
司法書士がInstagramを検討するとき、最初に引っかかるのはこの疑問でしょう。「登記の依頼は不動産会社や金融機関から来る。写真を並べるアプリに、その人たちがいるのか」。もっともな疑問です。
先に正直なところを書きます。売買の決済案件は、不動産会社や金融機関との関係で決まります。ここにSNSはほぼ関係しません。会社設立も、税理士からの紹介が主な経路でしょう。この2つを狙ってInstagramを始めると、必ず外れます。
それでも、司法書士とInstagramの間には確かな接点が残ります。相続登記です。2024年4月から相続登記の申請が義務になり、個人の関心は明らかに高まりました。「やらないといけないらしい」と知りながら、まだ動けていない人が大勢います。
この記事では、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得支援を専門としてきた志師塾が、司法書士がInstagramを相談につなげる手順を4つのステップに整理して解説していきます。先に全体像を置いておきましょう。
- ステップ1:どの相談の窓口になるかを決める(ポジショニング)
- ステップ2:プロフィールを「相談の入口」に整える
- ステップ3:不安を行動に変える投稿を作る
- ステップ4:相談までの導線をつくり、続く形にする
まずは、多くの司法書士がInstagramで手応えを得られない構造から確かめましょう。
1. 司法書士のInstagram集客が空回りしやすい3つの理由
Instagramは写真と動画が主役の場です。飲食店やサロンとは相性がよく、成功事例もよく目に入るでしょう。同じやり方を司法書士が真似ると、たいてい手応えのないまま時間だけが過ぎていきます。理由は3つ。
1.1 決済案件と商業登記は、SNSからは来ない
売買の決済に立ち会う仕事は、不動産会社や金融機関の担当者が誰を呼ぶかで決まります。求められるのは、期日に確実に間に合うことと、事故を起こさないこと。担当者がSNSを眺めて依頼先を変えることはありません。
会社設立や役員変更も似た構造です。多くは税理士や既存の顧問先から流れてきます。この2つを狙う発信は、Instagramでは報われません。ここを最初に切り分けておくと、迷いが消えます。
1.2 「司法書士です」では、何を頼めるか伝わらない
司法書士の業務は幅が広い仕事です。不動産登記、商業登記、成年後見、家族信託、債務整理、簡裁での代理。この一覧をそのまま並べたプロフィールは、読む人の頭に何も残しません。
そもそも相談する側は、自分の悩みがどの業務に当たるのかを知りません。「実家の名義が亡くなった父のままだ」と困っている人が、「不動産登記」という言葉で探すことはないでしょう。業務名で名乗るほど、必要としている人から遠ざかるという逆転が起きます。
1.3 毎日投稿から始めると、たいてい途中で止まる
3つ目は、始め方の問題です。「まずは毎日投稿しよう」と決めて、2週間で止まる。原因は意志の弱さではなく、設計のないまま量だけ先に決めたところにあります。
決済が続く週は、朝から夕方まで外に出ることになるでしょう。そのかたわらで毎日1本は、正直きついはず。しかも止まったアカウントは、放置されたまま残り続けます。紹介を受けた相手が名前で調べ、半年前で更新の止まったアカウントに行き着く。これは、ないほうがましな状態です。
1.4 それでも残る、2つの入口
切り分けたうえで残るものを見てみましょう。司法書士のInstagramには、はっきりした入口が2つあります。
- 相続に直面した個人:親が亡くなり、実家の名義をどうするか。義務化を知って気になっているが、何から手を付ければいいのか分からない。相続登記は「必要になった人しか探さない」仕事なので、その瞬間に思い出される位置を取れているかどうかで結果が変わります
- 紹介元になる専門家:税理士、弁護士、不動産会社の担当者、保険の営業。この人たちも一人の生活者としてInstagramを開きます。「相続の登記といえばこの人」と覚えてもらえれば、案件は流れてくるでしょう
どちらも、いますぐ依頼が来る場所ではありません。必要になった瞬間に、最初に思い出される位置を確保する場所だと考えてください。役割をこう決めるだけで、投稿の中身は変わっていきます。
2. ステップ1:どの相談の窓口になるかを決める
土台になるのがポジショニングです。市場と同業を見渡し、顧客に最も評価される場所を見つけて、そこに自分を置く。ここが決まると、投稿の題材探しは驚くほど楽になります。
2.1 業務の一覧ではなく、相談の場面で名乗る
1.2で触れたとおり、業務名では届きません。置き換えるのは、相談者が使っている言葉です。「相続登記」ではなく「実家の名義が、亡くなった親のままになっている方へ」。「家族信託」ではなく「親の判断力が落ちる前に、実家の管理を決めておきたい方へ」。
言い換えの基準は、資格や業務ではなく相手の場面を語ることです。手続きの名前を知らない人でも、自分の状況なら分かります。「登記全般に対応します」は、相手の記憶の中では「何の専門家でもない」と同じ扱いになります。
2.2 相続の中でも、どの状況の窓口かまで決める
相続に絞っただけでは、まだ足りません。同じ相続でも、相談者の状況はまるで違うからです。もう一段だけ絞ってみてください。
- 何十年も放置されてきた名義:祖父の代から変わっていない、相続人が何人いるかも分からない。調査から始まる案件
- 亡くなったばかりで、何から始めるか分からない方:手続きの順番と期限を整理するところから伴走する
- 遠方に実家がある方:現地に行けない、兄弟が各地に散っている。連絡と書類のやり取りを引き受ける
- 親が元気なうちに備えたい方:遺言、家族信託、生前の名義整理
絞ると仕事が減ると感じるかもしれませんが、実際は逆でしょう。「うちと同じ状況の人を助けている」と読めるアカウントだけが、相談先として選ばれます。
2.3 目指すのは「相続の登記ならこの人」という第一想起
ポジショニングのゴールは、頭の中で「この件なら、あの先生」と最初に思い出される状態、いわゆる第一想起をつくることです。相続は、思い立った瞬間に相談先を探す仕事。そのタイミングは、こちらでは選べません。だから、そのときに残っている位置を先に取っておく必要があります。
名刺・ホームページ・地域の勉強会での自己紹介・Instagram。すべて同じ言葉でそろえてください。接点ごとに名乗りが違う人は、何の専門家か覚えてもらえません。集客経路の全体像は司法書士の集客方法6選で扱っています。
2.4 追う数字は、フォロワー数ではないほうがいい
見る数字も先に決めておきましょう。おすすめは保存された数、プロフィールを見られた数、そしてDMや問い合わせの件数。この3つは関心の深さを映すので、少数でも仕事になる設計と噛み合います。フォロワーが300人でも、その中に地域の住民と紹介元の専門家がいれば十分に働くはず。逆に5,000人いても、全国に散った同業ばかりなら依頼にはつながりません。
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3. ステップ2:プロフィールを「相談の入口」に整える
投稿を増やす前に、必ず手を入れてほしい場所があります。プロフィールです。人は投稿に興味を持った瞬間、まずアカウント名をタップする。そこで何者か分からなければ、そのまま戻っていきます。
3.1 手を入れるのは4か所だけ
プロフィールは、投稿の受け皿です。受け皿がないまま投稿だけ増やしても、せっかく生まれた興味はこぼれ落ちていく。しかも投稿と違って、一度整えれば長く効き続けてくれます。投稿を10本作る前に、ここへ半日かけてください。項目名や文字数の上限は変わることがあるので、最新の仕様は公式のヘルプで確かめましょう。
- 名前の欄:資格名だけで終わらせず、扱う場面と地域を添える。相続の相談先は、通える範囲で探されることが多いからです
- 自己紹介文:2.2で決めた一文を先頭に。所属や経歴はその後ろ。逆にすると、読まれる前に離れられます
- リンク:飛び先は1つに絞る。あれこれ並べるほど、どれも押されなくなる
- プロフィール写真:顔が分かるものにする。家族の事情を打ち明ける相手を選ぶ場面で、顔の見えなさは不利に働きます
気をつけたいのは、自己紹介文を業務の羅列にしないこと。読む側が知りたいのは、あなたが扱える範囲ではなく「自分の困りごとを持ち込んでいいのか」です。
3.2 ハイライトに「手続きの順番と費用の考え方」を置く
ストーリーズをまとめて残せる機能があれば、そこに1つ作っておきましょう。中身は4点。相続登記の全体の流れ、必要になる書類、費用が何で変わるのか、そして最初の相談で持ってきてほしいもの。
相続の相談をためらう理由は、たいてい2つです。何をすればいいか分からないことと、いくらかかるか分からないこと。この2つを先に開いておくだけで、問い合わせの心理的な壁は大きく下がります。金額を出しにくくても「何で変わるか」なら書けるはず。不動産の個数、相続人の人数、遺産分割の話し合いが済んでいるかどうか、戸籍の収集をどこまで引き受けるか。先に示しておくと、最初の連絡で前提がそろい、やり取りが1往復減ります。
3.3 「どこから先は他の士業か」を書くと、信用になる
相続の相談には、司法書士が扱える範囲を越えるものが混ざります。相続人の間で争いになっている案件は弁護士、相続税の計算は税理士、土地の評価に争いがあるなら不動産鑑定士。この線引きを、あらかじめ書いておいてください。
都合の悪い話に見えるかもしれません。ただ、読む側の受け取り方は逆です。できないことを先に言う相手は、できると言ったことも信用できる。しかも、線引きを示せる人は「まず誰に相談すればいいか分からない」層の窓口になれます。相続の入口を押さえるとは、そういうことでしょう。
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4. ステップ3:不安を行動に変える投稿を作る
土台ができたら、いよいよ発信です。相続登記の分野には、他にはない特徴があります。読む人の多くが、すでに「やらないといけない」と知っていること。足りていないのは情報ではなく、動き出すきっかけのほうです。
4.1 3つの形式は、役割がまったく違う
Instagramには複数の投稿形式があり、届く相手も残り方も違います。全部を同じ気持ちで埋めようとすると、時間がいくらあっても足りません。表示のされ方は変わりうるので、目安として見てください。
| 形式 | 主な役割 | 司法書士の使いどころ |
|---|---|---|
| フィード投稿 | 残る・見返される | 手続きの順番と書類の「棚」。必要になった人が読む |
| ストーリーズ | 近況が届く・反応が返る | 人柄。相談していい相手かどうかを判断してもらう場 |
| リール | まだ知らない人へ広がりやすい | 義務化を知らない層への入口。月に数本で十分 |
力の配分は、フィードを軸に置くのが現実的でしょう。相続の情報は、その場で消費されるより、必要になったときに見返されるものだからです。
4.2 保存されるのは「順番」と「つまずきどころ」
制度の説明だけなら、公的機関の案内が正確です。そこと同じことを書いても意味がありません。司法書士にしか書けないのは、実際に手を動かしたときに何が起きるかのほう。
- 何から始めるか。戸籍の取り寄せ、相続人の確定、遺産分割の話し合い、申請。この順番
- 戸籍を集める段階で、たいていの人がつまずく場所
- 相続人が多い場合、遠方にいる場合、連絡が取れない人がいる場合の進み方
- 放置し続けると、次の世代でどれだけ手間が増えるのか
- 期限に間に合いそうにないとき、まず何ができるのか
書く順番は「場面から入って、次の一歩で終わる」。冒頭に「実家の名義が祖父のままだと気づいたとき」と場面を置き、そこで起きることを書き、最後に明日できることを1つ添えます。具体的にすべきなのは場面であって、実際の依頼者ではありません。読んだ人が「これなら自分にもできそうだ」と思えたところで、相談は生まれます。
4.3 広告と守秘の線を、先に決めておく
士業の発信には、所属する会の指針があります。誇大な表現、他の事務所との比較、報酬に関する表示。このあたりは扱いに注意が要ります。内容は改定されることがあるので、投稿の型を決める前に、所属会の最新の指針を確かめておいてください。
守秘の線も同じです。相続の案件は、地域や家族構成を伏せても、関係者が読めば分かってしまうことがあります。安全なのは、複数の案件に共通する構造だけを取り出して書く形。1件の話ではなく、何度も出会う型として書くと覚えておきましょう。この慎重さは窮屈に見えて、実は専門家としての信頼を高めます。
4.4 紹介元の専門家にも、同じ場所で届く
相続の投稿は、個人だけに読まれるわけではありません。税理士や不動産会社の担当者も見ています。この相手に向けて効くのは、迷ったときの分岐です。「この状態なら司法書士に回してよい」「この段階では弁護士が先」といった判断の材料を置いておくと、次に同じ場面へ出会ったときに思い出してもらえます。
ストーリーズは、この相手との距離を縮めるのに向いています。読んでいる実務書、研修で受けた質問、法改正への所感。断片が積み重なると、読み手の中に「この人はこう考えるのか」という像ができていく。返ってきた質問は、そのまま次のフィード投稿の題材になります。AIをどこまで使うかは司法書士のAI活用術が参考になるはずです。
5. ステップ4:相談までの導線をつくり、続く形にする
投稿が回り始めたら、最後は導線と継続です。ここを設計しないと、反応はあるのに仕事につながらないアカウントになります。
5.1 追いかけるDMではなく、相談していい合図を置く
フォローしてくれた相手へ、いきなり営業のメッセージを送る。これをやると、積み上げた信頼が一度で消えます。読み手からすれば、宣伝目的で近づいてきた相手と区別がつかないからです。代わりに置くのは「合図」。投稿の末尾に「同じ状況でお困りの方は、不動産のある場所とご相続からの年数だけDMで教えてください」と一行入れておく。こちらから追いかけず、相手が動きやすい道を用意しておきます。
届いたら、すぐ見積もりへ進まないこと。まず状況を3往復ほど聞き、そのうえで「一度お電話で整理しませんか」とつなぎます。相続の相談は、家族の事情が絡むぶん、文字だけでは進みません。声が聞ける場に運ぶところまでを、導線として設計しておいてください。
5.2 リンク先は1つに絞り、行き先を深くする
プロフィールから飛べる先は、1つに絞ってください。事務所サイト、ブログ、問い合わせフォーム。全部並べたくなりますが、選択肢が増えるほど押されなくなります。絞ったうえで、飛んだ先を深くする。伝えられる情報の量には限りがあるので、判断材料は行き先で渡しましょう。義務化を追い風にした集客の考え方は司法書士の独立比率80%と相続登記特需3年戦略で詳しく扱っています。
5.3 登記だけで終わらせず、家族の窓口に育てる
受注のあとの設計も、最初から描いておきましょう。1件の登記で関係が切れれば、翌月はまたゼロから探し直すことになります。
相続の相談には、その先が必ずあります。残された配偶者の遺言、次の世代への備え、認知症に備えた家族信託、空き家になった実家の扱い。目の前の登記を終えたあとに「次に考えておくとよいこと」を渡しておくと、関係は続きます。登記の代理人ではなく、家族の相談窓口。この位置に立てた人だけが、単価と継続の両方を手にします。独立後の集客の組み立て方は司法書士の独立集客戦略7選が参考になるでしょう。
5.4 週2本で回す。独学で行くか、学ぶ場を使うか
続ける仕組みは、量を落とすところから始めましょう。毎日1本ではなく、週2本。フィード週1本とリール月2本、ストーリーズは思いついたとき。この程度でも、半年で24本の棚ができあがります。止まった毎日投稿より、続いた週2本のほうがずっと強い。題材切れを防ぐコツは、投稿のために題材を探さないことです。相談で受けた質問、他の士業との打ち合わせで出た疑問。仕事の中で毎週生まれているものを、そのまま素材にします。
それでも続かないなら、ひとりでやらない選択肢があります。インスタ集客のセミナーや講座、コンサルティングを探しているなら、選ぶときの見方は3つ。ひとつ、アプリの操作ではなくポジショニングから扱っているか。操作は調べれば分かりますが、誰に何を届けるかの設計は自分では決めきれません。ふたつ、無形で高単価のサービスを扱った経験があるか。店舗や物販の成功法則は、士業の受注にそのまま当てはまらないからです。みっつ、SNS単体ではなく集客全体の中に位置づけているか。Instagramだけで完結させようとすると、必ずどこかで無理が出ます。この3つで見比べれば、あなたに合う場所は絞れるはずです。
6. まとめ:司法書士のInstagram集客は「相続」に絞る
司法書士のInstagram集客を、4つのステップでお伝えしました。
- ステップ1:決済と商業登記を外し、相続の中のどの状況の窓口かまで決める
- ステップ2:プロフィールを相談の入口に整える(手を入れるのは4か所だけ)
- ステップ3:制度の説明ではなく、順番とつまずきどころを書く
- ステップ4:追いかけずに合図を置き、週2本で続ける
司法書士の業務すべてがInstagramに向いているわけではありません。向いていない部分は、はっきり捨ててください。そのうえで相続に絞れば、この場所は十分に働きます。義務化を知りながら動けていない人は、いまも探しているからです。フォロワーの数は、その結果としてついてくるおまけでしょう。独立後の顧客獲得をまとめて見たい方は司法書士が独立開業で成果を出す方法もどうぞ。
明日から手をつけるなら、この3つから。
- 直近の相続相談を3件思い出し、相談者が最初に口にした言葉をそのまま書き出す
- その言葉で自己紹介文の一行目を書き換え、プロフィールの4か所を整える
- 相談でよく聞かれる質問を1つ選び、4.2の型でフィード投稿を1本書く
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