今回お話を伺ったのは、インプレスビジョン株式会社代表、次世代向けマーケティングコーチの矢澤滋人さんです。
矢澤さんは様々な業界の企業向けに、20代・30代社員の企画提案スキルを向上させるための研修プログラムを提供しています。
サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)に42年勤務し、マーケティング部門で誰もが知る飲料ブランドを多数担当。マーケティング思考を活かし、グループ会社の経営にも携わってこられました。
定年退職後、「未来を羽ばたく次世代と共に、夢と感動のビジネスを実現すること」を志し事業をスタートさせた矢澤さん。その思いや、志師塾との出会いについてお聞きしました。
1.”ひらめき”人材を育成する研修プログラム
1.1 3つのメソッドで”刺さる企画提案”がひらめく
「最短90日間で”刺さる企画提案”がひらめく社員に変身!」というのが、矢澤さんの講座のキャッチフレーズ。
「人間がAIより優れているのは洞察力と創造力であると言われており、それらの力が”ひらめき”を生むと考えています。ブランドマネージャーであった私が伝授する3つのメソッドで、その力を身に付けてもらいます」
その一つめは、ケースを題材に参加者が主体的に問題解決に取り組むケースメソッド。座学ではなく自分で考え意見を言い合うディスカッション形式で、左脳を使って洞察力を養います。
二つめは、自分の感情や感覚に基づいて発想する、アート思考。あくまで主観的に、右脳を使った作品づくりをすることでユニークな創造力を身につけます。
それらを実務につなげるための三つめが、お客様のニーズを捉えるインサイト調査。インタビューワークでヒアリング能力を高め、お客様の隠れた欲求を発見し、コンセプトを立案する力を磨きます。
「実際に研修をやって感じるのは、考える習慣が不足しているということ。昔のようにしっかり書いて整理する機会も減っています。あとは話すことですね。相手に理解してもらうためには、自分の考えを整理しなければならない。それらが弱いため、”考える、感じる、行動する力”を鍛えることを意識しています」
1.2 20代、30代の育成に特化
矢澤さんの研修講座の受講対象は、20代、30代の若手社員です。
洞察力や創造力を若いうちに身に付ければ自分のためになることはもちろん、若い”ひらめき人財”が増えれば将来に渡って会社のためにもなり、ひいては日本のためにもなります。
「もう一つ付け加えれば、私は彼らのような若者を応援したいという気持ちがすごく強くて。私の持つマーケティングの知見を伝授して、いずれ彼らと夢と感動のビジネスをやりたいというのが私の志です。その実現のために、若い人たちとのパイプを作りたい。会社員時代はその機会がだんだん減っていったので、今再びそのつながりを作っていきたいという理由があります」
2.サントリーでのさまざまな経験
2.1 マーケティング部門に異動しぶつかった壁
新卒入社後、5年ほど営業部門で新規開拓を担当し業績を上げた矢澤さんは、花形であるマーケティング部門に配属されることに。しかし、初めて担当した缶コーヒーブランドは思ったように売れず、ほろ苦いブランドマネージャー人生のスタートになりました。
「『ウエスト』というブランドで、”アメリカの大西部でカウボーイがほっと一息つく時に飲むコーヒー”というコンセプトだったのですが、宣伝部とうまく連携できなくて。宣伝部はウエストという言葉から、西海岸を舞台にした全くコンセプトの違う広告を作ってしまったんです。非常にちぐはぐな感じで、消費者にはあまり響きませんでしたね」
ブランドマネージャーになり張り切っていただけに、なんともやるせない思いでした。
その経験から、マーケティングを体系的に学ぼうと決意した矢澤さん。ビジネススクールでマーケティングを学びなおし、MBAを取得しました。
そこからは快進撃がスタート。以来10年以上に渡り、「サントリー天然水」や「C.C.レモン」「胡麻麦茶」といった数々の清涼飲料水ブランドを担当し、長く人々に愛される商品づくりに貢献することとなりました。
2.2 マーケティング視点は経営のすべてに通ずる
その後矢澤さんは会社経営の道を希望し、グループ会社の社長や常務、監査役といった役職に就任。強みのマーケティング視点を活かし、10年間で15社の経営に携わりました。
役職定年となり、企業の文化発信拠点として歴史のある「サントリー美術館」に異動となった矢澤さん。その7年間で300もの展覧会に足を運び、アート思考を身に付けたのでした。
営業、マーケティング、経営、そして美術館。やっていることは全く異なりますが、そのすべてに通底するものがあると、矢澤さんは話します。
「私はマーケティングこそが経営の核心だと思っています。それは何かというと、お客さんなんですよね。常にお客さんを見て、すべてお客さんが何を求めているのかを起点にして考えることができるかどうかです」
それをこれからの人材に伝えていきたい。そんな思いで起業したのでした。
3.志師塾との出会いと学び
3.1 タイミングを見計らったかのように舞い込んだ広告
実は矢澤さんは美術館勤務と同時に、インサイト調査を用いた中小企業向けマーケティングコンサルタントとしての活動を副業として始め、手応えを掴んでいました。
サントリーを定年退職し、その事業に取り組もうと思いつつ、会社員時代にできなかった旅行などを楽しみながら半年ほど過ごしていた頃、志師塾との出会いが訪れました。
「このままだと自分の商品もあまり明確じゃないし、受注ルートもない。そろそろやらなきゃいけないなぁと思っていた時、インスタグラムに志師塾の広告が出てきたんです。無料セミナーがまさにそんな内容だったので、ちょっと聞いてみようかと気軽な気持ちで参加したら、意外と話が面白くて」
志師塾を受講した知人がいたことも安心材料となり、入会を決めました。
3.2 多様な仲間と刺激を与えあう日々
志師塾は「すごく面白かった」と矢澤さん。
同期の受講者の年代は幅広く、最年少は25歳で既に起業をしている女性。矢澤さんは最年長でした。
「でももう同級生ですから。上も下もなくニックネームで呼び合って、お互いに自己開示してお互いに指摘をし合うという環境が自分にはすごく新鮮で、楽しかったですね」
平日夜の講義で白熱した後は皆で飲みに行き、終電ギリギリまで語り合う。それはまるで学生時代に戻ったような日々でした。
心理的安全性の保たれた場で自己を開示し、他者から指摘を受けることで、自分も知らなかった自分の窓が開かれていく感覚を得られたと、矢澤さんは当時を振り返ります。
4.志師塾で定まったビジネスの方向性
4.1 これまでの経験によって深まる学び
もともとはマーケティングのコンサルタントとして独立を考えていた矢澤さんでしたが、志師塾で自身の商品づくりを考える中で、現在のビジネスモデルにたどり着きました。
「志師塾で”とんがりポジショニング”と言われる、独自性が必要だと考えた時に先程の”3つのメソッド”に気付いたんです。そうなると、コンサルタントより研修講師、あるいはコーチングだなと思って方向転換しました」
講師や他の塾生の話を聞きながらターゲットや販路を何度も練り直し、方向性を定めていった矢澤さん。長年マーケティングに携わってきましたが、自分自身をマーケティングするというのは初めての体験だったそうです。しかし、その手法を熟知しているからこそ深く納得し、のめり込んでいきました。
4.2 他者と人生を比較せず、自分の強みを武器に
志師塾では、最初に”自己棚卸”といって自分自身について3万字書くという課題が出されます。そこで矢澤さんはなんと9万字も書いたとのこと。
実は、人生を振り返り、自分史を書くというのは、矢澤さんが退職前からやりたかったことでした。しかしなかなか環境が整うタイミングもなかったところ、ちょうどいい機会だと、どんどん筆が進んだのです。
そんな中、他の塾生の自己棚卸を読んで複雑な気持ちになったこともあったそう。
「みんな早くから独立していたり、大変な人生を歩んでいて。同じ大企業に42年間いた自分は、周りに比べたらビックリするような大きな苦労もないなとか、すごく個性的な方もいる中で自分は意外と普通かなとか思ってしまって」
ですがここでも、他の塾生の言葉にはっとさせられた矢澤さん。
「彼らにとっては、大きな会社で自分のやりたい仕事を実現し、それを力にまた大きな仕事につなげていったという経験は、簡単には得られない私の強みとして見てくれたのです」
これが自分の人生。自分はこれでいこうと、9万字を前に自信を取り戻すことができました。
5.”ひらめき力”を持った若手の輩出でつくる未来のビジョン
5.1 次世代の夢と感動のビジネスを応援したい
実は学生時代は映画監督になりたかったという矢澤さん。エンターテイメントの世界が好きで、ディズニーランドなどに象徴されるような、人々に夢と感動を与えるビジネスに昔から憧れていました。
形は違えど、多くの人に愛される商品を作ってきた矢澤さんは、そこで得たマーケティングという大きな力を使い、次世代の人々のエンタメビジネスを応援したいという強い思いがあります。
「頭の中にあるものがそのままビジネスになることはまずありません。ああでもない、こうでもないと考え続けて完成させていくものです。その過程は苦しいけれど、生み出したものがお客さんに支持されてずっと続いていくというのは、何にも代え難い喜びです。そういう仕事を、次世代の人たちにも経験してもらえたら」
矢澤さんが人生をかけて後世に伝えていきたいものがそこにありました。
5.2 エンタメを楽しむように仕事を楽しむ
企業を退職し、セカンドライフとしての起業を志した矢澤さんが大切にしていることがあります。
「いかに楽しむか、ということです。エンタメを楽しむように、これからの人生と仕事を楽しみたい。自分が楽しまなければ、作り上げるものも良いものになるわけがありません。楽しむというのは楽をするということではなく、苦しいこともあります。そこを乗り越えるのが、創造性や洞察力から生まれる”ひらめき”でもあるのです。それは自分で楽しみながら見つけていくもの。そういう仕事の仕方、楽しみ方を、若い人たちにも伝えたいなと思います」
そこで大事なのが人と人とのつながりであると、矢澤さんは付け加えます。
「どんな仕事でも自分一人で成り立つものではありません。その意味で、志師塾の人たちと知り合って自分の人脈は広がり、可能性が増えたと思います。今後も交流会などありますから、どんな出会いやつながりが広がるのか楽しみですね」
矢澤さんの研修の写真からは、参加者の若手達がとても楽しんでいる様子が伝わってきます。ここから将来どんな夢と感動のビジネスが生まれるのか、期待したいです。
文:青柳紗千子(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部
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