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『パラレルキャリア』で女性が社会で活躍できる生き方を!~パラレルキャリアコンサルタント・美宝れいこ(みほれいこ)さん~

平成27年に女性活躍推進法が制定されました。しかし、企業における管理職の女性の割合は少なく、女性が企業で活躍できるようになるのは道半ばといった状態にあります。そのようななかで、パラレルキャリアを通じて女性活躍に取り組んでいるのが美宝(みほ)れいこさんです。

母親の死をきっかけに、自分のやりたいことは何かを考えるようになった美宝さん。自分のやりたいことをまずは副業でと考えアロマサロンの運営を開始しましたが、のちにパラレルキャリアコンサルタントとして独立します。

美宝さんがパラレルキャリアコンサルタントとして独立するに至った経緯、そして、女性活躍にかける思いについて迫っていきたいと思います。

1. 働く女性の活躍を応援

美宝さんは、東京都渋谷区でエール株式会社を経営しています。エール株式会社は、「働く女性の活躍を応援する!」をコンセプトに、パラレルキャリア専門校エールアカデミーの運営などを通して自らの力を活かし、パラレルキャリア(複業)で活躍する女性の創出を行っています。

2. 働くことの意味を見直すきっかけとなった母親の死

美宝さんは、短期大学を卒業後、転職を繰り返し、複数の企業で勤務をしました。転職を繰り返したのは、自分に合ったやりがいのある仕事を見つけるためでした。

美宝さんは、転職を繰り返すなかで、順調にキャリアアップをしてきました。例えば、4社目に入社した広告代理店では、600人の社員がいるなかで、女性で初めて事業部長という役職を得ることができたとのこと。業部長という役職を得たことによって大きな達成感と自信を得ることができました。

そんな美宝さんに転機がやってきます。母親が亡くなったのです。当時、美宝さんは33歳でした。母親が亡くなったショックで、1年くらいは何もできず、まるで廃人のようになってしまいました。母親を亡くしたということは、美宝さんにとってそれだけ悲しい出来事だったのです。

しかし、この母親の死が、自らの働き方を見直すきっかけにもなったのです。美宝さんの父親は、美宝さんが短期大学に通っていた際にすでに亡くなっていました。このため、美宝さんの母親は、働くことのやりがいや楽しみというよりは、稼ぐためにがむしゃらに働いていたそうです。

そのような「働いて終わり」だった母親の人生を振り返って、美宝さんは働くことの意義について改めて考えるようになりました。そんななか、電車の中である広告の記載を発見します。それは、「『あなたじゃなきゃダメなんだ』と、あと人生で何回いわれるだろう」というものでした。

「現在の勤務先で仕事が充実していないわけではない、けれども私がいなくなっても、会社は回っていく。『あなたじゃなければダメなんだ』という仕事がしたい」と美宝さんは思うようになったのです。そして「自分が好きと思うような仕事をしたい」とも思うようになりました。

美宝れいこさんの決意

3. 起業よりも副業を選ぶ

3.1 アロマセラピストとしての限界

そこで、美宝さんは、最初は当時ブームになり始めていた起業を検討しました。しかし、いきなりの起業は困難と考え、副業をすることとしました。

アロマが好きな美宝さんは、仕事が終わった後に専門学校に2年ほど通学し、アロマセラピスト等の資格を取得しました。そして、自宅の近くに場所を借り、平日の仕事終わりや土日にアロマサロンを運営することとなったのです。

しかし、アロマサロンを運営するうちにあることに気づきます。それは、自分はアロマセラピストの仕事が好きなわけではないのだということです。「自分が50歳や60歳になったときにアロマセラピストの仕事に集中できるだろうかといわれれば、Noだと思いました」と美宝さんは話してくれました。

アロマセラピストを続けていくという目論見は、大きな壁にぶつかることとなったのです。

3.2 副業で「副業の支援」を開始

美宝さんがアロマサロンの運営を開始した当時は、まだまだ副業を行うことには消極的な会社が多数でした。そのため、会社に副業していることを告げず、SNSで名前や顔を出すことなく集客を行っていたそうです。

美宝さんが会社に告げることなく副業を行っていたことから、副業を検討していた複数の女性から、相談を受けることがありました。美宝さんのように、好きなことで仕事がしたいと考えている女性は少なくなかったのでしょう。

美宝さんは、相談に応じていくうちに、もっと多くの人の力になりたいと考え、『大人女子のためのモヤモヤ相談会』と題し、SNSなどを通じて不特定多数の相談を行うようになったとのこと。相談は、有料(相談料として1回あたり3000円)で行っていました。

これが美宝さんの副業支援を本格的に行う契機となったのです。

美宝れいこさん登壇

4. 副業から複業へ―志師塾との出会い

4.1 相談対象などの明確化という課題

美宝さんが「副業」についての相談事業を始めた当初は、相談されたことについてその都度回答をしていたそうです。すなわち、相談の対象とサポートする内容が不明確でした。今後事業として副業支援を展開していく際には、これらの点を明確にする必要があると考えていたとのこと。

しかし、これらの事業展開に対する体系的な知見を当時の美宝さんが保有していたわけではありませんでした。

4.2 副業に対する違和感

そもそも美宝さんは、「副業」という言葉に違和感を持っていました。確かに、会社に所属して安定した収入を得ながら別の事業を行うという点では、「副」業なのかもしれない。しかし、それはあくまで「働くこと=収入を得ること」(いわゆる『ライス』ワーク)という考えが前提になっているのではないかというのです。

もっとも、当時はこの違和感を解消するための明確な考えを持っていませんでした。

4.3 志師塾との出会い

そのような中、美宝さんは、夫とともに志師塾のセミナーを受講しました。セミナーを受講して夫がぜひ通いたいと言ったことから、美宝さんも夫と一緒に志師塾に通うようになったとのこと。

志師塾では、経営について体系的に学ぶことができました。しかも、例えばペルソナ(製品やサービスの想定する顧客像を仮想の人物として定義したもの)を『小人』というなど、難しいマーケティング用語や机上の空論を使うのではなく、あくまで実務で活用できるような考えをわかりやすく学んでいくことができました」

「また、小手先のテクニックではなく、ビジネスに必須の普遍的な考え方を学ぶことができたのも大きかったです。自分の強みやスキルの棚卸やポジショニングなどサービスをつくる上で必要なベースとなる基礎や自分が何の専門家であるのか?そこを追求していく課題が多くあったので、起業初期からとことん掘り下げて向き合うことができました。同期や仲間との出会いも励みとなり、志師塾との出会いはとても大きかったです」と美宝さんは話してくれました。

4.4「パラレルキャリア」の発見

志師塾に通い始めてしばらくたったとき、美宝さんは自らのポジショニングを考えていたとのこと。そのとき、美宝さんの夫は美宝さんに対し、「いまあなたがやっていることはパラレルキャリアではないか」と話しました。この夫の言葉をきっかけに「パラレルキャリア」というコンセプトで事業を行っていくという視野が開けたそうです。

パラレルキャリア(複業)と副業とは、会社の勤務時間外に会社の業務とは別のことを行うという点では共通しています。しかし、両者の間には決定的な違いがあります。

副業とは、もっぱら本業の収入を補うために収入を得ることを目的とした働き方です。このため、本業と副業との間には、メインとサブといった関係が成り立つのです。他方で、パラレルキャリアでは各キャリアに主従関係はありません。すべてが本業なのです。

そして、必ずしも報酬を伴うものでなくとも、スキルアップやキャリアアップにつながるものであれば、それもまたパラレルキャリアといえるのです。

その意味では、副業とは、『生きるために働く』(『ライス』ワーク)であるのに対し、パラレルキャリアとは、『生き方そのもの』(『ライフ』ワーク)といえるでしょう。

副業とパラレルキャリア

4.5 起業を検討する際にも有用な「パラレルキャリア」

美宝さんは、平成29年に勤務先の会社を退職し、パラレルキャリアコンサルタントとして独立します。会社を退職して起業をする場合、十分な集客ができるかなど不安に思うことが多いです。しかし、美宝さんが起業した際には、特に不安に思うことはなかったとのこと。

「1年ほど会社に勤めながらパラレルキャリアでやってきたので、特に不安はありませんでした。起業しても十分な収入を上げることができるであろうという自信ができたし、不安よりも起業したいという情熱のほうが大きかったと思います」美宝さん自身、パラレルキャリアであったことが起業の自信になったようです。

「起業をしてしまうと後には戻れないことが多いです。しかし、パラレルキャリアの場合だと、うまくいかなくとも何度でもやり直しがきくのです。試行錯誤を繰り返すなかで、自分が本当にやりたいものを見つけることができます」

美宝さん自身もアロマサロンの運営をしてみて、本当に自分がやりたいことが実は別のものであったということが分かったとのこと。

パラレルキャリアは起業を検討している人にとっても、有用なものといえるでしょう。

美宝れいこさんスピーチ

5. 女性の活躍を応援したい

5.1 日本では女性活躍は道なかば

美宝さんがパラレルキャリアを通じて実現したいものとして、女性の活躍があります。「『女性活躍』という言葉がありますが、まだまだ日本では企業の中で女性が活躍できる状況が整っていません」と美宝さんはいいます。

「同じ仕事の成果であれば男性が評価される。まして、女性は出産や育児で仕事に十分な時間を割くことができないので、仕事の成果を上げることは容易ではありません。同じ役職であっても、女性よりも男性のほうが頼られる部分があるような気もします」

美宝さんの話からは、日本での女性活躍への道のりはまだまだ遠いようです。

5.2 パラレルキャリアで女性の活躍を応援したい

美宝さんは、女性が企業で活躍することは容易ではないものの、パラレルキャリアなら女性が活躍できるのではないかと考えました。「女性が企業を超えて社会で活躍するためにもパラレルキャリアは重要なんです」と美宝さんはいいます。

複業で女性活躍を推進するため、パラレルキャリア推進委員会という女性支援団体を立ち上げました。この委員会はいくつかの支部や部署を設けており、女性がリーダーとして活躍しています。勤務先の会社ではリーダーになることは容易ではなくても、このような形で女性がリーダーとして社会で活躍することが可能になるというのです。(公式:「パラレルキャリア推進委員会」)

また、美宝さんは、女性と企業、教育機関、行政、メディアとのマッチングを行っています。「1つの働き方や生き方に縛られず、今までのスキルや経験、強みを活かして、パラレルキャリアに挑戦して欲しい」と美宝さんはいいます。

5.3 女性にエールを!

美宝さんの会社であるエール株式会社の「エール」とは、応援をあらわす「エール」とフランス語の「羽ばたく(エール)」の2つの意味があります。

これからも、美宝さんはパラレルキャリアで羽ばたく女性を応援していきます。

文:武田宗久(中小企業診断士・弁護士)/編集:志師塾編集部

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