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【卒業生インタビュー】 知財の収益化コンサルタントとしてサポートする 〜弁理士・須藤修三さん~

今回お話を伺ったのは志師塾卒業生で、弁理士の須藤修三さんです。須藤さんは知財の収益化コンサルタントとして、アイデアの発掘からその収益化に至るまでの知財のサポートを行っています。

須藤さんは、2006年12月に弁理士資格を取得し、現在、特許業務法人MTS国際特許事務所に所属しています。須藤さんの収益力にこだわったコンサルティングは、顧問先から全幅の信頼を得ています。

今回の取材では、知財の活用によってエンジニアや中小企業をサポートし、新しい技術大国日本の実現に貢献するための須藤さんの取組みや思いについてお伺いしました。

1. 弁理士として活躍

1.1 弁理士業務の概要

弁理士は特許・商標・意匠等の知的財産に関する専門家です。須藤さんは主に産業機械、モジュール、デバイス、制御等の特許に関する業務を行っています。約5年前からは商標の調査や出願も行うようになり、令和3年からは補助金コンサルタントも始め、補助金関係のアドバイスや事業計画作成支援等を行っています。

大学院で応用物理を専攻していた関係で、大手時計メーカーでX線分析、計測、応用物理関係、制御、半導体、パソコン周辺機器、センサー等の研究・開発を行うエンジニアをしていたことから、電気や精密機械関係の特許が須藤さんの得意分野です。最近では,大型の機械関係の特許にも積極的に取り組んでいます。

大学院で自ら精密な装置を設計した経験があることから、須藤さんは分析装置等の特許に関する業務に取り組んでいます。また精密機械の特許を主な取扱業務としている先輩弁理士が入所当初の須藤さんを指導していたのですが、この弁理士から指導を受けるなかで、特許を取得するのが難しいと思われる案件であっても、特許を取得したことがありました。

これは、一見特許の取得が困難なように見えても新たな視点からアプローチをしたことで可能となったからなのですが、須藤さんは自身が業務を行ううえでもこのように多面的なアプローチを心がけています。

知財の収益化コンサルタントの弁理士・須藤修三さん2

1.2 弁理士を目指したきっかけ

須藤さんは、大手時計メーカーに勤務していた際、NASAの研究所への開発委託プロジェクトをエンジニアとして担当することになりました。須藤さんは、その研究所の成果を日本での新製品に生かそうと開発従事者の立場から取り組みました。

しかし、技術を製品に生かしていこうという知財部員や弁理士がいなかったため、十分なサポートを期待することができず、結局その発明の核となる部分を生かした特許を取得することはかないませんでした。

この出来事から須藤さんは高度な技術があっても、それを製品に結びつけようとサポートする専門家がいなければ活用することができないと考えるようになりました。

また須藤さんはNASAの研究所への開発委託プロジェクトをエンジニアとして担当するなかで、日本とアメリカではエンジニアに対する評価に大きな違いがあることに気付きました。「何とかして日本でのエンジニアに対する評価をあげていきたい。そのために自分ができることはないか」そう考えた須藤さんは弁理士になることを決意するに至りました。

2. 事務所存続の危機

2.1 主要クライアントの流出

須藤さんが弁理士登録してから10年が経過したときのことです。当時、事務所には大手企業と中小企業のクライアントがおり、特に積極的に集客をしなくても継続的に案件を受任することができました。

しかし、ここで状況が一変します。事務所を経営する3人のパートナー弁理士のうち、須藤さんの直接の上司に当たる1人のパートナー弁理士が、がんで亡くなったのです。このパートナー弁理士は大手重機械メーカーから気に入られていたので、その関係の仕事もおのずと多数集まってきました。須藤さんは、このパートナー弁理士を介して依頼のあった案件に対応していくという仕事のスタンスでした。

このため、このパートナー弁理士が亡くなったことによりクライアントが事務所から離れていき、売上が3分の1以上も減少してしまいました。これまで事務所の弁理士全員が「仕事は待っていればくる」というスタンスで、積極的に集客をしていませんでした。

そのため、事務所には集客に関するノウハウはありません。今回のことで一番売上が減少した須藤さんは、今後どのように集客していけばよいのかが全く分からず、自分はもとより事務所も危機的な状況となりました。

知財の収益化コンサルタントの弁理士・須藤修三さん3

2.2 集客に課題

クライアントがなくなるかもしれないという危機的な状況を打開するため、須藤さんは集客活動に役立てようと、いくつかのプレセミナーを受講することとしました。

その当時であっても集客のノウハウを教える講座は数多くありました。そこで、いくつかのプレセミナーを受講しましたが、須藤さんにはピンとくるものがありませんでした。そもそも須藤さんは弁理士という先生業にこれからの未来はあるのかといった疑問も感じていたようです。

実際に須藤さん自身への知財の依頼案件が激減し、大手時計メーカーに勤務していた際には、知財という切り口がなくても事業が回ることを肌で感じていたからだそうです。

2.3 志師塾との出会い

そんな中、須藤さんは約4年前に、志師塾のプレセミナー(先生業のためのWeb集客セミナー)を受け、さらにその講座も受講しました。

「先生業は日本を変えるキーパーソンで、日本を動かせるだけの影響力を持っています」志師塾の五十嵐代表のこの言葉に、須藤さんはそれまで「弁理士自体の存在にもやもやした疑問を持っていたことの答えがこれだ!」とピンときたようで、とても共感できたといいます。

志師塾の講座では、「こんなことを書かないとクライアントに伝わらない」といったことなど、書籍で学んだことを体系的に理解でき、実践しながら自分で納得することができました。

また志師塾の講座で、さまざまなネットワークを広げる必要性を教えられ、須藤さんは人脈を広げるため、Facebookの投稿を開始し(今年、連続1,000回を超えたようです)、経営者のテニス交流会、弁理士会の委員会、異業種交流会などに積極的に参加するようにしました(現時点では、さらに梅岩塾にも参加しています)。

さまざまな情報発信手段を使用しコミュニティに参加したことでご縁を頂くことができ、特許だけでなく新たに商標等の仕事も幅広く頂けるようになりました。

さらに須藤さんは「ホームページ作成のセミナー」を受講することで、Web集客のための集客につながるホームページを作成する手法を学ぶことができました。この講座を受講していた際に、ちょうど須藤さんの事務所のホームページを新しくする必要があったのですが、講座で学んだノウハウを生かし、顧客獲得に結び付くようなホームページを作成することができました。

須藤さんはWeb集客の講座のほかにも志師塾で、「補助金コンサルタント養成講座」を受講しました。これは須藤さんが補助金コンサルタント業務を行うことで、知財関係の顧客を獲得するきっかけとしたいと考えたためです。

潜在的な知財関係のニーズがあることも少なくないことから、特許や商標のための補助金に特化するのではなく、事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金の獲得実績を積みながら、より多くの一般的な補助金も取り扱っていきたいと考えています。その意味でも「補助金コンサルタント養成講座」で、補助金コンサルタントとしてのノウハウを学べたのは大きな意義があったと須藤さんはいいます。

知財の収益化コンサルタントの弁理士・須藤修三さん4

3. 知財の収益化コンサルタントとして活躍

3.1 知財においても収益化が重要

「単に知財の手続を代行するだけではなく、収益化にこだわった支援をしています」と須藤さんはいいます。

出願等をするところから始めるのではなく、アイデア発掘の段階から支援を行うことはもちろん、活用段階での収益化も考えて支援を行います。知財は単に取得すればよいというわけではありません。大企業のように、中小企業においても知財を取得する意図を明確にする必要があります。

知財を取得する意図を明確にするためには、アイデアから収益化に至るストーリーを想定できることが必須となります。これができれば、そのアイデアをどのように権利化したらいいのかが見えてきます。

他方で知財を取得するためにも相当の費用を要するため、収益化に至るストーリーを立てることができないものについては、むしろ出願等をしないことが得策であると須藤さんは助言しています。大手時計メーカーで研究開発だけでなく、全社の開発戦略の策定や営業を担当していた経験から、企業にとって何が得策であるかを常に考えているのです。

知財の収益化コンサルタントの弁理士・須藤修三さん5

3.2 成功報酬型を基本

コンサルティング料の支払方法にはさまざまな種類がありますが、須藤さんは(特許などの出願や権利化等を除いて)着手金を取らない成功報酬型を基本に考えています。中小企業の場合には、結果が出てからでないとなかなか支払うのが難しいと考えています。クライアントが何か得られたという確証のない段階でお金を頂くべきではないと考えているからです。

実際にクライアントの収益が増えてから報酬を頂くべきで、補助金コンサルタントの場合であれば、実際にクライアントのところに補助金が入金されてから(あるいは入金が確実な状態となってから)、報酬を頂くべきだと考えています。

3.3 シームレスで問題解決

コンサルティングをしているとさまざまな技術分野にまたがった総合的な問題に出会うことがあります。自分の専門ではない内容もありますので、このような場合にはネットワークを活用し、他の詳しい専門家を自分から紹介したりしています。

専門家の中には「ワンストップで解決します」という方もいます。ワンストップというと聞こえはよいのですが、詳しくない分野の問題を解決するためには調査をしなければならず、結局時間がかかることになります。

知財はもちろんのこと、事業における収益力アップにはさまざまな分野があるので、あらゆる分野の知財について自分で解決しようとすることは非効率です。何でも自分で解決しようと仕事を抱え込んでしまうのはよくないと考えています。

須藤さんはクライアントにはシームレスで問題を解決するとお伝えしています。「クライアントは問題を早く解決したいだろうし、全てを自分で解決する必要はないと考えています。早く他の専門家の方につないだ方がその専門家の方にも、クライアントにも喜ばれると思います」

ある程度、どの分野の問題なのかを把握する力は必要ですが、自分で全ての問題を解決する能力は必要ありません。重要なのは、誰がどの分野で信頼できるかについて分かっていることであり、早急にその分野の専門家につなぐことが重要だと考えています。

4. おわりに

4.1 現在の課題

今後はホームページへの誘導を増やし、さらなる集客につなげるためにYouTubeのアップをもう少し増やしたいと須藤さんは考えています。現在、YouTubeで3本ほど知財関係の情報を提供しているものがあります。セミナーもYouTubeも自分で取扱いができ、集客に結び付けるには有効なツールなので、常に回せるようなサイクルとすることを須藤さんは目指しています。

このほか事務所のブログも目安として、2週間に1本のペースで書いていきたいとのことです。ブログでは知財を事業に活用するためのコツや知財を十分に活用する上で、今まで深く考えなかった気付きや知識のほか、事務員への情報提供も兼ねてコンサルティングや補助金の情報も書いています。しかし、セミナーやYouTubeと同様に、ブログもなかなか更新できておらず、須藤さんの今後の課題となっています。

知財の収益化コンサルタントの弁理士・須藤修三さん6

4.2 将来のビジョン

「新しい技術大国日本の実現のために頑張っているエンジニアや中小企業の方が生き生きと暮らせる社会を実現するために、エンジニアや中小企業を支援していきたい。そして、モノを作る場合にはセールスや企画という面も必要になります。このような領域も知財と絡めた形で話をし、支援することができればよいと考えています」

知財の活用による中小企業の収益力の向上を通じて、新しい技術大国日本の実現に貢献していきたいと須藤さんは抱負を語ります。

4.3 中小企業に寄り添ったサポートを目指して

須藤さんは中小企業に寄り添ったサポートをし、中小企業の収益化にこだわったサポートをしていきたいと考えています。中小企業の経営者といろいろと話していくなかで、知財を活用した収益化の方法について一緒に勉強し、知財の新たな活用についての具体的なアドバイスをしていくことを目指しています。

知財の活用によりエンジニアや中小企業をサポートし、新しい技術大国日本の実現に貢献したいと考える須藤さんの挑戦はこれからも続いていきます。

文:笹原和男(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部

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