生成AIを使ったことがある人の割合は、日本では2割台にとどまります。米国・中国・ドイツ・英国と並べた国際比較では、調査対象5カ国で最も低い水準です(出典:総務省「情報通信白書」)。
裏を返せば、あなたの顧客企業の多くは、まだAIを使えていません。しかも、使えていない会社は「自分がどこでつまずいているのか」も分かっていません。だからこそ、先生業がやるべきことはAIを教えることではなく、相手の現状を一緒に診ることです。診断は、相談が生まれる場そのものになります。
この記事では、次の4つを順番に解説します。
- 顧客のAI活用度を測る10項目の診断チェックリスト(聞き方の例文つき)
- 30分の面談で診断を回す5ステップ
- 診断を相談・顧問契約につなげる5つの使い方
- 診断でやってはいけない5つのこと
志師塾は、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師)専門のビジネススクールとして、これまで3,200名を超える方の顧客獲得を支援してきました(2026年8月時点)。あわせて一般社団法人AI伴走士協会を運営し、AIと伴走支援を組み合わせたサービスづくりを支援しています。志師塾の受講生を見ると、2025年1月時点でAIを業務に使っていた先生業は2割程度でしたが、同年10月にはほぼ全員が何らかの形で使うようになりました。自分が使う段階は、すでに差別化になりません。差がつくのは、顧客の現場に当てられるかどうかです。
読み終えるころには、次の面談で「何を・どの順番で聞けばいいか」、そして聞いた後にどう提案へつなげるかが具体的に見えているはずです。まずは、診断がなぜ相談を生むのかという構造から整理します。
ただ、診断項目を手に入れただけでは足りません。聞いたあとに何を提案するかが決まっていないと、相手の課題を掘り起こして終わってしまいます。志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、顧客の業務を診るところから、専門知識×AI×伴走支援のサービスに組み立てるまでの流れを解説しています。
AIに詳しくなるのではなく、自分の専門領域で続く契約をつくる。その組み立て方と先行事例を持ち帰れます。
1. 顧客のAI活用度を診断すると、なぜ相談が生まれるのか

顧客のAI活用度診断とは、顧客企業がAIをどこまで業務に組み込めているかを、決まった項目で聞き取って可視化する行為です。目的は点数をつけることではなく、相手自身に「うちはここが空いている」と気づいてもらうことにあります。
1.1 AIの話は「教える」より「診る」ほうが相談になる
AI活用セミナーを開いて喜ばれたのに、そこから仕事が来ない。この相談は非常に多く寄せられます。原因はシンプルです。教えると、相手は「勉強になりました」で完結してしまう。感心はされますが、依頼には変わりません。
一方、診断は構造が逆です。質問されると、相手は自分の会社について話し始めます。話しているうちに、言葉にできていなかった詰まりが自分の口から出てきます。自分の口から出た課題には、人は責任を持つ。だから次の一手の相談になる。志師塾がAI活用の入口として診断を推すのは、この一点のためです。
1.2 いきなりツールの話をしてはいけない
志師塾では、顧客のAI活用を支援するときの原則をこう伝えています。
ヘボいITコンサルはツールから入る。優秀なITコンサルは、そもそも業務で何を達成したいかという業務整理から入る。
「ChatGPTとGeminiはどう違うか」から始めると、話はツールの比較で終わります。相手の社内に何も残りません。ツール名から入った提案は、ほぼ受注につながりません。順番は、目的の確認 → 業務の整理 → 機能のマッチング → ツール選定です。診断10項目も、この順番どおりに並べてあります。
1.3 AI活用を「入口」にして、本題は専門領域に置く
ここで誤解しやすいのが、AI診断を自分の新商品にしてしまうことです。AI導入コンサルタントに転向する必要はありません。
志師塾が整理している考え方は、入口と本題を分けるというものです。入口は「相手が、恥をかかずに聞けること」。本題は「相手が、本当に困っていること」。AIは今、経営者にとって聞きにくいテーマの代表格です。興味はあるが、部下には聞けない。だから入口として機能します。
そして診断で業務を一緒に見ていけば、必ずあなたの専門領域の話に行き当たります。人の問題なら人事、資金の問題なら財務、契約や規程の問題なら法務。AIは話を始める理由で、売るものは今までどおりあなたの専門性です。
1.4 中小企業の現場は「人手不足」で入口が開いている
中小企業庁の中小企業白書では、人手不足が繰り返し主要な経営課題として挙げられています。デジタル化の取り組み状況にも、企業規模による差が残ったままです(IPA「DX動向」調査)。
興味深いのは、AI伴走士協会に相談に来る経営者の動機です。多くは「コストを削りたい」ではなく、「スタッフの仕事を楽にしてあげたい」でした。人が採れない。既存のスタッフに無理をさせている。その感情のところに、AIの話は届きます。診断の入口も、効率化の説教ではなく「どこが一番きついですか」から入るのが自然です。
2. 顧客のAI活用度診断の土台になる3つの壁(Why・What・How)

AI導入がうまくいかない原因は、志師塾では3つの壁として整理しています。Why(なぜ使うのか)、What(何に使うのか)、How(どう運用するのか)です。診断10項目は、この3つの壁を順に当てていく構成になっています。
2.1 Whyの壁:目的が「とりあえずAI」になっている
AI活用の効果は、大きく3つに分かれます。
| 目的の分類 | 中身 | 評価の物差し(KPI) |
|---|---|---|
| 効率化 | 既存業務の高速化・自動化(特にルーティン業務) | 作業時間、処理件数、残業時間 |
| 価値創造 | 売上拡大、新サービス・新事業の創出 | 受注件数、単価、提案数 |
| リスク低減 | ミス防止、コンプライアンス対応 | 手戻り件数、事故件数、点検漏れ |
この3つのどれを狙うのかが決まっていない会社は、ツールを契約しても使われません。目的がないものに、人は時間を割かないからです。
2.2 Whatの壁:業務整理をせずツールから入る
2つめの壁は、対象業務が決まっていないことです。正しい順序は、①自社業務の洗い出し → ②AI機能の整理 → ③業務とAI機能のマッチング → ④ツール選定。多くの会社は①と②を飛ばして④から始めます。
業務を仕分けるときは、AI適応度と顧客提供価値の2軸で見ます。志師塾が使っている業務×AI適応マトリクスです。
| 顧客への提供価値:低 | 顧客への提供価値:高 | |
|---|---|---|
| AI適応度:高 | AIで代替・自動化する(◎すぐ着手) | AIと人の協働で価値を出す(新サービス化の種) |
| AI適応度:低 | そもそも廃止を検討(△AI以前の問題) | 人が注力する領域(伴走・感情のケア・判断) |
情報収集や要約はAIに置き換わっていきます。標準的な回答のテンプレート化も7割くらいは任せられます。ただし残りの3割、そしてモチベーションを上げる仕事は、当面人の領域。この線引きを相手と共有できると、話が「仕事がなくなる」から「どこを任せるか」に変わります。
2.3 Howの壁:導入したが運用に乗らない
3つめは運用です。目的設定 → 導入設計(適用範囲・ツール選定・業務フロー設計) → 運用改善(手順化・効果測定・改善)という流れのうち、最後が抜けると「アカウントだけある会社」になります。
ここは実は、先生業にとって一番おいしい領域です。ツールの導入はベンダーでもできます。続けさせること、使われる状態にすることは、人が関わらないと動きません。伴走支援の出番がここにあります。
2.4 3つの壁が、そのまま診断10項目の骨格になる
診断の10項目は、Whyを3つ、Whatを3つ、Howを4つに割り当てています。順番を入れ替えないでください。Howから聞くと、ツールの話に引きずられて、目的が空白のまま提案に進んでしまいます。
3. 顧客のAI活用度診断10項目チェックリスト

顧客のAI活用度診断10項目とは、Why(目的)・What(業務)・How(運用)の3層に沿って、相手の現状を聞き取るための質問セットです。点数をつけるためではなく、空いている穴を相手と一緒に見つけるために使います。
3.1 診断10項目の一覧(早見表)
| 層 | # | 診断項目 | 空いていたときに生まれる相談 |
|---|---|---|---|
| Why (目的) |
1 | 経営者自身がAIを触っているか | 社長向けの体験セッション |
| 2 | 目的を効率化・価値創造・リスク低減で言えるか | 目的とKPIの設計 | |
| 3 | 浮いた時間の行き先が決まっているか | 時間の再配分と優先順位づけ | |
| What (業務) |
4 | 業務の棚卸し(業務一覧)があるか | 業務洗い出しワークショップ |
| 5 | 人から人へ渡っている業務を把握しているか | 引き継ぎ部分の自動化 | |
| 6 | 自社の資料・ノウハウがAIに渡せる形か | ナレッジ整備と専用ボット構築 | |
| How (運用) |
7 | 使っている人の範囲(何人中何人・頻度) | 社内勉強会・定着プログラム |
| 8 | うまくいった聞き方が共有されているか | プロンプト集の作成・型の標準化 | |
| 9 | 入力してよい情報のルールがあるか | 社内AI利用ガイドラインの策定 | |
| 10 | 出力を誰が最終確認し、責任を取るか | チェック体制の設計・専門家の監修 |
まずは一覧を手元に置いて、次から1項目ずつ「どう聞くか」「答えから何が分かるか」を見ていきます。
3.2 項目1~3:顧客のAI活用の「目的」を診る
項目1:経営者自身がAIを触っているか
聞き方は「社長ご自身は、ChatGPTのようなAIを週に何回くらい開きますか?」。頻度で聞くのがコツです。「使っていますか」だと、ほぼ「まあ、少しは」と返ってきて情報になりません。
ここがゼロなら、どんな提案も「よく分からないもの」として保留されます。社長の体験がない会社でAI活用が進むことは、まずありません。だから最初の提案は研修ではなく、社長の目の前で1つやってみせる30分になります。
項目2:目的を3分類で言えるか
聞き方は「AIで一番解決したいのは、時間ですか、売上ですか、ミスですか?」。3択にして出します。即答できれば目的がある会社、「全部ですね」と返ってきたら目的がない会社です。
項目3:浮いた時間の行き先が決まっているか
聞き方は「もし月に20時間空いたら、その時間は何に使いますか?」。この質問は効きます。ほとんどの経営者が答えに詰まります。
志師塾が効率化の話をするときに必ず添えるのが、時間を「空ける」のと「移す」のは別ものという見方です。削減だけで終わると、浮いた時間はなんとなく消えていきます。実際、志師塾の受講生である行政書士の方は、AI活用で書類作成の時間を3分の1まで減らしました。成果が出たのは時間が減ったからではなく、空いた時間を顧客サポートに移したからです。結果としてサービスの質まで上がりました。
この質問は、経営者本人のキャリアや人生の使い方にも接続します。先生業自身にとっても同じ問いで、志師塾では50歳からの働き方と生き方の考え方としても扱っているテーマです。
3.3 項目4~6:顧客のAI活用の対象「業務」を診る
項目4:業務の棚卸しがあるか
聞き方は「部門ごとの業務一覧はありますか? 最後に更新したのはいつですか?」。ここがない会社が大多数です。そして業務一覧がない状態では、AIの適用先は永遠に決まりません。
逆に言えば、ここは最も受注しやすい入口になります。業務の洗い出しそのものに、AIの知識は不要。相手の業務を一緒に書き出す場をつくるだけで、価値が出ます。
項目5:人から人へ渡っている業務を把握しているか
聞き方は「社内で『誰かの提出を待っている』業務はどこですか?」。自動化が一番効くのは、人から人へ渡っている業務です。申請、報告、集計、リマインド。ここはスプレッドシートとGAS(Google Apps Script)で自動化しやすく、効果が目に見えます。
項目6:自社の資料・ノウハウがAIに渡せる形か
聞き方は「過去の提案書や手順書は、探して取り出せる形になっていますか?」。紙や個人のPCに散っていれば、AIに読ませる前の整理が先です。逆に整っていれば、その会社専用の相談ボット(カスタムGPTやDify)をすぐ作れます。ここの差が、提案の中身を大きく変えます。
3.4 項目7~10:顧客のAI活用の「運用」を診る
項目7:使っている人の範囲
聞き方は「社内でAIを日常的に使っている人は、何人中何人ですか?」。人数で答えてもらいます。20人中2人なら、それは会社の取り組みではなく個人の趣味です。定着支援の提案根拠になります。
項目8:うまくいった聞き方が共有されているか
聞き方は「うまくいった質問の仕方を、社内で共有する場所はありますか?」。ほぼ「ないです」と返ります。ここで渡せるのが、志師塾が教えているBRAIN法です。
| 要素 | 意味 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| B(Brief)目的 | 何をさせたいか | 新人向けの手順書のたたき台を作る |
| R(Role)役割 | どの専門家として振る舞うか | 製造業の現場教育の担当者として |
| A(Audience)対象 | 誰向けの情報か | 入社3か月目のパート社員向け |
| I(Instructions)条件 | 文字数・制約 | A4で1枚、専門用語は使わない |
| N(Notice)形式 | 出力の形 | 手順を番号つきの箇条書きで |
この5つを押さえるだけで、出力は変わります。診断の場で1つ実演すると、相手の反応がはっきり変わります。
項目9:入力してよい情報のルールがあるか
聞き方は「顧客名や契約書を、AIに貼ってよいかのルールは決まっていますか?」。ここが空いている会社は非常に多く、しかも経営者は内心ひやっとしています。士業の方にとっては、そのまま本業の相談につながる領域です。
項目10:出力を誰が最終確認し、責任を取るか
聞き方は「AIが作った文書を、最後に誰が見てOKを出しますか?」。この質問で、相手は黙ります。
志師塾が繰り返し伝えているのは、AIは謝るが責任は取らないということです。最終確認の役を誰も担っていない会社は、いつか事故を起こします。そして専門家が「大丈夫です」と言い切る役は、AIには渡せません。ここは顧問契約の起点になる項目です。
4. 顧客のAI活用度診断を30分の面談で回す5ステップ

診断は、長く時間を取る必要はありません。既存顧客との面談なら30分で回せます。大事なのは順番と、最後の締め方です。
4.1 ステップ1:診断の目的を先に伝える(3分)
冒頭で「これは点数をつける場ではありません」と伝えます。「AIをどこから使うと一番楽になるか、優先順位をはっきりさせるために聞かせてください」と置く。これをやらないと、相手は査定されていると感じて答えを盛ります。
4.2 ステップ2:10項目を聞く(12分)
評価せず、事実だけ集めます。「それはまずいですね」「普通はこうです」は禁句です。ここでついやってしまうのが、相手の答えに解説をかぶせること。解説を始めた瞬間、診断は講義に変わります。
メモは相手に見える形で取ってください。ホワイトボードでも、画面共有したスプレッドシートでもかまいません。自分の会社の状況が目の前で埋まっていく体験が、課題の自覚をつくります。
4.3 ステップ3:その場で1つ実演する(8分)
志師塾が顧客企業へのAI導入支援で最も強調する一文があります。
説明されても、人は動きません。目の前で自分の仕事が楽になるのを見て、はじめて「うちでもやりたい」になる。
だから診断の途中で、相手の業務に関わるものを1つだけ画面でやってみせます。会議メモの要約、クレーム返信文のたたき台、求人原稿の案。相手が今日困っていることを選ぶのがポイントです。汎用的なデモは効きません。志師塾の受講生の中には、画面を見せただけでAI研修の契約が即決した方もいます。
4.4 ステップ4:優先順位を1つに絞る(5分)
業務×AI適応マトリクスに当てはめて、着手するものを1つだけ決めます。3つ以上出すと、全部止まります。選ぶ基準は「簡単で、効果が見えて、本人が関わる業務」です。
4.5 ステップ5:次の一手を相手に言わせて終わる(2分)
最後は必ず相手の言葉で締めます。「今日の気づきは何でしたか」「どこから手をつけると決めましたか」「いつまでにやりますか」。この3つを聞いて終わる。これは志師塾が伴走支援の定期セッションで使っている締め方そのもので、宣言で終わると実行率が上がります。
ここまでが診断の実務です。ただ、診断を覚えても「で、いくらで何を売るのか」が決まっていないと、良い面談をして終わりになります。志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、診断で見えた課題をサービスの4要素(AIボット・コンテンツ・AIツール・人的サービス)に組み立て、価格をつけるまでの手順を扱っています。AI伴走士養成セミナーの内容はこちらで確認できます。
5. 顧客のAI活用度診断を相談・契約につなげる5つの使い方

診断は、使う場所によって役割が変わります。既存顧客の深掘り、新規の集客、継続契約の根拠。5つの使い方を、着手しやすい順に紹介します。
5.1 既存顧客との定例面談の冒頭10分に入れる
最も早く始められるのがこれです。新しい商品も、チラシも、告知も要りません。次の訪問の冒頭で、10項目のうち3つだけ聞く。それで十分に話が動きます。
既存顧客は、すでに信頼関係があります。志師塾が伴走支援の7ステップで「ラポールができていないタイミングでAIを登場させると仕事は来ない」と教えているのは、逆から言えば関係ができている相手にはAIの話が通りやすいということです。
5.2 セミナー・研修の中でチェックリストとして配る
セミナーの終盤に診断を置くと、構成が引き締まります。志師塾がAI活用セミナーで使っている流れはこうです。
- 問題提起(今のままではまずいという現状認識)
- インパクト(AIの進化を数字と実例で示す)
- ノウハウ提供(BRAIN法やデモで「おお」を引き出す)
- 痛みの再確認(でも、御社ではまだ動いていませんよね)
- チェックリストで自社の現状を数値化
- 個別診断への誘導(御社の場合どの業務に可能性があるか見ます)
5番目が今回の10項目です。自分で丸をつけた空欄は、人から指摘された欠点よりずっと強く残ります。
5.3 無料の入口サービスとして「AI活用の棚卸し診断」を出す
新規開拓に使うなら、診断自体を入口のメニューにします。このとき大事なのは、誰向けの診断かを絞ることです。「中小企業向けAI診断」では刺さりません。「スタッフ10名前後の建設会社向け」「院長が事務作業を抱えている歯科医院向け」のように狭めます。
対象を狭めると仕事が減ると思われがちですが、実際は逆です。AI活用とは別分野の話になりますが、パラレルキャリアで働く女性を支援する美宝れいこさんの歩みが分かりやすい例です。美宝さんは副業でアロマサロンを始めたものの、自分が本当にやりたいのはそこではないと気づきました。志師塾で相談対象などを明確にする過程を経て、「パラレルキャリア」という切り口にたどり着き、エール株式会社の代表として働く女性の支援を事業の軸に据えています。
新しいスキルを足したわけではありません。誰に向けて何を言うかを決め直しただけで、道が開けています。AI活用度診断でもここが要になります。10項目は誰にでも当てられる。だからこそ、当てる相手を決めた人にだけ相談が集まります。
5.4 診断結果を1枚のレポートにして渡す
診断して終わりにせず、A4で1枚のレポートにして渡します。中身は4つだけ。①現状(10項目の状況)②一番効く業務 ③最初の一手 ④3か月後の姿。
このレポートは、AIで作れば15分もかかりません。志師塾の受講生の中には、提案資料の作成時間を3時間から15分に短縮した士業の方もいます。渡したものが社内で回ると、次の相談が来ます。口頭で説明しただけの提案は、社内で共有されません。
5.5 診断を定点観測にして伴走契約につなげる
最後が、継続契約への橋渡しです。同じ10項目を3か月ごとに測る。すると変化が見えます。「前回は2項目だけでしたが、今回は6項目になりました」。この比較が、継続の理由になります。
志師塾が支援している先生業の中には、AI活用支援を入口にして月22万円(年間264万円)の顧問契約を獲得した方もいます。単発の研修で終わる人と顧問になる人の違いは、測る物差しを持っているかどうかです。物差しがないと、成果の実感も次の課題も共有できません。
6. 顧客のAI活用度診断でやってはいけない5つのこと
診断は強力ですが、やり方を外すと一気に空振りします。志師塾が受講生の実践報告から拾っている失敗パターンは、だいたいこの5つに集約されます。
6.1 点数で評価して終わる
「10点満点中3点です」で終わると、相手は恥をかいただけになります。点数は使ってもかまいませんが、その直後に必ず「一番効くのはここです」と1つ示してください。評価ではなく、順番を渡すのが診断の役目です。
6.2 ツール名から話し始める
最新ツールの話は、相手を置いていきます。ツールは常に変わります。志師塾が「流行りのツールを追い続けるより、本質的な機能と業務適用のフレームを押さえるほうが先」と伝えているのは、ツール知識の鮮度は3か月で落ちるのに、業務整理の力は落ちないからです。
6.3 AIの知識量で勝とうとする
知識で張り合うと、相手は守りに入ります。そして知識の戦いでは、そもそもAIに勝てません。AI伴走士協会が掲げている立ち位置は明快です。AIに詳しい人ではなく、AIを現場で活かせる人になる。診断の場で必要なのは、情報量ではなく聞く順番です。
6.4 全部やりましょうと広げる
10項目すべてが空いていると、つい全部提案したくなります。やめてください。同時に3つ動かすと、相手の社内は止まります。1つ決めて、小さく早く成果を出す。その1勝が、次の相談を連れてきます。
6.5 「AI化を進めましょう」と言う
最後が一番大事です。診断の結論を「御社をAI化しましょう」にしてしまうと、あなたはAI導入業者になります。そうなると、価格で比較され、ツールベンダーと同じ土俵に立たされます。
志師塾とAI伴走士協会が定義しているのは、専門知識 × AI × 伴走支援という組み立てです。軸足は元の専門家のまま。AIは、専門性を届ける速度と範囲を広げる道具として使います。診断の結論も「御社の人の問題は、ここを自動化すれば手が空きます。空いた手で何をやるかを一緒に決めましょう」という形になります。
| やってしまいがちな言い方 | 診断で使う言い方 |
|---|---|
| 御社をAI化しましょう | この業務を手放して、空いた時間をどこに移しますか |
| まずツールを入れましょう | まず業務を一緒に書き出しましょう |
| AIの使い方を教えます | 使われる状態になるまで一緒に走ります |
| これが最新のツールです | 御社の場合、効くのはこの1つです |
7. 診断後の支援で、AIに任せる仕事と先生業が担う仕事

診断の後に始まるのが、本題である支援です。ここでAIと人の役割を分けておかないと、AIに飲まれるか、AIを使えないかのどちらかになります。
7.1 AIが担えるのは情報整理・たたき台・リスク出し
セッションや面談でAIに任せられるのは、情報の整理、ロジックの分析、リスクの洗い出し、データに基づく案出しです。いわゆるHowとWhatの領域です。
言いにくいことを言わせる役が、とくに効きます。「このままの計画だと何が起きるか、厳しめに挙げてください」とAIに投げる。AIは忖度しません。そのうえで「AIはこう言っていますが、社長はどう考えますか」と戻す。この投げ方は、関係を壊さずに厳しい論点を扱えます。
7.2 人に残る3つの価値(責任を取る・実行する・感情をサポートする)
志師塾が繰り返し整理している、AIに渡せない3つがこれです。
| 人に残る価値 | 中身 | 診断後の支援での現れ方 |
|---|---|---|
| 責任を取る | 専門家として「大丈夫です」と言い切る | 出力の最終確認、監修、法令との照合 |
| 実行する・伴走する | 計画を回し、進捗を見て軌道を直す | 定期セッション、社内への定着支援 |
| 感情をサポートする | 不安・孤独に向き合い、変化を承認する | 経営者の迷いの整理、スタッフの抵抗感のケア |
3つめを軽く見ないでください。AI導入が止まる理由は、技術ではなく感情です。「自分の仕事がなくなるのでは」という不安が社内にあると、どんなに良いツールも使われません。ここを扱えるのは人だけです。
7.3 相談を奪われたら判断へ、作業を奪われたら戦略へ
AIはこの数年で、相談する相手から作業を任せる相手に進化しました。電話で手順を教えてくれるヘルプデスクだったものが、隣の席で実際に作業する同僚に変わった、という変化です。
この変化に対する志師塾の答えは一貫しています。相談を奪われたら、判断へ。作業を奪われたら、戦略へ。AIが一段進化したら、先生業も立ち位置を一段上げる。
顧客のAI活用度を診断するという行為は、まさにこの「一段上げる」動きです。作業を売る人は、AIを使う顧客に単価を下げられます。顧客の状態を診て、どこから手をつけるかを決める人は、AIが進化するほど必要とされます。
立ち位置を上げるかどうかは、自分の働き方をどう組み直すかという問題でもある。志師塾では、年齢を重ねた先生業が働き方を選び直す視点も扱ってきました。
7.4 自分の効率化が、そのまま商品になる
診断と支援を売るうえで、遠回りに見えて最短なのが、まず自分の業務でやってみることです。志師塾の中でも、自分の事務作業を自動化するために覚えたことが、そのまま顧客への商品になった例が続いています。
実際、ある経営者に自社の発信や事務の仕組み化について話したところ「それ、うちにも入れてください」と言われた、というのは志師塾でよくある流れです。その顧問先では3か月で社員の生産性が25%上がり、発信量は3~4倍になりました。これはAI活用に限りません。自分が体験した脳科学の効果をそのまま事業にした自己実現メンタルコーチ・平真理子さんの歩みも、同じ構図です。自分で試したことしか、他人には売れません。そして試したことは、必ず売り物になります。
8. 志師塾卒業生の事例:相手の現状を言語化する人に相談が集まる
診断の本質は、相手が自分では言葉にできていないことを言葉にすることです。これはAIに限った話ではありません。志師塾の卒業生インタビュー(125本を公開中)から、AI活用とは別分野の例を2つ紹介します。
8.1 プロコーチ・兼若勇基さん:相手の深層に構造を与える
プロコーチの兼若勇基さんは、経営者向けのコーチングセッションを提供し、複数のコミュニティを主催しています。クライアントからは「自分では思っていない視点から未来を見せてくれる」「強みに基づいた施策がポンポン出てくる」「今すぐ行動したくなる」という声が上がります。
兼若さんが支援しているのは、長期のミッションづくり、短期目標の明確化、心のブレーキを外すことの3つです。深層心理を理解したうえで論理的に方向を示すから、クライアントが腹落ちする。診断で起こしたいのは、まさにこの腹落ちです。AIの話であっても、相手の中のモヤモヤが構造になった瞬間に、人は動きます。
8.2 自己実現メンタルコーチ・平真理子さん:伝え方で存在が変わる
自己実現メンタルコーチの平真理子さんは、脳科学や心理学の知識をもとに、脳の使い方を指導する脳力開発トレーニングスクールを運営しています。不動産賃貸業の代表、協同組合の代表理事、専門学校の非常勤講師と並行して、この事業に力を入れてきました。
志師塾での学びとして平さんが挙げているのが、伝え方の大切さです。コーチングやAI活用支援のように形のないサービスは、肩書を自分で作れる反面、伝わらなければ存在しないのと同じになります。「顧客のAI活用度診断」も同じで、誰の何が変わるのかを一言で言えるかどうかが分かれ目になります。
この2人は、いずれもAI活用が専門ではありません。それでも共通しているのは1つで、相手の現状を言葉にする力で選ばれています。AI活用度診断は、その力をAI時代の文脈に乗せる手段にすぎません。あなたの専門知識にAIと伴走支援を掛け合わせて、どんなサービスに組み立てるか。志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、その設計手順と先行事例を解説しています。
9. よくある質問:顧客のAI活用度診断の実務
9.1 AIに詳しくなくても診断できますか
できます。10項目のうち、ツールの知識が必要なのは実質2つ、項目6(自社の資料・ノウハウがAIに渡せる形か)と項目8(うまくいった聞き方が共有されているか)だけです。残りは目的の確認と業務の整理で、これは先生業が本来得意な領域です。むしろAIに詳しい人ほど、ツールの話から入って失敗します。
9.2 診断は無料でやるべきですか
新規開拓の入口として使うなら、無料でかまいません。ただし無料で終わらせないために、診断の最後に「次の一手」を必ず示してください。有料の場合は、診断単体ではなく業務の洗い出しワークショップ(半日など)の形にすると値づけしやすくなります。
9.3 既存顧客に突然AIの話をして、変に思われませんか
AIの話として持ち出すと浮きます。「最近こんな相談が増えていて、御社はどうされているか気になって」という入り方にしてください。本題はいつもどおり専門領域で、AIは話を始める理由として使います。
9.4 小さな会社にもAIの相談はありますか
むしろ一人や少人数の会社ほど効きます。人を増やせないから、手を増やす以外に方法がないからです。AIを道具ではなくスタッフとして持つという考え方は、規模が小さいほど切実に響きます。
9.5 診断の後、いくらで提案すればいいですか
最初から完璧なサービス設計を作り込まないことをおすすめします。志師塾が商品化について伝えているのは「細かく作り込んでから提案に行くのではなく、ざっくりレベルでまず売って、そこから中身を作る」という順番です。診断で課題が見えているなら、その1つを解決する3か月の伴走という形で出して、受注後に中身を具体化すれば間に合います。
10. まとめ:顧客のAI活用度診断10項目を、次の面談から使う
この記事の要点を整理します。
- AIの話は、教えるより診るほうが相談になる。自分の口から出た課題に、人は責任を持つ
- 診断の骨格はWhy(目的)3項目・What(業務)3項目・How(運用)4項目。ツールの話から入らない
- 面談30分で回す。目的を伝える → 10項目を聞く → その場で1つ実演する → 着手を1つに絞る → 相手に宣言させる
- 使い方は5つ。既存顧客の冒頭10分/セミナーのチェックリスト/入口サービス/1枚レポート/定点観測で継続契約へ
- 結論を「AI化しましょう」にしない。軸足は専門知識 × AI × 伴走支援。責任を取る・実行する・感情をサポートするは人に残る
10項目は、明日の面談からそのまま使えます。難しいのは、聞いたあとです。見えた課題を自分のサービスとして組み立て、価格をつけて、継続の形にする。ここでつまずくと、良い面談を重ねているのに売上が変わらない状態が続きます。
同じ面談から、顧問契約が生まれるようになる
AIの専門家になる必要はありません。志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、顧客の業務を診るところから、専門知識×AI×伴走支援でサービスを組み立てる手順、そして先行事例までを解説しています。参加費は無料です。
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この記事は、先生業専門のビジネススクール「志師塾」が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師の顧客獲得支援を専門に、これまで3,200名を超える方を支援してきました(2026年8月時点)。卒業生インタビューを125本公開しており、一般社団法人AI伴走士協会とあわせて、AIと伴走支援を組み合わせたサービスづくりを支援しています。