
社労士のWeb集客がうまくいかないとき、直すべきなのは発信の量ではありません。発信している「土俵」のほうです。手続き代行の速さと安さを伝える発信を続ける限り、比べられる物差しは料金だけになります。届ける相手も、語る中身も変えないまま更新頻度だけ上げたところで、反応は返ってこないのです。
働き方をめぐる問題は、あちこちで起きています。労働時間、ハラスメント、賃金、雇用の形。当事者だけでは片づかない場面は、これからも増えます。ところが、労働問題への関心の高まりが、そのまま社労士への依頼につながっているとは限りません。関心が集まっても「誰に相談すればいいのか」が分からなければ、経営者はあなたにたどり着けないからです。
この記事では、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得支援を専門としてきた志師塾が、社労士のWeb集客を成果につなげる4つの手順を解説します。Webが難しくなる構造から、ポジショニングの決め方、言葉の磨き方、ツールのつなぎ方、そして労務顧問という継続の形まで、取り組む順番のとおりに並べた構成です。あわせて載せているのは、公的統計と、志師塾を卒業した社労士3人の実例です。
読み終えるころには、価格勝負に巻き込まれないための道筋がはっきり見えます。まずは、社労士のWeb集客が難しくなる理由から確認しましょう。
目次
土俵を移すというのは、書く場所を変えることではありません。誰に向けて、何の専門家として立つかを決め直すことです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その決め直しをどの順番で進めるかを扱っています。
1. 社労士のWeb集客が難しい4つの理由
社労士のWeb集客とは、労務の困りごとを抱えた経営者に、Web上の接点を通じて「この人に相談しよう」と決めてもらうまでの設計です。ホームページを作ることでも、記事を量産することでもありません。まずは、その設計がなぜ難しくなるのか。理由を4つに分けて見ていきます。
1.1 関心の高まりが、そのまま依頼にはならない
労働に関する話題は、ニュースでも日常でもよく耳にするようになりました。ただ、経営者が「うちも何とかしなければ」と感じた瞬間に、社労士という選択肢が浮かぶとは限りません。就業規則の不備を抱えたまま、誰にも相談せずに数年が過ぎる会社は珍しくないのです。
関心と依頼の間には、思っているより深い溝があります。この溝を埋めるのは、制度の解説ではありません。「この会社の、この困りごとを解ける人だ」と分かる情報のほうです。制度の説明はすでに行政のサイトに載っていて、そこで足りているからです。

1.2 一般的なWebマーケティングは社労士の商売と噛み合わない
世に出回るWebマーケティングの多くは、形のある商品を一般消費者に売ることを前提にしています。買い物のようにクリックで決まる商品と、経営者が腹を割って相談する専門サービスでは、決まるまでの過程がまるで違うのです。
先生業のWeb集客では、「知る・信じる・相談する」という段取りを設計します。手法だけを真似ても届かないのは、この段取りが抜けているから。広告の運用やSEOの技術を先に覚えても、信じてもらう工程が空白のままなら、問い合わせは増えません。
もうひとつ噛み合わないのが、購入までの回数です。日用品なら1回の接触で決まりますが、労務顧問は月額で何年も続く契約。経営者は会社の内側を見せる相手を選ぶことになるので、判断は慎重になります。1回で決めさせようとする設計は、この商売とは相性が悪いのです。
1.3 手続きという入口が、制度の側から細っている
かつては、社会保険や労働保険の手続き代行が事務所の入口でした。書類の作成と提出に手間がかかるからこそ、外に出す意味があったからです。電子申請と給与計算ソフトが広がったいまは、小さな会社でも自社で片づけてしまう場面が増えました。
この流れを進めているのは、事業者側の都合だけではないのです。厚生労働省の「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます」によると、資本金・出資金の額が1億円を超える法人などの特定法人は、被保険者資格取得届や算定基礎届といった一部の手続を電子申請で行うことが義務になりました。同じ資料には「社会保険労務士や社会保険労務士法人が、対象となる特定の法人に代わって手続を行う場合も含まれます」と明記されています。行政手続コストの削減という方針のもとで、紙の手間そのものを減らす方向に制度が動いているわけです。
義務化の対象は大きな法人に限られるので、小さな会社を顧問先に持つ事務所がすぐ困るわけではありません。ただ、方向としては同じです。手間が減れば、手間を肩代わりする仕事の値段は下がります。値段を下げて受け続けるか、別の入口を用意するか。選ばれる理由を作業の速さ以外に持てるかどうかが、これからの分かれ目になります。Webは、その「別の理由」を伝えるための場です。
1.4 顧問先の中心は「29人以下の会社」。Web集客の常識とはずれている
4つ目は、世の中のWeb集客の話が前提にしている企業像と、社労士の顧客像がずれていることです。ここは数字で確かめられます。
総務省の令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)では、自社のホームページを開設している企業の割合は93.3%。「企業はほぼ全社がWebを持っている」という前提は、ここから来ています。ただしこの調査の対象は常用雇用者100人以上の企業で、有効回答は2,489社です。
社労士の顧客層は、そこから大きく外れます。全国社会保険労務士会連合会の2024年度 社労士実態調査によると、開業社労士が受託している顧問契約を従業員規模別に見た割合は、29人以下が63.9%、30人以上99人以下が20.9%。100人以上は合わせて7.0%にとどまります。

社労士が向き合う会社の8割超は、大企業向けのWeb施策論が想定していない規模です。専任の広報も情報システム部門もなく、経営者が自分で検索し、自分で決めます。意思決定者が1人だから、届けば速い。ここは小さな会社ならではの利点です。逆に、その1人に届かなければ何も起きません。だからこそ、施策の数を増やすより、その1人に向けた立ち位置を決めるほうが先になります。
2. 社労士がWeb集客に取り組む3つの理由
難しさを4つ挙げましたが、それでも志師塾がWebをすすめるのは、社労士の働き方と相性が良いからです。理由を3つに整理しました。

2.1 Webに説明と営業を担わせる
社労士の仕事の中身を、毎回あなた自身が一から説明していては、時間がいくらあっても足りません。就業規則の考え方、顧問で何をするのか、料金の根拠。これらをWeb上に置いておけば、あなたが眠っている間も説明を続けてくれます。
面談の場で説明に費やしていた時間が、相手の話を聞く時間に変わる。成約までの流れ全体が軽くなります。とくに一人で事務所を回している場合、この効果は大きいところです。同じ実態調査によれば、開業社労士の事務所は「1人」が56.4%、平均の従業員総数は2.7人。営業だけを担当する人を置ける事務所は多くありません。
2.2 Webは見込み客を育てる仕組みになる
スポットの手続きで顧客をつかんでも、案件が終われば関係はそこで止まりがちです。口コミで広がれば楽ですが、なかなかそうもいきません。1人の顧客に仕事の全体像を伝えても、それが横に広がる保証はないからです。
Webを土台にした集客は違います。記事やメールでメッセージを届ける仕組みがあれば、多くの見込み客の関心を同時に育てられる。出会った瞬間に契約にならなくても、関係を切らさずに温めておけるのが強みです。ここが個別の営業では届かないところ。1人ずつ会って回る営業は、会った数がそのまま上限になります。仕組みで届けるなら、100人でも1,000人でも同じ手間で関係を保てるのです。
2.3 価格勝負に陥らずに済む
Webで顧客の基盤をつくると、同時にあなたの立ち位置も伝わっていきます。「労務のことなら、この人」という認識が広がれば、比べる物差しが価格だけになることはありません。
手続き代行の単価は、電子化が進むほど下がる方向に押されるものです。そこで勝負を続けるより、相談と予防の価値を伝えて選ばれるほうが、長い目で見て仕事は続きます。値段を下げずに済むかどうかは、交渉の技術ではなく、出会う前にどう認識されていたかで決まる。ここがWebの担当範囲です。
もうひとつ、小さな会社ならではの事情があります。決裁者が社長ひとりなので、社内稟議のための比較表が要りません。相見積もりを取るのは「誰に頼めばいいか分からないとき」で、頼みたい相手が先に決まっていれば、そもそも比較は起きないのです。Webの役割は、比較表に載る前に思い出されること。ここを外すと、どれだけ丁寧な料金ページを作っても料金で比べられます。
3. 社労士のポジショニングで「選ばれる理由」を決める(手順1)
ここからが実際の手順です。ポジショニングとは、無競争状態で顧客に選ばれる独自の場所を見つけること。志師塾がホームページやSNSといった道具に手を付ける前にこれを固めるのは、道具は選ばれる理由が決まってはじめて力を発揮するからです。
3.1 「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」で言い切る
ポジショニングは、難しく考える必要はありません。「誰の」「どんな悩みを」「どう解決する」社労士なのか。この3つを言い切れれば十分です。「多店舗展開する飲食店の、シフトと採用の悩みに伴走する社労士」のように絞れば、当てはまる経営者には強く届きます。
絞ると仕事が減りそうに感じるかもしれません。実際は逆です。「労務全般に対応します」は、相手の記憶の中では「何の専門家でもない」と同じ扱いになってしまうからです。何でもできるは、何にもできない。ここだけは負けないという場所を1つ作ってから、全面展開へ広げる順番になります。
3.2 絞り方は「100人に1人」を2つ掛け合わせる
志師塾では、1万人に1人の存在をゼロから目指すのではなく、100人に1人のものを2つ組み合わせて1万人に1人をつくるという考え方を使います。1つの軸で突出しようとすると苦しいですが、2つ重ねればライバルはかなり減るのです。
社労士で使える軸は、大きく3種類。業種(介護、飲食、建設、医療、運送)、会社の規模、テーマ(採用と定着、労務トラブルの予防、障害年金、就業規則、外国人雇用)です。この中から2つを掛け合わせます。

規模を軸にするなら、節目そのものを名乗りにする手があります。常時10人以上の労働者を使うようになると、就業規則の作成と届出が義務になります(労働基準法第89条)。だから「社員が10人になったときの就業規則」は、経営者側にも分かる境目です。前職で人事や現場を経験している方なら、その業界がそのまま強い候補になります。同じ業界の言葉が通じる相手に、長い説明は要らないものです。
軸を選ぶときの注意は3つあります。1つ目は分かりやすさが最優先であること。経営者の頭の中にすでにある判断基準を使わないと、説明に時間がかかって伝わりません。2つ目は、ライバルと同じ売りは売りにならないこと。「丁寧」「親身」は全員が言っているので、区別の役に立たないのです。3つ目は、売りを増やしすぎないこと。4つも5つも並べると、相手は1つも覚えられません。2軸が基本と考えてください。
決め方に迷ったら、これまでに受けた相談を紙に書き出し、業種と相談内容で並べ替えてみてください。たいてい、はっきりした偏りが出ます。その偏りは、あなたが自然に選ばれてきた場所を示しています。
3.3 実際にやる業務は絞らない。認知してほしい場所だけ絞る
絞ることへの抵抗は、たいてい「受けられる仕事が減る」という誤解から来ています。志師塾が伝えているのは、そこではありません。絞るのは、お客様に認知してほしい場所だけ。実際にやる業務は絞らなくてよいのです。
入口を1つに絞ると、紹介する側が「この件ならあの人」と説明しやすくなります。そして、紹介で入った案件は最初の依頼だけで終わりません。信頼が生まれたあとは、周辺の相談がまとめて回ってくる。絞ったのは看板であって、引き受ける仕事の幅ではないからです。
社労士なら、こう考えられます。入口は「介護事業所の採用と定着」に絞る。相談が来て信頼が生まれたあとで、給与計算も手続きも助成金も引き受ける。入口の看板と、業務の幅は別物。ここを分けて考えられると、絞ることへの恐怖はかなり小さくなります。
3.4 目指すのは「この件ならあなた」という第一想起
ポジショニングのゴールは、経営者の頭の中で「労務のこの件といえば、あの社労士さん」と最初に思い出される状態(第一想起)をつくることです。紹介も口コミも、ここから生まれます。
第一想起は、一度の発信ではつくれません。ブランドの語源は牛の刻印。何度も何度も押すから残ります。ホームページ、ブログ、SNS、名刺の肩書。すべての接点で同じ位置づけを伝え続けることで、少しずつ定着していきます。接点ごとに名乗りが違えば、何の専門家か覚えてもらえません。
ここまでが手順1です。自分の顧問先の偏りは、自分ではいちばん見えにくいところ。第三者に並べ替えてもらうと、数分で輪郭が出てくることもあります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、この棚卸しと掛け合わせの進め方を、先生業の実例で解説しています。
4. 社労士の言葉を手続き名から「相手の変化」へ磨く(手順2)
ポジショニングが決まったら、それを届く言葉へ磨く番です。基準は資格や業務名ではなく、相手に起きる変化になります。
4.1 肩書きは「専門領域+一般名称」で組み立てる
肩書きとは、あなたの価値を一秒で伝える言葉です。「社会保険労務士」だけでは、独自のコンセプトも選ばれる理由も表現できていません。志師塾が使っている公式は「専門領域+一般名称」で、目安は13文字。
「店舗運営専門の社労士」「外国人雇用に強い社労士」のように、専門領域を前に置くだけで、名刺を受け取った相手の頭に引っかかりが生まれます。名刺がファイルの中で眠るか、必要なときに引っ張り出されるか。差はここで付きます。
後ろに置く一般名称は、「社労士」だけではないのです。相談業務を中心に据えるなら「人事労務コンサルタント」、採用の支援なら「採用定着アドバイザー」という選び方もあります。判断の基準は、あなたが名乗りたい言葉ではなく、見込み客がその言葉をどう受け取るか。「コンサルタント」に警戒感を持つ経営者が相手なら、資格名のほうが安心されます。相手によって、正解は入れ替わるのです。
4.2 キャッチコピーは「メリット・具体性・自分ごと」で作る
肩書きの次は、25文字前後のキャッチコピー。志師塾では3つの要素で組み立てます。
- メリット提示:作業ではなく、相手に残る結果を書く。「就業規則を作成します」ではなく「もめごとの芽を、就業規則の一文で先に摘んでおきます」
- 具体性:数字で見えるようにする。事実の範囲で、単位や期間を選ぶ
- To Meメッセージ:地域・業種・規模を名指しして「自分のための情報だ」と感じてもらう
「話しやすく相談しやすい社労士事務所」「御社に最適な労務管理をご支援します」。どちらも間違いではありません。ただ、読んだ側の反応は「ふーん」で終わるだけ。手に入る結果が見えるほど、価格は判断材料の中で小さくなっていきます。
4.3 発信のテーマは「相談業務」の側へ寄せる
何を書けばいいのか。ここでも実態調査が手がかりになります。過去と比べた需要の変化を業務別に見ると、「増えた(計)」が最も多いのは労働及び社会保険に関する相談業務で71.5%。次いで各種規程の作成・改定が66.2%、手続業務が59.1%と続きます。

同じ調査で受託業務の内訳を見ると、平均値は手続業務が41.5%と最大で、相談業務は14.3%。いちばん需要が伸びている領域が、売上の中ではまだ小さいという形です。ここに、発信で埋められる余白があります。

発信のネタが尽きたと感じたら、次の3つを見返してみてください。顧問先の社長が雑談の中でこぼした不安。相談の場で何度も説明することになった論点。同業と話していて意見が割れたことも、そのままネタになります。どれも、あなたにしか書けない中身です。記事づくりの進め方そのものは社労士のブログ集客で詳しく扱っています。
4.4 制度の要約で止めず「うちの規模なら何をいつまでに」まで書く
法改正や制度変更は、社労士にとって強いテーマです。ただし、条文の要約で止めてはいけません。行政のサイトに書いてあることをまとめ直しただけの記事には、読者が読む理由がないからです。
踏み込む先は決まっています。「従業員30名の会社なら、いつまでに、何を、誰が決めるのか」。ここまで書き切ると、読者の行動が変わります。制度の要約は短く済ませ、あなたの見立てと現場での勘所に文字数を使ってください。ここが同業との差になります。実際の切り口は、障害者雇用率の引き上げを切り口にした社労士の集客の記事で確かめてみてください。
制度の変化を先回りして伝える発信は、そのまま相談の入口になるものです。「まだ困っていないが、そのうち困りそうだ」と感じた経営者は、その時点であなたを覚えます。
5. 社労士のWeb集客ツールに役割を与えてつなぐ(手順3)
社労士のWeb集客ツールとは、ブログ・SNS・ホームページ・メールの4つに違う役割を割り振り、1本の線でつないだ仕組みのことです。土台と言葉が固まったら、次は届け方。ここでのコツは、ツールを増やすことではありません。それぞれに違う役割を与えて、つなぐことにあります。
5.1 ブログ・SNS・ホームページ・メールの役割分担
4つの道具には、それぞれ得意な仕事があります。

SNSは速報性があり、親しみを伝える場。ブログは、まとまった解説で専門性を伝える場です。ホームページは、変わらない情報を置いて信頼を渡す場所。メールは、すぐには決めない相手との関係を切らさないための道具になります。役割を混ぜたとたん、どれも中途半端になるのが厄介なところ。受け皿づくりについては社労士のホームページ集客で解説しています。
4つの中でいちばん軽く見られがちなのが、メールです。労務の相談は困った瞬間にしか生まれないので、困る前に出会った相手を、困る日まで覚えておいてもらう装置が要ります。記事を読んだ人にメールアドレスだけ残してもらい、月に1〜2通、法改正の要点と現場での勘所を送る。それだけで、半年後に「そういえば」と連絡が来る経路ができます。そこに売り込みを入れる必要はないのです。読んで役に立つ状態を続けるほうが、結果として相談につながります。
5.2 手を付ける順番がある(Web集客ロードマップ)
4つを同時に始める必要はありません。志師塾では、Web集客を7つのレベルに分けて順番に進めます。

レベル1が名刺・チラシと商品の準備、レベル2が紹介・交流会・SNS・名刺代わりのホームページ。ここまでで年商1,000万円には届きます。レベル3で申込ページ、レベル4でメールによる関係づくり、レベル5で動画、レベル6でSEO、レベル7で広告。順番を飛ばして先に広告やSEOへ行くと、受け皿がないまま費用と時間だけが出ていきます。
社労士の場合、レベル6のSEOは効きますが、成果が出るまでに半年から1年かかります。だからレベル2の紹介と、レベル4のメールを先に回して目先の売上をつくりながら、SEOを育てる。この二段構えが現実的な進め方です。
5.3 SNSは「探される場」でもある
SNSは発信の場だと思われがちですが、検索の場としても使われています。総務省の令和7年通信利用動向調査報告書(世帯編)によると、SNSの利用目的で最も多いのは「従来からの知人とのコミュニケーションのため」86.1%。2番目が「知りたいことについて情報を探すため」で65.6%です(複数回答・n=27,723)。
約3人に2人が、SNSを情報を探す道具として使っている。この数字は、あらゆる年齢層で2番目という位置づけでした。経営者も同じように使います。だからSNSの投稿は、知人向けの近況報告だけで終わらせず、検索されたときに答えになる形にしておく価値があります。
もうひとつ、社労士のSNSには同業・他士業に向けた顔もあるのです。税理士や弁護士、金融機関の担当者は、労務の相談を受けたときに回せる相手を探しています。経営者だけでなく、経営者の隣にいる専門家に見つけてもらう。この視点を持つと、投稿の中身は変わってきます。
5.4 Webで完結させず、面談へ運ぶ
先生業の仕事は、Webの中だけでは決まりません。だからWebの役割は「会う前に信頼を届けること」と割り切ります。記事で人柄を知り、資料で考え方に触れ、面談や個別相談の場に来てもらう。ここまでを一本の線として設計します。
この線がつながると、初回の面談が「検討の場」ではなく「確認の場」に変わります。会う前にどれだけ価値が伝わっているかで、成約率は大きく変わるのです。
ここまでの3つの手順は社労士に寄せた話でしたが、先生業に共通する顧客獲得の土台をまとめて押さえたい方は、無料の書籍「先生業の顧客獲得を成功させる7つの能力」(一部ダウンロード)をご活用ください。セミナーに参加する時間はまだ取れないという方の、最初の一歩としてどうぞ。
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6. 社労士の顧問契約まで一本の線にする(手順4)
社労士の労務顧問とは、手続きの代行を安く請け負う契約ではなく、月々の相談と予防に対して継続で対価をもらう契約です。最後の手順は、出会いからその顧問契約までを一続きの流れにすること。ここまで来ると、Web集客は「毎回がんばるもの」から「回り続けるもの」に変わります。

6.1 つなぎ目の切れているところを直す
成果が出ないとき、原因は個々のツールではなく、つなぎ目が切れていることがほとんどです。記事は書いているのに、読んだ人の行き先がない。ホームページはあるのに、次の一歩を促す案内がない。切れ目を埋めるだけで、同じ発信量でも問い合わせは増えます。
社労士の事務所でよく切れているのは、次の3か所です。記事の末尾に「相談はこちら」が無い。ホームページに料金の考え方が書かれておらず、問い合わせる前に判断できない。問い合わせフォームの項目が多すぎて、途中で閉じられてしまいます。どれも作り直しは要らず、1時間で直せる範囲の話です。成果が出ない原因を発信の量に求める前に、この3か所を見てください。
入口から相談までの道筋を紙に書き出し、どこで人が止まっているかを確かめてみてください。手を入れるべきは、たいてい一番細くなっている部分です。記事は読まれているのに問い合わせが来ないなら、直すのは記事ではなく、その先の案内になります。
6.2 「どこで人が消えているか」を数で見る
確かめ方は簡単です。記事を読んだ人が何人ホームページに移り、そのうち何人が問い合わせフォームを開いたか。数を追うと、思い込みで直すことがなくなります。
見るべきはアクセスの多さではありません。どこで人が消えているかのほうです。10,000人が読んで問い合わせが0件の記事より、300人が読んで3件届く記事のほうが、事務所にとっては価値がある。この物差しを持つと、「アクセスが増えないから失敗」という早すぎる判断をしなくて済みます。
6.3 手続きの単価競争から、労務顧問へ
社労士の強みは、顧問契約という継続の形を持てることです。実態調査でも、開業社労士の契約形態別の売上内訳は顧問契約71.9%、スポット28.1%で、1事務所あたりの顧問契約社数は平均33.2社。継続が主流の業界だと分かります。
ただし、手続きの代行だけを顧問料の中身にすると、電子化が進むほど値下げの圧力を受けます。月次で人事の相談に乗る。法改正の影響を先回りして伝える。採用と定着の課題を一緒に考えること。「この時間があるから会社が回る」と感じてもらえる型を持つ社労士が、顧問先を増やしていきます。
Webの発信は、この転換とも噛み合います。相談業務のテーマで書き続けていれば、集まってくるのは相談したい経営者。手続きの価格を比べたい相手は、そもそも記事にたどり着きません。発信の中身が、来る人を選んでいるということです。
6.4 AIで発信の手間を減らし、対話に時間を回す
記事の下書き、問い合わせへの返信文、資料のたたき台。発信まわりの作業はAIを使えば大幅に短くできます。一人事務所が56.4%というこの業界で、手が空くかどうかは続けられるかどうかに直結するところ。
浮いた時間を経営者との対話に回せば、支援の質そのものが上がります。志師塾の線引きは、AIに任せるのが「答えが決まっている作業」、人が担うのが「答えが会社ごとに違う判断」です。社労士業務でのAIの取り入れ方は、社労士のAI活用術の記事で詳しく解説しています。
7. 社労士のWeb集客でつまずく5つの落とし穴
4つの手順を知っていても、実際には途中で止まるものです。志師塾が先生業の相談を受ける中で、社労士の方に多いつまずき方を5つ挙げます。
7.1 ツールを増やして、役割を混ぜてしまう
InstagramもYouTubeもnoteも、と手を広げた結果、どこにも同じ内容が薄く並ぶ。よく見る形です。5.1で書いたとおり、道具ごとに役割は違います。増やす前に、いま持っている道具が担うべき仕事をこなせているかを見てください。1つが回り始めてから次を足すほうが、結局は早く進みます。
7.2 行政サイトの要約を並べてしまう
制度の解説は書きやすく、間違いも起きにくい。だから増えます。ただ、同じ内容が公的機関のサイトにある以上、そこで選ばれる理由は生まれません。要約を出発点にして、「うちの会社ならどうなるか」を代わりに考えて見せるところまで進めてください。読者が知りたいのは制度ではなく、自社への影響です。
7.3 地域名だけで勝負しようとする
「◯◯市 社労士」で上位を取れば依頼が来る、という考え方には限りがあります。地域名の検索は競合も同じことを狙うため取り合いになりやすく、しかも「近いから」という理由で選ばれると、比べられるのは結局は料金だからです。
地域を捨てる必要はありません。地域の前に専門を置いてください。「大阪の社労士」ではなく「大阪の、危機管理に強い社労士」。この形にすると、取り合いから抜けたうえで地域の利も残ります。
もう一段考えると、労務の相談はオンラインで完結する場面が増えました。就業規則の設計も、採用と定着の相談も、いまは画面越しで進むものです。地域を絞る意味は「近いから頼む」ではなく、地元の商工団体や金融機関とつながりやすいところにある。地域の使い方をここに寄せると、Webの発信も紹介の経路とかみ合ってきます。
7.4 成果を「アクセス数」だけで測る
アクセスが増えても相談が来なければ、事務所の売上は変わりません。逆に、月に数百人しか読まない記事から毎月1件の顧問契約が生まれることもあります。数える対象は、6.2で書いた「どこで人が消えているか」。アクセスの増減だけを見て記事の良し悪しを決めると、当たっている記事を捨ててしまいます。
7.5 更新が止まったまま放置する
止まること自体は、誰にでも起きます。問題は、古い法改正の記事が最新情報の顔をして残り続けること。社労士の発信では、内容の鮮度がそのまま信頼につながります。書けない時期があるなら、新しく足すより古い記事の日付と中身を直すほうを優先してください。手間の割に効きます。
8. 社労士のWeb集客を実践した志師塾卒業生3人の実例
ここで紹介する3人は、いずれも志師塾で学んだ社会保険労務士です。4つの手順が実際にどう形になるのか、公開済みのインタビュー記事から引いて見ていきます。
8.1 田中直才さん|専門を2つに絞り、検索で名前が出る状態をつくった
大阪市を拠点に、HK人事労務コンサルティングオフィスを運営する田中直才さん。社会保険労務士に加えて企業危機管理士の資格を持ち、業務の半分は事業継続計画(BCP)やコンプライアンス体制構築のコンサルティングです。2021年には「中小企業の危機管理がわかる本」も出版されています。
独立後は雇用調整助成金の仕事で立ち上がりましたが、本来やりたい危機管理・コンプライアンスの仕事へ移るには、会社員時代に経験のないマーケティングが要ると感じたそうです。そこで見つけたのが志師塾でした。
いま田中さんが絞っているのは危機管理コンサルタントと外国人採用の2つ。「社会保険労務士などの資格を取ってみると、どうしても様々なことができると謳いたくなりますが、この分野、というのに特化しないと注目してもらえません」と語っています。手順1でお伝えした「認知してほしい場所だけ絞る」の実例です。
そのうえでブログを書いて情報発信を続け、SEOに力を入れました。結果、「大阪 社労士 危機管理」で検索するとトップに名前が出る状態になり、研修の依頼はホームページから来ることが多いといいます。助成金申請は最低限に抑え、やりたかった仕事が中心になったそうです。詳しくは田中直才さんのインタビュー記事をご覧ください。
8.2 石上大祐さん|肩書を変え、SNSから同業と本部の相談が来るようになった
2020年に事務所を立ち上げ、「店舗運営専門の社労士」として活動する石上大祐さん。自身がパーソナルジムや美容関連のフランチャイズオーナーでもあり、店舗運営のノウハウを「多店舗展開に必要な5つの人事ステップ」として体系化しています。
志師塾に入った動機は、まさにWebマーケティングでした。「他の社労士事務所や人事コンサルタントとの差別化を実現するために、インターネットやSNSでどのように情報発信すればよいか」を学びに来たそうです。ところが講義は期待と違い、最初の課題は「人生の棚卸し」。Webの話は出てきませんでした。
変化が起きたのは、その後の課題でTwitter(現X)のフォロワーを1,000人つくることに取り組んだときです。プロフィールに「店舗運営専門の社労士」と書くとき、メーカーの顧問先から契約を切られるのではという不安を抱えていたといいます。実際には、そんな連絡は一切なし。代わりに、多店舗展開を支援する税理士から人事評価支援の相談、フランチャイズ本部から店舗運営の相談が入るようになりました。同業の社労士からの相談や紹介案件も増えたそうです。
「この課題を通して、『店舗運営専門の社労士』という自分の肩書を確立できたのは、大きな財産になりました」。肩書を先に決めてから発信した結果です。石上大祐さんのインタビュー記事に経緯が載っています。
8.3 深尾裕香さん|ホームページと動画で、会う前の安心をつくった
東京都江東区で「RavoRico社会保険労務士事務所」を営む深尾裕香さん。2021年に社会保険労務士試験に合格し、2022年に開業。従業員10人未満の事業者や、初めて人を雇う事業者を主な顧客としています。
取り組みの中心はWebです。発信の場は事務所のホームページ、YouTubeチャンネル、Facebookの3つ。ホームページでは人事・労務を題材にしたブログと動画を出し、オンラインを使って関東圏以外の顧客にも対応しています。YouTubeチャンネル「イマドキ社労士ふかゆかチャンネル」では自ら出演し、制度や労務の情報を届けています。
Facebookで自分の志を宣言したときには、友人や知り合いから応援のメッセージが届き、前職の仲間と改めてつながり、そこから仕事にもつながったそうです。
動画の効果について、深尾さんはこう語っています。新たな顧客を紹介してもらうとき、自分を知ってもらうのに役立つ。写真だけでなく、実際に動いて喋っている姿を見てもらうことが、初めての顧客にとっての安心材料になる。手順3でお伝えした「会う前に信頼を届ける」が、そのまま形になっています。
もともと進んで情報発信をするタイプではなかったそうです。「士業で開業することは、自分を売ってナンボなところがあります。外部に向けて自分を発信することは今でも恥ずかしいですし、実はもともとシャイな性格なんです」。それでも一歩踏み出した結果が、いまの発信につながりました。深尾裕香さんのインタビュー記事で詳しく読めます。
8.4 3人に共通していたこと
専門分野も顧客層もばらばらです。それでも、共通点が3つありました。
- 発信より先に「名乗り」を決めている:危機管理×外国人採用、店舗運営専門、10人未満の事業者。3人とも、書き始める前に立ち位置が決まっていました
- 道具は1つに絞って深く使う:田中さんはブログとSEO、石上さんはSNS、深尾さんはホームページと動画。手を広げていません
- 届く相手が変わった:経営者だけでなく、税理士・フランチャイズ本部・同業の社労士からの相談
3人が最初に変えたのは、発信の量ではありませんでした。発信の中身が、誰に向いているかのほうです。この順番で始めている点は、3人とも変わりません。
では、あなたの名乗りはどうなるでしょうか。一人で決めようとすると、たいてい「自分は何でも屋だ」という結論に戻ってきます。田中さんが専門を2つに絞れたのも、石上さんが肩書を変えられたのも、他人に並べ替えてもらったからでした。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーは、その並べ替えを他業種の先生業どうしでやる場です。
9. 社労士のWeb集客でよくある質問
社労士のWeb集客で相談の多い6つの質問に、志師塾が答えます。
9.1 ホームページとブログ、どちらを先に作るべきですか?
ホームページが先です。ブログで興味を持った読者が次に見るのは「この人はどんな人か」で、その受け皿がないと行き先を失うからです。ただし最初から作り込む必要はありません。名刺代わりの数ページで十分。志師塾のロードマップでも、レベル2に「名刺型ホームページ」を置いています。
9.2 社労士のWeb集客で、成果が出るまでどのくらいかかりますか?
経路によって差があります。SNSや紹介は、早ければ数週間で反応が出るものです。ホームページの申込ページや問い合わせフォームを直した効果は、その週のうちに数字へ出ることもあります。いちばん遅いのがブログの検索流入で、記事が評価されるまで半年から1年。だから最初の3か月で見るべきは検索順位ではなく、読んだ人が次の一歩に進んでいるかどうかです。
9.3 Web広告は出したほうがよいですか?
受け皿ができてからにしてください。志師塾のロードマップで広告が最後のレベル7に置かれているのは、広告の効果が「クリックした人が見るページの出来」に丸ごと依存するからです。立ち位置も申込ページも整っていない状態で出すと、費用だけが出ていきます。
9.4 顧問先が増えたら、Web集客はやめてもよいですか?
やめないほうが安全です。顧問契約は継続する反面、解約もある程度は起きます。発信を止めると、その穴を埋める入口が消えてしまうのです。手が回らないなら量を落とせばよく、月1本でも続いていれば「更新の止まった事務所」には見えません。
9.5 記事を書く時間が取れません。外注してもよいですか?
制度の要約部分なら外注できます。ただし、見立てと現場の勘所は外注できません。そこが同業との差になる部分だからです。おすすめは、あなたが要点を箇条書きで出し、文章化を外注またはAIに任せる形。判断は自分、清書は任せるという分け方にすると、量と中身の両方を保てます。
9.6 開業したばかりで実績がありません。Webで発信しても意味はありますか?
あります。実績の数より、読んだ人が「自分のことだ」と感じる一文があるかどうかで決まるからです。題材は、顧問先がゼロでも手元にあります。相談を受けるたびに調べ直した論点、条文の読み方を取り違えかけた箇所、行政窓口に確認して初めて分かった運用。つまずいた過程はそのまま記事になり、同じところで迷う経営者に届きます。実績が少ない時期ほど、「この分野をやっていく」という姿勢を出しておくと、後から相談が集まりやすくなります。
10. まとめ:社労士のWeb集客は「選ばれる理由」から
社労士のWeb集客で押さえる手順を、4つに整理しました。
- 手順1:ポジショニング。誰の・どんな悩みを・どう解決するかを言い切り、認知してほしい場所だけ絞る
- 手順2:手続き名ではなく、相手に起きる変化を語る言葉に磨く。テーマは相談業務の側へ寄せる
- 手順3:ツールに役割を与え、ロードマップの順番どおりに手を付けて面談まで運ぶこと
- 手順4は、顧問契約まで一本の線にすること。単価競争の土俵から離れるのが目的です
Webは、あなたに代わって説明し、見込み客を育て、価格以外の判断材料を渡してくれます。使いこなせるかどうかは、手順の順番を守れるかどうかで決まる。まずは「あなたはどんな社労士か」を一言で言い切るところから始めてみてください。
明日からの一歩として、この3つを試してみてください。
- これまでに受けた相談を、業種と相談内容で並べ替えて偏りを確かめる
- いまの肩書を「専門領域+社労士」の形に書き直す。名刺とホームページの1行から差し替えます
- 直近3か月の発信を見て、手続きの話と相談の話がどれくらいの比率になっているか数える
手順そのものは、読めば分かります。難しいのは順番のほうです。多くの方は道具から入り、看板をあとから考え直すことになります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、順番がどこで入れ替わるのか、入れ替わったところからどう組み直すのかを、先生業の実例で扱っています。
手続きの価格競争から、労務相談で選ばれる側へ移りたい社労士の方へ
土俵を移す作業は、発信を始める前に終わっています。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その前工程をどう組むかを扱っています。参加費は無料です。
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この記事について
監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)。士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化した集客・顧客獲得支援を行い、これまでに3,200名を超える先生業の方を支援してきました。本記事は、社会保険労務士の受講生・卒業生への支援で得た知見と、全国社会保険労務士会連合会・総務省・厚生労働省の公表資料をもとに構成しています(公的データの確認日:2026年8月29日/支援人数の原本確認日:2026年8月16日)。