所の近くに法律事務所を開業する必要も少なくなりつつあります。

その一方、依頼者が相談しやすい環境を整えるという意味で、地域密着型法律事務所は顧客志向といえ、従来の法律事務所との差別化をすることができます。ただし、裁判所がない市であっても、裁判所との交通アクセスが便利な場合は、従来の法律事務所と競合する場合があるため、どこの市で法律事務所を開業するかを検討する際には注意する必要があるでしょう。

裁判所がないところに法律事務所を開業するメリットとしては、①競業する法律事務所がなければ、その地域の市場を独占することができること、②先行者利益として、地域との信頼関係の確保ができうること、③商圏の範囲が明確になるので広告の費用対効果が高いこと等を上げることができます。

他方、デメリットとしては、①商圏が狭くなりがちであること、②新規参入が進むと限られた商圏のなかで、パイの奪い合いになることをあげることができます。

4.独立開業した弁護士が年収確保のための事件を得る方法

勤務弁護士の場合、法律事務所の運営に要する経費を負担することは通常ありません。そのため、国選弁護や民事法律扶助事件であっても、個人事件としての受任であれば、それなりの副収入となります。しかし、独立開業した場合、これらの事件は費用対効果の観点から多くを受任することは、年収確保の観点からは問題であるといえます。もちろん、これらの事件は公益性の高い事件であり、その観点からは、受任することは大いに意味があることといえます。

4.1  弁護士の営業活動で最も重要なこと

当たり前のことですが、依頼者は、弁護士の先生が事件処理をきちんとしているかどうかを見ています。

「遅い」「報告がない」「弁護士と連絡が取れない」といった、事件処理に関してしばしば起こるクレームが生じないように注意を払い、依頼者との信頼関係を構築していくと、独立開業した後に勤務弁護士時代の依頼者から新たな依頼や新規依頼者の紹介につながります。所属している法律事務所が受任した案件(事務所事件)であったとしても、依頼者は担当していた弁護士のことを(良い意味でも悪い意味でも)忘れないからです。その意味では、今担当している事件処理をきちんとすることが弁護士の営業活動の第一歩であるといえます。

4.2  他士業からの依頼者紹介

司法書士や税理士など他士業から依頼者の紹介を受けるということも弁護士の重要な受任ルートの一つです。では、紹介を受けるためには、どのような点に注意をする必要があるでしょうか。

他士業から紹介を受けるためには、どんどん自分の顧客を紹介していく必要があります。「give」があるからこそ「take」があるからです。そして、紹介を受けた場合は、初回相談料を無料にするなど、紹介者の顔を立てるようなことをすることで、その紹介者との信頼関係を深めていくことができるでしょう。

4.3  人脈を広げる意外な方法

受任につながる人脈を広げる意外な方法として、中小企業診断士資格を取得することも考えられます。近年弁護士で中小企業診断士の資格を取得する方が増えています。中小企業診断士は独占業務のない資格ですが、それゆえに、金融機関出身者など、さまざまなバックボーンを持っている方が診断士資格を取得し、診断協会をはじめ、各種のコミュニティに参加しています。このコミュニティに中小企業診断士として参加することで、幅広い人脈を得ることができます。

また、弁護士資格を保有していても、診断士資格を保有することはできず、診断士試験に合格することが必要となります(一部科目免除はあります)。したがって、すべての弁護士が参加できるわけではないという意味で、診断士コミュニティへの参入障壁があるため、コミュニティ内での差別化もできるのです。

4.4  レッドオーシャン化しつつあるポータルサイト

これまで述べてきた年収確保につながる事件を得る方法は、地道な努力を積み重ねていくいわば「地上戦」ともいうべきものでした。これに対し、「空中戦」として、弁護士のポータルサイトを利用することにより年収確保につながる事件を得るという方法もあります。

しかし、近年ポータルサイト利用によって事件を獲得するためには、激しい競争を勝ち抜いていく必要があります。ポータルサイトを利用する弁護士が増加していること、各弁護士が提供するサービスの具体的な内容が容易には分からないことから、コモディティー化が進み、特段のアピールポイントがない限り、価格競争となっていることが多いからです。

5.まとめ―弁護士が独立開業して年収を確保する方法

本稿では、弁護士が自分で年収を確保する必要性やその方法について説明してきました。弁護士であれば将来安泰であるという時代ではありません(そもそも、そのような時代があったのかについて個人的には疑問もあります)。

勤務弁護士であっても「六法とそろばん」、すなわち、事件処理と年収を確保する方法という2つの視点が大切です。

クレジット:文:武田宗久(中小企業診断士/弁護士)/編集:志師塾編集部

 

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