
相続のことは、誰に聞けばいいのか分からない。多くの人がそう思ったまま、何年も手を付けずにいます。名義が親のままの実家。会ったことのない相続人。話を切り出せない兄弟。
そういう人は、いきなり事務所の扉を叩きません。けれど「相続の話を聞くだけ」の場になら、そっと足を運んでくれる。ここに、司法書士がセミナーを使う意味があります。
ただ、相続セミナーはすでに世の中に山ほどあります。税理士も、保険会社も、不動産会社も、金融機関も開いている。同じ看板で単独開催をすれば、席が埋まらないまま当日を迎えることになりかねません。
この記事では、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得支援を専門としてきた志師塾が、司法書士のセミナー集客を成果につなげる5つの設計を解説します。誰に向けるかの分け方、共催での集め方、中身の組み立て、終わったあとの導線まで、取り組む順番に並べました。
1. 司法書士のセミナーが効く場面と、効かない使い方
手法には向き不向きがあります。まず、どこに効いてどこに効かないのかをはっきりさせておきましょう。
1.1 相談しにくい悩みほど、セミナーの出番になる
相続の悩みは、家族のお金と感情が絡みます。個別相談に申し込むには、「うちは揉めています」と認めるようなためらいが伴う。この心理的なハードルは、想像以上に高いものです。
セミナーなら、悩みを明かさずに参加できます。ほかの参加者と同じ席に座り、話を聞くだけ。それでいて、あなたの説明の分かりやすさ、人柄、この人になら話せそうかどうかを、参加者の側は静かに測っています。名乗らずに近づける場を用意できるのが、セミナーの本当の価値です。
1.2 効かない使い方は「単独開催で人を集めようとすること」
一方、うまくいかない使い方もはっきりしています。無名の事務所が、自前の告知だけで相続セミナーを開くやり方です。
相続をテーマにした無料セミナーは、すでに供給過剰といっていい状態。しかも参加者の多くは高齢で、Webの告知だけでは情報が届きません。チラシを撒いても、他の主催者と埋もれます。セミナーは「人を集める道具」ではなく「集まった人に選ばれるための道具」だと考えてください。集客の役割は、別の設計で担わせます。
1.3 目的は「相談してよい相手」だと分かってもらうこと
では、何を目的に置くのか。参加人数でも、その場の申込数でもありません。目的は、参加者の頭のなかに「この件なら、あの先生」という位置を取ること。
相続の相談は、聞いた翌日に動くとは限りません。半年後、親が入院したときに思い出される。そのときに名前が浮かぶかどうかが勝負です。第一想起をつくる場だと割り切ってください。ここから先の設計が、まるごと変わってきます。
2. 設計1・2:誰に向けるかを分け、集客は共催でつくる
ここから具体的な設計に入ります。最初の2つは、開催を決める前に固めておく前提にあたる部分です。
2.1 設計1:依頼者向けと、紹介元向けを分ける
司法書士のセミナーには、性格の違う2種類があります。ひとつは、相続や遺言をテーマにした一般の方向け。もうひとつが、不動産会社や金融機関の担当者に向けた実務の勉強会です。
この2つを、同じ企画として考えないでください。話す内容も、集め方も、その先の狙いも別物になります。
- 依頼者向け(一般の方):目的は、直接の依頼と第一想起。テーマは相続登記、遺言、家族信託、認知症への備え
- 紹介元向け(事業者):目的は、案件を回してもらう関係づくり。テーマは決済の段取り、相続がらみの取引で起きるトラブル、必要書類の実務
2.2 紹介元向けの勉強会が、司法書士の隠れた本命
見落とされがちなのが、後者です。司法書士の案件の多くは事業者経由で動きます。その担当者たちは、日々の取引で判断に迷う場面を抱えています。名義に問題のある物件、相続人が海外にいる案件、成年後見が絡む売買。
そこへ「この場合はこう進みます」と実務の順番を渡せる司法書士は、担当者にとって手放したくない相手になります。売り込みは要りません。相手の仕事が楽になる話をするだけで、次の案件のときに名前が浮かびます。営業に行くより、勉強会に呼ばれる立場になるほうが早い。ここが司法書士ならではの使い方です。
紹介元との向き合い方は、司法書士の営業3つの型でもくわしく触れています。
2.3 設計2:集客は共催と地域の場でつくる
次に集客です。自前の告知だけで人を集めるのは、先ほど書いたとおり分の悪い戦い。組む相手を先に決めましょう。
- 他士業と組む:税理士(相続税)、社会保険労務士(年金)、行政書士(遺産分割の書類)。テーマが自然に補い合います
- 事業者と組む:信用金庫や地域の金融機関、不動産会社、葬儀社。相手にも顧客サービスの材料になります
- 地域の場に乗る:自治体の無料相談会、公民館の講座、地域包括支援センターの催し。告知の力を借りられます
共催のよいところは、集客の負担が分散するだけではありません。相手の顧客リストに、あなたの名前が正式に載ります。一度きりの登壇でも、その後の紹介につながる道が開く。
セミナーを依頼につなげる導線の作り方を知りたい方に向けて、志師塾では司法書士をはじめ先生業に特化したWeb集客セミナーを開催しています。
3. 設計3:中身は「うちの場合はどうなるか」に答える
集める設計ができたら、話す中身です。ここで多くの司法書士がつまずきます。
3.1 手続きの流れを説明しても、人は動かない
登記の申請手順を丁寧に解説する。図を使って戸籍の集め方を説明する。まじめな司法書士ほど、この形になりがちです。
参加者は熱心にうなずきます。それでも、終わったあとに相談へ来る人はほとんどいません。理由は単純で、制度の説明を聞いても「自分の家はどうなのか」が分からないままだからです。制度と自分の状況をつなぐ橋が架かっていない。
3.2 3つの型で組み立てる
そこで、話の順番をこう組み替えてみてください。
- 放置するとどうなるか:2024年4月に相続登記の申請が義務化され、過去の相続にも期限が置かれました。名義が祖父のままだと、相続人が何人に増えるか。売れない、貸せない、担保に入れられない
- 進め方の全体像:何から始めて、どこで役所に行き、どれくらいの期間がかかるのか。地図を渡す
- 自分でできる線と、頼んだほうがよい線:単純な相続なら自力でも進みます。相続人が多い、行方不明者がいる、遺産分割が固まらない。この線を正直に引く
3つ目を隠さないことが、いちばん効きます。「ここまでは、ご自分でできます」と言える人は、信用されるのです。
3.3 その場で個別の判断まで答えきらない
質疑応答で、具体的な家の事情を持ち出す参加者が必ず出てきます。ここで全部を解いてしまうと、相談の場が要らなくなります。
とはいえ、突き放すのも違う。おすすめの返し方は、論点だけをその場で整理して見せることです。「お話を伺うと、確かめる点は3つあります。戸籍の範囲、遺言の有無、そして固定資産の名義。ここは資料を見ないと判断できないので、あとで少しお時間をいただけますか」。整理して見せた瞬間に、価値は伝わります。答えを渡すより、頭が整理される体験のほうが人を動かします。
あわせて、日本司法書士会連合会の業務広告に関する規程にも目を通しておきましょう。誇大な表現、他の司法書士との比較、品位を損なう表現は避ける。不安をあおって契約を急がせる進め方も、この分野では取るべきではありません。
なお、セミナーの前段にある「誰に何を届けるか」の設計から通してつかみたい方は、「先生業の顧客獲得を成功させる7つの能力」をまとめた無料資料をご活用ください。
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4. 設計4:終わったあとの30分で依頼につなげる
セミナーの成果が決まるのは、話し終えたあとです。ここを設計していない開催は、どれほど内容がよくても取りこぼします。
4.1 同じ日に、その場で相談枠を用意する
参加者の気持ちがいちばん動いているのは、聞き終えた直後です。後日あらためて連絡をもらう形にすると、その熱は日常のなかで冷めていきます。
そこで、終了後に30分の個別相談枠を置いてください。会場の隅にテーブルを2つ置くだけでも成立します。「今日お話しした内容で、ご自分の家のことが気になった方は、このあと順番にお話を伺います」。この一言があるかないかで、その後の展開は変わります。
4.2 アンケートは「困りごとの言葉」を集める道具
アンケートを満足度の確認に使うのは、もったいない使い方です。ここで集めたいのは、参加者が自分の状況をどんな言葉で語るかという生のサンプル。
だから設問はこうします。「いま気になっているのは、どんなことですか(自由記述)」「そのことに、いつごろ手を付けたいですか」。書かれた言葉は、次のセミナーの告知文にも、ホームページの見出しにもそのまま使えます。書き方の応用は司法書士のブログ集客でも解説しました。
4.3 その日に動かなかった人を、追いかけない形で残す
参加者の大半は、その日には動きません。相続は「そのとき」が来るまで待つ性質の相談だからです。だからこそ、忘れられない形で残す工夫が要ります。
当日資料に、あなたの名前と連絡先を大きく入れる。冷蔵庫に貼れる一枚にする。承諾を得たうえで、季節の便りを年に数回送る。追いかける営業ではなく、思い出される置き土産を残す発想でいきましょう。
5. 設計5:一度で終わらせず、続く形にする
最後の設計は、続け方です。一度きりの開催で判断すると、たいてい「効果がなかった」という結論になります。
5.1 同じ内容を回す。毎回作らない
負担が重くて続かない理由の多くは、毎回新しい資料を作ってしまうことにあります。中身は同じでかまいません。場所と共催相手を変えて、同じ話を回してください。
回すほど話は磨かれ、準備の時間は減ります。3回目あたりから、参加者の反応で「どこで前のめりになるか」が見えてきます。そこが、あなたの強みが伝わる箇所です。
5.2 オンラインとリアルを使い分ける
依頼者向けの相続セミナーは、リアルの会場が向きます。参加者の年齢層と、その場の空気が信頼に効くからです。反対に、紹介元向けの勉強会はオンラインでも成立します。担当者は移動時間を取られたくないため、30分の枠なら参加してもらいやすい。
相手によって最適な形は変わります。どちらか一方に決めず、目的で選び分けてください。
5.3 準備の手間はAIに寄せる
告知文の下書き、資料の構成案、アンケートの集計。こうした周辺作業はAIで大きく短くできます。浮いた時間を、話す練習と共催先への挨拶に回しましょう。司法書士ならではの取り入れ方は司法書士のAI活用術で紹介しています。
渡せないのは、当日の場の読み方です。参加者の表情が曇った瞬間に言い直す。質問の裏にある本当の不安を拾う。そこは人にしかできません。
6. まとめ:司法書士のセミナーは「思い出される場」から
司法書士のセミナー集客で押さえる設計を、5つに整理しました。
- 設計1:依頼者向けと紹介元向けを分ける。後者は司法書士の隠れた本命
- 設計2:集客は共催と地域の場でつくる。単独開催で人を集めようとしない
- 設計3:中身は「うちの場合はどうなるか」に答える。自分でできる線も正直に引く
- 設計4:終了後30分の相談枠を置き、アンケートで困りごとの言葉を集める
- 設計5:同じ内容を回して続ける。目的でオンラインとリアルを選び分ける
相続の相談は、聞いたその日には動きません。だからセミナーの目的は、その場の申込ではなく、必要になった瞬間に名前が浮かぶ状態をつくること。相続登記の義務化がどんな商機になっているかは、相続登記義務化で稼ぐ士業7業種の戦略もあわせてご覧ください。
今日から手をつけるなら、この3つから始めてみてください。
- 直近1年で相談を回してくれた事業者を3つ書き出し、勉強会を打診してみる
- いま話せる相続の話を、放置の代償・進め方・自分でできる線の3部構成に組み替える
- 終了後の30分相談枠と、冷蔵庫に貼れる一枚を用意する
集めるところから依頼までを一本の線にしたい。そう考えているなら、志師塾の無料セミナーで最初の一歩を確かめてみてください。