8士業の中で受験資格が特になく、人数も比較的多いのが「行政書士」です。
士業への登竜門ともいえる資格であり、行政書士として独立開業することを目指している方も多いでしょう。
この記事では行政書士として独立開業するメリット・デメリットや開業資金・平均年収などについて紹介します。
独立開業するステップも紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
1.行政書士として独立開業するメリット
行政書士として独立開業するメリットの代表例としては、次の3つが挙げられます。
● 自分の裁量で働ける
● 年収1,000万円を超える可能性もある
● 比較的低コストで開業できる
これらの点に魅力を感じる方は、ぜひ独立開業を視野に入れてみてください。
1.1 自分の裁量で働ける
行政書士として独立開業するということは、自分が経営者として事業を興すということです。
会社組織・上司などに縛られるのではなく、自分の裁量でクライアントの課題を解決していくことになるため、やりがいは非常に大きいといえるでしょう。
行政書士業務の特性上、主たる勤務時間はクライアント・行政機関が稼働している「平日日中」となるケースが多いですが、働く時間についても自由に決められます。
事業を成長させたいならば好きなだけ働くことも可能ですし、プライベートを充実させるために週休3日にすることも不可能ではありません。
国家資格を活かして自由に働けることは、行政書士として独立開業する最大のメリットともいえるでしょう。
1.2 年収1,000万円を超える可能性もある
厚生労働省が公表しているデータによると、行政書士の平均年収は551.4万円です。(参考:職業情報提供サイト|厚生労働省)
しかし独立開業している行政書士の実態としては、年収300万円未満から1,000万円超まで、大きな幅があります。
1,000万円以上稼ぐことは簡単ではありませんが、しっかりとした戦略を持てば大きく稼げる点は、行政書士として独立開業するメリットの一つです。
クライアント数が安定すれば、弁護士・司法書士など他士業より稼ぐことも不可能ではありません。
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1.3 比較的低コストで開業できる
行政書士は「自分の知識・スキル」が主たる商材となるため、施設・設備などハード面の投資費用を最小限に抑えて開業できます。
事務所を整える費用などが少なからず必要となるものの、他の事業と比べれば低コストで開業できることは、行政書士ならではのメリットです。(具体的な費用は後述します)
2.行政書士として独立開業するデメリット
行政書士として独立開業することには多くのメリットがありますが、後悔しないためにデメリットも知っておきましょう。
まず、行政書士は大きく稼げる可能性がある半面、安定して収益をあげられるとは限りません。
他の行政書士事務所はもちろん、他士業事務所と競合することもあるため、しっかりと営業していく必要があります。
また、行政書士業務と経営者業務の両方を自分一人で対応するとなると、ある程度の時間をさかなければなりません。
事務所が軌道にのったら事務スタッフを雇えるかもしれませんが、この場合は人件費も必要です。
行政書士として独立開業する場合、やはり「一つのビジネスを立ち上げる」のだということを強く意識したほうがいいでしょう。
3.行政書士の独立開業資金はどのくらい?
さて、行政書士として独立開業するためには、どのくらいの資金が必要なのでしょうか。
コストを抑えるとしても、「行政書士事務所」を開くためには最低限次のような費用は必要となります。
費用項目 | 費用の目安 |
---|---|
行政書士会に支払う登録費用 | 20万円〜30万円前後 (都道府県によって異なる) |
事務所費用 | 初期費用:敷金・礼金 固定費:家賃 |
什器(事務机・応接机・書類棚など) | 5万円~ |
職印・ゴム印など | 1万円~ |
通信費(電話・FAX・パソコンなど) | 初期費用:備品購入費(10万円~) 固定費:月額利用料(1万円~) |
宣伝ツール | 1万円~ |
すべてを合計すると、開業に伴って事務所・什器などを新たに用意する場合、最低でも50万円〜70万円程度は必要でしょう。
なお、自宅の一室を事務所として活用する場合、事務所関連コストはかかりません。パソコンや什器なども既に保有しているものを使う場合、新たな費用は不要です。節約すれば30万円〜40万円程度で開業できるでしょう。
なお、開業資金とは別に、ランニングコストについても考えておかなければなりません。家賃や通信費などの事業コストはもちろん、自分の生活費も含め、最低3か月分の運転資金があると安心です。
4.行政書士が独立開業して成功するためのコツ
さて、競合に打ち勝って行政書士事務所を運営していくためには、次の4点を意識することが重要です。
● 専門分野・得意分野を持つ
● 営業・集客にも注力する
● 顧客満足度を重視する
● ダブルライセンスも視野に入れる
それぞれのコツについて見ていきましょう。
4.1 専門分野・得意分野を持つ
他のビジネスと同じく、行政書士事務所として成功するためには、競合と差別化することが重要です。そのためにも専門分野・得意分野を持ちましょう。
一口に行政書士業務といっても、その内実は次のように分類されます。
業務の種類 | 例 |
---|---|
「官公署に提出する書類」 の作成とその代理、相談業務 |
|
「権利義務に関する書類」 の作成とその代理、相談業務 |
|
「事実証明に関する書類」 の作成とその代理、相談業務 |
|
非常に多岐にわたる業務ですが、この中からいくつか「専門分野」を持てば、顧客から選ばれやすくなるでしょう。
行政書士になる前に働いたことがある業界があれば、そのジャンルで専門性を高めていくと説得力が増します。
法人をメインターゲットとするなら建設業や運輸業の申請、個人をメインターゲットとするなら遺産分割協議書の作成など、マーケティング戦略によって専門分野を決めるのも一つの方法です。
4.2 営業・集客にも注力する
行政書士事務所を開業しただけで依頼が入ることはほとんどありません。他のビジネスと同じく、営業・集客にも注力しましょう。
専門ジャンルを決めたら、その分野と親和性の高い方法で営業するのが定石です。
たとえば建設業・運輸業がターゲットなら、組合・経営者同士の集まりなどリアルな場で営業するといいでしょう。個人がターゲットなら、チラシやSNSなどでアプローチするのも効果的です。
また、法人・個人いずれがターゲットだとしても、やはりWebサイトによる集客も視野に入れることをおすすめします。
4.3 顧客満足度を重視する
いくら頑張って営業しても、単発での依頼をこなしていくだけでは、いずれ頭打ちになってしまうでしょう。
クライアントから別のお客様を紹介してもらうためにも、顧客満足度を重視することを意識してみてください。満足してもらえれば、定期的に依頼されたり、顧問契約につながったりする可能性もあります。
4.4 ダブルライセンスも視野に入れる
事業規模を拡大するために、「行政書士資格」と「他の資格」を保持するダブルライセンスも視野に入れるといいでしょう。行政書士と親和性の高い資格としては、次のような例が挙げられます。
・社会保険労務士:行政書士として会社設立に関する書類作成をサポート後、社会保険労務士として雇用・労働に関する申請もサポートできる
・司法書士:行政書士として役所へ書類提出、司法書士として法務局へ書類提出ができるため、幅広い法的書類を扱える
・税理士:行政書士として遺産分割協議書を作成後、税理士として相続税申告をサポートできる
・中小企業診断士:行政書士として会社設立に関する書類作成をサポート後、中小企業診断士として経営コンサルティングも可能
このようにダブルライセンスであること自体が競合との差別化になるため、親和性の高い資格取得はおすすめです。
5.行政書士として独立開業するまでの流れ
それでは最後に、行政書士として独立開業するまでの流れを見ていきましょう。
1.行政書士となる資格を取得する
2.開業資金を確保する
3.事務所の住所・名称を決める
4.行政書士会へ登録申請する
5.行政書士会による事務所調査を受ける
6.行政書士会から登録証を受け取る
7.税務署へ開業届を提出する
それぞれのステップごとに詳しく解説します。
5.1 行政書士となる資格を取得する
まずは行政書士資格を取得しなければなりません。行政書士となる資格を有する者は、次のように定められています。
● 行政書士試験に合格した者
● 弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者
● 国・地方自治体の公務員として行政事務を一定年数以上経験した者(特認制度)
3通りの方法がありますが、やはり行政書士試験に合格するルートが一般的です。行政書士試験は毎年1回、11月に開催されます。
行政書士試験は「年齢」「学歴」「国籍」に関係なく、誰でも受験できることが特徴です。試験時間は3時間で、試験科目は次の2つとされています。
行政書士の業務に関し 必要な法令等 |
(46題) 択一式及び記述式 |
---|---|
行政書士の業務に関し 必要な基礎知識 |
(14題) 択一式 |
合格率は例年10%前後で、 試験全体の得点が60%以上かつ、法令等科目が満点の50%以上、基礎知識科目が満点の40%以上でなければなりません。簡単な試験ではありませんが、しっかりと勉強すれば合格できるでしょう。
なお、行政書士となる資格を取得するだけでは、「行政書士」として活動できません。行政書士となるためには、日本行政書士会連合会が備える「行政書士名簿」へ登録される必要があります。
登録されるためには、行政書士事務所を設ける都道府県の行政書士会へ入会し、必要書類を提出しなければなりません。この流れを念頭に、次のステップを見ていきましょう。
5.2 開業資金を確保する
行政書士となる資格を取得したら、開業資金を確保しましょう。先述したとおり、初期費用30万円~70万円程度、あわせて最低3か月分の運転資金があると安心です。
運転資金の額にもよりますが、150万円~200万円程度は用意しておくといいでしょう。
5.3 事務所の住所・名称を決める
行政書士会へ登録申請するためには、行政書士事務所の住所・名称が必要です。
事務所名・事務所のレイアウトなどは行政書士会で定められた方針に従う必要があるため注意してください。
行政書士業務に支障をきたさないよう、少なくとも事務所として独立した部屋が必要となります。シェアオフィスなどでは認められないこともあるため、事前に行政書士会に確認してみてください。
なお事務所の場所については、行政書士会への加入要件のみならず、行政書士事務所として集客しやすい場所かどうかも考慮しなければなりません。たとえば行政機関への許認可をメイン業務とするのであれば、役所に近いエリアが望ましいでしょう。
人通りの多い場所なら集客力が高いかもしれませんが、家賃も高くなります。ビジネス的な観点も考慮することを意識してみてください。
5.4 行政書士会へ登録申請する
事務所の住所・名称を決めたら、必要書類を揃え、行政書士会へ登録申請します。必要書類について各都道府県ごとの行政書士会のホームページを確認してみてください。
基本的には次の書類を求められます。
● 行政書士登録申請書
● 履歴書
● 誓約書
● 本籍地の記載された住民票の写し
● 身分証明書
● 顔写真
● 事務所の所在等を確認するための各種書類
行政書士事務所の位置・区画・入口・内部の事務機器の配置まで確認できる図面も用意しましょう。
また、このタイミングで登録手数料(20万円~30万円)が必要です。
5.5 行政書士会による事務所調査を受ける
各行政書士会により、事務所調査が行われます。
顧客のプライバシーを守れる配置となっているかどうか、守秘義務が保てるかどうかが重視されるため、しっかりと用意しておきましょう。
5.6 行政書士会から登録証を受け取る
調査に問題がなければ、行政書士会から登録証を受け取り、行政書士として活動できます。
登録証交付式は行政書士会の所属支部で行われ、同時期に申請した他の行政書士が参加していることもあります。
開業後のつながりからの紹介で仕事を獲得できることもあるため、このステップまでに名刺なども用意しておくと良いでしょう。
5.7 税務署へ開業届を提出する
事業を開始するにあたって、税務署へ開業届を提出します。
開業届は自分で提出することも可能ですし、税理士へ任せても構いません。行政書士事業に集中するためにも、税務関連の業務は税理士へ一任しても良いでしょう。
6.行政書士として独立開業するなら志師塾
行政書士は受験資格が厳しくないため、国家資格を活用して独立開業したい方に非常におすすめな資格です。しかし競合が多いため、開業して稼げるかどうかは自分の実力に左右されます。
行政書士としての独立開業はゴールではなくスタートとして、行政書士の実務とあわせ、どのようにクライアントを集客していくのか、経営的な視点から戦略を立てていきましょう。
志師塾では士業など先生業のためのWeb集客セミナーを開催しています。予算0・見込み0からWebを活用して高単価かつ継続的に顧客獲得するためのノウハウをお伝えしているので、行政書士として独立開業したい方はぜひ一度ご参加ください。
あなたの独立開業に、ぜひ本記事の内容を役立てていただけると幸いです。
文:川口翔平(Web集客コンサルタント)
Web集客コンサルタント 川口翔平
志師塾のコピーライティングとWebマーケティングを担当する傍らで、受講生のWebサポートを行っている。
年間6,000名超を集める志師塾のWebマーケティングの一翼を担い、特にWebライティングやSEO(検索エンジン対策)、メルマガ集客の主担当を務める。