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手当9項目の基準明確化|社労士の顧問先点検5型

2026年10月1日、同一労働同一賃金のガイドライン(指針)が改正・施行されました。退職手当、無事故手当、褒賞。これまで指針に項目がなかった待遇について、正社員との差が許されるかどうかの判断基準が書き込まれています。

見落としやすいところがあります。これは「これから備える」話ではありません。施行日はすでに過ぎています。顧問先の労働条件通知書が旧式のままなら、今この瞬間も違反状態が続いていることになります。

この記事では、改正の中身を「社労士が顧問先に何を提案できるか」という視点で整理します。取り上げるのは、話題になっている「手当9項目」の正体と数え方、改正の背景にある最高裁判例、顧問先の状態別に使える点検5型、そして点検を無料サービスにしないための商品設計です。

志師塾は、士業・コンサルタント・講師といった先生業を専門にしたビジネススクールとして、これまで3,200名を超える方の顧客獲得を支援してきました。社労士の卒業生も多数在籍しており、法改正をきっかけに顧問契約を伸ばした方も、逆に「改正対応」を無料で引き受けて消耗してしまった方も見てきています。本記事では厚生労働省や労働政策研究・研修機構の公的データも交えながら、その分かれ目を解説します。

読み終えるころには、明日から顧問先に話せる切り口と、それを単発作業ではなく提案商品に変える道筋が見えているはずです。まずは、今回の改正が何の改正だったのかを押さえましょう。

法改正は、社労士が顧問先に声をかける絶好の口実です。ただ、同じニュースを同じタイミングで全国の社労士が知っています。声をかけた先で選ばれるかどうかは、情報の早さとは別の勝負になります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、「誰に何の専門家として覚えられるか」で選ばれる仕組みを、先生業の事例で解説しています。

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Table of Contents

1. 2026年10月1日施行|社労士が押さえる改正の3本柱

2026年10月改正の3本柱と対象範囲

今回の改正は、2026年4月28日に省令・告示が公布され、2026年10月1日から適用されています。内容は大きく3本柱で整理できます。それぞれ中身は別物なので、顧問先への説明もこの3つを分けて行うのが正確です。

1.1 労働条件通知書の明示事項が4項目から5項目へ

パートタイム・有期雇用労働法6条に基づく「特定事項」の明示義務に、1項目が追加されました。従来は、①昇給の有無 ②退職手当の有無 ③賞与の有無 ④相談窓口 の4項目でした。ここに、「通常の労働者との待遇の相違の内容や理由などについて、説明を求めることができる旨」が加わっています。

対象になるのは、雇入れ時と契約更新時の両方です。既存のパート・有期雇用労働者についても、契約更新のタイミングが来れば新しい様式で明示しなければなりません。ひな形を差し替えていない事務所は、その時点で顧問先に違反を発生させることになります。

1.2 ガイドラインに待遇ごとの判断基準が書き込まれた

2つ目が、本記事のテーマである同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)の改正です。厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインのページで公表されています。

退職手当のように、これまで指針に項目自体がなかった待遇が追加され、賞与や基本給のように既にあった項目も記述が厚くなりました。詳細は次章で整理します。

1.3 説明は「資料を用いた説明」が基準になった

3つ目は、事業主が講ずべき措置に関する指針(雇用管理改善措置指針)の改正です。待遇差の説明方法について、資料を用いた口頭説明、または説明内容を記載した資料の交付という形が示されました。口頭だけの簡単な説明では足りないという整理です。あわせて、公正な評価に基づいて賃金を決定することが望ましい旨も加えられています。

実務上はここが一番重い変更になります。制度を直すだけでは終わらず、「どう説明したか」を形に残す運用が求められるようになったからです。

1.4 対象はパート・有期を1人でも雇う全企業

規模要件はありません。パート・アルバイト・契約社員・定年後再雇用者を1人でも雇っていれば対象です。総務省統計局「労働力調査」では、非正規の職員・従業員として働く人は2,000万人を超える水準が続いています。顧問先の従業員名簿を開けば、ほぼ確実に該当者がいる計算になります。

従業員数で義務の範囲が変わる女性活躍推進法の101人超への対象拡大とは、ここが大きく違います。「うちは小さいから関係ない」という逃げ道が存在しないので、顧問先の全件が提案対象になります。

なお、2026年10月1日はカスタマーハラスメント対策の義務化とも重なっています。顧問先の総務担当者は複数の改正を同時に抱えており、優先順位をつけられず止まっているケースが少なくありません。そこを整理してあげるだけでも価値になります。

2. 社労士が整理すべき「手当9項目」の正体

新たに項目化された6つの待遇

改正のニュースが流れた後、社労士業界では「手当9項目が明確化された」という言い方が広まりました。顧問先に説明する前に、この「9項目」が何を数えたものなのかを自分の言葉で言えるようにしておくことをおすすめします。

2.1 「9項目」は厚生労働省の公式用語ではない

まず前提として、「手当9項目」という区切りは厚生労働省が示した呼び方ではありません。改正内容を解説する際に、追加・拡充された待遇を整理した結果として広まった数え方です。実際、改正前の整理を「7項目」として説明している記事も残っています。

なぜこれが大事かというと、顧問先や他の専門家から「9項目の根拠はどこですか」と問われたときに、数え方を説明できないと信用を落とすからです。人から聞いた数字を、そのまま自分の資料に転記しない。これが専門家としての最低線になります。引用するなら、指針の原文で自分が確認した範囲を示しましょう。

2.2 新規追加と記述拡充を分けた一覧

「9項目」とされているものを、新しく項目として立てられたものと、既存項目の記述が厚くなったものに分けて整理します。

待遇 改正での位置づけ 判断の要点
退職手当 項目として追加 労務の対価の後払い・功労報償といった性質・目的に照らし、職務内容などの違いに応じた均衡待遇か
無事故手当 項目として追加 業務の内容が同一なら同一の支給
家族手当 項目として追加 契約更新を繰り返すなど、相応に継続的な勤務が見込まれるなら同一の支給
住宅手当 項目として追加 転居を伴う配置変更の有無が同一なら同一の支給
褒賞 項目として追加 同一の期間勤続した者には同一の褒賞
夏季・冬季休暇 項目として追加(手当ではなく休暇) 同一の付与
病気休職 記述の追加・拡充 指針原文で表現を確認したうえで説明する
福利厚生施設 記述の追加・拡充 同上
賞与 既存項目の記述拡充 労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、意欲向上など多様な性質・目的を明文化

基本給についても、勤続給・職務給・職能給といった複合的な性質を踏まえて判断する枠組みが厚く書かれています。顧問先に配る資料を作るなら、この「追加」と「拡充」の区別を入れるだけで、他事務所の資料と差がつきます。

2.3 分岐点は「転勤の有無」と「継続勤務の見込み」

新たに追加された手当を並べると、差を正当化できるかどうかの分岐点が見えてきます。

  • 住宅手当:分岐点は転居を伴う配置変更の有無。正社員に転勤があり、パートに無いのなら、差を説明できる余地が残ります
  • 家族手当:見るのは継続勤務の見込み。更新を何度も繰り返しているパートに支給しないのは、説明が苦しいところ
  • 無事故手当・褒賞:業務内容や勤続期間が同一なら、ほぼ同一の取扱いが求められます

ここから見えてくるのは、「正社員だから」という理由がもはや理由として機能しないという事実です。何が違うから差があるのかを、手当ごとに言葉にする必要があります。

2.4 「手当」でないものが混ざっている点に注意

「手当9項目」と言いつつ、夏季・冬季休暇、病気休職、福利厚生施設は手当ではありません。正確には「手当・休暇・福利厚生を含む待遇9項目」です。顧問先への説明資料にそのまま「手当9項目」と書くと、休暇や休職の点検が抜け落ちる危険があります。社労士同士の勉強会でも、ここを正確に押さえている人は意外に少ないところです。

3. 改正の本質は判例の明文化|社労士が語るべき背景

判例が指針の条文になるまで

今回の改正を「新しいルールができた」と説明すると、本質を外します。実態は、制度施行から5年のあいだに積み上がった裁判例が、指針の条文になったというものです。労働政策審議会の部会で裁判例を踏まえた見直しが議論され、さらなる明確化が適当と提言されたことが背景にあります。

3.1 日本郵便3判決が指針の条文になった

中核にあるのは、2020年10月15日の最高裁判決(日本郵便の3事件)です。東京事件では病気休暇と年末年始勤務手当、大阪事件では扶養手当・年末年始勤務手当・祝日給、佐賀事件では夏期冬期休暇が争われ、いずれも契約社員に支給しないことが不合理と判断されました。

今回追加された家族手当や夏季・冬季休暇、病気休職は、この判決群の内容がほぼそのまま指針に反映されたものです。要するに、6年前から裁判では負けていた論点が、ようやく行政の基準として明文化されたにすぎません。

3.2 退職手当・基本給・賞与も判例の枠組みで整理

退職手当は、メトロコマース事件での判断の枠組みが土台になっています。基本給と賞与については、2023年7月20日の名古屋自動車学校事件最高裁判決が示した枠組みが反映されました。賃金の性質・目的を個別に検討せずに結論を出してはならない、という考え方です。

定年後再雇用者の待遇を扱う顧問先には、この判決の名前を出せるだけで信頼が変わります。「法改正の情報を持っている社労士」ではなく「背景の判例まで押さえている社労士」として記憶されるからです。

3.3 「制度の正解」ではなく「説明できるか」が問われる

指針は「手当の性質・目的に照らして判断する」という書き方をしています。言い換えれば、正解は会社ごとに違うということです。全社共通の模範解答は存在しません。

加えて、改正をめぐる議論では、賃金差の説明が不十分であることや、労働者の意向を考慮せず一方的に待遇を決めたことが、不合理性の判断で不利な事情として考慮され得るという整理も示されています。制度の中身だけでなく、手続を踏んだかどうかが結果を左右する構造になったわけです。

ここが社労士にとっての商機になります。正解を知っている人ではなく、顧問先の手当の目的を言語化して文書に残せる人が選ばれます。ただ、そこで次の壁が来ます。その力を持っていても、顧問先や新規の見込み客にどう伝われば依頼につながるのか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、専門性を見込み客に伝わる言葉に変える手順を扱っています。改正情報の鮮度では差がつかないと感じている方には、考え方の土台として参考になるはずです。先生業のためのWeb集客セミナーの内容を確認する

4. 社労士の顧問先点検5型

顧問先の状態別・点検5型

ここからが実務です。点検を「作業の順番」で考えると、どの顧問先にも同じ手順を押しつけることになり、提案が通りません。顧問先の状態別の入口として5つの型に分けると、相手の状況に合わせて切り出せます。

型 点検対象 成果物
①通知書型 労働条件通知書・雇用契約書のひな形 ひな形改訂+更新時の運用手順
②目的明記型 賃金規程・諸手当規程の条文 各手当に目的条項を入れた規程改訂案
③棚卸し型 雇用区分×待遇の一覧 待遇差一覧表+合理性の根拠書
④説明体制型 説明の方法と記録 説明用資料・想定問答・記録様式
⑤運用乖離型 規程と実際の支給実態 運用是正+労使の話合いの場の設計

4.1 ①通知書型|1人10万円以下の過料という締切

最初の入口は、明示事項の追加に対応できているかです。パートタイム・有期雇用労働法では、特定事項の明示義務違反に対して短時間・有期雇用労働者1人につき10万円以下の過料が定められています。パートを30人雇う会社なら、単純計算で金額の規模が想像できるはずです。

この型が強いのは、締切が明確で、実害が金額で言える点にあります。待遇差そのものの是正は「いつまでに」が無く、どうしても先延ばしされます。まず過料の話で動いてもらい、そこから中身の点検に入る二段構えが現実的です。

4.2 ②目的明記型|規程に手当の目的が書かれていない

指針は「性質・目的に照らして」判断すると書いているのに、多くの会社の賃金規程には支給額と支給要件しか書かれていません。「住宅手当は月2万円、世帯主に支給する」とあるだけで、何のための手当なのかが書かれていない。これでは説明を求められた時点で答えられません。

点検の起点はここに置くのが合理的です。各手当に目的条項を入れる改訂は、作業としては地味ですが、顧問先にとっては「説明できる状態」になるという明確な変化になります。改訂作業そのものが提案商品になります。

4.3 ③棚卸し型|雇用区分×待遇の一覧をつくる

正社員・契約社員・パート・定年後再雇用といった区分を縦軸に、9項目を含む待遇を横軸に置いた一覧表を作ります。作ってみると、会社自身が「誰に何を払っているか」を把握していないことが分かります。

裏付けになる統計もあります。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査シリーズNo.251(2025年3月)によると、同一労働同一賃金への対応で待遇を拡充した企業の割合は、基本給が中小で約6割あるのに対し、退職金は中小・大企業ともに約1割、家族手当は中小約1割・大企業約3割にとどまります。

今回の改正は、まさにこの最も手つかずの領域に基準を書き込んだわけです。「退職金と家族手当は、他社も含めてほとんど手がついていません」という事実から入ると、顧問先は身構えずに聞いてくれます。

4.4 ④説明体制型|口頭50.9%の実態を文書に変える

同じJILPTの調査では、待遇差の説明方法として「個別の問い合わせに応じて口頭で説明」が50.9%、「雇入れ時や契約更新時に口頭で説明」が39.3%という結果が出ています。説明は口頭が中心という実態です。

一方で改正後の指針は、資料を用いた説明や資料の交付を求めています。過半数の会社が、改正後の基準と正面からぶつかっている構図です。ここが本命の提案領域になります。

成果物は、説明用資料・想定問答集・説明記録の様式の3点セットです。想定問答は「なぜパートには住宅手当がないのか」「なぜ賞与が少ないのか」といった質問に、会社がその場で答えられるようにするためのもの。社労士が同席しなくても回る状態まで作るのがポイントです。

4.5 ⑤運用乖離型|規程と支給実態のずれを直す

最後は、規程に無い手当を慣行で払っている、あるいは規程どおりに払っていないというずれです。中小企業では珍しくありません。参考として、厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」では、諸手当を支給した企業のうち通勤手当などが90.2%、役付手当などが84.2%、家族手当・扶養手当・育児支援手当などが62.3%という支給割合が示されています。多くの会社が複数の手当を抱えており、そのすべてに説明可能な根拠が必要になったということです。

この型は単発の点検では終わりません。労使の話合いの場を設計し、運用を回し続ける支援になるため、顧問契約への橋として最も自然です。最低賃金引き上げを入口にした相談導線の設計と同じ考え方で、入口の作業から継続支援へつなげます。

5. 点検を無料サービスにしない|社労士の商品パッケージ化

点検を提案商品に変える手順

ここまで読んで、「やることは分かったが、これをどう請求するのか」と思った方もいるはずです。実はここが、法改正で伸びる社労士と消耗する社労士の分かれ目になります。

5.1 法改正対応は値引きの口実になりやすい

法改正の話を顧問先に持っていくと、高い確率でこう言われます。「それ、顧問料の範囲でやってもらえますよね」。悪意はなく、顧問契約の範囲が曖昧だからそうなるだけです。

結果として、規程改訂も説明資料作成も想定問答も無償で引き受け、改正ラッシュの時期に売上は変わらないまま作業量だけが倍になる。これが毎回起きています。

5.2 標準パッケージがないと自分の土俵で戦えない

志師塾では、商品サービスはビフォーからアフターへお連れするための標準パッケージにまとめておくことを原則にしています。「士業はやることが決まっているから、パッケージと言われても」という声は毎回出ますが、答えは変わりません。

理由は単純で、標準パッケージが無いと自分の土俵で戦えないからです。基準が無ければ顧問先から言われたい放題になります。逆に標準パッケージがあれば、それを基準にしたカスタマイズという話にできるので、「ここから先は別料金です」と言いやすくなります。

今回の改正なら、たとえば①通知書型を入口商品(低単価・短納期)、③棚卸し型と④説明体制型を本命商品(診断から設計まで)、⑤運用乖離型を顧問契約への橋、という構成が組めます。5型をそのまま商品ラインに置き換えるわけです。

5.3 成果物を見える化して提案する

もう一つ重要なのが、成果物の明示です。士業は「大変になるから」と、何を納品するかを曖昧にしたがる傾向があります。しかし見込み客の側からすると、何が手に入るのか分からないものには発注できません。

志師塾の卒業生の中には、チラシに成果物をはっきり書いたことで「誠実な人だと思った」と言われ、そのまま成約に至った士業の方がいます。他事務所が曖昧にしているからこそ、明記するだけで差がつくのです。「待遇差一覧表」「合理性の根拠書」「説明用資料と想定問答集」と書き切ってしまいましょう。

5.4 ガチ時給で割に合うか検証する

価格を決めたら、必ず時給で検証します。志師塾では、営業にかけた時間とサービス提供にかけた時間を全部含めて計算した時給を「ガチ時給」と呼んでいます。顧客に提示する「見せ時給」とは別物です。

法改正対応の仕事は、調べる時間と顧問先への説明時間が膨らみます。見せ時給では儲かって見えても、ガチ時給では最低賃金を割っていることすらあります。先生業は「やってあげたがり病」にかかりやすく、気づかないうちにすり減ります。受注して自分のモチベーションが下がる価格なら、その仕事は続きません。

6. 専門領域で選ばれた社労士の事例|志師塾卒業生3名

法改正の情報は、どの社労士も同じタイミングで手に入ります。差がつくのは、どの領域の専門家として覚えられているかです。志師塾の卒業生で、専門領域を定めて顧客を獲得している社労士の方を紹介します。

6.1 石上大祐さん|店舗運営専門の社労士として地位を確立

石上大祐さんは、2020年に個人事務所を立ち上げた社会保険労務士です。給与計算や社会保険・労働保険の事務手続き、就業規則の作成・変更といった業務に加え、人事評価制度の導入や人材育成のコンサルティングにも力を入れています。

特徴は「店舗運営専門の社労士」というポジションです。自らパーソナルジムや美容関連のフランチャイズのオーナーを務めており、人事管理の専門家と経営者の2つの立場から、資金調達や人材確保といった店舗の立ち上げから運営アドバイスまでをワンストップで支援しています。自身の店舗運営ノウハウを体系化した「多店舗展開に必要な5つの人事ステップ」は、飲食店や理美容業界のフランチャイズオーナーから多くの支持を得ています。

支援した居酒屋では、社長が週5・6日店舗に泊まり込み、募集がうまくいかず採用してもすぐ辞めるという危機的な状況でした。石上さんはまず社長の思いを言語化して経営理念にまとめ、採用段階から従業員に明示。さらに従業員のキャリアパスをA4一枚にまとめて提示し、社長と従業員が同じ方向を向いて動き始めたといいます。石上さんは志師塾での学びを通じて、この「とんがりポジション」を言葉にしました。

6.2 塚元雄平さん|人事部立ち上げ支援という商品をつくる

塚元雄平さんは、ネクストステップ社会保険労務士事務所の所長です。社会保険労務士試験に10回挑戦して合格し、社労士事務所で実務経験を積んだ後、30代で独立しました。

現在は製造業のグループ企業を顧問先に持ち、労務相談から労働基準監督署への対応まで支援しています。今後の柱として据えているのが「人事部立ち上げ支援」です。対象は従業員50人以上で、採用・定着に課題を抱える企業。評価制度をつくり直して離職率を下げ、社会保険料や退職金も整備し、助成金も活用しながら採用につなげる。制度をつくって終わりではなく、人事機能が社内に根付くまでを支援する設計です。

この商品は、志師塾の課題である3万字の自己棚卸しから形になりました。自分の経験を掘り下げた結果、「人事に行きたくて資格を取った」という原点と、実務で積んだ経験が結びついたのです。前職時代に労働基準監督署対応を担当していた顧客から「直接、塚元さんにお願いしたい」と声をかけられ、グループ企業全体の顧問を任されたのも、積み重ねた仕事が縁になった例です。

6.3 林勲さん|38年の信託銀行経験を企業型DCの専門性に変える

林勲さんは、信託銀行に38年間勤めた後、2023年9月末に定年退職し、翌月10月1日に社労士として独立しました。社労士事務所での勤務経験はなく、実務未経験からのスタートです。

メイン業務は、中小企業向けの企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入支援です。社労士として活動する中で、多くの中小企業に退職金制度がないという現実に直面し、信託銀行で30年以上携わった企業年金営業の経験を活かせる領域だと見極めました。企業型DCは従業員が自分の給与から積み立てる仕組みのため、会社が掛金を負担せずランニングコストだけで導入できます。中小企業でも入れやすいという点を強みに据えています。

今回の改正では退職手当が指針に追加されました。退職金制度そのものが無い中小企業をどう支援するかという問いに、林さんのような専門性が噛み合う時代になりました。

3名に共通するのは、法改正に詳しいことではなく、「この領域ならこの人」と覚えられる状態をつくったことです。あなたが改正を口実に顧問先へ声をかけたとき、その先で選ばれるかどうかも、同じ状態ができているかで決まります。では、その状態をどう作るのか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、専門領域の決め方から見込み客に届ける導線までを順を追って扱っています。先生業のためのWeb集客セミナーの詳細を見る

まとめ|社労士は「改正を知っている人」から「説明を設計できる人」へ

社労士の立ち位置4段階

2026年10月1日施行の改正を整理すると、ポイントは次の5つです。

  • 改正は3本柱=労働条件通知書の明示事項追加/ガイドラインでの判断基準の明確化/説明方法の明確化
  • 「手当9項目」は公式用語ではなく、新規追加と記述拡充が混在している。休暇や福利厚生も含まれる
  • 中身は日本郵便3判決などの判例の明文化。新ルールではない
  • 罰則は非対称。明示漏れは1人10万円以下の過料という締切付きのリスク、待遇差そのものは民事訴訟リスク
  • 点検は5型(通知書/目的明記/棚卸し/説明体制/運用乖離)で顧問先の状態別に切り出す

そして最大のポイントは、この改正が「説明責任の商品化」の号砲だということです。正解は会社ごとに違い、指針は「性質・目的に照らして説明できるか」を問う形になりました。選ばれるのは正解を知っている社労士ではなく、顧問先の手当の目的を言語化して文書に残せる社労士です。

ただし、それを無料サービスで引き受けてしまえば、作業量だけが増えて終わります。標準パッケージと成果物を決め、ガチ時給で検証したうえで提案する。ここまで設計できたとき、法改正は売上に変わります。

点検5型を「無料対応」ではなく提案商品に変えたい社労士の方へ

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なお、法令・指針の解釈や個別企業への適用については、必ず厚生労働省の公表資料および指針の原文をご確認ください。本記事の制度解説は2026年10月15日時点の情報に基づいています。

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