宇佐見紘且(うさみひろかつ)さんは、1986年に名古屋市に生まれ、2019年7月に独立開業、現在は「美容業しかやらない税理士」として活動されています。
自分と同じ30代で独立開業する方が多い一方で、「宵越しの銭は持たない」という気質 。40代以上の労働者数は極端に少なくなる、といった特有の課題を抱える美容業界に対し、熱い思いを持ってビジネスモデルの変革に取り組まれています。
今回、宇佐見さんがご自身の事業対象を美容業に絞り込んだ経緯や、志師塾に入ろうと思ったきっかけ、そこで学んだこと、今後のビジョンについて、お話をうかがいました。
1.泥臭く活動する、経営パートナーを目指して
1.1 美容業しかやらない税理士
現在、宇佐見さんは美容業に特化した税理士として、創業支援、税務申告支援や経営分析から、資産運用や事業承継にいたるまで、美容室経営者に対し一気通貫での支援サービスを展開しています。
また、美容室経営者が60歳を超えても安心して続けられるお店作りをサポートするため、全国でセミナーを開催し、美容業界の長期的発展に尽力しています。
美容業しか対応しない、すなわち“やらないことを決める事業戦略”は、自身の事業を軌道にのせるまでは大きなリスクを伴います。宇佐見さんがあえてそのような戦略をとったのは、美容業界独自の課題を間近に感じた中で、適切に彼らの経営をバックアップしたいと考えたからです。
1.2 税理士は落ちこぼれの資格?
宇佐見さんが税理士を目指したのは、大学時代にマーケティングの授業で、講師である税理士から“税理士は落ちこぼれの資格”と聞き、興味をそそられたためです。
何故“落ちこぼれの資格”なのか。公認会計士は登録するだけで税理士も名乗れますが、税理士が登録しても公認会計士にはなれないことを指したものです。
しかし宇佐見さんは、大学受験に失敗した自分にしっくりとくるものを感じるとともに、顧問先企業に寄り添って活動する税理士の泥臭いイメージに、逆に憧れを抱いたそうです。
その後、税理士試験に合格した宇佐見さん。「現在は税理士という資格に誇りをもっています。かつて抱いたイメージ通り、泥臭く現場に密着した取り組みが自分には合っていると感じています。相手が必死に生きているのだから、自分も必死に協力するスタンスで、日々の業務に臨んでいます」
1.3 勤務経験を経て、遂に独立
宇佐見さんは、大学院卒業後の約10年間、3社の税理士法人やコンサルティングファームで勤務をしていました。
コンサルティングファームでは主に事業承継支援として、企業の組織再編支援や後継者育成のための財務分析指導を担当。 事業承継支援には大変やりがいを感じていましたが、もともと「コンサルティング料を払えないような小規模の会社や個人オーナーの経営パートナーでありたい」という想いが強く、その夢を叶えるべく2019年7月に独立しました。
開業当初は飲食業と美容業を対象としていました。新参者が顧問契約を獲得するには、新規開業率が高い業界を狙う方が成功しやすいと考えたからです。
しかし、現在は美容業に絞った事務所に転換しています。美容室の顧客が増えた中で、専門性を高めることがより経営者のメリットになると考えたことと、美容室経営者の方々とフィーリングが合うと感じたことがきっかけです。
宇佐見さんと同じ年代である、30代で独立開業する美容室経営者が多いことも、親近感を抱く一因となりました。
2.志師塾で学んだ伝達力
2.1 志師塾で得た気づき
宇佐見さんが志師塾に入塾した動機は、先生ビジネスにおける集客手段の複線化を図りたいと考えたからでした。志師塾に入塾した時点では、自社のホームページおよび仲介会社の紹介を集客手段として、顧客は飲食業と美容業に絞っていました。
しかし、対象業界を特化したからといって、集客が簡単に図れるものではありません。その解決策として集客手段の複線化を考えたのです。
しかし、先生ビジネスの集客において重要なことは、集客手段もさることながら、いかに自分のことを知ってもらい、メリットを感じてもらうかであることを、志師塾で学びます。
自己紹介は集客のための第一歩となりますが、志師塾で効果的な自己紹介として学んだ、ビジョン型の自己紹介に宇佐見さんはしっくりくるものを感じました。「何でやっているのか?」という、自身のビジョンを伝えることから始める自己紹介方法です。
「WHY(なぜ)」から始める伝え方は、2010年にTEDでサイモン・シネックが提唱したゴールデンサークル理論に基づくものです。この理論が志師塾の講義で取り上げられた際、宇佐見さんは以前にこのTEDの動画を見たことがあり、ゴールデンサークル理論を知っていました。しかし、知っていたのにやっていなかったことにとても悔しさを感じました。
志師塾での気づきは他にもあります。「何故買うのか?」「何故あなたから買うのか?」の質問に答えられなかったことです。
「美容業・飲食業に特化しているから」という回答しか出ず、選ばれる理由になっていなかったことに気づかされました。この気づきもビジョン型の自己紹介につながっていきます。
「業界を変えたい」という思いをぶつけることで、明らかに相手の反応が変わったのを感じたそうです。「そのような気づきを得るのに志師塾が必要だった」と宇佐見さんは語っています。
2.2 「知っている」から「できる」「やっている」へ
志師塾での1番の学びは、“知っているのに、できていなかった、やっていなかったことに、気づかされたこと”と宇佐見さんは語っています。
志師塾での五十嵐先生の教えは、既に知っていることが多かったとのことです。それなのに何故こんなにも差がついているのだろうと考えた時に、「知っているだけで、できている気になっていた。でも全然やっていなかった」ことに気づいたのです。
「理論として知っていたから業界特化もしていましたが、『業界特化すれば勝てるだろう』と上っ面の知識だけの取り組みで、実はできていなかった、やっていなかった」と宇佐見さんは悔しそうに振り返ります。
それを「できているというのは、こういうことだよ」と教えてくれたのが、志師塾でした。そういったことに気づき、行動に移した時に、自分自身の変化より周りの反応が変わったと宇佐見さんは語っていました。
2.3 志師塾への入塾を考えている方へ
「1分間で自分のことを『この人はこんな人なんだ』と相手に分かってもらえ、周りの心をつかめる自己紹介ができる自信がないなら、入塾すべきだと思います。みんなが自分の話を1から10まで聞いてくれるとは思わない方が良いです」
さらに宇佐見さんは続けます。
「1分間で『自分ってこうなんですよ』と伝えた時に、『先生もっと話を聞かせてもらえませんか』と言われるかどうかがすごく重要だと考えています。その1分間の努力を怠っているなら、志師塾でちゃんと勉強した方が絶対に良いです」
3.美容業界にかける思い
3.1 美容業界が抱える課題
美容業界は市場競争が激しく、経営の継続には多くの困難が伴います。経営を長く安定させるためには、立地選びと無駄なコストの抑制が重要であり、勝負はスタート時の戦略にかかっています。
しかし、内装へこだわり、開業時に多くの資金を投入してしまうことで、その後の経営が難しくなってしまう例が少なくありません。
「美容室の経営には確かな戦略と徹底したコスト管理が欠かせない」という経験から得た知見を、美容室経営者に伝えていきたいと考えています。
宇佐見さんが美容業界独自の課題を感じるようになったきっかけは、税理士変更の相談を何件か受けたことによります。
多くの場合、税理士を変更したい理由は「顧問料が高いから」でしたが、今まで払っていたものを今更「高い」と言うことに対し違和感がありました。そこでいろいろなデータを調べてみると、相談される方たちの業績が落ちているから顧問料の割合が上がり、それが「高い」という表現になっていることがわかったのです。
しかもそれは、宇佐見さんのところに相談に来られた方たちの業績がたまたま落ちているのではなく、業界自体が「一定の年齢を超えると業績が悪くなる傾向にある」ことに気付いたのです。
実際に宇佐見さんの事務所に相談に来られる美容室経営者は、ほとんどが40代の方です。これは何とかしなければと思ったことが、美容室経営者をより積極的にバックアップする行動につながっていきます。
3.2 課題解決に向けて
宇佐見さんが今後注力しようとしていることは、美容室経営者の皆さまが60歳を超えても安心して事業を継続できるようなサポートの提供です。そのために、全国でセミナーを開催し、自身の知見を生かした実践的で効果的な経営戦略を学べる機会を提供することを目指しています。
競争の激しい美容業界において、しっかりとした知識とノウハウを提供することで、少しでも多くの経営者が困難を乗り越えられるよう支援したいと思っています。
「セミナー内容は、経営の持続性を高めるための資金管理の基本、戦略的な立地選び、成長のための効率的な投資、顧客体験とロイヤルティを向上させるための工夫や接客方法といった、美容室経営に欠かせないさまざまな要素をお伝えする予定です。こうした知識を学ぶことで、美容室経営者の皆さまが事業を継続するための基盤を築くお手伝いをしていきます」
3.3 美容業界のビジネスモデルを変える挑戦
美容業界は若い世代が活躍する一方、年齢を重ねるにつれ、経営に苦しむようになる傾向があります。実際、年齢別労働者数では20代が過半数を占め、50代・60代は10%にも満たない、長く仕事を続けることが難しい業種となっています。同じ国家資格でありながら、税理士の年齢別労働者数では60代が過半数を占めるのとは対照的です。
(出典:令和3年賃金構造基本統計調査)
その要因には、体力面や感性的な点もありますが、資金面・経営戦略面の問題も少なからずあり、効率的な資金管理と適切な戦略を立てることで改善できる問題と考えられます。
このような業界特有の厳しい現状を変えるため、経験と知識を生かし少しでも多くの美容室が長く繁栄し続けるため、経営に役立つ知識や戦略を全国の経営者の皆さまにお伝えしたい、と宇佐見さんは考えています。
経営の安定が難しいとされる美容業界にあって、こうした支援を通じて多くの美容室経営者が確実に経営基盤を強化し、安定的に成長できることを宇佐見さんは目指しています。
何年、何十年と変わらなかった美容業界のビジネスモデルを変えるため、宇佐見さんの挑戦は続きます。
文:加藤裕之(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部
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