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税理士の集客は売り込み不要|顧問先が増える4つの経路

税理士の集客|3つのコツと4つの経路(売り込まずに顧問先を増やす)のアイキャッチ画像

顧問先を増やしたい。でも、頭を下げて自分を売り込む姿は、どうしても税理士という仕事と結びつかない。そう感じたまま動けずにいる方は、決して少なくありません。

結論から書きます。税理士の集客で必要なのは、売り込む力ではありません。必要なのは、会う前に「この先生にお願いしたい」と思ってもらう設計です。ここが決まっていれば、面談は「説得の場」ではなく「確認の場」に変わります。

この記事では、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・営業支援を専門としてきた志師塾が、税理士の集客を楽にする3つのコツと、顧問先が増える4つの経路を、取り組む順番のとおりに並べて解説します。材料にするのは、国税庁・中小企業庁の公表データと、志師塾で学んだ税理士3人の実例です。

読み終えるころには、飛び込みやテレアポに頼らずに顧問先を増やすために、明日から何に手を付ければよいかが見えているはずです。まずは、税理士の集客がなぜ空回りしやすいのか。その構造から確認しましょう。

税理士を替えるかどうか、経営者は毎日考えているわけではありません。動くのは、会社に節目が来た一瞬だけ。その一瞬に名前が挙がる場所へ、どう先回りしておくか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、先生業がその位置を取るまでの進め方を解説しています。

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1. 税理士の集客・営業がうまくいかない3つの理由

うまくいかない原因を、人柄や話し下手のせいにしていませんか。多くの場合、原因は個人の資質ではなく、税理士という仕事が持つ構造にあります。ここを知らないまま動くと、努力がそのまま空回りします。

1.1 「実直に仕事をしていれば顧客は増える」が通じなくなった

「良い仕事を積み重ねれば、そのうち顧客は増えていく」。多くの税理士が、この前提で開業します。営業そのものは税理士の仕事の本質ではない、という感覚があるからです。その感覚自体は間違っていません。

ただ、黙っていて仕事が自動的にやってくることはありません。相手があなたの信頼性を感じ取れなければ、依頼までは届かないのです。逆に言えば、信頼性さえ伝われば発注される可能性は大きく高まります。だからこそ、自分を適切に伝える手立てが必要です。

ここでいう「伝える」は、実績を並べることではありません。相手が抱えている困りごとと、あなたが引き受けられる領域が重なっていると分かる状態。それだけです。逆に言うと、どれだけ丁寧な仕事をしていても、その重なりが見えなければ声はかかりません。

1.2 飛び込みや売り込みは、税理士の仕事と相性が悪い

営業トークに自信があり、飛び込みもいとわないという方もいるでしょう。それでも、いずれ非効率さに気づくはずです。税理士は目に見えるモノを売る仕事ではありません。「対応力には自信がありますのでお任せください」と口で言っても、相手にはほとんど届かないのです。

加えて、税理士は経営者から「先生」と呼ばれます。その先生が平身低頭で売り込みに来たら、相手はどう感じるでしょう。頼りにしたい気持ちのほうが、先に冷めます。売り込むほど信頼が減る。この逆転が、税理士の集客を難しくしています。

「では営業担当を雇えばいい」という発想も出てきます。ただ、売る人と先生をする人を分けると、今度は「会ってみたら話が違った」が起きやすい。税務の相談は、最初の会話そのものが品質の見本です。税理士の営業は、税理士自身が「先生の立場のまま」できる形で組み立てる必要があります

1.3 違いが伝わらなければ、顧問料は安さで比べられる

記帳代行や申告業務は、どの税理士に頼んでも成果物が似て見えます。中身の差が分からなければ、比べる物差しは料金だけです。クラウド会計の普及で「自社でもある程度できる」範囲が広がったぶん、この傾向はさらに強まりました。

反面、資金繰りの相談、事業承継、節税の設計といった相談業務は、答えが会社ごとに違います。ここは専門性で選ばれる領域であり、価格競争から距離を置ける場所です。どちらの土俵で戦うかを決めることが、税理士の集客の最初の分かれ道になります。

税理士が戦う土俵の選び方(手続き業務と相談業務)

誤解のないように書いておくと、記帳や申告をやめる必要はありません。実際、月次の数字を預かっているからこそ相談が生まれます。分けたいのは業務ではなく、お客様に「何の先生」として覚えてもらうかのほう。ここが定まっていないと、入口も出口も価格の話になります。

税理士の集客・営業がうまくいかない3つの理由

2. 税理士の集客は「新規開拓」ではなく「乗り換え」の市場

乗り換え市場とは、すでに他の税理士がついている会社を、節目のタイミングで引き受ける市場のことです。税理士の集客が他の士業と決定的に違うのは、この埋まり方にあります。ここを取り違えたまま打ち手を選ぶと、何をやっても手応えが出ない。数字で確認しましょう。

2.1 法人の約9割には、すでに税理士がついている

国税庁は毎年、申告書のうち税理士が関与したものの割合を公表しています。財務省が公表した令和6事務年度 国税庁実績評価書によると、令和6年度の法人税の税理士関与割合は89.8%。令和2年度の89.4%からほぼ横ばいで、9割手前の水準が5年続いています。

同じ年度の法人税等の申告(課税)事績の概要では、法人税の申告件数は322万件。単純にかけ合わせると、約290万社にはすでに顧問の税理士がいる計算になります。一方、日本税理士会連合会の税理士登録者数は令和8年7月末日現在で82,310名。税理士は増え続けています。

税目別の税理士関与割合(法人税・相続税・所得税)

つまり、あなたが出会う法人経営者の多くは「税理士を探している人」ではありません。「いまの先生に、言えない不満を抱えている人」です。この違いは、打ち手をまるごと変えます。まだ誰にも頼んでいない人を探すゲームなら、認知を広げれば十分です。乗り換えのゲームでは、そうはいきません。相手は不満を口に出しませんし、代えるのは面倒だと感じている。動くのは、その面倒さを上回る理由ができた瞬間だけです。

2.2 空いているのは法人ではなく、個人と「相談の領域」

同じ実績評価書には、税目ごとの関与割合が並んでいます。ここに、あまり語られない空白が見えます。

税目 税理士関与割合(令和6年度) 読み取れること
法人税 89.8% 席はほぼ埋まっている。新規は乗り換えが中心
相続税 86.5% 依頼は単発。誰に頼むかは毎回ゼロから決まる
所得税 20.4% 8割は税理士に頼んでいない。空白が大きい

所得税の20.4%は、令和4年度から3年続けて同じ数字です(令和2年度は21.1%)。個人事業主やフリーランスの8割は、税理士に依頼せず自分で申告しているということです。ここを「単価が低いから対象外」と切り捨てるか、「将来法人化する人と最初に出会える場所」と見るかで、数年後の顧問先の数は変わってきます。

相続税の86.5%も、法人税とは意味が違います。相続は毎年発生する契約ではなく、一度きりの依頼。既存の顧問がいても、相続のときだけ別の税理士に頼む例はいくらでもあります。つまり乗り換えを待たずに、あなたが最初の依頼先になれる領域です。法人の顧問だけを見て「もう空きがない」と決めるのは早い。空白は、税目とタイミングの側にあります。

2.3 不満の中身は、ほとんどが「相談できるかどうか」

では、乗り換えのスイッチを入れるのは何でしょうか。よく聞かれる不満は、驚くほど決まっています。「聞いても数字の説明しか返ってこない」「相談したいことがあっても、忙しそうで言い出せない」「返事が遅い」「節税の提案が向こうから出てこない」。どれも記帳や申告の品質の話ではありません。不満の中身は、ほとんどが「相談できるかどうか」に集まります

これは感覚の話ではなく、公的な調査とも重なる事実です。中小企業庁の2020年版 小規模企業白書「日常の相談相手の活用」によると、企業規模を問わず、日常の経営相談の相手として最も回答が多いのは「税理士・公認会計士」でした。同じ調査では、日常の相談相手がいる経営者のほうが直近5年間の経常利益を「増加」と答える割合が高いことも示されています。

小規模企業白書が示す、経営者から見た税理士の位置づけ

見逃せない数字が、もうひとつ。同白書では、日常の相談相手がいない経営者にその理由を尋ねており、「適切な相談相手とのつながりがないから」が約7割を占めました。相談したくない経営者がいるのではありません。つながりの作り方が分からないだけです。

だとすれば、あなたが発信で語るべきことも決まってくるでしょう。「正確な申告をします」ではなく、「こういうことを一緒に考えます」。乗り換えを迷っている経営者は、自分がうまく言えずにいた不満を代わりに言語化してくれた先生を見つけたとき、はじめて動き出します。

2.4 すべての対面が、すでに営業の場になっている

では、税理士はどう営業すればよいのでしょうか。出発点は、考え方の切り替えです。日常で接するすべての人が、あなたの潜在顧客であり、その紹介者でもあります。すべての対面が、すでに営業の場になっているのです。

そう捉えると、営業は特別な時間ではなくなります。名刺交換の一言、勉強会での質問、日々の返信の速さ。ふるまいの一つひとつが「この先生はどんな人か」という判断材料になっている。売り込む時間をつくるのではなく、普段のふるまいが自然に営業になる状態をつくる。ここから、税理士の営業は組み立て直せます。

ここから先は、その状態をつくる手順です。強みの決め方(コツ1)、伝わる言葉のつくり方(コツ2)、会ったあとの運び方(コツ3)。そのうえで、顧問先が増える4つの経路へ進みます。

3. 税理士の集客のコツ1:強みとポジショニングをはっきり伝える

ポジショニングとは、無競争の状態で顧客に選ばれる独自の場所を見つけることです。日本全国に税理士は8万人以上いますが、あなたは一人しかいません。その一人であることを、相手に伝わる言葉にしていきます。

3.1 「税理士の○○です」では記憶に残らない

あなたは、自分がどのような税理士かを一言で言い表せますか。「税理士の○○です」という名乗りは正確ですが、相手の記憶には残りません。大勢いる税理士の一人として処理され、名刺はファイルの中で眠ります。

企業税制が得意なのか、節税の設計が強いのか。それとも数字を通じた経営アドバイスまで踏み込めるのか。税理士がカバーする職域の中で、あなたの売りとなる分野を相手に知ってもらう。それができたとき、はじめてあなたは唯一無二の存在になります。そのためには自己分析が欠かせません。ここが、集客を成功させる戦略の土台です。

3.2 「誰の・どんな税務の悩みを・どう解決するか」で言い切る

ポジショニングの決め方は、複雑ではありません。「誰の」「どんな税務・経営の悩みを」「どう解決する」税理士なのか。この3つを言い切れた時点で、あなたの輪郭は浮かび上がっています。「建設業の資金繰りに強い税理士」「創業期の会社の数字づくりに伴走する税理士」といった一言(あくまで例です)なら、相談したい相手の顔がすぐ浮かびます。

決め方に迷ったら、いまの顧問先を一覧にして、業種と規模と相談内容で並べ替えてみてください。すでに偏りがあるはずです。その偏りが、あなたが自然に選ばれてきた場所です。ゼロから理想を考えるより、実績のある場所を言葉にするほうが早く、しかも説得力があります。

選ばれる税理士になる3ステップ

3.3 絞る軸は、業種だけではない

「専門特化」と聞くと、多くの方が業種を思い浮かべます。飲食業専門、建設業専門、医療専門。もちろん有効ですが、その軸だけで考えると「もう誰かがやっている」という結論になりがちです。志師塾では、絞り込みの軸を次のように広く取ります。

税理士での例 効きどころ
業種 飲食店専門、整骨院専門、美容業専門 同業の口コミが回りやすい
規模 従業員10名を超える前後の会社に絞る 課題が共通し、提案を型にできる
タイミング 法人成りの直前、事業承継の5年前 相手が動く瞬間に名指しで届く
テーマ 資金繰り、相続、国際税務、補助金 他士業からの相談窓口になれる
経歴 元国税、事業会社の経理出身、経営経験あり 同じ資格の中で立ち位置がずれる

税理士が「誰に」を絞る5つの軸

そして志師塾が勧めるのは、この軸を2つ掛け合わせるやり方です。1万人に1人のものを考えるのではなく、100人に1人のものを2つ組み合わせる。それだけで1万人に1人になります。「相続に強い税理士」は全国に大勢いても、「元国税調査官で、相続と不動産だけを扱う税理士」となると、途端に数が減る。掛け算にすると、ライバルはかなりいなくなります。

3.4 「絞ると仕事が減る」が起きない理由

絞ることへの不安は自然なものです。顧問先を選べる立場でないうちは、なおさら不安になります。ここで押さえておきたいのは、志師塾が「絞れ」と言っているのは業務のことではない、ということです。

絞るのは、お客様に覚えてもらう場所だけ。実際に受ける仕事まで狭める必要はありません。「創業期の会社の数字づくり」で覚えられていれば、その入口から入ってきた会社の相続も、補助金も、事業承継も、結局あなたのところに相談が来ます。入口が1つに定まっているほど、その後に広がるという順番です。

逆に「なんでもやります」と伝えると、記憶の中では「何の専門家でもない人」として保管されます。経営者仲間の集まりで税理士の話題が出たとき、あなたの名前は挙がりません。仕事が減るのは、絞ったときではなく、覚えられなかったときです。

もうひとつ。絞った先は、あとから変えて構いません。志師塾の卒業生にも、開業時は2業種を対象にしていたのを、顧客が増えた段階で1業種に寄せ直した税理士がいます(第8章で紹介します)。最初の宣言を一生背負う必要はなく、実績が溜まったところへ寄せ直すほうが自然です。

3.5 目指すのは「税務のことなら、あの先生」という第一想起

ポジショニングのゴールは、見込み客の頭の中で「うちの数字のことなら、あの先生」と最初に思い出される状態(第一想起)をつくることです。紹介も口コミも、この第一想起がなければ起きません。経営者仲間の集まりで「税理士を替えようと思っていて」という話が出た瞬間に、あなたの名前が挙がるかどうか。勝負どころは、ここにあります。

志師塾が「ポジショニング先行」と呼んでいるのは、事務所ページやSNSに手を付ける前に、この設計を固める順番のことです。その道具が動き出すのは、選ばれる理由が決まったあとです。実際にこの順番で顧問先を増やした税理士の取り組みは、税理士の成功事例インタビューで確認できます。

ここまでが、選ばれる理由をつくる工程です。ただ、自分の立ち位置は自分では見えにくいもの。「間違ってはいないが、誰の記憶にも残らない一言」に落ち着いてしまう例を、志師塾はいくつも見てきました。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その一言を第三者の目で削っていく進め方を、先生業の実例で解説しています。

4. 税理士の集客のコツ2:キャラクターが伝わる言葉で表現する

強みが決まったら、次はそれを伝える言葉です。伝えたいことを伝えるには、適切な表現が要ります。ここを飛ばすと、せっかく絞ったポジショニングが相手に届きません。

4.1 まず「どんな税理士になりたいか」を決める

言葉づくりの前に、あなたがどのような税理士になりたいのかというビジョンをはっきりさせてください。個人事業主ではなく法人をお客様にしたいのに、「すべてお任せください」と自己紹介していては、キャラクターは伝わりません。誰に向けた仕事をしたいのか。そこが決まると、使う言葉は自然に絞られていきます。

志師塾がこの段階で探すのは、「やりたいこと」「できること」「儲かること」の3つが重なる場所です。できることと儲かることだけで選ぶと、短期的には回っても長続きしません。やりたくない仕事は、いつかやめてしまうからです。逆に、やりたいだけで儲からない仕事はボランティアになります。3つの重なりを探す作業が、言葉づくりの前段にあります

4.2 肩書きは「専門領域+税理士」で組み立てる

名刺やプロフィールの一行目に、何と書いていますか。肩書きは、あなたの価値を一秒で伝える言葉です。志師塾では、「専門領域+一般名称」で13文字程度を目安に組み立てます。税理士の場合、一般名称は資格名がそのまま使えます。広く知られている名前だからです。

  • 専門領域が1つなら、「創業支援に強い税理士」のように短く言い切る形になります
  • 2つ掛け合わせるなら「建設業の資金繰り専門税理士」。業種とテーマの掛け算です
  • 経歴を軸にするなら「元国税調査官の相続税理士」。立ち位置がひと目で伝わりますね
  • やってはいけないのが「税理士」だけの名乗り。独自の切り口が何も表現できていません

肩書きを決めたら、キャッチコピーで補います。志師塾が使うのは25文字前後の型で、材料は3つ。相手にとってのメリット、数字などの具体性、そして「これは自分に向けた話だ」と感じさせる指定です。「話しやすく相談しやすい税理士事務所」では、読んだ人が何も動きません。地域や業種や場面を入れて、「その一言を見ただけで面白いと思ってもらう」ところまで削ります。

4.3 「なんでもできます」より「製造業に特化した税務管理」

言葉の力は、具体性で決まります。「なんでもできます」と伝えるより、「製造業に特化した税務管理で、貴社の経営課題を数字から浮き彫りにし、解決策までご提示します」と伝えたほうが、あなたのキャラクターは一瞬で伝わります。前者は誰の記憶にも残らず、後者は製造業の経営者の記憶に残る。この差が、半年後の紹介の数を変えます。

相手を主語にするのも大切です。経歴の羅列は、聞き手にとってそれほど興味のある情報ではありません。相手が身を乗り出すのは、「これはうちの話だ」と感じた瞬間だけです。誰のどんな悩みを解決してきたか、依頼すると何が良くなるのか。相手の得になる形へ組み替えてください。

言い換えの練習は、その場でできます。「元国税調査官です」は経歴の説明。「国税で調査する側にいたので、税務署が疑問を持ちにくい申告書を作れます」は、相手の得の説明です。同じ事実でも、後者にしか依頼は生まれません

4.4 自己紹介は「口コミの原稿」として働く

磨いた言葉は、どの接点でも同じキーワードで使い続けます。名刺、ホームページ、SNS、セミナー、雑談。名刺とホームページで名乗りが違う人は、何の専門家か覚えてもらえません。言っていることとやっていることが食い違う人が信頼されないのと同じで、言葉の一貫性はそのまま信頼の土台になります。

同じ言葉で語られ続けるからこそ、あなたの自己紹介は誰かの「口コミの原稿」として働き始めるでしょう。紹介者は、あなたが言っていた一言をそのまま使って別の経営者に伝えます。覚えやすい一言を渡しておくことが、紹介の量を決めるのです。

志師塾の講座では、毎回の冒頭に1分間の自己紹介を練習します。組み立ては4つ。興味を引く問いかけ(10秒)、何をしている人かの説明(10秒)、選ばれる理由(35秒)、そして相手に取ってほしい行動(5秒)。最後の行動要請を落とす人がとても多いのですが、ここが抜けると、良い話を聞いただけで終わります。「こういう会社の社長がいたら声をかけてください」まで言い切ってください。

4.5 「高くても選ばれる理由」を先に言葉にする

顧問料は、あなたが引き受ける責任の範囲につけた値札です。「安いから選ばれる」のではなく「この先生だからお願いしたい」と思われる理由を、営業を始める前に言葉として用意しておきましょう。理由が先にあれば、価格は自分で決められるものです。値引き交渉が始まってから巻き返そうとしても、その場で打てる手はほとんど残っていません。

言葉にするときのコツは、作業ではなく「防げること」を語ることです。「毎月の記帳と試算表の作成をします」は作業の説明。「決算が終わってから慌てる状態をなくします」「銀行に出す数字を、先に一緒に整えます」は、防げることの説明です。顧問料は作業量ではなく、避けられる損失と手に入る安心に対して払われます。この言い換えができると、値引きの話は驚くほど出なくなります。

値付けの目安として志師塾が使っているのが、提示する価格の3倍のメリットを説明できるかという基準です。月5万円の顧問料なら、月15万円ぶんの価値を言葉にできるか。示せるなら、その価格は通ります。示せないなら、高いのは価格ではなく、説明の材料のほうが足りていないということです。

5. 税理士の集客のコツ3:オンライン営業と初回面談の運び方

オンラインでの商談は、税理士の面談でも当たり前の選択肢になりました。移動がゼロになるぶん面談の本数を増やせますし、商圏も県外まで広がります。Zoomなどのオンライン会議ツールで見込み客とどう向き合うか。ここを押さえられるかどうかで、成約率が変わります。

この内容を動画で確認したい方は次のYouTubeを、文章で読みたい方はこのまま読み進めてください(動画時間:8分40秒)。

5.1 オンライン営業のメリットと注意点

オンライン営業の利点は、大きく2つあります。ひとつは、会うハードルが下がること。移動が要らないぶん、相手も時間をつくりやすく、アポイントが取りやすくなります。もうひとつは、距離感が近くなること。1対1の閉じた場になるので、話しやすい雰囲気をつくりやすいのです。

注意点もあります。対面よりも信頼関係を築きにくいことです。原因は、五感で伝わる情報が減ってしまうため。声の張り、間の取り方、資料の見せ方といった伝わり方の工夫が、対面のとき以上に効いてきます。

5.2 オンライン営業を成功させる3つのポイント

減った情報を補うために、次の3つを意識してください。

ポイント やること 理由
はっきり話す メリハリのある声で、電話に近いイメージで話す 画面が近いと囁くように話しがちで聞き取りにくい
大きなジェスチャー うなずきや手の動きを少し大げさにする 画面越しでは相手の動きが小さく見える
少し離れて目線を合わせる パソコンから距離を取って座る 近すぎるとカメラと視線がずれ、目が合わない印象になる

3つ目の目線は、見落とされがちなところです。画面の中の相手の表情を見ていると、相手からはカメラより下を見ているように映ります。パソコンから少し距離を取るだけで、表情を見ながらでもカメラを見ている視線に近づき、印象がぐっと良くなります。

5.3 チャット機能で「一貫性の法則」を味方につける

ツールによりますが、オンライン営業ではチャット機能で相手の発言をその場でメモし、共有できます。見込み客が話した大事なキーワードを書き留め、面談の途中で振り返る。すると、人には自分の言葉と行動を一致させたくなる「一貫性の法則」が働き、話が前に進みやすくなります。

売り込む代わりに、相手の言葉を返す。これがオンライン営業の勘所です。チャットは、そのための道具として上手に使ってください。

5.4 初回面談は「提案の場」ではなく「問題を見つける場」

顧問先の候補と初めて会う場で、いきなり料金表とサービス内容を説明していませんか。その進め方だと、相手は比較検討のモードに入ります。いい話をたくさんするほど、「ありがとうございます、まず自分でやってみます」で終わりやすいのです。志師塾が個別相談で使っている運び方は、順番がまるで違います。

税理士の初回面談を「問題を見つける場」にする5つの手順

  1. 入口は、関係性の再確認:セミナーや紹介の場でどう出会ったかに触れ、教える側と教わる側の枠組みを立て直します
  2. その人自身の話を聞く:会社の数字より先に、なぜこの事業を始めたのか。ここを飛ばすと、あとの話が表面をなぞって終わってしまいます
  3. 今日のゴールを合意する:「今日は問題点をはっきりさせるところまでを目標にしますが、それでよろしいですか」と最初に確認
  4. 問題はどこまで掘れるか:なぜそうなるのか、原因は何か。そのうえで「他にはありませんか」と横へも広げる。同じ話が回り始めたら、そこが底です
  5. 本気度を確かめてから、選択肢を出す:「それは本当に解決したい問題ですか」と一度聞く。そのうえで、自分で進める道と伴走してもらう道を並べて示します

税理士の場合、4番目の掘り下げがそのまま提案書の材料になります。「決算前に慌てる」「銀行に出す資料が毎回間に合わない」「息子に引き継ぐ話が10年止まっている」。相手の口から出た言葉を使って書かれた提案は、こちらが用意した定型の提案とは説得力が違います。この場の役割は、解決策を教えることではなく、問題を見えるようにすることです

ここから先は、顧問先と出会う4つの経路です。ただ、どの経路も「選ばれる理由」が決まっていないと空回りします。先生業に共通するその土台のほうを先にまとめて確かめておきたい方は、無料の書籍「先生業の顧客獲得を成功させる7つの能力」(一部ダウンロード)をご活用ください。セミナーに参加する時間がまだ取れない、という方の最初の一歩としてどうぞ。

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6. 税理士の集客を「仕組み」に変える4つの経路

集客の仕組み化とは、紹介・Web・セミナー・いまの顧問先という4つの経路が、互いに次の出会いを生む状態のことです。3つのコツを実践できたら、仕上げはここになります。「毎回がんばるもの」から「勝手に回るもの」へ。4つのどれも、今日から手を付けられます。

6.1 集客のスイッチは「節目」に入る

4つの経路に入る前に、タイミングの話をします。第2章で見たとおり、経営者は不満があっても日常の中では動きません。乗り換えのスイッチが入るのは、会社に節目が来たときです。決算期の前後。融資や補助金の申請。相続や事業承継の話が出たとき。税務調査の連絡が届いた日。はじめて人を雇う直前。そして、法人成りを考え始めた時期です。

この一覧は、そのまま発信テーマの一覧になります。節目に検索される言葉で、あなたの記事や事務所ページが見つかる状態をつくる。これが税理士の集客の中心です。「税理士 選び方」のような広い言葉を追いかけるより、「決算前に確認しておくこと」「税務調査の連絡が来たら」といった節目の言葉のほうが、相手はずっと近い場所にいます。

やり方はシンプルです。この1年で顧問先や相談者から実際に受けた質問を、思い出せるだけ書き出す。次に、その中から節目に関わるものを選びます。1つの質問につき1本、答えを記事にする。ネタ出しに悩む必要はありません。材料はすでに、全部あなたの手元にあります。

6.2 経路1:紹介は「お願い」ではなく「感情」で動く

紹介は、税理士の集客でいまも主力です。ただ、「良い会社があったら紹介してください」というお願いだけでは安定しません。紹介する側が気にしているのは、あなたの評判より、紹介した相手に「変な人を回された」と思われないかどうかです。だから紹介は、渡す言葉が具体的なときにしか動きません

渡すべきものは3つあります。どんな会社の役に立てるか。どんな場面で声をかけてほしいか。そして、紹介者がそのまま使える一言。「建設業で、資金繰りの相談ができる税理士を探している人がいたら声をかけてください」。ここまで絞れていれば、紹介者は自分の取引先を思い浮かべながら聞けます。「良いお客様がいたら」では、探しようがありません。

そのうえで、志師塾が繰り返し伝えているのが「紹介は感情で生まれる」という原則です。メリットを説明されただけでは、人は自分の知り合いを差し出しません。動くのは、次の5つのどれかが立ち上がったときです。

税理士の紹介が生まれる5つの感情

  • 自慢:「うちの税理士、元国税なんですよ」と言いたくなる材料があるか。尖りや希少性は、紹介者の自慢の種になります
  • 感謝:紹介してもらったあと、結果を報告していますか。報告が返ってこない相手に、人は二度目を回しません
  • 面白さ:思わず人に話したくなる話を持っているか。「税務調査で一番よく見られている場所」のような、そのまま雑談に乗る小ネタ
  • 感動:事前の期待を、少しだけ上回る。開業のお祝いを送る、決算報告の場に手書きのメモを添える。本業の外側で作られます
  • 相手の得:紹介がその人自身の立場も良くする形になっているか。三方良しの設計です

種をまく相手も考えましょう。社労士、司法書士、中小企業診断士、金融機関や保険の担当者。経営者と日常的に接していて、税務の相談を受けても自分では答えられない人たちです。「税金の話が出たら渡せる先」として覚えられていれば、紹介は自然に流れ込みます。志師塾が勧めるのは、薄く100人より濃く10人。年に一度も会わない人からの紹介は、まず起きません。

6.3 経路2:Webで、会う前に信頼を渡す

専門分野の記事を書きため、事務所ページで人柄と考え方を伝える。それだけで、初対面の面談は「検討の場」から「確認の場」に変わります。会う前に価値が届いていれば、その場で説得する必要がなくなるからです。

事務所ページで見落とされがちなのが、料金の扱いです。金額を一切載せないページは、問い合わせの前に閉じられます。経営者は、見当のつかない相手に連絡する時間を持っていません。すべてを開示しなくて構いませんから、目安の範囲と、そこに何が含まれるかだけは書いてください。価格を隠しても比べられなくなるわけではなく、候補から静かに外れるだけです。発信の型は税理士のブログ集客の記事で詳しく解説しています。

順番にも注意したいところです。志師塾はWeb集客を7つの段階で整理していて、名刺やチラシから始まり、紹介や交流会などの身近な集客、そのあとに専用ページ、メール、動画、検索対策、広告と進みます。年商1,000万円までなら、身近な集客と名刺代わりのページだけで届くのが実際のところ。いきなり広告に手を出して受け皿がないまま費用だけ流れる、という失敗はここから起きます。

6.4 経路3:セミナーで「比べられる場」を自分でつくり直す

相見積もりの土俵に乗ると、判断材料は料金表だけになります。セミナーは、その土俵を自分でつくり直す手段です。90分あなたの話を聞いた相手は、考え方と人柄を知ったうえで検討に入ります。その相手にとって、判断材料はもう料金表ではないのです。

テーマは、6.1で書き出した節目の質問から選べば外れません。「決算前にやっておくこと」「はじめての融資、銀行が見ているところ」「親から会社を引き継ぐ前に決めること」。人数は多くなくて構いません。5人の経営者と深く話せる会のほうが、50人に一方的に話す会より顧問契約にずっと近い場所にあります。

意外に思われるかもしれませんが、満足度は100点を狙わないほうが結果につながるのです。全部を教えきると、「よく分かりました。自分でやってみます」で終わってしまうからです。志師塾が勧めているのは80点前後。内容は広く浅くではなく、狭く深く。ひとりでは越えられない部分を意図的に残しておくことが、次の相談につながります。組み立て方は税理士のセミナー集客の記事で解説しています。

6.5 経路4:いまの顧問先を、いちばん確かな集客経路にする

見落とされやすいのが、すでに契約している顧問先です。新規を1件取る労力と、いまの顧問先との関係を一段深める労力を比べれば、後者のほうがずっと軽い。しかも顧問先は、あなたの仕事ぶりを実際に知っている唯一の紹介者でもあります。

やることは2つです。ひとつは、月次の訪問で数字の報告だけして帰らないこと。「最近、困っていることはありませんか」と一度聞くだけで、相続や採用や設備投資の話が出てきます。もうひとつは、6.2で用意した「紹介者が使える一言」を、顧問先にも渡しておくこと。あなたが何の専門家として覚えられているかは、いちばん近い人にほど伝わっていないものです。

ここまでの4つを並べると、税理士の集客は結局ひとつの流れに見えてきます。紹介で出会い、Webで確かめられ、セミナーで人柄を知られ、既存の顧問先がまた紹介を運んでくる。どれか1つを頑張るのではなく、4つが順に回り始める状態をつくる。それが「仕組みに変える」ということです。

7. 税理士が顧問先を「増やす」より先に「続ける」

顧問化とは、単発の依頼を毎月の相談関係へ育てることです。契約は判を押した日が出発点で、何もしなければ、記帳の枚数も法人の数も増えていくのに報酬だけが開業当初のまま残ります。しかも解約が出れば、その穴を埋めるためにまた新規を追うことになる。集客の負担をいちばん確実に減らすのは、いま持っている契約への手入れです。

7.1 スポットで終わらせず、顧問の関係に育てる

単発の申告や相談で関係が終われば、毎月ゼロから集客をやり直すことになります。相続の申告、創業時の届出、補助金の申請。どれも入口としては優秀ですが、そこで終わらせるかどうかで翌年の景色が変わります。

転換の運び方は、難しくありません。納品のときに、頼まれていない気づきを1つだけ添える。「この形だと、来期から消費税の扱いが変わります」「この借入の返済ペースだと、再来年の資金繰りが厳しくなりそうです」。売り込みではなく、見つけたことの報告です。報告を受けた経営者のほうから「毎月見てもらえませんか」と言われる形が、いちばん自然な顧問化になります。

7.2 顧問料は「作業の対価」ではなく「相談できる安心の対価」

顧問の価値は、作業量ではなく「何かあったらすぐ相談できる」「問題が起きる前に手を打ってもらえる」という安心にあります。作業の対価として説明すると、「今月は何も頼んでいないから」と減額の話になりがちです。安心の対価として伝えられたとき、顧問料は守られます

顧問料の説明を「作業」から「防げること」へ変える

そのために効くのが、頼まれていないことを月に1つ渡す習慣です。業界の制度変更の要点。同業他社が最近どこでつまずいているか。来期に効いてくる数字の兆し。どれも大した手間ではありません。ただ、こちらから渡すものが毎月ひとつあるだけで、顧問料の意味は「作業への支払い」から「先回りしてもらえる関係への支払い」へ変わっていきます。

第2章で見たとおり、乗り換えの理由はほとんどが「相談できるかどうか」でした。裏を返せば、相談できる状態を保っている限り、あなたの顧問先は他所を見ません。守りと攻めは、同じ一手です。

7.3 値上げを切り出せないまま、単価が固定される

税理士の報酬が固定されやすいのは、契約が毎月続くからです。開業して間もない時期に「月2万円で」と言われて受けた契約は、記帳の枚数がその後3倍になっても、同じ金額のまま更新され続けます。気づくのは、決算期が重なって手が回らなくなったころ。顧問先の一覧を開くと、手のかかる契約ほど単価が低い。そうなる前に、見直しの条件を先に決めておきたいところです。

いちばん確実なのは、契約書に見直しの条件を先に書いておくことです。「月の仕訳が300件を超えたときは、翌月から次の帯の金額に改定します」「グループ会社が1社増えたときは、別途お見積りします」「決算期が3月に重なる場合は、繁忙期の料金でお願いします」。数えられる条件で書いてあれば、あとの話し合いは確認で済むはずです。

すでに固定してしまった契約を動かすときは、順番を決めておきましょう。増えた仕訳の件数と訪問回数を並べる、改定後の金額を言う、変わらないもの(担当者・訪問の頻度)を言う、決算期から離れた月を選ぶ。この4つです。そして謝らないこと。増えた仕事に見合う額を受け取るのは、値上げというより契約の実態合わせです。言いにくそうに切り出すほど、相手は「まだ下げられるのでは」と受け取ります。

7.4 AIで作業を減らし、対話の時間を増やす

定型の入力や資料の下書きは、AIで大きく時短できます。浮いた時間を経営者との対話に回せば、相談業務の質そのものが上がる。ここは分業の考え方が大事なところです。作業と下書きはAIに、判断と対話は人に。時間を空けて対話に回すことが、そのまま集客の打ち手になります。

使いどころも選べます。月次資料のコメント案、制度変更の要約、面談前の質問リスト。どれも最終判断は人が持ったまま、下ごしらえだけを任せる形です。税理士ならではの取り入れ方は、税理士のAI活用の記事で紹介しています。

8. 税理士の集客に成功した志師塾卒業生3人の実例

ここで紹介する3人は、いずれも志師塾で学んだ税理士です。ここまでの手順が実際にどう形になるのか、公開済みのインタビュー記事から引いて見ていきます。

8.1 宇佐見紘且さん|「美容業しかやらない税理士」と名乗る

2019年7月に独立開業した宇佐見紘且さん。名乗りは「美容業しかやらない税理士」です。創業支援から税務申告、経営分析、資産運用、事業承継まで、美容室経営者に一気通貫で提供しています。

最初から1業種だったわけではありません。開業当初の対象は、飲食業と美容業の2業種。新参者が顧問契約を取るなら、新規開業の多い業界を狙うほうが早い。そう考えたからです。その後、美容室の顧客が増えるなかで、専門性を高めるほうが経営者の得になると判断し、対象を美容業だけに絞り直しました。3.4で触れた「あとから寄せ直す」の実例です。

宇佐見さんが業界の課題に気づいたきっかけも、この記事の主題に重なります。税理士変更の相談を何件か受けたとき、理由はどれも「顧問料が高いから」でした。ただ、これまで払っていたものを今さら高いと言うことに違和感があり、データを調べたそうです。すると、相談者の業績が落ちたぶん顧問料の比率が上がり、それが「高い」という言葉になっていたことが分かりました。値下げの話ではなく、業績の話だったわけです。

志師塾では、自己紹介の型を学び直しました。「何故買うのか」「何故あなたから買うのか」という問いに、当初は「美容業・飲食業に特化しているから」としか答えられなかったといいます。そこから、なぜやるのかというビジョンを先に語る形へ組み替えたところ、「明らかに相手の反応が変わった」とのこと。対象業種は2つから1つへ、名乗りは一言へ。絞った数だけ、伝わる速さが上がった形です。詳しくは宇佐見紘且さんのインタビュー記事をご覧ください。

8.2 村川雄三さん|「相続と不動産」と「元国税」の掛け合わせ

東京国税局・税務署で17年間、相続と不動産の税務調査に携わり、10,000件以上の相続税申告の中から調査先を選んできた村川雄三さん。2023年に独立し、いまは「相続と不動産」専門の税理士として活動しています。

独立当初は苦戦したそうです。「営業経験ゼロ、集客のノウハウもゼロ、紹介してくれる人もゼロ」という三重苦からのスタートでした。提供するサービスには自信があったのに、集客だけが動かない。第3章で触れた「実務ができることと、選ばれることは別」の典型例です。

志師塾で取り組んだのは、強みの言語化でした。元国税調査官であること、相続と不動産に精通していること、若くてフットワークが軽く土日や夜間にも対応できること。ここまでは事実の整理です。転機になったのは、その先の言い換えでした。

「私は元国税調査官です」という名乗りではなく、「私は国税での税務調査の経験があるからこそ、税務署が疑問を持ちにくい適切な申告書を作成できます」。この形にしてから、紹介を中心に顧客が少しずつ増え、成約率も高まったそうです。さらに、成約率が上がると関連業務を他の士業へ紹介できるようになり、そこからまた紹介が返ってくる循環が生まれました。価格を安売りせずにお客様が増える状態は、この循環から生まれています。営業経験ゼロ・集客のノウハウゼロ・紹介者ゼロという3つのゼロから、紹介が循環する状態へ。変わったのは商品ではなく、経歴を相手の得に置き換えた一文でした。詳しくは村川雄三さんのインタビュー記事をどうぞ。

8.3 横尾将司さん|税務の外側まで踏み込む「相談できる税理士」

20代で税理士資格を取得し、会計事務所、上場自動車メーカーの経理を経て、輸入商社を起業。いまは輸出商社と教育業の会社も含めて4社を経営する横尾将司さん。2023年6月に事務所を開設し、「経営者目線の利益UP税理士」として小規模事業者を支援しています。

中小企業に合った資金繰りの助言を続けるなかで、コンサル初年度から100万円以上の資金繰り改善をいくつもの会社で達成されています(受講された方の実例です。同様の成果を保証するものではありません)。自身が輸入商社の経営で黒字倒産の危機を経験したことが、この領域に踏み込む原点になりました。

志師塾に入ったのは、事務所開業とほぼ同時でした。当時を振り返って、税理士としてのビジネスモデルは「ぼんやりとしたイメージはあったものの明確ではなかった」と語っています。どのようにお客さまへアプローチして、何を決め手に選んでもらうのか。そのプロセスが具体的ではなかった、というわけです。

誰に、何を、どのように提供するかを決め切ったことで、顧問契約の2つのプランと集客支援という現在のサービス構成が生まれました。第2章で見た「相談できるかどうか」という乗り換えの分かれ目に、税務の外側から答えを出した形です。詳しくは横尾将司さんのインタビュー記事で読めます。

8.4 3人に共通していたこと

専門分野も顧客層もばらばらです。それでも共通点がありました。

  • やらないことを先に決めている:美容業以外はやらない、相続と不動産だけを扱う。断る範囲が決まるほど、残った領域の説明は短くなるものです
  • 経歴は、そのままでなく相手の得に翻訳:元国税、上場企業の経理、経営者としての失敗。事実のままでは伝わらず、言い換えて初めて依頼になりました
  • 売り込みではなく紹介と相談から広がっている:3人とも、飛び込みやテレアポの話は一度も出てきません

3人が最初に変えたのは、業務の中身ではありませんでした。誰の、どんな数字の悩みに強いのか。それを相手に伝わる言葉へ置き換えたこと。3人とも、順番はここから始まっています。

難しいのは、この「やらないことを決める」ほうです。目の前の依頼を断る判断は、売上の見通しが立っていない時期ほど重くなります。だからこそ、線の引き方には根拠が要る。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その線をどこに引くと受注が増えるのかを、先生業の実例で確かめていきます。

9. 税理士の集客でよくある質問

9.1 開業したばかりで実績がありません。何から始めればよいですか?

名乗りを決めるところからです。実績の数より、相手が「自分のことだ」と感じる一文があるかどうかで最初の相談は決まります。最初の軸になるのは、前職で担当していた業種や、勤務時代に多く扱った税目です。並行して、社労士や金融機関など経営者と日常的に接する人へ種をまいておくと、半年後に効いてきます。

9.2 飛び込み営業やテレアポで顧問先は取れますか?

おすすめしません。法人の税理士関与割合は89.8%で、電話をかけた先にはすでに顧問がいるからです。数をこなせば反応はありますが、集まるのは料金だけで比べる相手ばかり。同じ時間を紹介の種まきと発信に使うほうが、顧問契約に近づきます。

9.3 専門分野を絞ると、仕事が減りませんか?

減りません。絞るのは「認知してほしい場所」であって、受ける業務ではないからです。入口が1つに定まっているほど思い出してもらえ、入ってきた会社の相続も補助金も結局そちらに集まります。減るのは、絞ったときではなく、覚えられなかったときです。

9.4 税理士紹介サイトやマッチングサービスは使うべきですか?

立ち上げ期の一時的な入口としてなら選択肢になります。ただ、そこに来る相手は複数の税理士を同時に比べている状態で、判断材料は料金に寄りがちです。成約時の手数料も差し引かれます。使うなら、紹介や発信の経路を育てるまでのつなぎと位置づけ、主力にはしないほうがよいでしょう。

9.5 ホームページに顧問料を載せるべきですか?

目安の範囲は載せてください。金額の見当がつかない相手に、経営者は連絡する時間を割きません。すべてを開示する必要はなく、帯で示したうえで「この範囲に何が含まれるか」を書けば十分です。価格を隠しても比べられなくなるわけではなく、候補から静かに外れるだけになります。

9.6 集客の成果が出るまで、どのくらいかかりますか?

経路によって違います。紹介の種まきは数週間で反応が出ることもありますが、記事の検索流入は半年から1年かかるのが普通です。だから、早く効くものと遅れて効くものを同時に走らせます。目先の売上を紹介とスポット業務でつくりながら、発信を育てる。これが現実的な進め方になります。

10. まとめ:税理士の集客は「選ばれる理由づくり」から

税理士の集客と営業のポイントを、3つのコツと4つの経路に整理してお伝えしました。

  • 売り込み型の営業は捨てる。すべての対面が、すでに営業の場
  • コツ1、強みとポジショニングを「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」で言い切る
  • コツ2、キャラクターが伝わる言葉に磨く。名乗りは、どの接点でも同じ一言
  • コツ3、オンライン営業では声・動き・目線を補い、初回面談は問題を見つける場にする
  • 仕組み化は4つの経路で。紹介・Web・セミナー・いまの顧問先
  • 増やすのと同じくらい、続けることに手を入れる。顧問料は安心の対価として説明する

そして忘れてはいけないのが、税理士の集客が「乗り換え」の市場だということ。法人の89.8%にはすでに税理士がついていて、相手が動くのは節目のときだけです。だからこそ、その一瞬に思い出される場所を先に取っておく。売り込みが要らないのは、順番を守った結果にすぎません

明日からの一歩は、この3つです。

  1. いまの顧問先を業種と相談内容で並べ替えて、自分の偏りを確かめる
  2. この1年で受けた質問を、思い出せるだけ書き出す
  3. 紹介者がそのまま使える一言を、紙に1行

どれも今日始めれば、今週のうちに終わります。1つ目で軸が見え、2つ目で発信のネタが出そろい、3つ目で紹介が動き始める。順番に効いてくる3つです。

4つの経路は、どれか1つを選んで頑張るものではありません。ただ、いまの事務所がどこから回し始めるべきかは、顧問先の構成と、いま抱えている仕事の量しだいです。順番を取り違えると、手は動いているのに顧問先が増えない時期が長引きます。

「いまの先生でいいのか」と迷う経営者に、最初に思い出されたい税理士の方へ

紹介、Web、セミナー、いまの顧問先。4つのうちどこから回し始めるかで、成果が出るまでの時間は変わります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、先生業の実例で、その順番の決め方を扱っています。参加費は無料です。

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この記事について

監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)。士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化した集客・顧客獲得支援を行い、これまでに3,200名を超える先生業の方を支援してきました。本記事は、税理士の受講生・卒業生への支援で得た知見と、財務省「令和6事務年度 国税庁実績評価書」、国税庁「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」、日本税理士会連合会「税理士登録者数」、中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」の公表資料をもとに構成しています(公的データの確認日:2026年8月30日/支援人数の原本確認日:2026年8月16日)。

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