
開業したものの、顧問先がなかなか増えない。手続きや給与計算のスポット仕事は入っても、来月の売上が読めない。社会保険労務士(社労士)の集客には、こうした悩みがつきものです。
先に結論をお伝えします。社労士の集客でつまずく原因は、手法の選び方ではありません。「他の社労士ではなく、あなたに頼む理由」が言葉になっていないことです。ここが空いたまま発信を増やしても、返ってくるのは料金の問い合わせだけになります。
この記事で扱うのは、次の3つの順番です。
- 順番1:誰の・どんな人事労務の悩みに強い社労士なのかを、一文で言い切る(ポジショニング)
- 順番2:Web集客・ブログ・ホームページ・Facebook・セミナー・営業(個別相談)の6つを、役割で使い分ける
- 順番3:スポット業務で終わらせない。労務顧問という続く関係へ育てる
解説するのは、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得支援を専門としてきた志師塾です。公的な調査データと、実際に顧問先を増やした卒業生の歩みを並べながら進めます。読み終えるころには、明日どこから手を付けるかが見えているはずです。まずは、集客が難しくなっている理由を3つに分けて見ていきます。
目次
この記事は、ポジショニング、価値の伝え方、6つの手法の使い分け、顧問化という順で進みます。ただ、順番が分かっても最初の一手は決まりません。「では自分は、どの業種の、どんな場面から名乗るのか」。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その入口の決め方を、先生業が実際に手を動かした順にたどります。
1. 社労士の集客が難しくなっている3つの理由
社労士の集客とは、人事労務の困りごとを抱えた経営者と出会い、顧問契約まで運ぶ一連の流れのことです。発信しているのに反応がない。その原因は、努力不足でも実力不足でもありません。社労士という仕事の構造そのものに、集客を難しくする要因が3つあります。
1.1 手続き業務は、中身で差がつきにくい
労働保険・社会保険の手続きや給与計算といったスポット業務は、どの社労士に頼んでも成果物がほぼ同じに見えます。中身の差が伝わらなければ、比べる物差しは料金だけ。違いを示せないまま集客を始めると、安さの競争に巻き込まれます。
この土俵が主戦場になりやすいことは、数字にも表れています。全国社会保険労務士会連合会の2024年度 社労士実態調査によれば、開業社労士が受託している業務の内訳は、手続業務が平均41.5%で最も大きく、次いで相談業務14.3%、給与計算14.2%という並びでした。コンサル業務は7.3%、助成金業務は4.8%にとどまります。
反面、就業規則の設計、採用と定着、労務トラブルの予防といった相談業務は、答えが会社ごとに違います。ここは専門性で選ばれる領域であり、価格競争から距離を置ける場所。どちらの土俵で戦うかを決めることが、社労士の集客の最初の分かれ道になります。
1.2 資格は参入障壁であって、選ばれる理由ではない
社労士は資格に守られた仕事です。ただ、独立して左うちわで暮らせるほど守られているわけではありません。同じ調査の対象者数を見ると、社労士は全国に45,401人(2024年4〜6月の調査時点)。同じ資格を持つ人がこれだけいて、違いが伝わらなければ、料金表で比べられて終わります。
資格は、あくまでスタートライン。「社労士であること」は選ばれる理由にならず、「どんな社労士か」だけが選ばれる理由になります。ここを取り違えたまま名刺やホームページを作ると、どれだけ丁寧に作り込んでも記憶に残らないのです。
1.3 「何でもやります」では、思い出してもらえない
「手続きも助成金も労務相談も、何でも対応します」。誠実な姿勢のようでいて、この一言が集客をいちばん遠ざけます。経営者は、困っている場面ごとに「この件を頼める人」を探しているからです。
頭の中で人を探すとき、社長は業種名では探しません。「残業代の請求が来た」「社会保険の加入漏れを指摘された」といった場面で探します。対象があいまいなままでは、どの手法を使っても反応は薄いまま。ここが集客の出発点になります。

1.4 つまずいているのは、あなただけではない
ここでひとつ、気持ちが軽くなる数字を挙げておきます。先ほどの実態調査で、開業社労士が職業生活で感じている不安やストレスを尋ねた結果です。

| 感じている不安・ストレス | 「当てはまる」計 |
|---|---|
| 必要となる専門的知識の深さと広さ | 85.9% |
| 業務上の責任の重さ | 84.5% |
| 顧客獲得の難しさ | 63.7% |
| 経営面での責任の重さ | 61.1% |
| 顧客との関係構築 | 61.0% |
| 業務量の多さ | 60.8% |
| 経済面の不安定さ | 47.1% |
| 職場の人間関係 | 27.3% |
知識と責任に次いで重いのが、顧客獲得です。8項目のうち3番目で、約3人に2人が同じところで詰まっている。集客がうまくいかないのは、あなたの資質の問題ではなく、業種の構造の問題だと分かります。
同じ調査には、もう一組の対比があります。「専門性の高い仕事ができる」に当てはまると答えた開業社労士は87.6%。ところが「経済的に有利になる」は49.1%まで落ちます。専門性は自覚できているのに、それが経済的な手応えに変わっていない。この落差こそが、社労士の集客が解くべき問題です。
3つの理由を並べましたが、根っこは1本でつながっています。資格でも技術でもなく、「選ばれる理由」が言葉になっていない。だから比べる物差しが料金しか残らず、思い出してももらえません。ということは、打ち手も発信量を増やすことではないわけです。次の章から、その順番で進めます。
2. 社労士の集客はポジショニングから始める
ポジショニングとは、無競争状態で顧客に選ばれる独自の場所を見つけることです。3つの理由に共通する答えが、ここにあります。志師塾では、発信や広告といった手法の前に、まず自分の位置づけを固める「ポジショニング先行」の考え方を大切にしています。順番を守ることが、遠回りに見えて一番の近道です。
よく混同されるのが差別化との違いです。差別化は「他と違うこと」を追いかけるため、突き詰めると顧客のいない場所に迷い込みます。ポジショニングが探すのは、違いではなく顧客がいて、かつライバルがいない場所。ここを取り違えると、珍しいだけで誰も求めていないサービスができあがります。
2.1 「誰の・どんな人事労務の悩みを・どう解決するか」で言い切る
難しく考える必要はありません。「誰の」「どんな人事労務の悩みを」「どう解決する」社労士なのか。この3つを言い切れれば十分です。「介護事業所の採用と定着を支える社労士」「飲食店の労務トラブルを未然に防ぐ社労士」といった一言(あくまで例です)なら、相談したい相手の顔がすぐ浮かびます。
言い切る材料は、頭の中ではなく、これまでの仕事の記録の中にあります。手を動かす順番は、次の3ステップです。
- ステップ1:これまで受けた相談を、思い出せるだけ書き出す(会社の業種・規模・相談のきっかけ・そのときの社長の一言)
- ステップ2:その中から「一番力になれた」と感じた案件に印を付ける。件数が少なければ、前職の経験や、自分が現場で悔しい思いをしたテーマでも構いません
- ステップ3:印を付けた案件に共通する「会社」と「場面」を、社長が使っていた言葉で一文にする
多くの方がつまずくのは、ステップ3の言葉選びです。社長は「労務管理体制を整備したい」とは言いません。口に出るのは「人が入ってもすぐ辞めてしまう」「あの社員への対応をどうしたらいいか分からない」のほう。サービスのメニュー名ではなく、相手が頭の中で使っている悩みの言葉で自分を位置づけると、発信は一気に届きやすくなります。
「絞ると仕事が減るのでは」と不安になる方は多いものです。志師塾がよくお伝えしているのは、実際にやる業務まで絞る必要はないということ。絞るのは、お客様に認知してほしい場所だけです。採用定着を入口に信頼を得たあとで、手続きや給与計算をまとめて任せてもらうのは自然な流れになります。入口を一点に決めることと、仕事の幅を狭めることは、まったく別の話なのです。
2.2 「100人に1人」を2つ掛けて、1万人に1人の場所をつくる
とはいえ、いきなり「唯一の存在になれ」と言われても手が止まります。志師塾がすすめているのは、100人に1人のものを2つ掛け合わせるという考え方です。それぞれは珍しくなくても、2つ重なれば1万人に1人。ライバルはほとんどいなくなります。
社労士なら、たとえばこんな掛け合わせが考えられます。
| 軸1(誰に) | 軸2(何に強い) | できあがる位置づけ |
|---|---|---|
| 多店舗展開する飲食・サービス業 | 店長の育成と評価制度 | 現場が回る仕組みまで作れる社労士 |
| 社員が10名を超えたばかりの会社 | 就業規則と労務の初期設計 | はじめての体制づくりを任せられる社労士 |
| 医療機関・介護事業所 | 交代勤務と採用難への対応 | 業界の勤務実態を分かっている社労士 |
| 建設・運送などの現場業種 | 労働時間管理と安全衛生 | 規制の変化に先回りできる社労士 |
軸を選ぶときの注意は3つあります。分かりやすいこと。相手の頭の中にすでに判断基準があること。そして、ライバルと同じ売りは避ける。「丁寧」「親身」「実績多数」は、全員が言うので売りになりません。軸を4つも5つも並べるのも避けましょう。相手が覚えられないからです。2軸が基本と考えてください。

2.3 「誰に」の切り口は、業種だけではない
絞り方というと業種が思い浮かびますが、それだけではありません。先生業の世界には、次のような切り口があります。
- 規模で絞る:社員10名超えは就業規則が要るタイミング。社労士には当たり前すぎて誰も言っていない分、そこを名乗るだけで「うちそろそろ10人なんだけど」という相談が来ます
- タイミングで絞る。創業直後、初めての採用、初めての労基署調査。困る瞬間が決まっている出来事なら、待ち伏せができる
- 前職で絞る:メーカーの人事部にいた、病院の事務局にいた、ハローワークの相談員だった。前職はそのまま「その業界の言葉が通じる」という信頼になります
- 社長の属性で絞るという手も。出身校、年代、二代目かどうか。同じ背景を持つ社長どうしはつながっているので、一人に届くと連鎖します
どれを選ぶかに正解はありません。判断の基準はひとつだけ、自分の経歴と、力になりたい相手が重なる場所かどうかです。重なっていない絞り方は、続けているうちに苦しくなります。
2.4 目指すのは「労務のことなら、あの先生」という第一想起
ポジショニングのゴールは、見込み客の頭の中で「うちの労務のことなら、あの先生」と最初に思い出される状態(第一想起)をつくることです。紹介も口コミも、この第一想起から生まれます。経営者仲間の集まりで「人の問題で困っていて」という話が出た瞬間に、あなたの名前が挙がるかどうか。集客の成否はここで分かれます。
第一想起をつくるのは、一度きりの出会いではなく、繰り返しの積み重ね。志師塾では、ブランディングを「ポジショニング+時間」と説明しています。ブランドの語源は、牛に押す刻印。何度も何度も同じ場所に押すから、消えなくなるわけです。名刺の肩書、プロフィール、ブログやSNSの発信、セミナーでの自己紹介。すべての接点で同じ一文を繰り返すうちに、少しずつ相手の頭の中に居場所ができていきます。接点ごとに名乗りが違えば、相手の記憶に残るのは「社労士の誰か」止まり。
もうひとつ、社労士ならではの考え方があります。労務の相談は、思い立って生まれるものではなく出来事とともに生まれるということ。社員が10人を超える、初めて退職トラブルが起きる、労基署から是正勧告が届く、助成金の申請期限が近づく。そのとき最初に浮かぶ顔になっておくのが狙いです。
ということは、頭の中を取りに行く相手は社長だけではありません。社長の隣にいる専門家の頭の中にも、居場所が要ります。税理士、弁護士、金融機関の担当者、保険の代理店。この人たちは、あなたより先に会社の異変を知る立場にいます。誰の頭の中を取りに行くかを、そこから逆算してみてください。
2.5 「高くても選ばれる理由」を先に言葉にする
顧問料は、あなたが提供する価値の値札です。「安いから選ばれる」のではなく「この先生だからお願いしたい」と思われる理由を、発信を始める前に用意しておきましょう。理由が先にあれば、料金は自分で決められるもの。
値付けで迷ったときの目安が、志師塾には1つあります。提示する価格の3倍のメリットを、相手に示せる額にするという考え方です。月5万円の顧問料なら、月15万円ぶんの価値を説明できるか。未払残業のリスクが減る、採用にかかる時間が減る、社長が労務の調べものに使っていた時間が本業に戻る。こうした形で示せるなら、その価格で通ります。示せないなら、価格が高いのではなく、説明する材料が足りていないだけです。
ここまで固まって、はじめて手法選びに進みます。順番が逆になると、発信の量だけが増えていくことになります。

3. 社労士の価値を1秒で伝える3点セット
価値伝達の3点セットとは、肩書き・キャッチコピー・プロフィールの3つのことです。ポジショニングが決まっても、伝わる形になっていなければ相手の頭の中には残りません。この3つは、名刺・ホームページ・SNSのプロフィール欄・セミナーの自己紹介と、あらゆる場面で使い回すもの。先に作っておくと、手法を増やすたびに悩まずに済みます。
3.1 肩書きは「専門領域+一般名称」で13文字
肩書きとは、あなたの価値を1秒で伝える言葉です。長さの目安は13文字。公式は「専門領域+一般名称」で組み立てます。
- 「社会保険労務士」だけ。これは資格名であって、選ばれる理由が入っていない名乗り
- 専門領域を足すと「多店舗運営専門の社労士」になり、誰の何を扱う人かが1秒で伝わります
- 2軸を重ねた「介護事業の採用定着コンサルタント」という形も。この場合、資格は肩書きではなく信頼の裏づけとして添えます
注意したいのは、一般名称の選び方です。社労士は、資格名としては比較的知られている部類に入ります。ただし「社労士に何を頼めるか」の認識には、経営者によってばらつきが大きい。手続きの人だと思われているなら、肩書きの一般名称を相談される場面の言葉に置き換えたほうが伝わります。
3.2 キャッチコピーは25文字。3+1で組む
キャッチコピーは、肩書きの次に目に入る一文です。25文字を目安に、次の3つ+1を意識して組みます。
| 要素 | 中身 | 社労士での考え方 |
|---|---|---|
| メリット | 相手に起きる良い変化 | 「規程を整えます」ではなく「辞めない職場になる」まで書く |
| 具体性 | 数字で見せる | 支援した社数、扱った業種、現場にいた年数。事実の範囲で見せ方を整える |
| To Meメッセージ | 「自分のことだ」と思わせる | 業種・規模・地域を名指しする |
| +好奇心 | 常識の反転で「なに?」を生む | 「就業規則は、まだ作らないでください」のような入り方 |
「話しやすく相談しやすい社労士事務所」「御社に最適な労務管理をご支援します」。どちらも間違ってはいませんが、読んだ相手は「ふーん」で終わります。数字は必ず事実の範囲で使ってください。盛った数字は、一度でも突かれると信頼をまとめて失います。
3.3 プロフィールは自分史ではなく、相手のためのもの
プロフィールでいちばん多い失敗が、書きたいことを書いてしまうことです。取得資格の一覧、所属団体、趣味。読んだ相手が「だから何を頼めるのか」に至らない文章になりがちです。
志師塾が使っているのは「谷山谷山ストーリー」という組み立て方。順番はこうです。
- 伝えたいメッセージを2つ決める(例=「労務は起きてからでは遅い」「現場を見ないと本当の原因は分からない」)
- そのメッセージが伝わる出来事を、谷(うまくいかなかった時期)と山(乗り越えた時期)のセットで選ぶ
- 谷から山へ、そしてもう一度、谷から山へ。この2セットが並びの型
順番が逆になっていないか、点検してください。出来事を先に選んでからメッセージを考えると、ただの回想録になります。メッセージが先、出来事は後。この順番だけで、読後に残るものがまるで変わります。
もうひとつ注意点を。同じ話が全員に刺さるわけではありません。志師塾代表の五十嵐和也は、ある講演で創業期の借金の話をして、会場が静まり返った経験を持っています。聞き手の100人がほとんど二代目・三代目の経営者で、創業の苦労話に重なる記憶がなかったからです。プロフィールは、届けたい相手に合わせて複数用意しておくと安心できます。
3.4 3か所で、同じ一文をそろえる
3点セットができたら、最後にやることは1つ。名刺、ホームページのトップ、SNSのプロフィール欄。この3か所で、同じ一文を使ってください。ここがそろっていない事務所は、思っているより多いものです。
そろえる効果は、想像以上に大きい。人はどこかで一度見た言葉を、別の場所でもう一度見たときに「知っている」と感じます。逆に、名刺は「社会保険労務士」、ホームページは「人事労務のトータルサポート」、SNSは「日々の気づきを発信中」とばらけていると、3回見ても一度も覚えてもらえません。

ここまでが、手法の前に済ませておく準備です。肩書き・キャッチコピー・プロフィールを作り、名刺とホームページとSNSでそろえる。書き出してしまえば、それだけ。ところが実際に3か所を書き換える段になると、どれを正にするかで止まります。名刺の肩書きに寄せるのか、いま一番反応がある発信のほうに合わせるのか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、3か所の言葉を1本にそろえる作業を、先生業のビフォーとアフターで見せています。
4. 社労士の集客方法6選|それぞれの役割を知る
社労士の集客方法は、大きく6つに分かれます。Web集客、ブログ、ホームページ、Facebook、セミナー、営業(個別相談)。ただし、6つ全部に同時に取り組む必要はありません。大切なのは、それぞれが「出会う」「深める」「決める」のどの役割を担うかを知り、自分に足りない役割から埋めていくことです。
| 手法 | 役割 | 社労士ならではのポイント | 成果までの時間 |
|---|---|---|---|
| Web集客 | 出会う | 労務の悩みは、困った瞬間に検索される | 半年〜1年 |
| ブログ | 出会う・深める | 制度改正がネタになり続ける | 半年〜1年 |
| ホームページ | 深める | 紹介された人が必ず見に来る受け皿 | 作った直後から |
| 深める | 経営者層との接点をつくりやすい | 数か月 | |
| セミナー | 深める・決める | 制度改正の解説がそのまま集客テーマになる | 数週間 |
| 営業(個別相談) | 決める | 会う前の準備で結果が決まる | 即日〜数週間 |
4.1 出会う:Web集客・ブログ
Web集客は、検索や広告を通じて、あなたをまだ知らない経営者と出会うための入り口です。ブログは、専門性と考え方を伝えて「この先生なら任せられそう」という安心を育てます。
社労士とWebの相性が良いのは、労務の困りごとが「調べる」から始まるからです。「残業代 請求された」「就業規則 作り方」「社会保険 加入漏れ」。社長がまず検索窓に打ち込む言葉が、そのまま相談の入口になります。しかも、その検索をしている社長は困っている真っ最中。温度がまるで違うのです。
気をつけたいのは、書く相手を決めずに始めること。制度の解説だけを並べると、読むのは同業の社労士ばかりになります。制度を説明するのではなく、その制度に困っている会社の場面を書く。ここが分かれ目です。
4.2 深める:ホームページ・Facebook
「ホームページを作れば顧客を獲得できる」。残念ながら、それは幻想です。ホームページの役割は、あなたを調べに来た人の背中を押す信頼の受け皿にあります。
この役割を軽く見ないでください。紹介で名前を聞いた社長は、連絡する前に必ず検索します。そこで出てくるのが電話番号と地図だけのページなら、せっかくの紹介の熱はそこで冷めてしまうもの。ホームページは集客の入口ではなく、紹介の成功率を左右する装置だと考えると、直すべき場所が見えてきます。
Facebookは、日々の発信が経営者との関係を少しずつ深める場所です。売り込みの投稿は逆効果になりますが、現場で感じたことや制度への見解を積み重ねていくと、「この人に聞いてみよう」と思われるまでの距離が縮まります。出会う手段と、信頼を深める手段は分けて設計する。これが使い分けの基本です。
4.3 決める:セミナー・営業(個別相談)
セミナーは、あなたの価値を体感してもらえる場です。社労士にとって強いのは、制度改正がそのままセミナーのテーマになる点。「来年から何が変わり、うちは何をすればよいのか」は、社長にとって聞かずにいられない話題です。
ここで志師塾がお伝えしているコツを1つ。セミナーの満足度は、100点ではなく80点前後を狙うほうが結果につながります。すべてを教え切ってしまうと、「ありがとうございます、自分でやってみます」で終わるからです。伝えるのは、何が問題で、どこまで自分でやれて、どこから専門家が要るのか。空白を意図的に残しておきます。
個別相談は、売り込みの場ではありません。「この先生にお願いしたい」を確認してもらう場です。志師塾では、個別相談を「解決策を教える場ではなく、問題点を明らかにして、解決したい気持ちを高める場」と定義しています。ここでもいい話をしすぎると、成約から遠ざかります。
4.4 どこから手を付けるかは、いまのレベルで決まる
6つを前に「で、どれから?」と迷ったら、自分がいまどの段階にいるかで決めてください。志師塾では、Web集客の進み方を段階で整理しています。社労士に当てはめると、こう読み替えられます。
- 名刺・チラシ・商品づくり:肩書きと料金表を作り、まず知人に説明してみる段階
- 身近な集客:紹介、他士業との連携、交流会、SNS、名刺代わりのホームページ。ここまでで年商1,000万円は十分に届きます
- 問い合わせを受けるページを作る。セミナー案内や資料請求の受け皿を用意する段階
- メールでの継続的な情報提供。制度改正の解説を定期的に届けると、思い出される回数が増えます
- 動画の活用。人柄と話し方を、会う前に伝える
- 検索対策:記事を積み上げて、検索から新しい会社と出会う。時間はかかるが、あとから効いてくる資産
- 広告。受け皿が整っている場合にのみ効く
大事なのは、段階2を飛ばして段階6や7に行かないことです。紹介も交流会もやらないまま記事を書き始めると、成果が出るまでの半年から1年を、収入なしで耐えることになります。志師塾では、広告を一切使わず、紹介と交流会とセミナーだけで事業を組み立てている先生業を、いくつも見てきました。効くのは手法の新しさではなく、順番のほう。

5. 社労士の集客で狙う場所を、公的データから決める
社労士が狙う市場とは、労働保険の適用を受ける343万事業のうち、まだ社労士と契約していない事業所のことです。ここまでは考え方の話でした。ここからは、どこを狙うと成果につながりやすいかを、公表されている数字から確かめます。感覚で決めた戦場と、データで確かめた戦場では、同じ努力の効き方が変わるからです。
5.1 5年前と比べて、増えた仕事と減った仕事
2024年度 社労士実態調査では、5年前と比べた顧客からの需要の変化を尋ねています。結果はきれいに分かれました。

| 業務 | 増えた(計) | 減った(計) |
|---|---|---|
| 労働及び社会保険に関する相談業務 | 71.5% | 19.2% |
| 各種規程の作成・改定・整備 | 66.2% | 23.9% |
| 手続業務 | 59.1% | 32.0% |
| コンサル業務 | 57.7% | 29.8% |
| 給与計算業務 | 50.1% | 36.2% |
| 助成金業務 | 42.1% | 43.6% |
| 執筆・講演業務 | 26.4% | 54.1% |
いちばん伸びているのが相談業務(71.5%)、次いで規程の作成・改定(66.2%)。どちらも、答えが会社ごとに違い、価格で比べにくい領域です。反対に、助成金業務は「減った」が「増えた」を上回りました。
この表から読み取れることは、はっきりしています。需要が伸びているのは、まさに「専門性で選ばれる土俵」のほう。第1章で見た2つの土俵の話が、そのまま需要の伸びと重なっているのです。手続きの単価が下がっていくのを嘆くより、伸びている側に自分の名乗りを寄せるほうが、はるかに早く効きます。
助成金を入口にしている方も、慌てる必要はありません。減っているのは助成金そのものの需要であって、助成金をきっかけに始まる関係の価値ではないからです。入口は入口として使い、続きの相談へどうつなぐか。この設計があるかどうかで、同じ助成金業務でも意味が変わります。
5.2 労務トラブルの相談は、年間120万件を超えている
相談需要が伸びていることは、行政側の数字でも裏づけられます。厚生労働省の令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況(2025年6月25日公表)によると、全国の労働局などに寄せられた総合労働相談は年間120万1,881件。5年連続で120万件を超えました。
相談の中身で最も多いのは、いじめ・嫌がらせの54,987件で、13年連続の首位です。労働条件の引下げについての助言・指導の申出は1,103件で、前年度から7.8%増えて最多となりました。解雇のあっせん申請も792件と高い水準にあります。
これらは、行政に持ち込まれた分だけの数字です。社内で収まった案件、社長が一人で抱えている案件を含めれば、実際の困りごとはこの何倍にもなるでしょう。労務の悩みは、確実にそこにあります。足りていないのは需要ではなく、困っている社長とあなたが出会う経路のほうなのです。
5.3 顧問先の候補は343万事業。契約されているのは46万社
もう1つ、市場の広さを確かめておきましょう。厚生労働省の労働保険の適用徴収状況(令和6年度)によれば、令和6年度末の労働保険の適用事業数は343万6,605事業。人を1人でも雇っていれば労働保険の対象になりますから、この数がそのまま「労務の話が発生しうる事業所の数」だと考えられます。
これに対して、2024年度 社労士実態調査で有効回答として扱われた顧問契約社数の総数は46万2,634社。顧問契約社数を答えた開業社労士(個人事務所の代表と社労士法人の代表社員)14,469人が抱える顧問先の合計です。この調査の有効回収率は56.0%(全社労士45,401人のうち25,408人が回答)で、14,469人はそのうち開業側の回答者。母数が違うので単純な比較はできませんが、桁の差ははっきり見えます。

ここから言えることは1つです。社労士の市場は、飽和しているのではありません。まだ届いていないだけ。同じ調査では、顧問先の従業員規模も出ていて、29人以下が63.9%、30人以上99人以下が20.9%。社労士が向き合っているのは、圧倒的に中小企業と小規模事業者です。この規模の会社に人事の専任担当者はまずいません。社長か、経理を兼ねた総務担当が、片手間で労務を回しています。
ということは、あなたが競い合う相手は他の社労士だけではないわけです。「誰にも頼まず、社長が自分で調べて済ませている」という状態こそが、最大のライバルになります。だから打ち手も「他の社労士より安く」ではありません。自分でやり続けることの危うさに、気づいてもらうことです。発信のテーマは、そこから決まります。
5.4 顧問契約が9社以下の事務所が、4割以上ある
同じ調査から、もう1つ。開業社労士1事務所あたりの顧問契約社数は、平均33.2社、中央値10.0社でした。平均と中央値がここまで離れているのは、多く抱える一部の事務所が平均を押し上げているからです。分布を見ると、実態がよく分かります。
| 顧問契約社数 | 割合 |
|---|---|
| 0社 | 16.5% |
| 1〜9社 | 28.2% |
| 10〜19社 | 13.3% |
| 20〜29社 | 8.8% |
| 100社以上 | 8.3% |
※主要な階級のみ抜粋。省いた階級は30〜39社6.6%、40〜49社4.0%、50〜59社4.1%、60〜69社2.3%、70〜79社1.6%、80〜89社1.6%、90〜99社0.9%、無回答3.8%。
0社と1〜9社を合わせると44.7%。開業社労士のおよそ4割半が、顧問契約9社以下で活動しています。事務所の体制も「1人」が56.4%で、平均の従業員総数は2.7人。社労士の集客は、大きな組織と戦う競争ではなく、一人ないし数人の事務所どうしが並んでいる世界だと分かります。
ただ、この分布は悲観的に読むものではなく、むしろ伸びしろの地図。10社増やせば、上位の側に立てるということでもあります。数の問題ではなく、出会い方の問題だと考えれば、やることはずいぶん絞られてきます。
ここまでの3つの数字は、社労士という業種に寄せた話でした。その手前にある「先生業に共通する顧客獲得の土台」をまとめて押さえたい方は、無料の書籍「先生業の顧客獲得を成功させる7つの能力」(一部ダウンロード)をご活用ください。セミナーに参加する時間はまだ取れないという方の、最初の一歩としてどうぞ。
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6. 社労士の集客を「スポット業務」で終わらせない
顧問化とは、単発の手続きで関係を終わらせず、月々の相談と予防に対して継続で対価をもらう形に変えることです。手法と同じくらい大事なのが、この集客した後の設計になります。単発の手続きを積み重ねても、毎月ゼロから集客し直すことになりますから。ここを変えると、経営は見違えるほど安定します。
実態調査でも、開業社労士の売上の内訳は顧問契約71.9%、スポット28.1%。顧問契約が主流であることが数字で確かめられます。ただし、その顧問契約は最初から顧問契約として始まったものではないのです。多くは、スポットの依頼から育っています。
6.1 手続き・助成金は入口、労務顧問が続きの関係
手続きや助成金の仕事は、単価こそ上がりにくいものの、接点としては優秀です。需要がはっきりしていて、経営者が最初に頼みやすい。問題は、そこで関係を終わらせてしまうことにあります。スポット業務は「入口」、労務顧問は「続きの関係」と決めておくだけで、一つひとつの案件の意味が変わります。
転換のきっかけは、大げさな提案ではないのです。納品時に一言添えるだけで足ります。入退社の手続きが続く会社には定着の課題が、残業関係の手続きが多い会社には労働時間管理の課題が隠れているもの。「この3か月で3人辞めていますが、辞める理由に共通点はありませんか」。この一言で、あなたは「手続きを頼む人」から「経営の相談ができる先生」に変わります。
順番も、あわせて決めておくとよいでしょう。志師塾では、提案を3つのステップで運ぶことをおすすめしています。まず気づいたことを事実として渡す。次に放っておくとどうなるかを金額で伝える。そして最後は、選択肢を2つ出すところまで。決めるのは社長です。この順番なら、売り込みになりません。
6.2 顧問料は「相談できる安心の対価」
顧問契約を作業量で説明すると、「今月は何も頼んでいないから」と減額や解約の話になりがちです。顧問の価値は、作業ではなく「何かあったらすぐ相談できる」「問題が起きる前に手を打ってもらえる」という安心にあります。
労務トラブルは、起きてから対処すると大きな時間と費用がかかります。未払残業の請求、退職をめぐる紛争、労基署の是正勧告。どれも、事前に手を打っておけば数分の1のコストで済んだはずのものです。だから予防の伴走には、手続き代行とは別の物差しの価値が付きます。
契約書に書いておくと効くのが、範囲外の明示です。どこまでが顧問料に含まれ、どこからが別料金なのか。先に書いておくと、あとで揉めません。同時に「含まれていないこと」が見えるので、追加の相談も出やすくなります。
6.3 制度改正は、毎年やってくる接点
社労士には大きな追い風があります。人事労務の分野は、労働関係の法改正、社会保険料率の改定、助成金の新設や見直しと、毎年のように制度が動くことです。
この性質は、集客の観点ではかなり恵まれています。連絡する理由が、向こうからやってくるからです。「今年の変更点と、御社で必要な対応」を伝えるだけで、見込み客の役に立つ発信が生まれ、既存の顧客と再び接点を持つ理由もできます。これほど定期的な接点の口実を持つ士業は、そう多くありません。ここは、社労士だけが持っている強みです。
実際の切り口は、障害者雇用率の改定を入口にした社労士の集客の記事が参考になります。制度の解説で終わらせず、対象になる会社が何に困るかまで書き切るのが要点です。
6.4 AIも社労士の集客の武器になる
発信文の下書き、相談メモの整理、規程案のたたき台づくり。集客まわりの作業は、AIで大きく時短できます。浮いた時間を経営者との対話に回せば、相談業務の質そのものが上がるわけです。
ここで押さえておきたいのは、AIに置き換えられる仕事と、置き換えられない仕事の線引きです。調べる・書く・まとめるはAIが速い。ただし、社長の本音を引き出す、優先順位を一緒に決める、決めたことを実行まで見届ける。ここは人にしかできません。手続きの効率が上がるほど、相談業務の価値は相対的に高まっていくのです。取り入れ方は社労士のAI活用の記事で解説しています。

7. 社労士の集客に成功した志師塾卒業生3人の実例
ここまでの内容が、実際にどう形になるのか。志師塾で学んだ社会保険労務士の方々の歩みを、3人ぶん紹介します。いずれも公開済みのインタビュー記事から引いています。3人とも、絞り方の軸が違うところに注目してみてください。
7.1 石上大祐さん|「店舗運営専門の社労士」で紹介が回り始めた
大手製造業で人事一筋に8年。1,000人規模の工場の労務管理から、連結3万人の人事制度企画までを担当したあと、30歳でトレーニングジムのフランチャイズに加盟して起業。売上が下降して破産寸前まで追い込まれ、従業員一人ひとりとの面談から立て直した経験を持つ方です。その後に社労士資格を取り、2020年に個人事務所を開業されました。
開業当初、依頼されるのは給与計算や社会保険の手続きばかり。本来やりたかった店舗経営者向けの伴走支援に届かない状態が続いたそうです。顧問税理士の紹介で志師塾に入り、最初の課題「人生の棚卸し」で2万字以上を書き出すところから始まりました。
転機は「とんがりポジションを作る」という課題です。「店舗運営専門の社労士」という肩書きを作ったものの、当初は不安しかなかったといいます。「店舗運営に絞り込むことで、他業種の企業からの依頼が全く来なくなるのではないか」。ところが、フォロワーを1,000人つくる課題でプロフィールにこの肩書きを掲げた直後、起きたのは逆のことでした。多店舗展開を支援している税理士から人事評価支援の相談。フランチャイズ本部から店舗運営の相談。さらに同業の社労士からの相談と紹介。相談の入り口が、税理士・フランチャイズ本部・同業の社労士という3つの経路に増えました。恐れていたメーカーの顧問先からの契約解除の申し出は、1件も来ていません。
絞ったから減ったのではなく、絞ったから見つけてもらえた。第2章の「絞ると仕事が減るのでは」に対する、実物の答えがここにあります。詳しくは石上大祐さんのインタビュー記事をご覧ください。
7.2 荒井紀洋さん|前職を肩書きに変えて、手法を変えずに動き出した
ホームセンター、公務員13年、そして医療法人に12年(事務局次長として入社し、すぐに事務局長へ)。人と組織に関わり続けてきた荒井紀洋さんは、2020年9月に社会保険労務士事務所を開業しました。その前段、都内の病院の人事の求人には約200名の応募があり、採用されたのは荒井さんただ1人だったそうです。
ただ、開業してもなかなか声がかかりません。ダイレクトメールを送っても、ホームページを作っても反応がない状態が続きました。手法は一通り試していたわけです。
志師塾で学んで変えたのは、手法ではなく名乗りでした。「医療法人元事務局長の社会保険労務士」。本人の言葉を借りると、こうです。「ただ単に社会保険労務士というのではなく、医療法人元事務局長の社会保険労務士と名乗ることで、誰を対象に何が得意なのかが顧客に伝わる。そこがポイントだと気づきました」
興味深いのは、荒井さんが社会保険の手続きや給与計算を「苦手」と公言している点です。得意なのは医療機関の採用・総務・人事という組織運営のほう。だからこそ、手続きを得意とする社労士とは競合せず、「医療機関は苦手」という同業と組める立場になりました。絞ることは、仲間を減らす行為ではなく、むしろ増やす行為でもあるのです。志師塾で広がった人脈からも、卒業生の紹介がそのまま顧客になりました。全文は荒井紀洋さんのインタビュー記事で読めます。
7.3 田邊雅子さん|断る基準を決めたら、共感する依頼主が集まった
ハローワークの相談員を経て、2012年に社会保険労務士の資格を取得。すぐにグロースサポート社労士事務所を立ち上げた田邊雅子さんですが、実務経験も人脈もなく、当初は開店休業の状態だったといいます。
志師塾に入ったのは2013年、7期生としてでした。「強みを尖らせる必要がある」と教わったときの反応が正直です。「当時の私は、何でもやったほうがお客さんの幅を広げられるから集客しやすいのでは、と思っていました」。それでも、まずは素直にやってみる。異業種交流会への参加、ダイレクトメールの送付、相見積もりサイトへの登録と、教わったことを一通り試していきました。
しばらく結果は出ませんでした。それでも教わったことを一通り試しながら、依頼を受ける基準を決めていきます。「従業員と会社の両方を大切にしたい」という考えに共感してもらえるかどうかを見て、共感が得られない場合は思い切って断る。素直に続けた結果、考えに共感する依頼主が多く集まるようになり、事務所は約2〜3年で軌道に乗ったそうです。現在は従業員6名の体制です。
開業から10年目には、先生ビジネス開発講座(68期)にも参加しました。そこで立ち上げたのがシニア向けの新規事業で、「100年キャリア見える化ノート」のワークショップにはこれまで150名以上が参加しています。
田邊さんが挙げた言葉が、志師塾代表の五十嵐和也から教わった「A=当たり前のことを・B=バカみたいに・C=ちゃんとやる」。集客に特別な手法があるわけではないことを、この一言がよく表しています。経緯は田邊雅子さんのインタビュー記事に詳しく残っています。
7.4 3人に共通していたこと
絞り方の軸も、経歴も、地域もばらばらです。それでも共通点がありました。
- 「社労士です」と名乗るのをやめた:店舗運営専門、医療法人元事務局長、共感できる会社だけ。3人とも、資格名の手前に一歩踏み出している
- 軸にしたのは、社労士になってから身につけたものではありません。人事一筋の8年、医療法人での12年、ハローワークでの相談経験。それ以前に持っていたものを、そのまま看板にしました
- 3人とも、手法を増やすより先に名乗りを変えた。荒井さんと田邊さんに至っては、手法は変えていません。同じダイレクトメール、同じ交流会で、返ってくるものが変わりました
絞ることへの怖さは、3人とも通っています。石上さんは「今の顧問先からも仕事を断られるのではないか」と不安を抱え、田邊さんは「強みを尖らせることでむしろお客さんが減ってしまうような気がしていたんです」と振り返っています。怖さがないほうが珍しい。それでも、絞った先にしか第一想起はありません。
※3人とも、公開済みのインタビュー記事に書かれた実例です。同様の成果を保証するものではありません。
絞ったあとに返ってきたものは、3人とも違いました。石上さんには税理士とフランチャイズ本部と同業からの相談。荒井さんには、競合しない同業との協業。田邊さんには、考えに共感する依頼主。同じなのは、看板を1つに決めたところだけです。では、自分はどの経歴を看板に持ち上げるのか。ここは身近な経歴ほど当たり前に見えてしまい、価値のある部分から素通りしがちなところ。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、経歴のどこを看板に引き上げるか、その見極め方を扱っています。
8. 社労士の集客でよくある質問
社労士の集客とは、突き詰めれば「誰に思い出してもらうか」を決める作業です。ここでは、相談の多い6つの質問に答えます。
8.1 社労士の集客は、何から始めればよいですか?
ポジショニングの言語化からです。誰の・どんな人事労務の悩みに強い社労士なのかを一文で決めてから、手法を選びます。順番を逆にすると、発信量だけが増えて反応が返ってこない状態になります。一文が決まったら、次は紹介と交流会という身近な集客。検索対策や広告は、そのあとで構いません。
8.2 開業したばかりで実績がありません。それでも集客できますか?
できます。実績の数より、社長が「自分の会社のことだ」と感じる一文があるかどうかで決まるからです。顧問先が少ない段階では、前職の経験を材料にしてください。この記事で紹介した3人も、社労士になる前に持っていたものを軸にしています。人事部にいた、現場を回していた、採用に苦労した。その経験は、資格より雄弁です。
8.3 絞ると仕事が減りませんか?
減りません。絞るのは「認知してもらう入口」だけで、実際に受ける業務まで絞る必要はないからです。石上さんは「店舗運営専門」と名乗って他業種からの依頼が止まるのを恐れましたが、実際には税理士やフランチャイズ本部からの相談が増えました。人は、何でもできる人を思い出せないのです。1つのことで思い出してもらえれば、その先で幅は広げられます。
8.4 6つの手法のうち、いくつやるべきですか?
同時に手を出す数は、「出会う」「深める」「決める」から1つずつ、合計3つを目安にしてください。6つすべてを並行させると、どれも中途半端になります。逆に、1つだけだと欠けた役割がそのまま穴になる。たとえば交流会(出会う)とホームページ(深める)と個別相談(決める)の3点だけでも、線としては完成します。手を広げるのは、その線が回り始めてからで十分です。
8.5 顧問料はいくらに設定すればよいですか?
相場に合わせて決めると、いつまでも相場のままになります。志師塾がお伝えしている目安は、提示する価格の3倍のメリットを説明できる額。月5万円なら、月15万円ぶんの価値を言葉にできるかどうかで判断します。あわせて、料金表は「従業員数」と「対応範囲」の2軸で組み、範囲外を先に書いておきましょう。金額そのものより、何が含まれて何が含まれないかを先に示すほうが納得してもらえるのです。
8.6 集客の成果が出るまで、どのくらいかかりますか?
手法によって差があります。紹介とセミナーは数週間で反応が出ることもあり、ブログの検索流入は半年から1年かかるのが普通です。だからこそ、すぐ効くものと時間がかかるものを同時に走らせます。目先の売上を紹介とセミナーでつくりながら、ブログとホームページを育てる。この二本立てが、開業社労士の現実的な進め方になります。
9. 社労士の集客方法を手法別に深掘りする
ここまでで全体像はつかめたはずです。ここから先は、この記事の配下にある手法別ページの一覧です。志師塾では、社労士の集客方法を手法ごとに解説した記事を用意しています。全部を読む必要はありません。いま自分がどこでつまずいているかで、読む順番を選んでください。実際に顧客獲得を安定させた社労士の取り組みは、社労士の成功事例インタビューにまとまっています。
9.1 まず土台を整える:ホームページ・ブログ
「発信しているのに問い合わせが来ない」なら、出す量ではなく受け皿と中身から見直しましょう。
- 社会保険労務士がホームページで集客する方法:載せるべき要素と、問い合わせにつながる導線のつくり方
- 社会保険労務士がブログで集客する方法:何を書くかの決め方と、相談につなげる記事の型
9.2 見込み客との接点を広げる:Web集客・SNS
土台ができたら、出会いの量を増やしていきます。狙う相手が経営者なのか、その隣にいる専門家なのかで、選ぶ場所が変わります。
- 社会保険労務士がWebで集客する方法:検索・SNS・広告の使い分けと、取り組む順番
- 社会保険労務士がFacebookで集客する方法:経営者とつながる投稿のネタを出し、関係を深めていく
- 社労士のInstagram集客4ステップ|採用支援が入口:写真中心のSNSで専門性を伝える手順
- 社労士のYouTube集客4手順|解説で終わらせない:動画なら、人柄と実力を会う前に伝えられます
9.3 成約率を高める:セミナー・営業(個別相談)
最後は、出会いを契約に変える場面です。ここだけは、量より準備の精度が効きます。
- 社労士のセミナー集客5ステップ|顧問契約につなげる型:人を集める方法と、個別相談につながる構成
- 社労士の営業7手順|売り込まずに顧問先を増やす:面談から依頼を決めてもらうまでの進め方
10. まとめ:社労士の集客は「選ばれる理由づくり」から
社労士の集客のポイントをまとめます。
- 手続き業務は中身で差がつきにくい。どちらの土俵で戦うかを先に決める
- 顧客獲得の難しさを挙げた開業社労士は63.7%。構造の問題であって、資質の問題ではありません
- 手法の前にポジショニング。「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」を2軸の掛け算で決める
- 肩書き・キャッチコピー・プロフィールの3点セット。そろえる先は名刺、ホームページ、SNSのプロフィール欄
- 6つの手法は「出会う・深める・決める」の役割で使い分ける
- 需要が伸びているのは相談業務(71.5%)。労働保険の適用事業343万に対し、顧問契約は46万社
- スポットで終わらせず、労務顧問という続く関係へ育てる
最後に、明日から手をつけられる3つを挙げておきます。
- これまで受けた相談を書き出し、「一番力になれた」案件に印を付ける
- その社長は、悩みをどんな言葉で口にしていたか。その言葉で自分を一文にしてみる
- 名刺、ホームページ、SNSのプロフィール。その一文を、この3か所でそろえます
取り組む順番さえ守れば、社労士の集客は着実に積み上がります。安さで選ばれるのではなく、「先生にお願いしたい」と言われる状態を今日から設計していきましょう。
足りないのは需要ではなく、困っている会社があなたを見つける経路のほう。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで扱っているのは、その経路をどう設計するかです。
343万の事業所の中から、まだ出会えていない顧問先を見つけたい社労士の方へ
顧問先が9社以下の事務所は44.7%。抜け出す差は、手法の数ではなく名乗りの一文にあります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで、その決め方をご覧ください。参加費は無料です。
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この記事について
監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)。士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化した集客・顧客獲得支援を行い、これまでに3,200名を超える先生業の方を支援してきました。本記事は、社会保険労務士の受講生・卒業生への支援で得た知見と、全国社会保険労務士会連合会「2024年度 社労士実態調査」、厚生労働省「令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」「労働保険の適用徴収状況(令和6年度)」の公表資料をもとに構成しています(公的データの確認日:2026年8月30日/支援人数の原本確認日:2026年8月16日)。