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オンライン研修|成功の秘訣を解説

本稿をご覧になっている皆さんは、これから初めてオンライン研修講師として登壇しようと思っておられるのではないかと思います。中には「そんな自信はないよ」、という人もいることでしょう。

研修では、ただ自分の知っていることをスクリーン上で文字や図柄として並べて、それを話すだけでは充分ではありません。これを成功させるためには、相応の準備、考慮しておきたいポイントがあります。

本稿ではこれらを紹介したいと思います。あなたの更なるステップアップの参考になれば幸いです。なお、本稿で「オンライン研修」とはもっともポピュラーなZoomを用いた集合研修で講師として登壇する状況をイメージしています。

1. 成功するオンライン研修とは

1.1 成功の定義は?

そもそも成功するオンライン研修とはどういうものなのでしょうか。
その成否は、講師であるあなたが、その研修を行うことで狙う効果を達成できたか否かによって決まります。この場合の狙いたい効果として次のようなものが考えられます。

  • ① 専門家としての自分の名前を売って今後のビジネス(たとえばコンサルティング)に繋げたい
  • ② 講師として経歴を重ねて自分の実績としてアピールしていきたい
  • ③ 自分の知見を他人に伝えることで世に貢献したい

これらの効果を定量的に知ることは困難ですが、目指したいゴールをご自身で設定することでその対応も考えやすくなります。

1.2 結局は受講者のためになる研修であること

どういう動機でスタートするにせよ、成功するオンライン研修とは、受講者が「ためになった」と感じて一定の満足度を得ることが大前提となります。

人材育成の要となる研修。受講者のみならず、人材育成の責任を持つ企業の人事担当者をも満足させられればさらにベストです。その満足度を、今回の研修だけではなく、次の研修でもコンスタントに維持できるのが理想です。

受講者が満足する状態というのは、目的とする知識やノウハウが得られたと感じている状況だと言えます。つまり受講者の求めるニーズを満たした研修を実施する、ということに尽きるでしょう。

本稿では、どのようにすれば受講者にとって有益なオンライン研修を提供できるか、という観点に絞って記述していきます。

2. オンライン研修の受講者を想定する

2.1 オンライン研修、誰に向けて話すのか

オンライン研修、誰に向けて話すのか?

研修全般に言えることですが、誰に向けて話すか、ということをまず考えておかなくてはいけません。あるテーマに関して、初心者なのか、実務レベルなのか、管理レベルなのか、によって話す内容は大きく変わります。

受講者の属性はできる限り具体的にイメージしておくとベストです。たとえば、「財務会計については初めて学ぶ中小企業の経営者2代目」、とか、「一般企業の人事部門に勤務する中堅社員」、など、具体的な属性がはっきりすればするほど、研修の内容は人材育成担当者や受講者のニーズに合ったものを提供しやすいと言えます。

2.2 オンライン研修に対するニーズは何か

オンライン研修は、その名の通り、「オンライン+研修」です。つまり、オンラインならではのニーズと、研修そのもののニーズが存在すると考えるべきでしょう。前者については、地方や海外にいながら学びたい、といったニーズがあるでしょうし、後者については、研修を通じて、知識を得る、ノウハウを得る、さらには人脈を広げる、といったニーズもあることでしょう。

主催者から講師を依頼された人は、主催者に情報を得るなりして受講者像を事前に把握、あるいは意識しておくことが望ましいです。イメージすることが難しい場合は、わかっている情報の中から自らの想像力を働かせることも重要です。想像力を働かせて考えたものが実際との差異があってもなくても、それが講師自身のノウハウとして蓄積されていきます。

3. オンライン研修の構成を考える

受講者の想定ができたら、オンライン研修の構成を考えます。何をどういう順番で話すか、という目次の部分と、どういう形式で実施するか、という2つの側面で検討します。

3-1 目次(オンライン研修の内容)

研修講師として依頼を受ける場合においては、ほとんどの場合、研修機関を通してテーマは大枠では決まっているものと思います。特に細かい指定がなければ、内容には自由度があります。与えられたテーマの中で研修の構成をあなたが検討する必要があります。ここで構成というのは、何をどういう順番で話すか、という目次のようなものです。以下にその一例を示します。

 

項目 所要時間 時間割
概要説明 10分 10:00~10:10
個人ワーク 10分 10:10~10:20
講義:貸借対照表 30分 10:20~10:50
講義:損益計算書 30分 10:50~11:20
講義:CF計算書 20分 11:20~11:40
まとめ 10分 11:40~11:50
事務連絡 10分 11:50~12:00

 

これは、財務会計についてのオンライン研修をイメージしたものです。この時間割では基本的な要素しか記載していませんが、それぞれのセクションの中でどういう順番で話をするか、ということはあなたの中でしっかり検討しておくことをお勧めします。

たとえば、貸借対照表のセクションであれば、①貸借対照表の意義(2分)②貸借対照表の構成(3分)③借方部分の各要素の解説(10分)④貸方部分の各要素の解説(10分)⑤実際の企業の貸借対照表の確認(5分)という形で講師としてのあなたが話す順番をイメージしておくことが重要です。

この時間割がリアル研修のものと言われても違和感がないのに気づかれると思います。その通りです。本質的なところは何も変わりません。このことを知っておくと、オンラインだから、とかリアルだから、ということで身構えることはないことが理解できると思います。

3-2 オンライン研修における形式

目次を考えたら、研修の手法も考えます。実際には目次を考えながらイメージします。つまり、講義形式一本でいくのか、受講者に課題を与えてやってもらうのか、あるいはグループを構成して話し合ってもらうのか、ということです。

一本調子で講義だけにするより、個人やグループでのワークを入れてみるのも研修に変化があって受講者の理解を助ける側面があります。特にグループワークを導入するときに気をつけることは5.に記載しています。

3-3 オンライン研修の時間割

オンライン研修の時間割

研修時間は無限にあるわけではありません。伝える側である講師から見ると、話すことはいくらでも出てくるものだと思いますが、受講者側の立場に立つと、集中力が続くのは1つのトピックでは1時間くらいが限度だと思います。

特にオンラインで、かつ画面OFFの状態であれば受講者の画面の向こうでの様子は講師側からはわかりません。長丁場の研修であればあるほどこまめな休憩を入れるとか、おおむね1時間をめどにトピックを変えるなどメリハリをつける工夫もしてみましょう。先に示した例のように休憩も含めた時間割を作るのは、受講者にとっても有用ですが、講師の側でもメリハリのある時間の使い方をするためにおすすめです。

4. オンライン研修でグループワークを導入する

オンライン研修における集合研修の中では、一方的な講義形式だけではなく、グループワークを実施したほうが効果的なこともあるでしょう。グループワークを実施するにはグループを構成する必要があります。

そのためには少し下準備が必要です。1グループあたりの人数とグループワークの時間をあらかじめ決めておいて、メンバー構成をZoomにお任せでグループを作る場合と、恣意的にグループ構成員を決める場合とがあります。

いずれも研修講師として話しながらその準備をするのは、相当慣れていないとタイムリーに実施するのは難しいと思いますので、できる限り研修をサポートしてくれる協力者を用意しておいたほうがスムーズです。このあたりのスムーズな運営もオンライン研修の満足度を上げるためには必要な要素ですのでぜひ忘れずに準備しておきたいところです。

研修期間の委託を受けてオンライン研修を実施する場合には、その段取りについても事前に打合せをしておきましょう。

オンライン研修

グループ議論を全体に共有する場合、GoogleのJamboardなどのツールを使って議論の内容を記録しておく方法もおすすめです。各チームで話した内容を全体に共有するためです。

全体に各班の切り口が紹介できて出席者の理解を促進できます。こういうツールについては、研修を開始する前にご自身で実際にそのツールに触れるなどしてどういう風に使えるのかを把握しておくことが必ず必要です。段取り八分、といったところですね。

5. オンライン研修、リアル研修との違いは?

オンライン研修とリアル研修は何が違うのでしょうか。同じように説明するだけなのでは?と思われるかもしれませんが、オンライン研修では講師の一部しか見えない、もしくは全く見られない、という点で大きな違いがあります。

リアル研修では、講師の全身を集合研修の受講者から見られているという状態になることが多いでしょう。オンライン研修の場合は、受講者には講師の上半身のごく一部が見えているのみ、あるいは受講者は講師ではなくその示しているプレゼン資料を見ていることがほとんどでしょう。

つまり、リアルでは伝わりやすい非言語的な内容は、オンラインの場合は、伝えるのに工夫が必要、と考えるべきでしょう。講師と受講者が互いに同じ空間を共有していないからです。ジェスチャーは大げさに思うくらいに、声もはっきりと話すように心がけましょう。

基本的に講師の上半身のみが受講者に見えている形になりますので、全身を見られているリアル研修に比べると、人前で話すのが恥ずかしい、と思う人も少し講師への道を踏み出すためのハードルが下がるのではないでしょうか。

オンライン研修講師はかなり身近になってきているとも言えます。そしてそれは、講師間の競争が激化し得ることも示唆しており、より研修の中身で勝負する必要が出てきているとも言えます。

6. オンライン研修において質問を受け付ける

受講者からすれば話を聞きながら疑問が生じることもあるでしょう。研修を主宰する側はむしろ受講生にはそういう思いで聴いてほしいと思えます。

人数が多い場合は、Zoomのチャット機能を使って質問を受講者に入力して貰うといいでしょう。これはリアル研修にはない便利な機能です。流れているチャットを順番に回答していくことで対応ができると思います。

大人数の場合でも口頭での質問を受け付けることもできますが、なかなか大勢の前で発言を求めるというのはハードルが高いこと、特定の人の質問に時間を費やしてしまい質問の数を拾うことが難しいことから、チャット機能を活用するのが現実的でしょう。時間内に回答しきれなかった質問については、後日回答を受講者に電子メール等で送る、という方法が有効です。

なお、質問が出ず予定した時間が余ったりする場合もありますが、このときは間延びしてしまいますので、事務局側で、ある程度の質問を準備しておいて(いわゆる「サクラ」)それを呼び水にする、といった方法もあります。質問が出ない理由は、何を訊いていいかわからない、どういうレベルでの質問をすべきかわからない、というものがあります。その場合は「サクラ」の質問で、レベル感や質問内容の例を提示することで受講生の心理的ハードルを下げることが質問活性化のポイントです。

質問活性化のポイント

7. オンライン研修受講者の意見を聞く(アンケート機能)

リアル研修の場合は、講師が受講生に問いかけることがあります。たとえば、この話を知っている人は挙手してください、といった問いかけをする場合です。

Zoomでも手を挙げる、という機能がありますが、人数が多くなると参加者が1画面に収まらないため、人数の把握が難しい場合があります。このときは、アンケート機能を使って自動集計するのがお勧めです。結果も受講生に共有できますので同じ認識でその後の研修を進めることができます。

8. オンライン研修での留意事項

オンライン研修になると顔出しを好まない受講者もいますが、顔出しを原則とすることとしましょう。講師の説明に対する反応を確認するためです。また、グループワークの際にも互いの顔を見ながらワークすることで効果を得られます。

また、事前に受講者の属性を主催者経由で確認したり、アンケートを通じて最初のうちに確認するなどして知っておくと研修を実施しやすくなります。また、研修後にアンケートを取るなどしてできるだけ受講者の反応を確認した上で次回に活かしたいものです。

文:安田雅哉(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部

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