“知られていない会社を選ばれる会社へ”をキャッチコピーに、BtoB中小企業専門の広報参謀として活動している中小企業診断士の米澤智子さん。銀行、支援機関、クラウドファンディング会社での資金調達支援経験を活かし、現在は広報PR代行事業と診断士業を軸に事業を展開しています。
不妊治療をきっかけに独立を決意し、子育てとの両立を図りながら、志師塾での学びを通じてポジショニングを確立。新規で1年更新の継続契約を2件獲得し、活躍の幅を広げられています。
今回の取材では、資金調達支援から広報PRへの転身の経緯、志師塾での学びと成果、そして日本のものづくり企業を100年先まで残したいという熱い想いについてお話を伺いました。
1.資金調達の現場で痛感した広報PRの重要性
1.1 銀行からクラウドファンディングまで資金調達一筋
米澤さんが広報PRの道を選んだきっかけは、3社での資金調達支援によるもの。銀行では融資業務を、中小企業支援機関では助成金・補助金支援を、クラウドファンディング会社では共感を基にした応援資金集めを経験しました。
資金調達が必要になるのは、新規事業や新たな挑戦をするタイミング。しかし、どの会社でも共通の課題に直面していたとのこと。
「お金を出して事業はできるようになるんですが、そこから認知を広げるというプロセスがどの会社も課題になっていました。特に私が担当していたのは、商品・サービスが消費者には全く知られていない中小企業さんばかり。“知られない=売れない”という状況でした」
1.2 クラウドファンディングで実感した信頼性の重要性
広報PRの重要性を最も痛感したのは、3社目のクラウドファンディング会社での経験でした。
「クラウドファンディングをやってもオープンしても、また認知度が課題になり、なかなか資金が集まらなかったんです。『新聞やテレビに取り上げられて話題になるにはどうすればいいのか』とクライアントからも質問をいただきましたが、当時はやり方が全くわからず、悔しい思いをしました」
さらに、診断士資格取得後の副業時代には、ライターとして中小企業の社長にインタビューする仕事も経験します。
「中小企業の社長からは、本当にすごい話が次々と出てくるんです。どの会社にもテレビのドキュメンタリー番組で出てくるような話があるのに、知られる方法がわからないから、全然知られていない。これはもったいないと強く感じました」
こうした経験から、独立後の支援領域を広報PRに決定。広報PRの手法を学ぶ学校で1年間ノウハウを習得し、診断士資格を生かした経営支援と広報PR支援を軸とした事業をスタートさせました。
2.不妊治療から独立、そして新たな人生の始まり
2.1 治療のため会社を退職、予想外の展開
米澤さんの独立は、計画的なものではありませんでした。
「当時不妊治療をしていて、多いときは通院が週2~3回になってしまい、仕事が回らなくなったんです。どうしようかな、と思っていたタイミングで創業支援機関のお仕事のお話をいただきました。その仕事はもちろん副業ではできない仕事でしたので、思い切って独立しようと決めました」
しかし、退職後に予想外の展開が待っていました。
「会社を辞めた2週間後に治療が成功し、妊娠が判明したんです。約3年半全く授からなかったのに、仕事を辞めた途端に授かって。独立したばかりなのに、子育てとの両立がすぐに課題になりました」
2.2 在宅でできる広報PRという選択
この状況が結果的に、米澤さんにとって最適な働き方となりました。
「幸い、広報は在宅でもできる仕事が多く、子育てとの両立がしやすい分野でした」
現在も3歳のお子さんを育てながら事業を展開する米澤さん。子育てなどの理由から夜の交流会に参加しにくい方々と“志師塾ランチ交流会”を自主開催するなど、積極的にコミュニティづくりも行っています。
3.志師塾での学びがポジショニングを明確化
3.1 診断士仲間の紹介で参加を決意
志師塾との出会いは、診断士の仲間からの情報でした。
「診断士の仲間が誰かしら志師塾に行っているので、いつか行こうとは思っていました。広報PRという軸ができて、受託業務だけでなくコンテンツも作りたいと思ったタイミングで参加を決めました」
フロントセミナーでは、志師塾OBOGを含め他士業の方とのつながりができること、無形サービスを見える化するための、コンテンツ作りのノウハウに魅力を感じたといいます。
3.2 BtoB中小企業専門というポジショニングが奏功
志師塾での最大の成果は、明確なポジショニングの確立でした。
「志師塾で学んだとんがりポジショニングを“BtoB中小企業専門の広報”として、ホームページやSNSを全部統一しました。すると、『米澤さんはBtoBの広報だね』とFacebookの知り合いに知れ渡ったんです」
この明確化により、志師塾入塾後に新規契約2件を獲得します。
「月15万円×2社で月30万円、1年契約なので年間360万円の新規契約が決まりました。それまでなんとなく「BtoBかな」と思っていたポジショニングを、明確に言語化して発信できたことが、志師塾の学びの大きな成果だったと思います」
3.3 米澤さんの仕事獲得につながる1分自己紹介
志師塾で作り上げた、米澤さんの仕事獲得につながる1分自己紹介を共有してもらいました。
ここにいらっしゃる方で、新聞テレビWebに乗ったことがある会社さんはいらっしゃいますでしょうか。私はBtoB企業、中小企業の広報参謀の米澤智子と申します。
私は、知られていない会社を広報PRによって選ばれる会社へ変えるプロです。広報PRは大手企業がするというイメージですが、人数が少ない小さな会社でも、新聞テレビなどの報道機関に送る“プレスリリース”という情報発信手段を活用することで、取材と掲載を獲得する可能性が高まります。
私も過去、1枚のプレスリリースで最大13件取材と掲載をいただいたことがあります。支援先の企業の実績をすべて合わせると、1年間で70件ぐらいの掲載の実績があります。メディアに掲載されることで、企業の信用構築とブランディング向上につながります。さらに、一番強いのは、社員のエンゲージメント向上により“人がやめにくい組織”をつくることにもつながります。
今度プレスリリースの使い方をご説明する無料セミナーを行いますので、ぜひご参加ください。
誰向けに、何を提供して、どのような実績が出ているのかを具体的な数字で示した上で、顧客が得られるメリットは何かを分かりやすく伝えることで、紹介やJVを通じた仕事獲得につながっています。
3.4 自主性と行動力の重要性を再認識
志師塾での学びで最も印象に残ったのは、自立型の姿勢の重要性でした。
「やっぱり自分で動くのが大事だということを一貫して学びました。行動が全てだなと。ただ、子育ても私にとっては大事なものなので、子どもの食事やお風呂の時間帯と重なる、夜の交流会はなかなかでられない。そこで昼のランチ交流会を作ってみたら、同じような方がいらっしゃって、今では毎月開催しています」
米澤さんが主催する交流会に参加される方は、米澤さんと同じように、夜の交流会に参加が難しい先生が多いとのこと。ランチ時間帯に50分という短い時間で濃密な交流ができ、有意義な交流が続いているそうです。
4.推し活のように企業を愛する広報スタイル
4.1 広報は企業と社会課題とのつながりが重要
米澤さんの広報支援には、明確な基準があります。
「広報は、いわば『推し活』です。私は、本当にその企業さんと経営者さんが大好きになれないとお断りしています。単なる商品サービスの認知拡大だけではお手伝いできません」
米澤さんが心の底から素晴らしい企業だと思えなければ、上辺だけの広報PRとなり、上手くいかないとのこと。広報支援を行う上で重視するのは、社会課題との接点。報道関係者は“伝えることでよりより社会をつくる”という高い使命感をもった人たちであるため、その企業の取り組みと、社会課題解決がどのようにつながりがあるのかを伝えることが一番重要です。
「『私のサービスはこんなにすごい』というメッセージだけでは広告と同じです。なぜそのサービスを作ったのか、社会の何に役立っているのかを説明する必要がありますが、なかなか自社だけで言語化できる企業は少なく、人が少ない中小企業はさらに難しい。そこに、弊社のような外部の広報PR会社が、あえて外部の視点から支援する価値があると思っています」
米澤さんの支援によって、“自社商品の魅力を伝えるだけの広報”が、“社会課題に紐づいた報道機関が興味を持つ魅力的な広報”に変わるのです。
4.2 伝統的企業とベンチャーの違いを理解
診断士の資格を活かし、米澤さんのクライアントは業歴30年以上の伝統的な企業が中心です。
「私のお客さまは、2代目経営者がいる町工場など、比較的業歴が長い企業が多いです」
一方、フリーランスで広報支援をしている方の多くは、ベンチャーやBtoC企業出身の方が多いとのこと。
「私が過去会社員時代に、比較的業歴の長い企業を支援先として経験した経歴からという側面もありますが、志師塾で教わる“とんがりポジショニング”という点でも、これらの企業の広報支援に力を入れています」
米澤さんは、ベンチャーやBtoC企業の紹介があった際は、信頼できる広報PR人材を紹介します。反対に、広報PRの仲間からBtoBの伝統的な企業の広報支援の案件があれば、紹介されているとのこと。
伝統的なBtoB企業に絞って支援し、実績を積み上げることで、従業員50人の町工場から300人規模の企業まで活躍の幅を広げられています。
4.3 継続的な信頼関係の構築
実際の成果として、ある町工場では、2ヶ月に1本のプレスリリース配信を1年以上コツコツと継続した結果、BSの30分番組や日経新聞全国版への掲載を実現しました。
別のクライアントでは、関わる前のリリース掲載率(発信したリリース中、報道機関に取り上げられたリリース数の割合)が約35%から約60%に上昇しました。記事の合計数も、1年間で12件から36件と3倍になったとのこと。
リリース数が約1.7倍の増加に対し、記事の掲載数は3倍になったのは、米澤さんの支援によって“1件の案件に対し、複数の新聞社から取り上げられる魅力的な広報”に変わった何よりの証拠です。
5.100年先まで残るものづくり企業を支える使命
5.1 町工場向け広報道場の構想
現在、米澤さんが最も力を入れて準備しているのが、ものづくり企業向けのコンテンツ事業です。
「少人数の中小企業さんだと、弊社ががっつり広報PR代行にはいらなくてもいいけど、広報の取り組みは定期的にやっていきたいという企業も多いんです。でも、広報に取り組みたくても、ノウハウがない企業さんもとても多い。私が、一番広報をしたいのはそういった少人数の中小企業さんなので、BtoB企業、特に日本のものづくりを支えている中小企業に特化した広報道場を作ろうと思っています」
講座では、自社で広報に取り組めるノウハウを提供し、コミュニティ形成も重視します。具体的には、町工場の若い方々の仲間作りの場とし、同じような取り組みをしている企業同士で情報交換し、お互いに学び合える環境の提供を目指しています。
また、中小企業診断士の資格を生かし、行政の支援機関を中心に、プレスリリースの書き方を中心とした広報PRセミナーの開催も積極的におこなう予定です。
5.2 地域の産業を100年先まで残す志
米澤さんの長期ビジョンは明確です。
「私の志は『地域の産業を支えるローカルブランド企業を、広報の力で100年先まで残すこと』です。素晴らしい技術や働く人たちがいなくなってしまうと、日本の競争力も落ちてしまいます」
その実現に向けて、広報代行と講座の両輪で事業を展開していく計画です。
「広報PRで知ってもらい、選ばれる会社になって、地域の雇用も生み出すものづくり企業を支えていきたい。BtoBの中小企業で広報に取り組む会社を、もっともっと増やしていきたいです」
6.先生業を目指す方へのメッセージ
最後に、米澤さんから同じように専門性を活かしてビジネスを展開したい方へのメッセージをいただきました。
「独自コンテンツがない方は、志師塾に参加して独自コンテンツを作ると時給単価が上がると思います。独立している方でも、クライアントワークだけじゃない仕事の選択肢が広がってくると思います」
不妊治療をきっかけとした独立から、子育てとの両立を図りながら試行錯誤を重ね、今後のビジョンを確立した米澤さん。その背景には、明確なポジショニングと社会課題への真摯な向き合い、そして100年先を見据えた大きな志がありました。
“知られていない会社を選ばれる会社へ”という米澤さんの熱い想いは、これからも多くの日本の伝統ある中小企業を支え続けることでしょう。
文・編集:志師塾編集部
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