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”企業内中小企業診断士”として副業を極める

中小企業診断士協会によると、この試験に合格する人の7割以上が企業や公的機関などに勤務しています(※)(以下、企業や公的機関に勤務する人を企業内と表現します)。企業内で勤務しつつも、資格取得をきっかけに副業を始めようと思っている方もいることでしょう。

2020年から始まったテレワークの流れで環境が整い、ますます副業への関心が高まっています。本稿では、中小企業診断士の副業の種類と、その留意点についてご説明します。本稿があなたのさらなる飛躍への一助となれば幸いです。

(※)出典 https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/001_shiken_kakokekka.html
令和元年度 第2次試験結果 による。

1.中小企業診断士の副業に対する考え方

資格を取り立ての頃は、自分が副業において何がやりたいのか、何ができるかを明確に認識できていないかもしれません。まずは目の前の機会に貪欲にチャレンジするのがいいでしょう。

その過程で自分の強みや弱み、できることやりたいことを見極めることが重要です。じっと考えているだけでは何もわかりません。様々な副業にチャレンジしてみることをお勧めします。

また、副業は「自分が選ぶ」という立場であることを認識しておきたいです。仮に依頼を受けた場合、実際に取り組むか否かは自分で選定する権利があります。そして、選定するためには、自分が副業に何を求めているのかを明確にさせておくべきでしょう。

中小企業診断士が副業する目的は、キャリア形成、スキル向上やレベルアップ、経験値向上、副収入など様々です。数多くある選択肢の中から、自分の目指す方向によって選び方が変わっていくのです。

2.中小企業診断士の副業の種類

中小企業診断士の副業にはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。

2.1 中小企業診断士試験受験関連

受験関連では、予備校における中小企業診断士講座の講師、中小企業診断士の模擬試験作問や採点、あるいは教材作成などの仕事があります。その他、中小企業診断士試験向けの1次試験、2次試験に向けた参考書執筆などもあります。

ご自身が中小企業診断士の試験を突破したノウハウを世の中に紹介する機会です。自身で培った独自のノウハウをもとに自著を出版する中小企業診断士もいます。

特に2次試験は独特の形式の試験であり、体得するまでに時間を要することもあります。自分が会得したノウハウをいかに受験生に伝えるか、執筆の過程で工夫をしなくてはいけません。その中で自分のスキル向上が期待できます。

2.2 研修講師

自分の専門分野を生かして研修講師として活動することもできます。中小企業診断士の資格更新要件に5年間で5回以上の理論政策講習を修了する必要があり、この講習の講師として教壇に立つ中小企業診断士もいます。

新型コロナウィルスの影響により2020年初頭は多くの研修が延期もしくはキャンセルになりました。その結果として教壇に立っていた多くの人が憂き目を見ましたが、2020年中盤以降はオンライン研修も一般的になり、講師として活動する機会が増えています。

「自分の知見を多くの方に伝えたい」「講師業を通じてさらに副業の幅を広げたい」と思う人はぜひ検討したい業務のひとつでしょう。研修講師という副業も、自分の理解していることを他人にいかに分かりやすく伝えるといった、スキル向上に役立ちなります。

2.3 補助金申請支援

ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、2021年3月から公募された事業再構築補助金など、さまざまな観点で国が制度を充実させて中小企業を支援しています。その補助金を受給するための申請支援を行う業務があります。

最初のうちは、案件の多くが中小企業から補助金申請業務を受託した人や団体から依頼される場合でしょう。中小企業の業容や方向性を確認するヒアリング、補助金申請に必要な各種書類を対象事業者から過不足なく受け取る業務、企業の方向性を把握し申請書に落とし込み書く業務、作成された申請書をチェックする業務など、依頼主によってさまざまな形態があります。

中小企業診断士はその資格取得の過程で企業の経済活動について体系的に知識を習得しており、事業者の課題を、体系的に整理し、中小企業を支援することができます。中小企業の実態を把握すること、今後の中小企業診断士としてのキャリアを構築することや、スキル向上の観点でも取り組む意義のある副業の1つと言えます。

企業内中小企業診断士の副業2

2.4 取材・執筆活動

企業の経済活動を体系的に学んでいる中小企業診断士にとっては、取材、執筆活動も活躍できる分野です。取材活動は取材相手に適切な質問をし、良い回答を引き出す営みですが、事前に取材する側が一定程度の予備知識がないと質問が深まらず、良い回答が得られません。

自分の持っている知識に加えて取材対象者の活動、人となり、書籍やブログを含めた発信内容などを事前に調査した上で聞きたいテーマを明確にして取材に臨む、という行為は中小企業診断士としての「聞く力」を向上させるいい機会です。

もちろんプロフェッショナルとして仕事を受けるので、自分の勉強のため、という観点は二の次ではありますが、自分をさらに磨いてくれる機会になることは間違いありません。

また、記事を書くためには自分の持っている知識だけではなく、新しい知識や、持論を補強するためのデータなど様々な調査が必要となります。その結果として自分の知識レベルが上がり、スキル向上につながります。

2.5 中小企業経営診断

中小企業診断士は5年に1度の更新制度があり、そのためには経営診断実務を期間中に30日以上実施する必要があります。これは中小企業診断士協会や民間コンサルティング企業が行っている実務従事や、知り合いの中小企業の経営診断、といったケースがあります。

中小企業診断士の資格取得直後は、「診断させていただく」という立場になることが多いでしょう。そのため、無償あるいは中小企業診断士から案件先の団体に費用を支払って実施することが多く、報酬をもらう副業にはなりにくいかもしれません。

ただ、経営診断を通じて経営者と知り合い、仕事の成果を認められた結果、別の機会で報酬をもらって相談に乗るケースにつながることもあります。経営者としても一度は一緒に仕事をしたことのある中小企業診断士であれば信頼できる、という観点もあるからです。

中小企業経営診断の副業をすることで経営診断のスキル向上にもつながります。

経営診断のスキル向上

2.6 独立開業と法人化

資格取得を契機に、会社員として働きながら個人事業主として開業する人も少なくありません。個人事業を法人化してサイドビジネスとして立ち上げる人もいます。

副収入だけではなくスキル向上にもなる機会ではありますが、本業の勤務先規定に抵触しない形で検討する必要があります。

3.企業内の中小企業診断士が副業で留意すること

3.1  SNSの活用

中小企業診断士試験を突破したばかりの人は、副業の機会を「どのように得たらいいのだろうか」という思われるかもしれません。心配することはありません。情報源はあらゆるところにあります。

中小企業診断士2次筆記試験合格発表の1週間後に実施される口述試験会場で、様々な団体から各種の勧誘が目に入ると思います。そこで配布されるチラシなどでは、たいていホームページや問い合わせ先が記載されています。興味を持ったところにアクセスしてみるといいでしょう。

身近なのは各都道府県の中小企業診断士協会です。中小企業診断士2次試験を通過すれば加入の資格が得られます。いったん仕事の機会を得られれば、そこを軸に知り合いが増えて、さらに機会が広がることになります。

また、仲間とともに切磋琢磨しながらスキル向上できるのもポイントです。まずは身近なところから始めてみることをお勧めします。

また活用を考えたいのはSNSです。中小企業診断士の資格取得をきっかけにFacebookを始めるという人も多く、もはや必須のツールとも言えるかもしれません。

従来は口コミで機会を得ていたものが、オンライン上で得ることができるようになりました。中小企業診断士資格を取得したことで参加できるコミュニティが多数あり、興味のあるものに属してグループ内で情報交換しながら活動の輪を広げていくという方向性がいいでしょう。

その他、同じ受験予備校に通っていた仲間や勉強会仲間などの継続した横のつながりも大切です。重要なことは、「つながりを作ろう!」という自分の意志です。

3.2  勤務先の承認取得

 厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発行しています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

基本的な考え方は労働者が勤務外の時間をどのように活用するかは労働者の自由であり、副業を実施すること原則認められるべきである旨が示されています。従業員の立場からすると、副業は会社員である自分のスキル向上にもつながる、という主張もしたい気持ちも理解はできます。

しかしながら、副業によって本業の勤務先の業務に支障が出たり、秘密漏洩などが生じると勤務先に大きな不利益が生じることになりますので、勤務先が一定の制限を設けることも合理的であるとされています。したがって、勤務先の就業規則に則り、必要な場合は勤務先の承認を取得した上で実施をするようにしましょう。

勤務先の就業規則

3.3  確定申告

執筆や講演などで得た所得は雑所得となります。税法により給与所得以外の所得(註所得とは収入から経費を引いた収益部分のことです)が20万円を超えると、会社員であっても確定申告をしなくてはなりません。

確定申告をすると国税庁に対して所得税データが登録されるとともに、居住地の地方自治体にも連絡が行き、住民税が再算出されます。この情報は住民税を源泉徴収するために地方自治体から勤務先に連絡が行きます。

本業の勤務先から不要な疑義を持たれたくない人は、確定申告の際に「住民税の普通徴収」という部分にチェックしておくとよいです。その場合は、副業の分で納税が必要な住民税については、地方自治体から送られてくる住民税納付書により所定額を納入することになります。

こうすることで、住民税が原因で勤務先に副業が知られることはなくなります。副業をする以上はこのあたりもしっかり確認しておきたいポイントです。

確定申告

住民税の普通徴収

確定申告書の住民税徴収方法記入欄(赤丸の部分)

3.4  仕事へのコミットメント

副業は、あなたにとっては副次的な業務であっても、依頼者から見るときちんとしたアウトプットを出してほしいと考えるのは当然のことです。したがって、引き受ける際には、求められる品質のものを、設定された期限に出せるかどうか、本業での稼働状況も踏まえて判断する必要があります。

プロとして引き受ける以上、途中から、「本業が忙しいのでできません」という言い訳はできないと考えて仕事を受注しましょう。

3.5  働き過ぎに注意

副業の内容によっては、本業終了後に副業に従事し、遅くまで業務をせざるを得ず、思いのほか時間がかかってしまうケースもあるかもしれません。特に2020年からはテレワークが主流になりつつありますので、朝から夜まで部屋にこもって働きづめになる恐れがあります。

その結果、寝不足になり健康を害して、本業にも副業にも従事できなくなってしまったら元も子もありません。特に注意したいのは、副業は本業に支障が出ない範囲で実施すべきということです。

あまりにも影響が甚だしいと、本業の勤務先で懲戒処分の対象にもなり得ますので注意が必要です。

4.副業を飛躍へのステップに

中小企業診断士としての副業の考え方、種類、留意点について紹介してきました。留意すべきことをしっかり心がけて、成果を出し続けていけば、その成果が認められて、さらに新しい機会も得られることでしょう。

そうすればまた新しい出会いを得て、さらに自分自身の活動の幅が格段に広がることは間違いありません。そうして機会を得て経験と実績を積み重ねると、ご自身のスキル向上、ステップアップ、キャリアアップにつながっていきます。ぜひ前向きに副業に取り組んでいくことをお勧めします。

文:安田雅哉(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部

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