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不動産鑑定士の集客3つのポイント|価格競争を避けて指名される方法



不動産鑑定士の営業3つのポイント|集客の価格競争を避ける

「実力には自信があるのに、依頼が増えない」。そんなもどかしさを抱えている不動産鑑定士は少なくありません。思い切って営業に出ても手応えがなく、ようやく商談まで進んだと思えば「もっと安くならないか」と価格の話ばかり。次第に、営業そのものが不毛に感じられてきます。

先に結論から。この悩みの原因は、鑑定の実力不足ではありません。あなたの価値が相手に伝わる前に「価格」で比べられてしまう営業の順番のほうです。

この記事で扱うのは、次の3つのかたまりです。

  • ポイント1・2:誰に何と名乗るかを決める。ポジショニングと、それを届く言葉に磨く作業
  • ポイント3:会う前に価値が伝わる接点と、紹介が生まれる導線をつくる
  • 商談と値段:売り込まずに受注する進め方と、無料で終わらせない値段の伝え方

前半には、国土交通省の統計から「そもそも誰に営業すべきか」を置きました。後半は、商談の進め方と値段の伝え方、そして志師塾の卒業生2人が実際にやったこと。先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得支援を専門としてきた志師塾が、公的な統計と公開済みの実例をもとに解説します。読み終えるころには、明日どこから手をつければよいかが見えているはずです。まずは、不動産鑑定士の営業が空回りする理由から。

価格で比べられるかどうかは、見積書を出す前に決まっています。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、比べられない立場に立つための設計を先生業の実例で解説しています。

Web集客セミナーで設計を確かめる

1. 不動産鑑定士の営業が空回りする4つの理由

不動産鑑定士の営業とは、鑑定評価という目に見えないサービスを、依頼される前に価値として伝える仕事のことです。売上を伸ばすうえで営業が有効なのは間違いありません。ただ、やり方を間違えると消耗するだけで終わるのも事実です。まずは、多くの鑑定士がつまずく場所を4つ整理しましょう。

1.1 実力があるだけでは、仕事は獲得できない

鑑定士として成功するために実力が必須なのは、言うまでもないことです。ただ、どれほど実力があっても、それだけで仕事が舞い込むことはありません。仕事を獲得して初めて、鑑定士としての実力は発揮できるのです。順番としては、営業が先で実力の発揮が後なのです。

志師塾では、この関係を「業務能力」と「受注力」に分けて考えています。業務能力は鑑定の腕前、受注力は仕事を勝ち取る力。受注力は業務能力の上に積み上がるもので、業務能力をいくら高めても、そのままでは受注に変わりません。むしろ順番は逆で、受注力が上がると案件数が増え、その結果として業務能力も自然に高まっていきます。Web集客だけに頼るのでもなく、リアルの営業だけに頼るのでもなく、両方を組み合わせて設計する。ここが出発点です。

1.2 公的評価に頼った経営には、伸ばせる天井がある

営業の話に入る前に、鑑定士の売上の成り立ちを整理しておきましょう。不動産鑑定士の仕事は、大きく2つに分かれます。地価公示や都道府県地価調査、相続税・固定資産税のための標準地評価といった公的評価と、個人や企業から直接依頼される民間案件です。

公的評価は、営業をしなくても一定の仕事が回ってくる、ありがたい収入源。ただし件数も報酬も発注側の制度で決まっていて、自分の努力で増やすことはできません。ここに頼りきると、売上の天井は固定されます。伸ばせる余地は民間案件のほう。そして民間案件は、待っていても来ません。多くの鑑定士が営業を学ばないまま独立できてしまうのは公的評価があるからで、「実力はあるのに依頼が増えない」というもどかしさの正体も、たいていこの構造にあります。

1.3 サービスの中身が見えないから「価格」で比べられる

不動産鑑定士が売っているのは、不動産を鑑定・評価するというサービスです。物販のような分かりやすさがなく、目に見えるモノと比べれば売りづらい商品。あなたの仕事内容を全て把握しているお客様は、ほとんどいません。そもそも民間の依頼者にとって、鑑定評価書が必要になる場面は一生に何度もあるものではなく、初めての依頼で鑑定士ごとの違いを見分けられるはずがないのです。

中身が見えなければ、お客様が比べられる物差しは「価格」だけになります。その結果、次のような経験につながっていきます。

  • 提案書の作成まで進んだのに、最後は受注できずじまい
  • 返ってくるのは「もっと安くできないか」という価格の話
  • そもそも見込み客と出会う機会が乏しい
  • 紹介をもらおうと動いたのに、結局紹介には至らなかった

飛び込み営業の成功率が低いのも、同じ理由です。中身が伝わっていない相手にいくら売り込んでも、判断材料が価格しか残っていないからです。失敗を重ねるうちに、営業そのものが嫌になる。この悪循環に入っている方は少なくありません。

1.4 価格競争に乗ると、利益が消えていく

受注する側から見れば、「価格」での勝負はできるだけ避けたいところです。一度価格で勝負してしまうと、極限まで価格を下げ合う価格競争に巻き込まれ、利益はどんどん薄くなっていきます。安さで選ばれたお客様は、より安い相手が現れれば価格で離れていく。目先の1件は取れても、長く付き合える顧客は残りません。

これを回避する道はひとつです。不動産鑑定士としての価値を明確にお客様へ伝え、理解してもらうこと。「価格が安いから」ではなく、「あなたに頼みたい」と指名してもらうのです。あなたの実力がどれほど高くても、その価値が伝わらなければ「コスト」としてしか評価されません。逆に価値さえ伝われば、不毛な価格競争から抜け出せます。

不動産鑑定士が価格で比べられる営業と指名される営業の違い

ここまでが、営業がうまくいかないときに起きていること。ただ、ここから先に進むには「では誰に売るのか」を決めなければなりません。その材料は、感覚ではなく統計から取れます。

2. 不動産鑑定士の営業先を、公的データから決め直す

不動産鑑定士の営業先とは、鑑定評価の依頼が実際に生まれている相手のことです。ここを思い込みで決めると、努力の方向がずれます。国土交通省が毎年公表している不動産鑑定業者の事業実績には、業界全体の依頼構造が数字で載っているのです。令和7年分から、営業に直結する4つを取り出しました。

2.1 鑑定士1人あたりの報酬は、事務所の型で4.4倍違う

最初に見てほしいのが、鑑定士1人あたりの年間報酬額です。同じ資格、同じ独占業務。それでも、所属する事務所の型によって数字はここまで開きます。

不動産鑑定士1人あたりの年間報酬額(大臣登録業者と知事登録業者の比較)

区分 鑑定士等1人あたりの年間報酬 1人あたり件数 1件あたり報酬
国土交通大臣登録業者 約2,693万円 108.0件 約24.9万円
都道府県知事登録業者 約618万円 32.5件 約19.0万円
全体 約1,106万円 50.3件 約22.0万円

出典:国土交通省「不動産鑑定業者の事業実績」令和7年・表1(価格評価、賃料評価のほか固定資産税評価、相続税評価を含む実績総数)。数値は同表の「鑑定業者に所属する不動産鑑定士等1人当たりの平均」および「一件当たりの報酬額」。

差は約4.4倍。しかも内訳を割ると、1件あたりの報酬の差は1.3倍しかありません。開いているのは、こなしている件数のほうです(3.3倍)。単価が高いから稼げているのではなく、依頼が入り続ける経路を持っているかどうか。ここが分かれ目になっています。

ここは誤解されやすいので、一点だけ補足を。この差は「都会か地方か」ではありません。国土交通省と公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会がまとめた「業務領域の拡大等を通じた不動産鑑定士の担い手確保に向けて(論点整理)」(令和7年3月)は、事務所の所在地で1人あたりの概算報酬額を比べると、都市部12,365千円・地方部12,716千円とほとんど変わらないと書いています。こちらは令和3年から令和5年の3カ年平均の概算報酬額で、上の表とは集計の取り方が違う数字。地方だから稼げないのではない。仕事の取り方の型が違うだけです。

2.2 大臣登録と知事登録では、受けている仕事の中身がまるで違う

では、その型はどこが違うのか。依頼目的の内訳を並べると一目で分かります。

不動産鑑定士の依頼目的別構成比(大臣登録業者と知事登録業者の違い)

  • 大臣登録業者:証券化が49.2%で約半分。次いで担保17.9%、売買11.1%、財務諸表10.1%と続きます
  • 知事登録業者:売買が45.7%で最多。資産評価16.0%、補償15.9%と続き、証券化はわずか5.7%

出典:国土交通省「不動産鑑定業者の事業実績」令和7年・表2(不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価・件数構成比)。

大手は証券化という、案件が定期的に発生する法人業務で回っています。地場の事務所は売買が中心。同じ「不動産鑑定士」という看板でも、立っている市場が別物です。ここを混同したまま「大手はホームページが立派だから」と真似ても、届く相手が違うので反応は出ません。

営業の観点で読むなら、こう受け取ってください。証券化のような大口の反復案件は、いまから個人事務所が正面から取りにいく場所ではない。代わりに、売買・相続・賃料・補償といった1件ごとに事情が違う案件のほうが、地場の事務所には勝ち目があります。土地勘と、その場で相手に説明できる力が効く領域だからです。

2.3 依頼先の7割は法人。個人からの直接依頼は4.9%

3つ目は、依頼元の顔ぶれです。「民間案件を増やす」と考えたとき、多くの方が思い浮かべるのは相続で困っている個人の顔かもしれません。実際の内訳は、その想像とかなり違います。

令和7年の価格評価(鑑定評価基準に則った鑑定評価)77,420件の依頼先は、不動産関連事業法人等が34.8%、その他民間法人が20.6%、地方公共団体等が18.9%、金融機関が15.2%、国・独立行政法人等が5.6%。そして個人からの直接依頼は4.9%です。民間法人の3区分を合わせると70.6%になります。

ただし、登録区分で割ると景色が変わります。知事登録業者に限れば個人からの依頼は8.6%、地方公共団体等が33.8%。大臣登録業者では個人はわずか1.1%で、不動産関連事業法人等が58.7%を占めます。地場の事務所にとって、個人の入口は捨てなくてよい。大手が取りにいかない領域が、そこに残っています。

営業先を考えるうえで大事なのは、個人向けと法人・専門家向けを同じ言葉で語らないこと。相手が違えば、判断の材料も、決裁までの道のりも変わります。

2.4 案件の種類で、1件あたりの報酬は2倍変わる

4つ目。営業の的を絞るなら、金額の相場も知っておきたいところです。件数と報酬の総額から1件あたりの平均を計算すると、次のようになります。

依頼目的 件数 1件あたりの平均報酬
証券化 20,984件 約52.2万円
財務諸表 5,384件 約48.0万円
資産評価 9,878件 約44.0万円
売買 22,186件 約38.5万円
補償 6,706件 約35.6万円
担保 10,388件 約26.8万円
鑑定評価 全体 77,420件 約42.2万円
(参考)基準に則らない価格等調査 96,902件 約12.3万円

出典:国土交通省「不動産鑑定業者の事業実績」令和7年・表2をもとに、依頼目的ごとの報酬総額を件数で割って算出(1,000円未満を四捨五入)。表2の区分は7つで、上の表は単価の高い順に6区分を載せています(「その他」1,894件は省略)。「鑑定評価 全体」の77,420件は、その分を含む合計です。業者単位の集計値からの平均のため、個別の受注価格を示すものではありません。

担保評価の約26.8万円と、証券化の約52.2万円。ほぼ2倍の開きがあります。もうひとつ見ておきたいのが最終行で、鑑定評価書として出す仕事(約42.2万円)と、基準に則らない価格等調査(約12.3万円)では、単価が3倍以上違うということ。この2つを混ぜて「一律いくら」と答えてしまうと、高いほうの仕事まで安いほうの相場で値踏みされます。営業の場では、必ず分けて説明してください。

ここまでの4つは、同業も同じ資料を開けば分かる話です。国土交通省のページは誰にでも開けますから、数字そのものに差はありません。分かれるのは読み方のほう。どの市場が縮み、どこが残っているのかを読み取って、打ち手に変えられるかどうかです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、同じ統計から他社と違う結論を引き出すための、市場の読み方と絞り込みの手順を扱っています。

3. 不動産鑑定士の営業ポイント1:ポジショニングを明確にする

ポジショニングとは、無競争状態で顧客に選ばれる独自の場所を決めることです。ここからが本題。価格ではなく価値で指名されるための3つのポイントを、取り組む順番に解説します。土台になるのがポジショニング、次にそれを伝える言葉、最後に単発で終わらせない仕組みづくりです。

不動産鑑定士の営業3つのポイントの流れ

3.1 「不動産鑑定士の●●です」では選ばれない

不動産鑑定士の看板を立てているだけでは、お客様から選ばれることはありません。資格はスタートラインであって、選ばれる理由にはならないからです。必要なのは、お客様があなたを選ぶ理由を明確にすること。それがポジショニングです。

ここで、差別化との違いを押さえておきましょう。差別化は「他社との違い」を追う考え方で、突き詰めるほど顧客のいない場所に迷い込む危険があります。ポジショニングが探すのは違いそのものではなく、顧客がいて、なおかつ競争相手がいない場所。どのような領域の仕事をして、どのようなポリシーで仕事に向き合うのか。まずは自分自身を掘り下げるところから始めてください。

3.2 「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」で言い切る

難しく考える必要はありません。「誰の」「どんな悩みを」「どう解決する」専門家なのか。この3つを言い切れれば、あなたの輪郭は自然に浮かび上がります。たとえば「相続した不動産をどう分けるかで悩むご家族に寄りそう鑑定士」という一言(あくまで例です)なら、頼みたい相手の顔が浮かぶでしょう。

不動産鑑定士の場合、「どの場面の困りごとに立つか」から考えると絞りやすくなります。相続や遺産分割で不動産の分け方をめぐって話し合いが止まることもあれば、同族間・関連会社間の売買で税務署に説明できる価格の根拠が要ることもあります。地代や家賃の改定・更新をめぐる交渉、離婚にともなう財産分与、そして裁判で価値そのものが争点になる場面。どれも、根拠ある評価がなければ前へ進めない局面です。この中のどこに立つのかを決めること自体が、ポジショニングになります。

「絞ると仕事が減るのでは」と不安になるかもしれません。実際は逆です。絞るからこそ、相手の記憶に残るのです。「何でもできます」は、相手の記憶の中では「何の専門家でもない」と同じ扱いになってしまいます。

ここに、もうひとつ誤解されやすい落とし穴。ポジショニングで絞るのは「認知してほしい場所」であって、実際に受ける業務ではありません。志師塾では、これを「一点集中で勝ってから全面展開する」と表現しています。相続の評価で名前を覚えてもらった鑑定士が、その関係のなかで賃料改定や担保評価の相談を受ける。入口を1つに絞り、受注後に広げる。この順番なら、絞っても仕事は減りません。

言い切る言葉に迷ったら、これまで受けてきた仕事を書き出してみるのが近道です。どんな依頼のとき、お客様は特に喜んでくれたか。報酬以上の手応えがあった仕事はどれか。過去の仕事の中に、あなたの独自の場所のヒントが埋まっています。

3.3 2つの軸を掛け合わせて、1万人に1人になる

とはいえ、1つの軸だけで一番になるのは骨が折れます。志師塾が使うのは、「100人に1人のものを2つ掛け合わせれば、1万人に1人になる」という考え方です。ゼロから唯一無二のものを生み出すのではなく、既にあるもの同士を新しく組み合わせる。これなら手持ちの材料で始められます。

不動産鑑定士のポジショニングを決める3つの軸と掛け合わせ

不動産鑑定士が使える軸は、主に次の3つです。

  • 場面の軸:相続で分ける土地/同族間・関連会社間の売買価格/賃料の改定と継続賃料/立退き・借地権・底地/担保と時価/事業承継やM&Aに伴う評価まで、幅があります
  • 依頼元の軸:税理士経由、弁護士経由、金融機関、不動産会社、地方公共団体、依頼者本人
  • 強みの軸:前職の経験、対応エリアの土地勘、扱える技術。ここは人によって中身がまるで違う

掛け合わせの例を挙げます。「賃料の改定 × 不動産オーナー本人」「同族間の売買 × 税理士経由」「借地権と底地 × 弁護士経由」。どれも一言で、誰に向けたものか分かります。

相続を軸に選びたくなるのは自然なことです。国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によれば、令和6年分の課税割合は10.4%。前年の9.9%から0.5ポイント上がりました。相続財産の金額に占める土地の割合も30.2%。市場そのものは、たしかに広がっています。

だからこそ、軸を選ぶときは、同業が集まりつつある場所を避けてください。先ほどの論点整理には、鑑定士が「今後有望と考えるコンサル業務」の集計もあります。1位が不動産の利活用に関する相談(22.0%)、2位が相続に関する相談(21.3%)。同業がいま最も狙いを定めている2領域が、まさにこの2つです。相続を選ぶなら、依頼元の軸か強みの軸を必ず重ねる。1軸のまま「相続に強い不動産鑑定士」と名乗っても、同じ名乗りに埋もれてしまいます。

3.4 目指すのは「○○といえばあなた」という第一想起

ポジショニングのゴールは、見込み客の頭の中で「この案件なら、あの鑑定士さん」と最初に思い出される状態(第一想起)をつくることです。紹介や口コミは、この第一想起から生まれます。ポジショニングが明確になると、お客様があなたの価値を理解しやすくなり、その理解が依頼へとつながっていくのです。

第一想起は、一度の発信ではつくれません。名刺の肩書き、ホームページ、士業仲間への自己紹介、送るメールの署名。すべての接点で同じ位置づけを伝え続けることで、少しずつ相手の記憶に定着していきます。接点ごとに名乗りが変わっていては、何の専門家なのか覚えようがないのです。

志師塾では、発信やセールスの前にまずこの設計を固める「ポジショニング先行」の考え方を大切にしています。ツールやテクニックより先に、順番を整えること。ここを飛ばすと、どんな営業手法も空回りします。ホームページを作る前に何を決めておくべきかは、不動産鑑定士のWeb集客の解説記事でも扱っています。

4. 不動産鑑定士の営業ポイント2:価値が伝わる言葉を磨く

伝達力とは、決めた位置づけを相手に届く言葉へ変換する力のことです。ポジショニングが決まったら、次はこの段階。志師塾でも、ポジショニングと伝達力の2つは特に徹底して磨く領域です。どれほど優れた鑑定の実力も、伝わらなければ存在しないのと変わりません。

4.1 肩書きは「専門領域+一般名称」で組み立てる

肩書きとは、あなたの価値を1秒で伝える言葉です。志師塾が教えている組み立て方は「専門領域+一般名称」。「不動産鑑定士」という一般名称の前に、専門領域を示す一言を置きます。

「借地権・底地の整理に強い不動産鑑定士」。「賃料交渉の根拠づくり専門の不動産鑑定士」。あるいは「相続でもめた土地の分け方を、根拠から支える鑑定士」という名乗り方もあります。記憶に残るかどうかを決めているのは、前に付くこの一言です。目安は13文字前後。長くなるほど、相手はもう覚えてくれません。

気をつけたいのは、この一言に業務名をそのまま入れないこと。「鑑定評価業務専門の不動産鑑定士」では、何も言っていないのと同じです。入れるべきは、相手が困っている場面の言葉になります。

4.2 自己紹介は「口コミの原稿」になる

「不動産鑑定士の●●です。趣味は・・・」という自己紹介では、あなたの価値は伝わりません。趣味の話で人柄は伝わるかもしれませんが、顧客獲得にはつながりにくいでしょう。必要なのは、自分がどのような不動産鑑定士なのかを伝える「言葉」です。

そして、自己紹介で伝えた言葉はその場限りでは終わりません。相手があなたを誰かに紹介するとき、そのまま「口コミの原稿」として、お客様や提携先まで広がっていきます。第三者へ流通するのは、あなたが最初に渡した言葉です。だからこそ「覚えやすく、言い換えやすい」一言に磨いてください。自己紹介だけで仕事を獲得する方法は、自己紹介の4つのポイントを解説した記事で詳しく読めます。

4.3 1分の自己紹介を、4つのパーツで組み立てる

交流会や勉強会で回ってくる1分の自己紹介。ここで何を話すかは、事前に決めておけます。志師塾では、300字から350字を4つのパーツに割って準備する型を使っています。

不動産鑑定士の1分自己紹介を組み立てる4つのパーツ

  • 興味喚起(10秒):質問を投げるか、肩書きの一言をそのまま置く。「相続で受け継がれる財産の3割は土地だとご存じですか」のような入り方(3.3で引いた国税庁の数字です)
  • 仕事概要(10秒):誰の、どんな悩みを扱っているか。ここは短く
  • 選ばれる理由(35秒):実績から語るか、目指している世界から語るか。相手の顔ぶれで使い分けます
  • 行動要請(5秒):名刺交換でも、後日の相談でも構いません。相手にとってほしい行動を1つだけ言う

最後の行動要請が抜けている自己紹介は、驚くほど多いものです。良い話を聞かせてもらった、で終わってしまう。何をしてほしいかを言わないかぎり、相手は動きません

もうひとつのコツは、パターンを複数持っておくこと。実績に反応する相手にはメリットから、志に共感する相手にはビジョンから。同じ内容でも入口を変えられるようにしておくと、その場の顔ぶれに合わせられます。

4.4 相手によって刺さる言葉は変わる

同じ強みでも、相手が変われば選ぶ言葉は変わります。相手が経営者なのか、相続に直面したご家族なのか、税理士や弁護士といった提携先なのか。それぞれ気にしていることが違うからです。経営者には事業の数字にどう効くかを、ご家族には不安がどう解消されるかを、提携先には「安心して任せられる根拠」を語る。常に相手を思い浮かべて、言葉を選んでください。

この「相手」の中でも、不動産鑑定士にとって特に大切なのが隣接士業です。理由は、民間案件の生まれ方にあります。相続の悩みはまず税理士へ、争いごとはまず弁護士へ相談され、不動産の評価が必要だと分かるのはその後の段階。だから民間案件の多くは、税理士・弁護士経由でやって来ます。エンドのお客様より先に、提携先の頭の中で「この案件ならあの鑑定士」という第一想起を取ることが、実務上の近道になるのです。

ここには、業界側の課題も重なっています。先ほどの論点整理では、地方公共団体へのヒアリング結果として「不動産鑑定士にどのような業務を依頼できるのか、地方公共団体に十分に認識されていない」という声が挙がっていました。頼み方が分からないから頼まれない。これは自治体に限った話ではありません。税理士や弁護士に対しても、「どんな案件のとき、あなたに声をかければよいか」が一言で伝わる状態をつくっておくこと。ここまで整えば、声のかかる頻度は変わってきます。

4.5 「高くても選ばれる理由」を言葉にする

価格競争を避ける最終的な答えは、「高くても、この人にお願いしたい」と思ってもらえる理由を、先に言葉で用意しておくことです。コツは、資格や業務内容ではなく「相手の変化」を語ること。「不動産の鑑定評価を行います」ではなく、「いくらと見るかで揉めていた話し合いが、根拠のある数字で前に進むようになります」。手に入る未来が具体的に見えるほど、価格は判断材料の中で小さくなっていきます。

あなたに頼むと何が手に入るのか。なぜ他の鑑定士ではなく、あなたなのか。この2つの問いに相手の言葉で答えられるよう準備しておきましょう。それができたとき、価格はあなたが決められるものになります。

5. 不動産鑑定士の営業ポイント3:単発で終わらせない仕組みをつくる

営業の仕組みとは、毎回ゼロから売り込まなくても相談が入ってくる状態のことです。ポジショニングと言葉がそろったら、最後はここに取りかかります。毎回がんばる営業から、見込み客のほうから「お願いしたい」とやって来る流れへ。ここまで来ると、価格交渉とはほぼ無縁になります。

不動産鑑定士の営業を単発で終わらせない3つの視点

5.1 会う前に価値が伝わる接点をつくる

指名される鑑定士は、商談の前から選ばれています。ブログやセミナー、紹介などを通じて、会う前に専門性と考え方が伝わっているからです。初対面の商談が「検討の場」ではなく「確認の場」になる。これが仕組み化の目指す姿です。

接点のつくり方はいろいろあります。専門分野の記事を書きためる、小さな勉強会を開く、提携先に情報提供を続ける。一つひとつは地味でも、ポジショニングと言葉が固まっていれば、すべてが同じ方向にあなたの評判を積み上げてくれます。Webで見込み客と出会い、発信で信頼を育て、商談では最後の背中を押すだけ。少人数の勉強会や相談会を接点として使う手順は、不動産鑑定士のセミナー集客の解説記事にまとめています。

発信には、追い風も吹いている状況です。不動産テックの発展で、AIによる無料の簡易査定は誰でも使えるようになりました。「価格の目安」がタダで手に入る時代に、それでも鑑定評価書が求められるのはなぜか。税務署や裁判所、金融機関に通用する、国家資格者が責任を負った根拠の文書だからです。機械の査定が広がるほど、「数字に責任を持つ専門家」の価値はむしろ際立ちます。この違いを自分の言葉で語れることが、これからの鑑定士の営業力です。

5.2 紹介は「待つもの」ではなく「設計するもの」

紹介が生まれる仕組みも、設計できます。ここで押さえておきたいのは、紹介はメリットではなく感情から生まれるということ。「この人に頼めば得ですよ」と説明されただけでは、人は誰かを紹介しません。志師塾では、紹介を生む感情を5つに整理しています。

不動産鑑定士に紹介が生まれる5つの感情トリガー

  • 自慢:「珍しい人を知っている」と言いたくなる材料があるか。尖った専門領域や希少な経歴は、そのまま紹介者の自慢話になります
  • 感謝:紹介してくれた相手に、きちんと返せているか。忙しそうに見えるだけで「もう紹介しなくていいのかな」と思われる
  • 面白さ:人に話したくなる話を持っているか。プロフィールでも、業界の裏側の話でも構いません
  • 感動:事前に期待されていた水準を、実際の対応が上回っているか。本業の外にある小さな心配りが効きます
  • 金銭的な仕組み:提携先と組むなら、双方が納得できる形にしておく

加えて、紹介してほしい相手を具体的に伝えておくこと。「どなたか紹介してください」では、相手の頭に誰も浮かびません。「相続した土地の分け方でご家族が揉めている、という話を聞いたら教えてください」なら、相手は心当たりを探せるはずです。あなたのポジショニングが一言で伝わる状態になっていれば、紹介する側も動きやすくなります。

紹介者は数より濃さです。薄い付き合いの100人より、あなたの仕事を理解している10人。そのほうが実際に案件は動きます。

5.3 単発の鑑定で終わらせず、継続につなげる

もうひとつ大切なのが、受注後の設計です。鑑定評価の仕事は単発で完結しがちですが、資産を持つお客様や企業には、その後も価格の見直しや資産の入れ替えといった相談ごとが続きます。「不動産のことで困ったら最初に相談される相手」というポジションを取れれば、収益は安定し、新規営業に追われない体質になっていきます

この差を生んでいるのは、能力ではなく契約の形のほうです。先ほどの論点整理には、他の士業へのヒアリング結果として「特に単発の依頼になりがちな不動産鑑定評価と異なり、継続的な顧問契約になりやすく、顧客からの相談を受けやすいのではないか」という、公認会計士・税理士についての指摘が載っていました。発注する側からも「不動産鑑定業務についても、顧問弁護士のように年間を通じて相談できる体制があることが望ましい」という声が出ています。相手は継続的な相談相手を求めているのに、こちらが用意していないだけ。

継続の形は、顧問契約だけとは限りません。決算期ごとの資産評価の見直し、賃料改定のタイミングでの相談、相続対策の定期的な棚卸し。お客様の節目に合わせて「次に会う理由」を用意しておくだけでも、関係は途切れなくなります。高単価で受注し、長く伴走する。この2つがそろって、はじめて価格競争のジレンマから抜け出せます。

ここまでが、不動産鑑定士に寄せた営業の話です。先生業に共通する顧客獲得の土台をまとめて押さえておきたい方は、無料の書籍「先生業の顧客獲得を成功させる7つの能力」(一部ダウンロード)をご活用ください。セミナーはまだ早いという方の、最初の一歩としてどうぞ。

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6. 不動産鑑定士の商談を「売り込み」から「診断」に変える

商談とは、相談に来た相手の問題を一緒に明らかにし、依頼するかどうかを決めてもらう場のことです。ポジショニングも言葉も接点も整えたのに、最後のここで取りこぼす。そんなケースは少なくありません。3つのポイントに続く、実務の詰めどころを見ていきます。

6.1 教えすぎると「自分でやってみます」で終わる

まず、多くの先生業が落ちる穴から。相談の場で親切心から惜しみなく答えてしまうと、相手は満足して帰り、最後にこう言うのです。「ありがとうございます。1回自分でやってみます」。

親切に答えるほど、片づいてしまうのは相手の宿題のほうです。商談は、解決策を教える場ではありません。問題点を明らかにし、解決したいという意欲を高める場です。この線引きができていないと、良い相談ほど受注から遠のく、という逆転が起きます。相手の課題を診断し、解決の道筋が見えたところで判断してもらう。医師が診察でやっていることと同じ構造です。

6.2 商談を6つのステップで進める

志師塾が教えている個別相談の進め方は、6つのステップに分かれています。鑑定士の相談の場にも、そのまま当てはめられる型です。

不動産鑑定士の商談を進める6つのステップ

  1. 関係性の想起:どこで自分を知ったのかを聞きます。記事を読んで来られたなら、その内容から入る
  2. 個人的な関係構築:現在の状況から過去へさかのぼり、また現在へ戻す。相手の背景が分かるほど、評価の前提も正確になります
  3. 目的の合意:「今日は問題点を明確にするところをゴールに進めますが、よろしいですか」と最初に確認する
  4. 問題の深掘り:「なぜですか」で縦に掘り、「他にありませんか」で横に広げる。同じ話が回り始めたら、そこが相手にとっての最深部
  5. 本気度の確認:「それが本当に問題だとご自身で思われますか」と、相手の言葉で言ってもらう
  6. 選択肢の提示:提案ではなく選択肢を並べる。「ご自身で進める方法もありますし、こちらで評価書までお出しすることもできます。どうされますか」

ポイントは3番目と6番目。入口で目的をそろえ、出口では押さない。この2つを守るだけで、商談の空気はまるで変わります。売り込まれていないのに前へ進む、という状態が自然につくれるからです。

相手から途中で「で、いくらになりますか」と聞かれることもあるでしょう。ここで即答すると、診断が終わる前に価格の話に切り替わります。「見積もりを正確に出すために、あと2つだけ確認させてください」と、深掘りに戻してください。

6.3 コンサル業務の4件に1件は、報酬ゼロで終わっている

値段の話に移ります。これは感覚論ではなく、数字で確かめられる話です。先ほどの論点整理には、コンサル業務に取り組んでいる鑑定業者へのアンケート結果(221業者・386件の業務)が載っています。それによれば、報酬を得ているのは288件で74.6%。残る98件、全体の25.4%は報酬ゼロでした。

興味深いのは、報酬を得ていない理由のほうです。上位3つが「あくまで無償サービスとして行いたいから」(24件・19.7%)、「コンサル業務から報酬を得ること自体、検討したことがなかったから」(23件・18.9%)、「コンサル業務に係る報酬の見積り方法がわからないから」(21件・17.2%)。

出典:国土交通省・公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会「業務領域の拡大等を通じた不動産鑑定士の担い手確保に向けて(論点整理)」(令和7年3月24日)。選択式・複数回答可、合計122件。

値切られた結果ではありません。付けていないのは、こちら側の値段のほう。同じ資料の他士業ヒアリングでは、公認会計士・税理士について「特に企業には報酬を払うものという意識が根付いており、報酬を得られないことはあまりない。最初に見積りを求められることも多い」という指摘も出ていました。差を生んでいるのは市場ではなく、慣習と段取りのほうです。

同じ資料には、地方で活躍している鑑定士からの声も載っています。「相談にお金を払ってくれるお客様のほうが仕事につながる。報酬は割り切って受け取るべきである」。無料で相談を受け続けることは、相手のためにもなっていない、という指摘です。

6.4 値段は「先に決めて、順番に伝える」

では、どう値段を付けるか。決めるのは3つだけです。どこまでが無料か、そこから先はいくらか、何を渡すのか

たとえば、最初の30分の相談までは無料。そこから先の資料確認や現地の下見が入る段階で見積もりを出す。渡すものは口頭の助言ではなく書面にする。この3つを先に決めておけば、切り出しにくいという問題はほぼ消えます。言いにくいのは、その場で決めようとするからです。

伝え方にも順番があります。志師塾が教えているのは「先に相場観を置いてから、自分の金額を言う」という考え方。いきなり金額だけを提示すると、相手には比べる基準がないので高く感じられます。先に「裁判所に出す鑑定評価書なら一般的にこのくらい」「身内の話し合いに使う価格調査ならこのくらい」と幅を示しておけば、あなたの金額はその中の一点として受け取られます。

2.4で見たとおり、鑑定評価書と価格等調査では平均の単価が3倍以上も違うのです。この2つを分けて案内すると、相談の入口も下がります。裁判や税務署への提出に使うなら鑑定評価書が要ります。身内での話し合いの材料が欲しいだけなら、簡易な価格調査で足りることが多いはずです。まず軽いほうで関係をつくり、必要になった段階で正式な評価へ進む。志師塾の言い方をすれば、フロントとバックエンドの設計です。いきなり高額の商品だけを提示すると、相手は逃げたくなります。

6.5 断られる理由を、先回りして潰しておく

商談で断られる理由は、無限にあるように見えて、実は3つに分類できます。志師塾での整理は、「なぜ買うのか」「なぜあなたから買うのか」「なぜ今買うのか」の3つです。

  • なぜ買うのか:問題の切実さが伝わっていない。事例で「放置するとどうなるか」を先に見せておくのが早道
  • なぜあなたから買うのか:他の鑑定士との違いが分からない。価格以外の判断基準を、こちらから教えておきます
  • なぜ今買うのか:期限のない話は先送りされる。申告期限、決算期、更新の時期といった外部の事情を確認しておく

大切なのは、これを商談の終盤ではなく、最初のうちに済ませておくことです。断られたあとに説明しても、言い訳に聞こえます。よく出る質問と答えを書き出して、ホームページや資料に先回りで載せておくだけでも効果があります。

もうひとつ、受けない相談を決めておくことも営業の一部です。相見積もりの1社目として声がかかる案件は、時間を吸い取ったうえで受注に至らないことが多い。問い合わせの入口に条件を書いておくだけで、届く相談の中身は変わります。減るのを恐れて何も書かないほうが、かえって損をします。

7. 不動産鑑定士の営業に成功した志師塾卒業生2人の実例

志師塾とは、先生業に特化して集客と顧客獲得を教えるビジネススクールです。ここで紹介する2人は、いずれもそこで学んだ不動産鑑定士。3つのポイントが実際にどう形になるのか、公開済みのインタビュー記事から引いて見ていきます。

7.1 坂田一郎さん|「賃料の据え置きに悩むオーナー」に絞り、売上200万円増

新潟県を拠点に、合同会社坂田不動産鑑定を営む坂田一郎さん。地元の大手ゼネコンで営業を中心に30年、地盤改良会社の現場で12年。土と建物を見続けてきた40年以上の経験を鑑定眼に変えようと、50歳を過ぎてから勉強を始め、8年かけて資格を取得し、60歳で独立されました。

独立後は官公庁の案件を中心に実績を重ねます。転機になったのは、ベテラン鑑定士との共同鑑定で力量の差を痛感したことでした。「不動産鑑定士として上達するには、とにかく案件の数をこなして知見やノウハウを蓄積するしかありません。そのためには、官公庁の案件だけでは限界があるので、民間案件の獲得が必要と考えました」。ところが新潟には民間案件が少なく、多くの鑑定士が営業を断念している地域。坂田さんも苦戦が続きました。

志師塾で最初に取り組んだのが、自分の人生を3万字で書き出す課題です。「自分のことは、意外と自分では分かっていないものです。書くことによって、自分がどのような人間で、何を大切にしてきたのかが見えてきました。鑑定の判断に長年の現場経験が活きていることを再認識し、独自のポジショニングの土台になりました」。

そこから定めた顧客像が「賃料の据え置きに悩む不動産オーナー」。物価が上がるなかでも、借主との関係や交渉の難しさから賃料を上げられずにいるオーナーに、鑑定士として論理的な根拠を渡し、交渉のパートナーになる。3.3でいえば「場面の軸(賃料の改定)」と「依頼元の軸(オーナー本人)」の掛け合わせです。オーナー向けの雑誌『家主と地主』を購読して市場のニーズを分析し、Facebookでは親しみやすい漫画形式で賃料改定の重要性を発信されました。

もう1つの軸も持っておられます。全国の不動産鑑定士およそ8,000人のうち、ドローンの実務に精通した45人のひとり。国土交通省が定める最上位資格「一等無人航空機操縦士」を取得し、10万平米規模の山林の空撮など、従来では難しかった調査に使っています。「100人に1人を2つ掛け合わせる」という考え方が、そのまま形になった例です。

結果は、200万円以上の売上増加。ホームページを作って待つだけの営業から、顧客の要望から逆算して強みを提示する形へ切り替えたことが効きました。いまは売上高1,500万円を2倍にすることを中期目標に掲げています。詳しくは坂田一郎さんのインタビュー記事をご覧ください。

7.2 入村匡哉さん|紹介が6割。費用の話から始めない商談の型

「全国の不動産価値の裁判官的役割を果たす不動産鑑定士」として活動する入村匡哉さん。平成21年に入村不動産鑑定を設立し、平成26年に三鷹事務所を吉祥寺へ移して、現在は吉祥寺と神田の2拠点で事業を展開。不動産鑑定の実績は800件を超えます。業務の柱は3つ。土地建物の相続・贈与・財産分与、家賃地代の交渉、そして士業や法人向けの不動産評価サポートです。

注目したいのは、お客様の6割が紹介だということ。交流会やコミュニティに参加するだけでなく、自ら交流会を主催し、そこからの問い合わせをサポートにつなげておられます。5.2で見た「紹介は設計するもの」を、地でいく形です。

商談の進め方も、6章で見た型と重なります。入村さんが選ばれる最大の理由は「安心サポート」。相談を受けたとき、一律いくらといった費用の話からは始めません。お客様の予算や、トータルで何をサポートできるのかを、最初のヒアリングに時間をかけて確かめ、納得いくまで説明されるそうです。値段から入らないという一点だけでも、価格で比べられる商談からは抜け出せます。

鑑定評価をして終わりにしない設計も持っておられます。お客様の状況に合った税理士や弁護士を紹介できるネットワークを構築し、不動産の仲介、土壌汚染調査、アスベスト調査といった周辺の専門家とも業務提携。トータルソリューションでサポートするようになってから、満足度も上がったといいます。

受ける相談を選ぶ工夫も徹底されています。「相見積もりの問い合わせは受付していません」「営業目的の電話はお断りしています」と問い合わせフォームに記載したところ、欲しくない問い合わせがなくなったそうです。「入れたら問い合わせなくなっちゃうかなと思ったんですけど、大丈夫でした。条件を明確にすることにより、あやふやな人を排除できる」。見積依頼の連絡には「まずお会いしましょう」と伝えるとのこと。会わずに資料だけで見積もりを出す鑑定士が多いなかで、この一手が差になっています。

いまは弁護士・税理士へのダイレクトなアプローチに力を入れ、チラシやDMも使いながら、士業向けの顧問プランもこれから提案していく予定とのこと。「私たちの業界、不動産鑑定士は知名度が低いです。色んなことができますが、自分から提案していかないと業界自体が成長しないと感じています」。詳しくは入村匡哉さんのインタビュー記事で読めます。

7.3 2人に共通していたこと

拠点も年齢も、得意分野もばらばら。それでも重なる点がありました。

  • 手法より先に、名乗りを変えた:坂田さんは3万字の棚卸しから、入村さんは「裁判官的役割」という一言から。道具の話はそのあとです
  • 受ける相手を選んだ:オーナーに絞る、相見積もりを断る。間口を狭めた結果、届く相談の中身が変わりました
  • 金額の話を、商談の入口に置いていない。先に問題を確かめ、値段はそのあと

※上記は志師塾を受講された方の実例です。同様の成果を保証するものではありません。

坂田さんも入村さんも、この名乗りを独学でひねり出したわけではありません。外から見た自分の強みを、人に言葉にしてもらう。そこを通ったことが、2人の共通点です。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーは、その「外からの目」を先生業どうしで持ち寄る場になっています。

8. 不動産鑑定士の営業でよくある質問

不動産鑑定士の営業でよくある質問は、営業への苦手意識・営業先の選び方・値段の切り出し方に集まります。答えるのは、志師塾に届く相談から選んだ6つです。

8.1 営業が苦手な不動産鑑定士でも、民間案件は取れますか?

取れます。売り込みが苦手なら、売り込まない形をつくればよいだけです。会う前に専門性が伝わる接点をつくり、商談では相手の問題を診断する。志師塾が教えている個別相談の6ステップは、押さずに受注するための型です。実際、卒業生の入村匡哉さんはお客様の6割を紹介から得ています。

8.2 地方の不動産鑑定士でも営業は成り立ちますか?

成り立ちます。国土交通省と日本不動産鑑定士協会連合会の論点整理によれば、事務所の所在地で1人あたりの概算報酬額を比べても、都市部12,365千円・地方部12,716千円とほとんど変わりません。差がつくのは地域ではなく、仕事の取り方です。志師塾の卒業生である坂田一郎さんは、民間案件が少ないとされる新潟で「賃料の据え置きに悩むオーナー」に絞り、売上を200万円以上伸ばされました。

8.3 不動産鑑定士の営業先は、個人と法人のどちらを狙うべきですか?

両方の入口を持ち、語り方を分けてください。令和7年の不動産鑑定業者の事業実績では、鑑定評価の依頼先の70.6%が民間法人で、個人からの直接依頼は4.9%です。ただし知事登録業者に限れば個人からの依頼は8.6%で、大臣登録業者の8倍近くにあたります。地場の事務所にとって個人の入口は残っています。税理士・弁護士・金融機関へ向けた語り方は、個人向けとは別に用意してください。

8.4 相談は来るのに受注につながりません。何を直せばよいですか?

相談の場で教えすぎている可能性が高いです。解決策を丁寧に説明しきると、相手は満足して「1回自分でやってみます」となります。商談のゴールを「問題点を明確にすること」に置き直してください。入口で「今日は問題点を明確にするところをゴールにします」と目的をそろえ、出口では提案ではなく選択肢を並べる。この2つで空気が変わります。

8.5 無料の相談から、どうやって有料の仕事に切り替えますか?

その場で切り出そうとするから難しくなります。先に3つ決めておいてください。どこまでが無料か、そこから先はいくらか、何を渡すのか。国土交通省・日本不動産鑑定士協会連合会の調査では、コンサル業務の25.4%が報酬ゼロで、その理由の上位は「無償でやりたい」「報酬を得ること自体、検討したことがなかった」「見積り方法がわからない」でした。値切られているのではなく、値段を付けていないだけの状態です。

8.6 不動産鑑定士の営業は、成果が出るまでどのくらいかかりますか?

入口ごとにかなり違います。既存の依頼元や提携先への声かけは数週間で反応が出ることもあり、検索からの流入は半年から1年見ておくのが現実的。早く効くものと時間のかかるものを同時に走らせます。目先は人づてで作り、その裏で発信を育てる。この二本立てが、いちばん続けやすい進め方です

9. まとめ:不動産鑑定士の営業は「選ばれる理由づくり」から

不動産鑑定士の営業でやることは、選ばれる理由を決め、それを届く言葉と仕組みに落とし込むことに尽きます。押さえるポイントを、3つに整理しました。

  • ポイント1:ポジショニングを明確にする。誰の・どんな悩みを・どう解決するかを一行で。軸は2つ掛け合わせます
  • ポイント2:価値が伝わる言葉に磨く。肩書きは「専門領域+一般名称」、自己紹介はそのまま口コミの原稿になります
  • ポイント3:単発で終わらせない仕組みをつくる。接点・紹介・継続の3つ

そのうえで、後半では商談と値段の話を足しました。教えすぎると受注が遠のくこと。6つのステップなら、押さずに前へ進められます。そして、コンサル業務の4件に1件が報酬ゼロで終わっている現状も、値段の付け方と伝える順番で変えられます。

統計が示していたのは、鑑定士1人あたりの報酬が事務所の型で4.4倍違い、しかもその差は地域ではないという事実でした。いちばん上のポジショニングが決まれば、残りは自然に形になっていきます。逆にここが空白のままだと、どれだけツールを増やしても成果は積み上がりません

明日からの一歩として、この3つを試してみてください。

  1. 「誰の・どんな案件を・どう解決する鑑定士か」を一行で書いてみる
  2. 直近3件の依頼を思い出し、依頼者が最初に使った言葉をそのまま書き出しましょう
  3. 次の相談で、無料の範囲と有料になる範囲を先に口に出してみる

あわせて読みたい記事です。

ここまで見てきたとおり、営業の成否は商談で価格の話が始まる前に、ほぼ決まっています。決め手になるのは「誰に、何と名乗るか」。その一行をどう決めるかを、志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、先生業の実例つきで解説しています。

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この記事について

監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)。士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化した集客・顧客獲得支援を行い、これまでに3,200名を超える先生業の方を支援してきました。本記事は、不動産鑑定士の受講生・卒業生への支援で得た知見と、国土交通省・公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会・国税庁の公表資料をもとに構成しています(公的データの確認日:2026年8月26日/支援人数の原本確認日:2026年8月16日)。

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