facebook

士業の顧問料が下がる3つの引き金|値下げ要求の断り方

顧問料が下がる瞬間は、値下げを切り出されたときではありません。実際には、その半年から1年前に、顧問先の社長の頭の中で静かに引き金が引かれています。更新面談で告げられる「少し見直したいのですが」は、原因ではなく、すでに終わった判断の通知です。

この記事では、士業の顧問料が下がる3つの引き金と、値下げ要求を受けたときの断り方(5ステップ)、パターン別の具体的な返し方、そして、そもそも値下げを言われない顧問契約の設計までを解説します。

志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師といった先生業に特化したビジネススクールとして、これまで3,295名(2026年8月時点)の先生業を支援してきました。卒業生アンケートでは平均年商1,703万円、年商1,000万円を超える割合は約50%です。この記事は、その支援の現場で繰り返し見てきた「単価が落ちる人」と「落ちない人」の分かれ目を、公的データもあわせて整理したものです。

読み終えるころには、次の更新面談で何を聞き、何を見せ、どこまでなら受けるのかが、あなたの言葉で決まっているはずです。

まずは、値下げ要求が「結果」でしかない理由から見ていきます。

Table of Contents

1. 士業の顧問料が下がる本当の理由|値下げ要求は結果でしかない

士業の顧問料が「量」で決まる構造

士業の顧問料が下がるとは、契約単価そのものが減額されることに加えて、金額は据え置きのまま業務量だけが増えていく状態も含みます。表面上の金額が変わっていなくても、実質単価は下がっているからです。

1.1 士業の顧問料の相場は「量」で決まっている

税理士の月額顧問料は、顧問先の年商規模と訪問頻度で決まるのが一般的です。社会保険労務士の顧問料も、従業員数で刻んだ料金テーブルが主流です。行政書士や司法書士のスポット業務も、申請件数や書類の通数がベースになります。

ここに、構造的な弱点があります。年商・人数・訪問回数という「量」で価格が決まるということは、量が減れば価格も下がるということです。顧問先の売上が落ちれば、従業員が減れば、訪問がオンラインに変われば、値下げの理屈は顧問先の側に自動的に用意されます。

日本税理士会連合会の「第7回税理士実態調査報告書」(2024年公表)を見ると、税理士事務所の年間売上高は500万円未満の層が最も多く、個人事務所が大半を占める業界構造が浮かび上がります。価格交渉の場に立っているのは、多くの場合ひとりの先生です。組織的な価格ポリシーを持たないまま、その場の判断で応じるか断るかを決めることになります(出典:日本税理士会連合会)。

1.2 士業の顧問料の値下げ要求は「原因」ではなく「結果」

顧問先の社長も、好き好んで値下げを言い出しているわけではありません。中小企業庁の「価格交渉促進月間フォローアップ調査」では、コスト全体の価格転嫁率はおおむね5割前後で推移しています。原材料費も人件費も上がっているのに、その半分しか取引価格に反映できていないということです(出典:中小企業庁)。

転嫁しきれない分は、どこかで削るしかありません。そのとき社長は何から削るか。答えははっきりしています。効果が見えにくいものから削ります。

顧問料が「効果が見えにくい固定費」に分類された時点で、引き金はすでに引かれています。更新面談の申し出は、その分類の結果が通知されただけです。ここを取り違えて、通知が届いてから慌てて価値を語り始めると、言い訳にしか聞こえません。

1.3 顧問料が下がる士業と、下がらない士業を分けているもの

同じ地域、同じ資格、同じ業務内容でも、値下げを言われ続ける先生と、値上げを受け入れてもらえる先生がいます。腕の差でしょうか。志師塾が3,000名を超える先生業を見てきた実感では、違います。

先生業のサービスは、受ける前も受けた後も品質が分かりにくいという特性があります。だからこそ、顧客は価格を品質判断の材料にします。志師塾ではこれを「価格=価値」と表現しています。裏を返せば、価値が伝わっていない状態では、顧客の手元に残る判断材料は価格だけになります。

もうひとつ、入口の問題もあります。志師塾では理想の顧客像を「小人(こびと)」と呼び、その選定条件の第一に「あなたのサービスにお金を払うことができるか」を置いています。支払余力のない層を顧客に選んだ時点で、値下げ交渉は構造的に避けられません。誰を顧客にするかは、価格政策そのものです。

では、価値が伝わらなくなる引き金はどこにあるのか。3つに絞って整理します。

2. 士業の顧問料が下がる3つの引き金

先生業の提供価値3段階と値下げ圧力

士業の顧問料が下がる3つの引き金

顧問料が下がる引き金とは、顧問先が「この金額を払い続ける理由」を見失うきっかけのことです。志師塾が支援の現場で見てきた限り、ほぼ次の3つに集約されます。

2.1 引き金1|提供価値が「作業」に見えている

志師塾では、先生業の仕事を「作業代行」「アドバイス」「伴走」の3段階で整理します。同じ資格・同じ知識を持っていても、この3つは単価が10倍変わることがあります。

段階 中身の例 代替されやすさ 値下げ圧力
作業代行 記帳、給与計算、申告書作成、書類作成、議事録作成 クラウド・AI・外注で代替しやすい 強い(相見積もりの対象)
アドバイス 聞かれたら答える、リスクを指摘する 検索・AIで一次情報は取れる 中程度(「年に数回」と見られる)
伴走 一緒に決める、実行まで見届ける、責任を共有する 代替が効かない 弱い(比較対象がない)

問題は、多くの士業が実際には伴走まで踏み込んでいるのに、請求書の上では作業代行の値段で売ってしまっていることです。志師塾では「AIに奪われたのは「作業」であって、「判断」は先生業に残っている」と伝えていますが、残った判断を「チェック」という作業の名前で請求してしまえば、価格は作業の相場に引き戻されます。

月次訪問の中身が「試算表の説明」で終わっていないか。報告書の見出しが「確認しました」「問題ありません」で埋まっていないか。ここが第一の引き金です。

2.2 引き金2|価格以外の判断基準を教育していない

志師塾では、顧客が契約を断る理由を9つのパターンに分類して教えています。「なぜ買うのか」「なぜあなたから買うのか」「なぜ今買うのか」の3分類です。顧問料の値下げ要求が起きるとき、最も多く効いているのが2つ目、「なぜあなたから買うのか」=他の事務所のほうが良いかもしれないというパターンです。

顧問先の社長は、税務や労務の品質を測る物差しを持っていません。持っていない人が唯一比較できるのは金額です。判断基準を渡していないこちら側の不作為が、価格比較を招いています。

志師塾が教えているのは「価格以外の判断基準を教育する」という発想です。業界の内側でしか分からない選び方の基準を先に伝え、さらに見極め質問を顧客に手渡します。たとえば「専門家を選ぶときは、『弊社と同じ業種で実際に成果が出た事例を教えてください』と聞いてみてください」と伝えておく。この質問に具体的に答えられない相手は実力不足だと、顧客が自分で判断できるようになります。

ここで絶対にやってはいけないのが、競合の悪口です。他事務所を下げると、顧客の頭の中に「どちらも似たようなもの」という印象しか残りません。語るべきは違いであって、優劣ではありません。判断基準の作り方は、士業のポジショニング戦略と業務領域の絞り方でも具体的に扱っています。

2.3 引き金3|顧問契約に標準パッケージがない

「うちはお客様ごとに違うので、標準メニューは作れません」。志師塾の講座でも、士業やコンサルタントの方から必ず出てくる言葉です。

これに対する志師塾の答えははっきりしています。標準がないと、顧客は何が標準で何がカスタマイズなのか分かりません。分からなければ、追加業務は「サービス」だと思われます。そして、業務が増えたぶんの請求ができないまま、実質単価だけが下がっていきます。

顧問契約書によくある「その他、必要に応じて助言する」という一文は、無償労働の入口です。範囲が書かれていない契約は、範囲がないのと同じです。

標準パッケージを先に作ると、3つのことが同時に起きます。第一に、売る前に提供内容を説明できるようになる。第二に、カスタマイズの差額を金額で説明できるようになる。第三に、同じ手順を何度も回すことでサービスの品質そのものが磨かれます。志師塾の主力講座も、初回は内容がまとまりきらないところから始め、230回以上回すなかで現在の形に洗練されてきました。標準化は、手抜きではなく品質向上の手段です。

2.4 3つの引き金が揃うと「ガチ時給」が静かに落ちる

志師塾には「ガチ時給」という言葉があります。顧客に対応している時間だけでなく、移動・営業・事務処理・請求までを含めた、正味の時給のことです。

3つの引き金が同時に引かれている事務所では、顧問料の金額が1円も変わらないまま、ガチ時給だけが落ちていきます。作業に見えているから追加業務を頼まれ、判断基準を渡していないから断りづらく、標準がないから追加請求もできない。この状態を志師塾では「セルフブラック」と呼んでいます。

志師塾代表の五十嵐自身、年商1,000万円だった頃は月商約80万円に対して労働時間が月400時間から500時間、ガチ時給は約2,000円でした。売上の数字だけを見ていると、この下落には気づけません。顧問料が下がっているかどうかは、金額ではなく時給で測ってください。

ここまでの3つは、どれも顧問先の懐事情ではなく、こちら側の見せ方と契約設計の問題でした。とはいえ、何年も続いている既存の顧問契約を明日から変えるのは簡単ではありません。先に変えやすいのは、これから出会う見込み客に対して「最初に何を伝えるか」のほうです。

志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、価格を比べられる前に専門性で選ばれるための伝え方を、士業の事例を交えて解説しています。「安いほう」ではなく「この先生でないと」と言われる入口の作り方です。

Web集客セミナーを見てみる

3. 士業が顧問料の値下げ要求を受けたときの断り方|5つのステップ

顧問料の値下げ要求を断る5ステップ

値下げ要求への断り方とは、「できません」と言い切ることではありません。値下げという一択で来た話を、複数の選択肢に開き直す作業です。順番を守ると、関係を壊さずに単価を守れます。

3.1 ステップ1|その場で即答しない(値下げも拒否も)

最初にやるべきは、判断を保留することです。「大切なお話ですので、いまの支援内容を整理したうえで、改めてご提案させてください」。この一言で、次の面談まで時間を確保します。

その場で値下げに応じるのは、最悪の一手です。即答で下げられる価格は、「元々その値段でもよかった」という自白になります。これまでの請求が不当だったと、自分で認めることになってしまう。そして一度下げた価格は、その顧問先だけで止まりません。社長どうしの横のつながりを通じて、地域の相場として伝播します。

逆に、その場で「できません」と突っぱねるのも避けます。理由を聞かないまま断ると、社長の側には「この先生は、うちの事情に関心がない」という記憶だけが残ります。解約は、そこから半年遅れでやってきます。

3.2 ステップ2|「なぜ今その話が出たのか」を縦掘りする

志師塾が個別相談の技法として教えている質問フレームが、そのまま使えます。

  • 縦掘り:「なぜ、そうお考えになったのですか」「一番の原因はどこにあると思われますか」
  • 具体化:「どのあたりが特に気になっていますか」
  • 横展開:「他にも気になっている点はありませんか」
  • ループ検知:同じ話が二周し始めたら、そこが社長にとっての最深部

値下げ要求の裏にある本音は、大きく3種類しかありません。見分けないまま対応すると、全部外します。

本音 見分け方 打ち手の方向
本当に資金が苦しい 他の固定費も同時に見直している。金額の話だけが出てくる 期間と範囲を限定した縮小プラン
期待とズレている 「もっと〇〇してほしかった」という言葉が混じる 提供内容の再定義。むしろ増額の余地あり
他社の見積もりを見た 具体的な金額が先に出てくる 判断基準の教育と見極め質問

深掘りの途中で、社長の側から「じゃあ、どうすればいいの」と解決策を求められることがあります。ここで即答しないのがコツです。志師塾では、直答せずに「もう少し状況を正確につかませてください」と診断を続ける正当性を説明し、深掘りに戻ることを勧めています。早く答えを出すほど、話は金額に戻ってしまいます。

3.3 ステップ3|顧問料に含まれる価値を金額に換算して見せる

志師塾では「元を取るストーリーを語ること」を徹底しています。顧客がどうやって元を取るのかを、こちらが説明できなければ、価格は感覚で判断されます。

顧問料の場合、換算できる項目は思ったより多く見つかります。

  • 直接的な金額効果:節税額、補助金・助成金の獲得額、社会保険料の適正化、資金調達の成功額
  • 回避できた損失:未払い残業代の指摘、労務トラブルの未然防止、税務調査での指摘回避、契約書の修正
  • 時間の金額換算:社長と経理担当者が調べ物や手続きに使わずに済んだ時間を、人件費単価に置き換える
  • そして意外に効くのが、意思決定の速度です。「聞ける相手がいる」だけで、判断が何日早まったかを数えてください

志師塾では「50万円の商品でも、その結果500万円が手に入ると分かれば、むしろ安い」という説明の仕方を教えています。顧問料も同じです。月5万円が高いか安いかは、年間60万円に対して何が返ってきたかを並べて、初めて社長が判断できます。

ポイントは、この棚卸しを値下げを言われてから作らないことです。毎月の報告に1行ずつ積み上げておけば、更新面談の場で12か月分の実績として出せます。

3.4 ステップ4|値下げではなく「選択肢の提示」に変える

ここが最大の分岐点です。志師塾では、売り込み感を出さずに成約へ導く方法として「提案ではなく、選択肢の提示」を教えています。「ご自身で進める方法もありますし、私が伴走することもできます。どうされますか」という形です。

顧問料の値下げ要求も、この形に変換します。「下げる/下げない」の二択で受けるから、どちらを選んでも負けになる。三択にすれば、先生のポジションを保ったまま会話が続きます。

選択肢 業務範囲 顧問料 向いている状況
A:現行維持 いまのまま 据え置き 価値の棚卸しで納得が得られた場合
B:範囲縮小 決算・申告など必須業務に限定。月次面談は年4回に 減額 本当に資金が苦しい場合(期限つき)
C:範囲拡大 資金繰り計画、人事制度、補助金申請などを追加 増額 期待とズレていた場合

3択にすると、真ん中が選ばれやすくなります(極端の回避性)。だからこそ、真ん中に置くのは「減額」ではなく、こちらが通したい案にしてください。

そして鉄則がひとつ。金額を下げるなら、業務範囲も必ず下げる。範囲を据え置いたまま金額だけを下げた瞬間、その事務所の1時間の価値が恒久的に切り下がります。

3.5 ステップ5|士業が顧問料の値下げを断るときの言い方

断ると決めたら、言葉を選びます。「値下げはできません」は、理由がないので拒絶にしか聞こえません。

使うのは、品質を主語にした言い方です。

  • 「いまの業務範囲のままで金額を下げると、これまでの対応品質を保てなくなります。それは御社にとってもマイナスだと考えています」
  • 「金額を合わせることはできますが、その場合は月次のご報告を四半期に変えることになります。それでよろしければ、そのプランでご用意します」
  • 「ご事情は分かりました。半年間だけ範囲を絞った形にして、業績が戻ったタイミングで元に戻す、という進め方はいかがでしょうか」

志師塾では「価格アップ=サービス品質アップ」という原則を掲げています。値下げの断り方は、この原則を裏返して話すだけです。価格と品質が連動していることを、顧客と共有する会話にする。相手を責めず、こちらも折れない言い方は、士業・コンサルタントの営業トークの作り方の考え方がそのまま応用できます。

4. 士業の顧問料の値下げ要求|パターン別の返し方5つ

値下げ要求パターン別の返し方5つ

ここからは、実際に言われる言葉ごとに、返し方を具体化します。志師塾の「断られる理由の9パターン」のどれに当たるかを添えているので、同じ型で他の場面にも応用できます。

4.1 「他の事務所はもっと安い」と言われたとき

9パターンでいう「なぜ、あなたから買うのか」に当たります。比較されているのは価格ではなく、判断基準がないという状態そのものです。

返し方は、否定せず、事実を確認するところから入ります。

「そうなんですね。差し支えなければ、その金額は何をしていただける前提のものか、教えていただけますか」

多くの場合、ここで比較の前提がズレていることが分かります。記帳込みか別か、月次面談があるか、電話相談が何回までか。前提を並べるだけで、金額差の理由が可視化されます。

そのうえで、判断基準を手渡します。「専門家を比べるときは、『同じ業種で実際に成果が出た事例を、具体的に教えてください』と聞いてみてください」。ここで他事務所の悪口を言うと、一気に信用を失います。語るのは違いだけです。

4.2 「業績が厳しくて」と言われたとき

9パターンの「支払余力不足」です。この場合、価値をいくら語っても届きません。手元にお金がないのは事実だからです。

志師塾では、支払余力の問題に対しては分割払いやダウンセル(低価格の代替商品)で入口を用意するという考え方を教えています。顧問契約に応用すると、期間限定の縮小プランになります。

ただし、必ず2つを書面に残してください。

  1. 期限:「〇年〇月まで」と月を切る
  2. 復帰条件:「売上が◯◯に回復した時点、または期限到来時に元のプランへ戻す」

期限を切らない特例は、100%恒久化します。そして恒久化した特例は、他の顧問先にも伝わります。情けをかけるのは構いませんが、情けには日付を入れてください。

なお、中小企業庁の中小企業白書でも、コスト増と人手不足が中小企業の経営を圧迫している状況が継続的に報告されています。厳しいのは顧問先だけではありません。こちらの事務所も同じ環境にいることは、遠慮せずに伝えてよい事実です(出典:中小企業庁 中小企業白書)。

4.3 「AIで自分たちでできるようになった」と言われたとき

近年、急速に増えている言われ方です。これは作業と判断の混同から起きています。

返すべき問いは、ひとつです。

「AIが出した答えが正しいかどうかは、どなたが確認されますか。そして、その判断が外れたときの責任は、どこが負いますか」

志師塾では「AIに奪われたのは「作業」であって、「判断」は先生業に残っている」「相談を奪われたら判断へ、作業を奪われたら戦略へ」と伝えています。AI時代に人の側に残るのは、責任を取ること、実行まで持っていくこと、感情面を支えることの3つです。

ここで注意したいのは、「AIでは無理です」と否定してしまうことです。社長はすでに便利さを体験しています。否定すれば、時代に乗れていない専門家だと見なされるだけです。「作業はどんどんAIに任せてください。そのぶん、判断と実行の部分で力を貸します」と、役割を再定義するほうが強い。

4.4 「最近あまり動いていないよね」と言われたとき

稼働量で価格を測られている状態です。これは第2章の引き金1(作業に見えている)がそのまま表面化したものです。

対処は、見えない仕事を可視化することに尽きます。月次報告の見出しを変えてください。

よくある報告 価値が伝わる報告
今月やったこと(作業の列挙) 今月「決めたこと」と、それによって動いた金額
確認しました/問題ありません 今月「防いだこと」(想定損失額つき)
試算表の説明 数字から読み取れる次の一手と、その期限

何も起きなかった月は、価値がなかった月ではありません。何も起きないように設計していた月です。そう言語化しない限り、社長には伝わりません。

4.5 士業が応じてはいけない値下げ要求|顧問先を選ぶ3つの基準

すべての値下げ要求に、丁寧に対応する必要はありません。志師塾では、売上のために誰でも受けることを避け、受けてはいけない相手の基準を明確に教えています。

  1. 親や身内の悪口を言い続ける人:その攻撃性は、遅かれ早かれ周囲にも向きます
  2. 他の専門家の悪口ばかりで、自分の実行責任を取らない人:次はあなたが悪口の対象になります
  3. 人の話を聞かず、一方的に話し続ける人:協働が成立せず、生産性が落ち続けます

顧問契約は継続取引です。スポット業務なら一度で終わる負荷が、顧問では毎月積み上がります。合わない相手を抱えるコストは、複利で効いてきます。値下げ要求を断った結果、契約が切れたとしても、空いた時間を新しい顧問先の開拓に充てたほうが、事務所全体の時給は上がります。

「売上が減るのが怖い」という気持ちは分かります。ただ、志師塾が支援してきた先生業の多くは、合わない顧問先を手放したあとのほうが、年商も時給も伸びています。

5. 士業が顧問料の値下げ要求をされないための契約設計4つ

値下げを言われない顧問契約の設計4つ

断り方を磨くよりも、根本的に効くのが「そもそも言われない設計」です。ここからは、引き金が引かれる前に手を打つ方法を4つ紹介します。

5.1 契約前に、士業としての判断基準を教育しておく

顧問料の価格交渉は、契約した瞬間から始まっています。正確には、契約前に何を伝えたかで、更新時の会話の難易度が決まります

志師塾がセミナー設計で教えている黄金比は、問題提起7割、ノウハウ教育3割です。ノウハウを教えすぎると「ありがとうございます、まず自分でやってみます」となって成約しません。志師塾ではこれを「教えたがり病」と呼んでいます。

この比率は、顧問契約の入口でも同じです。初回面談で解決策を全部出してしまうと、顧問料は「答えを教えてもらう対価」になり、教える内容が減った月に値下げを言われます。入口で伝えるべきは答えではなく、何が問題で、それを放置するとどうなるか、そして専門家をどう選ぶべきかという判断基準です。

5.2 顧問料を「標準パッケージ+カスタマイズ」の二層にする

標準メニューを1枚の表にします。項目は「何をするか」ではなく、「何が手元に残るか(成果物)」で書いてください。「毎月ご訪問します」ではなく「毎月、資金繰り予定表と改善アクション3項目をお渡しします」と書く。成果物が明記されている提案書は、それ自体が誠実さの証明になります。

プラン 主な成果物 想定される顧問先
梅(基本) 年次の必須業務+四半期レポート 創業期、業務が定型的
竹(標準) 月次レポート+改善アクション+随時相談 拡大期、意思決定の頻度が高い
松(伴走) 経営会議への同席、計画策定、実行支援まで 承継期、組織づくりの課題を抱える

志師塾自身も、松竹梅の価格戦略を導入したことで単価が1.5倍近く上がりました。標準を先に提示したうえで「御社向けにここをカスタマイズします」と言えるようになると、主導権を持ったまま追加費用も請求できます。

5.3 顧問料の見直しを「毎年の定例」にする

値上げが難しいのは、何年も放置したあとに突然切り出すからです。毎年決まった月に見直し面談を入れると決めてしまえば、それは交渉ではなく手続きになります。

あわせて、志師塾が教えている限定性の正しい使い方も応用できます。限定や値上げを告げるときは、必ず正当な理由をセットにする。「来期から新規のご契約は料金を改定します。既存の皆さまは1年間、現行料金を据え置きます」と先に予告しておけば、急かしている印象になりません。

値上げは顧問先を裏切る行為ではありません。志師塾は、値上げによって次の5つが起きると整理しています。顧客の本気度が上がる/サポートを厚くできる/従業員に還元できる/余力時間が生まれる/未来への投資に回せる。志師塾自身、2011年に12,000円で始めた講座を、10年余りで118.1万円まで引き上げてきました。価格を上げるたびに、提供する中身も積み増しています。

5.4 前工程へシフトして、比較されない位置に立つ

最後は、そもそも比較の土俵に乗らない方法です。志師塾では「コンダクター戦略」「前工程へのシフト」と呼んでいます。

「相続税の専門家」「就業規則の専門家」と名乗れば、同じ看板の先生と並べられ、価格で比べられます。顧客がその手前で悩んでいることに特化すると、「最初に相談される人」になれます。手前の悩みとは、家族で何をどう決めるか、社内にたまった不満をどう扱うか、といった論点です。最初に相談される人は、後工程の本業務を比較されずに受注できます。

法人開拓も同じ発想です。志師塾では、いきなり顧問契約を狙わず、業務特化のドアノック商品から入ることを勧めています。鉄則は「顧客がすでに払っているお金に乗っかる」こと。採用費や広告費という既存の原資に乗る商品なら、新たに「顧問料の予算」を作ってもらう必要がありません。

実際、志師塾が見てきた事例でも、業種を絞り込んだ税理士が顧問先500件に到達し、新規のご依頼をお断りする状態になったケースがあります。絞ることは、顧客を減らすことではありません。比較されない位置に移動することです。

6. 価格ではなく専門性で選ばれた志師塾卒業生の事例

ここまで挙げてきた考え方を、実際に形にした先生業の方々を紹介します。いずれも志師塾の卒業生インタビューで、ご本人に公開の許諾をいただいている事例です。

6.1 士業専門AI活用コンサルタント・西田明さん

株式会社ツナグミチ代表取締役の西田明さんは、東京と福岡を拠点に「士業専門AI活用コンサルタント」として活動されています。金融・人事・キャリアコンサルタントという多面的な経歴をお持ちですが、前面に出したのは資格名ではなく「時代の波に乗る力を士業に届ける」という役割でした。

特徴的なのは、価値の置き方です。「私の役割は、AIそのものの操作方法を教えることではなく、『先生の業務やビジネスをどう変革できるか』を共に考えることです」。事務所の業務フローを聞き取り、どこにAIを組み込めば時間短縮や付加価値につながるかを一緒に設計していく。まさに、作業代行ではなく伴走を売っている形です。AI研修やセミナーの登壇は、この1年間で50回以上にのぼります(西田明さんのインタビュー記事はこちら)。

6.2 士業専門Facebook集客コンサルタント・滝澤宗之さん

滝澤宗之さんは、もともと「ウェブコンサルタント」として活動されていましたが、それでは差別化が難しいと考え、志師塾でのべ100人以上、1on1で500回以上のフィードバックを受けながらコンテンツを磨き続けました。たどり着いたのが「士業」×「Facebook」×「集客」という尖った肩書です。

結果、集客支援・集客代行サービスを開始してから半年で10人の顧客を獲得し、250万円超の売上を実現されています。さらにコンテンツをラインナップ化したことで、ヒット率は6割に。20代の頃、低価格を目玉に集客して受注過多で体調を崩した経験があるからこそ、価格ではなく専門性で選ばれる位置を取りにいった事例です(滝澤宗之さんのインタビュー記事はこちら)。

6.3 行政書士・吉村猛さん

大阪市鶴見区を拠点に活動される吉村行政書士事務所の吉村猛さんは、2015年に個人事務所を開業。遺言や相続、在留資格の申請支援を手がけながら、表現力を活かしたユニークなセミナーを開催するという、他にない打ち出し方をされています。

開業当初は、地域の商店にチラシを置いてもらったり、経営者が集まる場に足を運んだりと営業を重ねても、すぐには案件につながらない時期が続きました。転機になったのは、志師塾で講師や同期と向き合いながら、自分の資源をどう組み合わせるかを整理したことです。遺言・相続は「まだ早い」と先送りされやすい分野だからこそ、届け方の設計が単価と受注率を左右します(吉村猛さんのインタビュー記事はこちら)。

3名に共通しているのは、腕を磨いたから選ばれたのではなく、「誰の、どの悩みに当てるか」を決め直したから比較されなくなったということです。顧問料を守る話も、突き詰めれば同じ地点にたどり着きます。あなたの事務所が「どの悩みの、最初の相談先か」を言葉にできているでしょうか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その決め方と伝え方を、士業・コンサルタントの実例で解説しています。

7. 士業の顧問料と値下げ要求に関するよくある質問

7.1 一度下げた顧問料を、元に戻すことはできますか

できますが、金額だけを戻すのは困難です。戻すときは業務範囲の変更とセットにしてください。「来期から月次のご報告と資金繰り予定表の作成を再開します。それに伴い、料金を改定させていただきます」という形です。何も変えずに金額だけ戻すと、値下げ前の請求が過大だったと自ら認めることになります。

7.2 10年以上の付き合いがある顧問先に、値上げを切り出せません

長い付き合いほど、金額が据え置かれたまま業務だけが増えているケースが目立ちます。まずは「いま何をお渡ししているか」の棚卸しから始めてください。契約当初の業務範囲と、現在の実態を並べた紙を1枚作るだけで、会話が感情論から事実の話に変わります。そのうえで、5.3で触れた「毎年の見直し面談」を新しい習慣として提案するのが、最も角が立ちません。

7.3 値下げの代わりに「業務を減らす」提案は失礼になりませんか

失礼になりません。むしろ誠実な対応です。金額を下げて範囲を据え置けば、どこかで品質が落ちます。その結果として顧問先が損をするなら、そのほうが不誠実です。「いただく金額に見合う品質を必ずお届けしたいので、範囲のほうを調整させてください」と伝えれば、意図は正確に届きます。

7.4 断って解約されるのが怖いのですが、どう考えればいいですか

1件失う恐怖より、その1件に費やしている時間の総量を先に計算してください。志師塾でいうガチ時給の発想です。値下げに応じて実質時給が下がった顧問先を抱え続けると、新規開拓の時間も、品質を上げる時間も奪われます。なお、既存顧客からの受注コストは新規獲得の5分の1というのが一般的な傾向です。守るべきは「顧問先の数」ではなく「良い顧問先との継続」だと考えてください。

8. まとめ|士業の顧問料は「引き金を引かせない設計」で守る

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 士業の顧問料が下がる引き金は3つ。1つ目は提供価値が作業に見えていること、2つ目は価格以外の判断基準を教育していないこと、3つ目は標準パッケージがないこと
  • 値下げ要求は原因ではなく結果。「効果が見えにくい固定費」に分類された時点で、勝負はついている
  • 断り方の5ステップは、即答しない/縦掘りする/金額に換算して見せる/選択肢を提示する/品質を主語に断る
  • 金額を下げるなら、必ず業務範囲も下げる。範囲据え置きの減額は、事務所の1時間の価値を恒久的に切り下げる
  • 特例には必ず期限と復帰条件を入れる。期限のない特例は恒久化する
  • 根本の対策は、判断基準の教育・標準パッケージ・毎年の見直し・前工程へのシフトという4つの設計

顧問料を守るとは、値下げを跳ね返す交渉術を身につけることではありません。比較される前に、選ばれる理由を渡しておくことです。志師塾ではこれをキラーコンテンツと呼び、先生業のあらゆる集客の土台に置いています。ここが甘いまま、広告を打っても、紹介をお願いしても、価格の話に戻ってきます。

そして、値下げ要求と向き合う時間が長い事務所ほど、新しい顧問先と出会う時間が足りていません。この2つは、同じ課題の裏表です。

値下げ交渉に時間を使うより、「価格で比べられない入口」をつくりませんか

3つの引き金は、どれも顧問先ではなく、こちらの伝え方と契約設計が起点でした。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、選ばれる理由の言語化から、価格ではなく専門性で選ばれる集客の型までを、士業・コンサルタントの事例で解説しています。参加費は無料です。

先生業のためのWeb集客セミナーの詳細を見る

関連記事もあわせてどうぞ

この記事について

この記事は、先生業専門のビジネススクール『志師塾』が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師といった先生業の顧客獲得に特化し、これまで3,295名(2026年8月時点)の受講生を支援してきました。卒業生アンケートでは平均年商1,703万円、年商1,000万円超の割合は約50%。卒業生の実名インタビューも125本以上公開しています。

PAGE TOP
MENU
体験セミナー

TEL:03-5937-2346

カスタマーサポート(9:00 - 18:00 土日祝日除く)