
弁理士がInstagramを始めるかどうかで迷うとき、頭に浮かぶのは製造業の知財部の顔でしょう。あの人たちがInstagramを見て弁理士を選ぶわけがない。その通りです。特許を軸にした仕事だけを考えるなら、この手法は割に合いません。
ただ、弁理士の仕事にはもう一本の柱があります。商標です。そしてInstagramは、商標で困る人がいちばん集まっている場所でもあるのです。この記事では、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・営業支援を専門としてきた志師塾が、弁理士がInstagramを依頼につなげる手順を4つのステップに整理して解説します。まずは全体像を置いておきましょう。
- ステップ1:商標か特許か。取りに行く相手を決める(ポジショニング)
- ステップ2:プロフィールを「相談していい合図」に整える
- ステップ3:投稿を「出願前の判断」で組む
- ステップ4:単発の出願から、ブランドを守り続ける関係へつなぐ
1. 弁理士のInstagram集客は、特許では効かない
期待値を先にそろえます。ここがずれたまま始めると、半年後に「意味がなかった」で終わってしまうからです。
1.1 特許の依頼は、Instagramから来ない
企業の知財部が代理人を選ぶとき、見ているのは実績と技術分野の相性、そして担当者との相性です。選定には社内の稟議も絡みます。この経路にSNSが入り込む余地は、ほとんどありません。特許を軸にした事務所が、Instagramで新規の企業案件を取りに行くのは無理があります。
個人発明家に向けるという道もありますが、こちらも注意が要ります。件数のわりに手間がかかり、権利が取れても事業にならない相談も混ざるからです。取りに行くと決めるなら、どこまで引き受けてどこから断るかを先に決めておきましょう。
1.2 商標だけは、Instagramの中に依頼者がいる
ここからが本題です。Instagramを使って商売をしている人たちを思い浮かべてください。アパレル、雑貨、化粧品、菓子店、サロン、ハンドメイド作家、飲食店。この人たちは全員、ブランド名とロゴを持っています。
そして彼らは、ある日ぶつかります。似た名前の店を見つけた、真似された、モールへの出店で権利の有無を聞かれた、大手から連絡が来た。商標の問題は、Instagramで発信している人の身に、Instagramの中で起きます。ほかの士業がうらやむような噛み合い方でしょう。特許は届かないが商標は届く。この線を引けるかどうかが、弁理士の発信の出発点です。
1.3 もうひとつの読み手は、税理士や弁護士
忘れてはいけない相手が、ほかの士業です。弁理士への依頼の多くは、顧問税理士や弁護士、コンサルタントからの紹介で動きます。彼らは知財の専門家ではないので、顧問先から相談されたときに「誰に振ればいいか」を探します。
そのとき思い出してもらえるかどうか。ここにSNSが効きます。同業と接する場ではなく、隣の士業に見つけてもらう場として使う。この視点を持つと、投稿の書き方も変わってきます。専門家が読んで「これは自分の顧問先の話だ」と気づける形にしておくわけです。
1.4 期待値が決まれば、投稿の中身も決まる
ここまでを整理しましょう。Instagramに任せる仕事は、特許の企業案件を取ることではありません。ブランドを育てている事業者に見つけてもらい、ほかの士業の記憶に位置を作ること。この2つに絞れば、何を投稿すべきかは自然に決まっていきます。志師塾がツール選びより先にポジショニングを固める順番を大切にしているのも、ここが決まらないと発信が迷子になるからです。
売り込まずに相談が集まる設計を最短で身につけたい方に向けて、志師塾では弁理士をはじめ先生業に特化したWeb集客セミナーを開催しています。
2. ステップ1:取りに行く相手を決める
土台になるのがポジショニングです。市場とほかの弁理士を見渡して、自分が最も評価される場所を見つけ、そこに自分を置く。ここが決まると、投稿のネタ探しは驚くほど楽になります。
2.1 「弁理士です」では、フォローする理由がない
弁理士は、資格の名前そのものが知られていません。「弁護士とどう違うのか」から説明が要る場面も多いはず。プロフィールに資格名だけが書かれたアカウントを見た人は、フォローする理由を見つけられないでしょう。
見る側が数秒で判断するのは2点だけ。この人は何の専門家か、自分に関係があるか。特許も商標も意匠も、国内も海外も対応しますという書き方は、実務としては正しくても記憶には残りません。
2.2 「誰の・どんな場面を・どう守るか」で言い切る
ポジショニングは、難しく考えなくて構いません。「誰の」「どんな場面を」「どう守る」専門家なのか。この3つを言い切れれば、輪郭は自然に浮かび上がります。手を動かす順番は次のとおり。
- 書き出す:これまで扱った分野、依頼者の業種と規模、深く関わった場面(ブランド立ち上げ、模倣品への対応、海外展開、共同開発、ライセンスなど)
- 印を付ける:そのうち「成果が出て、しかも自分が面白かった」案件を選ぶ
- 一文にする:印を付けた案件に共通する業種・場面・依頼者の立場を掛け合わせる
「オンラインで商品を売る小さなブランドの、名前とロゴを立ち上げの段階から守る」という一言(あくまで例です)なら、相談したい相手の顔が浮かびます。できあがった一文は、自分では判定できません。知人に読んでもらい、「誰を紹介すればいいか」がすぐ浮かぶかどうかで確かめてください。浮かばなければ、まだ絞れていないということ。「絞ると仕事が減る」という不安は自然ですが、実際は逆に働きます。何でも扱いますという名乗りは、相手の記憶の中では「何の専門家でもない」と同じ扱いになるからです。
2.3 値下げで戦わないと、先に決めておく
商標を入口にすると、必ず出会うのが格安の出願サービスです。手続きだけを切り出して価格で競う相手には、正面から戦っても消耗するだけ。だから戦う場所を変えます。
弁理士の価値は、出願する前の判断に集まっています。その名前で本当に取れるのか、どの区分で押さえるべきか、将来の展開まで考えたときに何が足りないか。ここを相談できる相手がいるかどうかで、依頼者のブランドの寿命が変わります。発信の中身も、手続きの説明ではなく判断の話に寄せる。そうすれば、価格だけを見る人は自然と離れ、判断を求める人が残ります。値下げしない考え方は弁理士の営業3つのコツでも扱っています。
2.4 追う数字は、フォロワー数ではないほうがいい
見る数字も先に決めておきましょう。おすすめは、保存された数、プロフィールを見られた数、そしてDMや問い合わせの件数。この3つは関心の深さを映すので、少数でも仕事につながる設計と噛み合います。ブランドの相談が月に2件増えるだけでも、事務所の景色は変わるでしょう。フォロワーが3,000人いても、同業と受験生ばかりなら依頼は生まれません。数の大小ではなく中身を見る。この癖をつけてください。
3. ステップ2:プロフィールを「相談していい合図」に整える
投稿を増やす前に、必ず手を入れてほしい場所があります。プロフィールです。投稿に興味を持った人は、まずアカウント名をタップする。そこで何者か分からなければ、静かに戻っていきます。
3.1 手を入れるのは4か所だけ
プロフィールは、投稿の受け皿です。受け皿がないまま投稿だけ増やしても、せっかく生まれた興味はこぼれ落ちていきます。しかも一度整えれば長く効き続けてくれる。投稿を10本作る前に、ここへ半日かけましょう。項目名や文字数の上限は変わることがあるので、最新の仕様は公式のヘルプで確かめてください。
- 名前の欄:氏名だけで終わらせず、扱う領域を添える。検索で拾われる可能性のある場所です
- 自己紹介文:2.2で決めた一文を先頭に置く。合格年度や事務所の沿革は、その後ろで構いません
- リンク:飛び先は1つに絞る。並べるほど、どれも押されなくなります
- プロフィール写真:顔が分かるものにする。事務所のロゴだけでは、相談相手として想像しにくい
自己紹介文でやりがちなのが、専門用語をそのまま並べることです。区分、指定商品、拒絶理由通知。実務では当たり前でも、ブランドを育てている人にはまだ通じません。「区分の選定に対応」より「その名前で本当に大丈夫かを、出す前に一緒に確かめます」のほうが届きます。
3.2 ハイライトに「名前を決める前に見るもの」を置く
ストーリーズをまとめて残せる機能があれば、そこに「はじめての方へ」をひとつ作っておきましょう。自己紹介、力になれる相手、相談の流れ、料金の考え方。この4点を数枚にまとめておくだけで、初めて訪れた人が迷いません。
商標を入口にするなら、もうひとつ「ブランド名を決める前に確かめること」のまとめを置くのがおすすめです。多くの人は、名前もロゴも決めて、看板も作ってから相談に来ます。その順番だと打てる手が減ってしまう。先に見ておくべきことを整理して置いておけば、早い段階で相談が入るようになります。作り直すのは半年に一度で十分です。
3.3 「高くても選ばれる理由」を、一行で置いておく
2.3でお伝えしたとおり、商標の出願は価格を並べられやすい領域です。だからこそ、比べられる前に「この人にお願いしたい」と思われる理由を先に言葉にしておきましょう。
コツは、手続き名ではなく相手の変化を語ること。「商標登録出願を代理します」ではなく、「10年後もその名前で商売を続けられるように、いま取る範囲を決めます」と書くわけです。後者に入っているのは、依頼者がその先で手に入れる状態。未来が見えるほど、価格は判断材料の中で小さくなっていくもの。ここが弁理士にとって、いちばん割に合う言語化です。
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4. ステップ3:投稿は「出願前の判断」で組む
土台ができたら、いよいよ発信です。ここで弁理士ならではの制約が出てきます。出願前の内容は書けません。依頼者の案件は、公開されるまで一切触れられない。この制約を前提に組み立て方を決めます。
4.1 3つの形式は、役割がまったく違う
Instagramには複数の投稿形式があり、届く相手も残り方も違います。全部を同じ気持ちで埋めようとすると、時間がいくらあっても足りません。表示のされ方は変わることがあるので、考え方の目安として見てください。
| 形式 | 主な役割 | 弁理士の使いどころ |
|---|---|---|
| フィード投稿 | 残る・見返される | 専門性の証明。ブランドを持つ人が見返す「棚」 |
| ストーリーズ | 近況が届く・反応が返る | 人柄と話しやすさ。聞いていいと思ってもらう場 |
| リール | まだ知らない人へ広がりやすい | 事業者との出会いの入口。月に数本で十分 |
力の配分は、フィードを軸にするのが現実的です。弁理士への信頼は勢いではなく、積み上がった説明の分かりやすさから生まれます。
4.2 保存されるのは「出す前に知りたかった」話
フィード投稿で狙いたいのは、いいねではなく保存です。保存は「あとで見返したい」という意思表示なので、読み手が自分ごとにした証拠になります。ブランドを育てている人が保存したくなるのは、次のような中身。
- 名前を決める前に確かめること(似た名前がないか、どこまで調べればいいか)
- やってしまいがちな順番の間違い(看板とパッケージを作ってから相談に来る、など)
- 似た名前を見つけたときに、最初にやること
- 展示会やクラウドファンディングの前に、公開して大丈夫かどうかの線引き
組み立ての型は「場面から入って、判断の分かれ目で終わる」。冒頭に「先日、ネットで雑貨を売っている方から相談を受けまして」と場面を置き、そこで論点になったことを書き、最後に「ここが分かれ目です。個別の事情で結論は変わります」と締めます。「必ず登録できます」のような書き方はしないこと。結果を保証する表現は、実務としても成り立ちません。断定を避けるのは逃げではなく、誠実さの表れです。
4.3 依頼者の案件は書けない。だから型で書く
弁理士の発信を難しくしているのが、この制約です。出願前の内容は公開できず、公開後も依頼者の許可なしには触れられない。ほかの士業のように「先日こんな案件が」と気軽に書けません。
解き方は、事例ではなく型を書くこと。個別の案件ではなく、何度も繰り返し起きている構造を書きます。「立ち上げの相談が来る時期には、2つの山がある」「区分で迷う人は、たいてい将来の展開を織り込んでいない」。複数の案件から抽出した一般的な話なら、守秘の線を越えずに専門性が伝わります。個別の事例が書けないことは、弱点ではなく型で語る訓練になる。この訓練は、そのままセミナーや講演の中身に育ちます。
4.4 ストーリーズは、聞いていい相手だと伝える場
ストーリーズは短時間で消えるぶん、気軽に出せます。完成した結論より、途中の様子を置くのに向いた場所。事務所に届いた郵便の山、審査の待ち時間に考えていること、街で見かけたロゴの話。断片が積み重なると「この人はこう考えるのか」という像ができていきます。
弁理士にとって、ここは特に大事です。知財は「聞いたら怒られそう」「もう手遅れかもしれない」と思われて、相談が遅れがちな分野だから。早く相談してもらえるかどうかで、打てる手の数が変わります。話しやすさが伝わることには、実務上の意味があるわけです。質問を受け付ける機能があれば、たまに使ってみましょう。返ってきた質問は、次のフィード投稿のネタにもなります。
5. ステップ4:単発の出願から、守り続ける関係へ
投稿が回り始めたら、最後は導線です。ここを設計しないと、反応はあるのに事務所の売上が変わらないアカウントになります。
5.1 追いかけるDMではなく、相談していい合図を置く
フォローしてくれた人へ、いきなり営業のメッセージを送る。これをやると、積み上げた信頼が一度で消えます。読み手からすれば、宣伝目的で近づいてきた相手と区別がつきません。
代わりに置くのが「合図」です。投稿の末尾に「同じところで迷っている方は、DMで状況を教えてください」と一行入れておく。ハイライトに相談の流れと料金の考え方をまとめておく。こちらから追いかけず、相手が動きやすい道を用意します。届いたら、すぐ見積もりへ進まないこと。まず状況を数往復たずね、そのうえで「一度、時間を取って整理しませんか」と個別相談へつなぎます。
5.2 リンク先は1つに絞り、行き先を深くする
プロフィールから飛べる先は、1つに絞ってください。事務所サイト、ブログ、メルマガ、セミナー案内。全部並べたくなりますが、選択肢が増えるほど押されなくなります。
絞ったうえで、飛んだ先を深くする。Instagramで伝えられる情報の量には限りがあるので、判断材料は行き先で渡します。無料の資料でも、詳しい解説記事でも、セミナーの案内でも構いません。書き溜めた記事へ渡す形は弁理士のブログ集客、直接会って話す場へ渡す形は弁理士のセミナー集客でそれぞれ解説しています。
5.3 出願で終わらせず、守り続ける関係にする
商標も特許も、出願して登録されたらそこで終わり。この形のままだと、毎年ゼロから新規を探し続けることになります。ここで階段を描けるかどうか。事務所の安定は、そこで決まります。
階段の材料は、弁理士の仕事の中にすでにあります。更新の管理、区分の追加、商品が増えたときの見直し、似た名前が出てきたときの対応、海外への展開。「登録して終わり」ではなく「ブランドを守り続ける係」として関わる形を、最初の相談の段階で見せておきましょう。ここでもInstagramが働きます。更新や模倣品の話を先に投稿しておけば、依頼者はすでにその話題に触れている。だから次の提案が売り込みに見えません。年収の構造から見た事務所づくりは弁理士の年収、実際に顧客獲得を安定させた方の話は弁理士の成功事例インタビューで読んでみてください。
5.4 独学で続けるか、学ぶ場を持つか
続ける仕組みは、量を落とすところから始まります。毎日1本ではなく、週2本。フィード週1本とリール月2本、ストーリーズは思いついたとき。この程度でも、半年で24本の棚ができます。止まった毎日投稿より、続いた週2本のほうがずっと強い。ネタ切れを防ぐコツは、投稿のためにネタを探さないことです。相談で受けた質問、審査のやり取りで感じたこと、他士業から振られた論点。仕事の中で毎週生まれているものを、型にしてから素材にします。
それでも続かないなら、ひとりでやらない選択肢があります。インスタ集客のセミナーや講座、コンサルティングを探している方も多いでしょう。選ぶときの見方は3つ。ひとつ、アプリの操作ではなくポジショニングから扱っているか。操作は調べれば分かりますが、特許と商標のどちらで勝負するかの設計は自分では決めきれません。ふたつ、無形で高単価のサービスを扱った経験があるか。物販や店舗の成功法則は、知財の仕事にそのまま当てはまらないからです。みっつ、SNS単体ではなく集客全体の中に位置づけているか。Instagramだけで完結させようとすると、必ずどこかで無理が出ます。この3つで見比べれば、あなたに合う場所は絞れるはずです。AIを下書きに使う手順は弁理士のAI活用術にまとめました。
6. まとめ:弁理士のInstagram集客は「商標」で線を引く
弁理士のInstagram集客を、4つのステップでお伝えしました。
- ステップ1:取りに行く相手を決める(特許では届かない。商標には届く)
- ステップ2:プロフィールを相談していい合図に整える(手を入れるのは4か所)
- ステップ3:投稿は出願前の判断で組む(事例が書けないぶん、型で語る)
- ステップ4:出願で終わらせず、ブランドを守り続ける関係へ。週2本で続ける
弁理士とInstagramの相性は、扱う分野で真っ二つに分かれます。特許を軸にするなら、ここに時間を使う理由はほとんどない。商標を軸にするなら、依頼者がすでにこの場所で商売をしています。自分がどちらに立っているかを決めてから始めれば、費やした時間は無駄になりません。ほかの手法との組み合わせは弁理士の集客方法5選、同じSNSでも他士業に届く使い方は弁理士のFacebook集客もあわせてご覧ください。
明日から手をつけるなら、この3つから。
- これまでの案件を書き出し、「成果が出て、面白かった」ものに印を付ける
- その共通点を一文にして、プロフィールの自己紹介の先頭に置き換える
- 相談でよく聞かれる質問を1つ選び、特定の案件が分からない形に一般化して1本書く
もし、売り込みではなく「お願いされる集客」で高単価の顧客獲得を目指したいなら、志師塾の無料セミナーで最初の一歩を踏み出してみてください。