「フリーランスとは、結局どんな人を指すのか」「個人事業主と何が違うのか」と迷っていませんか。
フリーランスは、よく聞くわりに意味があいまいな言葉です。この記事では、国の公的資料にもとづいて、フリーランスの定義と働き方、始め方の基本をわかりやすく整理します。
先に要点をまとめます。
- フリーランスとは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長で、自分の経験や知識、スキルで収入を得る人
- フリーランスは働き方を表す言葉。個人事業主でも、一人で法人を経営する人でも当てはまる
- 本業がフリーランスの人は209万人。収入や社会保険、契約の管理は自分で行う必要がある
志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化したビジネススクールです。本記事も、先生業としてフリーランスで働きたい方を想定しています。
1.フリーランスとは?公的な定義をわかりやすく解説
フリーランスとは、わかりやすく言うと「会社に雇われず、自分の専門性で仕事を受けて働く人」のことです。ただし、フリーランスは法律で一つに決められた言葉ではありません。
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のガイドラインも、「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々だとしています。そのうえで、ガイドラインとしての定義を示しています。
1.1 ガイドラインの定義|実店舗がなく、雇人もいない
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」では、フリーランスを次のように定義しています。
実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者
出典:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和8年1月1日改定・PDF)
この定義を分けると、フリーランスの条件は次の3つです。
- 実店舗がない
- 雇人がいない(自営業主や一人社長)
- 自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る

1.2 自宅やコワーキングスペースは「実店舗」に入らない
ガイドラインの別紙では、定義の言葉の意味も補足されています。自宅の一部で小規模に事業を行う場合は、「実店舗」に区分しないとされています。
コワーキングスペースやネット上の店舗も、実店舗には当たりません。一方、専用の事務所や店舗を構えている場合は、この定義から外れます。
「雇人なし」は、従業員を雇わず、自分だけで、または同居の親族だけで事業を営んでいる状態を指します。
1.3 フリーランス法の「特定受託事業者」とは
2024年11月1日には、いわゆるフリーランス法が施行されました。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
この法律では、守る対象を「特定受託事業者」と呼びます。ガイドラインでは、業務委託の相手方である事業者のうち、次のどちらかに当たるものとされています。
- 個人であって、従業員を使用しないもの
- 法人であって、1人の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの
つまり、法律上の保護の対象は「企業などから業務委託を受ける、従業員のいない事業者」です。ガイドラインの「フリーランス」と重なる部分が大きいものの、範囲は同じではありません。
2.フリーランスと個人事業主・会社員の違い
フリーランスとよく混同されるのが、個人事業主です。両者の違いを一言でいうと、フリーランスは「働き方」、個人事業主は「事業の形態」を表す言葉です。
ガイドラインの定義には「一人社長」も含まれています。そのため、法人を作って一人で経営している人も、働き方としてはフリーランスに当たります。
| 区分 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| フリーランス | 実店舗・雇人のない自営業主や一人社長という働き方 | 個人事業主か法人(一人社長)かを問わない |
| 個人事業主 | 法人を作らず、個人で事業を営む人 | 店舗や従業員がいる場合も含む |
| 会社員 | 会社と雇用契約を結んで働く人 | 会社の指揮命令のもとで働き、給与を受け取る |
個人事業主でも、店舗を構えたり、スタッフを雇ったりしていれば、ガイドラインのフリーランスには当たりません。逆に、フリーランスでも法人化していれば個人事業主ではありません。
2.1 業務委託はフリーランスの「契約の形」
ガイドラインの別紙は、事業者との業務委託契約(請負契約や準委任契約)で働く人をフリーランスに含めています。消費者を相手にサービスを販売する人も同じです。
業務委託は、フリーランスが仕事を受けるときの代表的な契約の形です。フリーランスそのものを指す言葉ではない点に注意しましょう。
2.2 雇用契約で働く場面はフリーランスではない
同じ別紙では、フリーランスの人が別に雇用契約で働く場合、その雇用主との関係ではフリーランスとしないとされています。
また、契約の名前が業務委託でも、実質的に発注者の指揮命令を受けて働いている場合などがあります。その場合は「雇用」に当たり、労働関係法令が適用されるとされています。
働き方の実態で判断される点を覚えておきましょう。
3.フリーランスは何人いる?統計で見る働き方
総務省の令和4年就業構造基本調査では、フリーランスの人数が基幹統計として初めて調べられました。この調査は、フリーランスの定義をガイドラインに準拠させています。
結果は次のとおりです。
- 本業がフリーランスの人:209万人(有業者の3.1%)
- 副業のみフリーランスの人:約48万人
- フリーランスの合計:約257万人
出典:総務省統計局 統計Today No.197「基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方~令和4年就業構造基本調査の結果から~」(PDF)
3.1 フリーランスを選んだ理由の1位は「専門的な技能等を生かせるから」
同じ資料では、本業がフリーランスの人が今の働き方を選んだ主な理由も示されています。最も多いのは「専門的な技能等を生かせるから」で32.5%でした。
次いで「自分の都合のよい時間に働きたいから」が29.5%です。「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由は3.5%にとどまっています。
専門性を生かして働く先生業は、まさにこの「技能を生かす」タイプのフリーランスといえます。
3.2 「462万人」は別の調査の数字
ニュースなどで目にする「フリーランス462万人」は、内閣官房の「フリーランス実態調査結果」(令和2年5月)などにもとづく試算です。調査の方法が違うため、209万人とは単純に比べられません。
4.先生業(士業・コンサル・講師・コーチ)はフリーランスに当たる?
ここからは、先生業の場合に当てはめて考えます。結論からいうと、事務所やスタッフを持たずに一人で働く先生業は、ガイドラインのフリーランスに当たると考えられます。
4.1 コンサル・講師・コーチ
コンサルタントや研修講師は、企業から業務委託を受けて働くことが多い職種です。従業員を使用していなければ、フリーランス法の特定受託事業者にも当たります。
コーチやカウンセラーのように、個人のお客様に直接サービスを提供する場合もあります。ガイドラインは、消費者を相手にサービスを販売する人もフリーランスに含めています。
4.2 士業
税理士や社労士などの士業も、自宅を拠点に一人で開業している場合は、ガイドラインの定義に当てはまります。
一方、専用の事務所を構えたり、補助者を雇ったりすると、定義の「実店舗がない」「雇人がいない」から外れます。また、事務所に勤務している士業は雇用契約で働いているため、フリーランスではありません。
4.3 会社員の副業
会社員として働きながら、週末に講師やコンサルの仕事を受ける人もいます。統計の「副業のみフリーランス」約48万人は、こうした人を含む数字です。
ただし、会社での仕事は雇用契約にもとづくため、会社との関係ではフリーランスではありません。副業で受けている仕事の部分が、フリーランスとしての働き方になります。
5.先生業フリーランスの働き方|仕事の受け方は3つ
先生業のフリーランスは、仕事の受け方によって収入の形が変わります。代表的なのは次の3つです。
| 仕事の受け方 | 先生業の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 企業からの業務委託 | 企業研修の講師、顧問契約、プロジェクト型のコンサル | 単価が大きく、継続しやすい |
| 個人向けサービス | コーチング、カウンセリング、個別相談 | お客様一人ひとりと深く関われる |
| 自分で主催する講座 | セミナー、連続講座、オンライン講座 | 一度に複数の人へ提供できる |
どれか1つに絞る必要はありません。たとえば、業務委託で生活の土台を作りながら、自分の講座を育てるという組み合わせもあります。
反対に、1社からの業務委託だけに頼っていると、その取引が終わったときに収入が一気に途切れるおそれがあります。収入の柱を複数持つ意識が大切です。
6.フリーランスのメリットと注意点
フリーランスには、会社員にはない自由がある一方で、自分で引き受ける責任も増えます。両方を知ったうえで判断しましょう。
6.1 メリット|専門性を生かし、働き方を自分で決められる
統計でも上位の理由だったように、フリーランスの大きなメリットは専門的な技能を生かせることと、働く時間を自分で決められることです。
誰に、どんなサービスを、いくらで提供するかも自分で決められます。先生業なら、得意な分野や支援したい相手に絞って仕事をつくれます。
6.2 注意点|収入・保険・契約を自分で管理する
一方で、会社員のように毎月決まった給与があるわけではありません。仕事が途切れれば、その月の収入も減ります。
税金の申告や年金・健康保険の手続きも、自分で行う必要があります。具体的な手続きは、7章でまとめます。
取引先との契約にも注意が必要です。口約束のまま仕事を始めると、報酬や納期をめぐるトラブルにつながりかねません。
6.3 フリーランス法で守られること
フリーランス法では、特定受託事業者に業務委託をした事業者に義務を課しています。まず、業務の内容や報酬の額、支払期日などを書面や電磁的方法で明示する義務です。
従業員を使用する発注者など(特定業務委託事業者)には、さらに義務があります。たとえば、成果物などを受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を決め、それまでに報酬を支払わなければなりません。
先生業は、仕事を受ける側にも、外注する側にもなります。
7.フリーランスの始め方|先生業が独立する5ステップ
先生業がフリーランスとして働き始めるまでの流れを、5つのステップにまとめました。
- 専門分野と「誰に何を」を決める
- 副業や小さな仕事で試す
- 開業届と青色申告承認申請書を出す
- 年金と健康保険を切り替える
- 契約の形と集客の仕組みを整える

7.1 専門分野と「誰に何を」を決める
最初に決めたいのは、自分の専門分野と、誰のどんな悩みを解決するかです。ここがあいまいなままだと、自己紹介も、サービスの説明もぼやけてしまいます。
フリーランスの先生業は、「何ができるか」より「誰の何を解決するか」で選ばれます。
7.2 副業や小さな仕事で試す
会社員の方は、いきなり退職せず、副業で小さく試すのも一つの方法です。実際にお客様からお金をいただく経験は、独立の判断材料になります。
ただし、副業を始める前に、勤務先の就業規則で副業が認められているかを確認しましょう。
7.3 開業届と青色申告承認申請書を出す
個人で事業を始めたら、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を出します。提出期限は、事業を始めた年分の確定申告期限までです。
青色申告をしたい場合は、「所得税の青色申告承認申請書」も必要です。1月16日以降に開業した場合は、開業日から2か月以内が期限になります。
同じページでは、インボイスを発行する事業者になる場合の「適格請求書発行事業者の登録申請書」なども案内されています。
7.4 年金と健康保険を切り替える
会社を辞めてフリーランスになると、年金と健康保険の手続きも自分で行います。日本年金機構は、会社を退職して自営業者などになった場合、国民年金の第1号被保険者の手続きが必要だと案内しています。
健康保険は、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者のいずれかに加入する手続きが必要です。保険料や条件が違うため、比べてから選びましょう。
7.5 契約の形と集客の仕組みを整える
仕事を受けるときは、業務の内容や報酬、支払期日を書面やメールで残しましょう。自分から条件を示せるように、見積書や契約書のひな形を用意しておくと安心です。
そして、手続き以上に大切なのが、仕事の依頼が続く仕組みづくりです。独立してから集客を考えるのではなく、独立前から見込み客との接点をつくっておくと、スタート後の不安が小さくなります。
先生業ならではの集客の考え方は、志師塾のAI時代の先生業Web集客セミナーで扱っています。AIを活用して、集客にかかる時間を減らす方法も解説しています。
8.志師塾卒業生の事例|コーチ・トレーナーとして独立した2人
ここでは、フリーランスの先生業として独立し、仕事の受け方を工夫している志師塾の卒業生を2人紹介します。
8.1 プロコーチ・兼若勇基さん|自己紹介を磨き、入塾後5か月で売上700万円
兼若勇基さんは、経営コンサルティング会社を退職したあと、コーチ資格を取得して独立し、専業のプロコーチになりました。独立当初は、新規のお客様を見つけることに追われていました。
志師塾では自身のリブランディングに取り組み、サービスを届けたい人に向けた言葉が洗練されました。その結果、口コミでの紹介が増えました。
講座で作った「1分間自己紹介」も、コミュニティでの紹介や短いプレゼンの場で生きています。体験サービスへの誘導が増え、受注率が大きく上がりました。
さらに、オプションとして作った営業手法の動画講座も好評で、志師塾入塾後わずか5か月で700万円の売上を達成されました。2023年1月には、ミレニアル世代のリーダーに向けた「リーダーズマインドスクール」を開講しています。
【卒業生インタビュー】クライアントの本音を引き出し、理想の生き方と社会を創る ~プロコーチ 兼若勇基さん~
8.2 言語化トレーナー・山内麻衣さん|業務委託と自分の講座の二本柱
山内麻衣さんは、外資系や日系大手企業で人事を経験したあと、会社を退職して起業しました。起業当初は「何から始めていいのかわからない」状態でした。
志師塾の自己棚卸で、自分が心からやりたいことを掘り下げ、経営者向けの「言語化トレーニング」という事業にたどり着きました。講座は3期開催し、累計10名の受講生を獲得されました。
生計を支えるために、大手企業向けの人事の業務委託も並行しています。この契約は、志師塾で学んだ交渉のスキルで当初の提示から引き上げ、会社員時代の水準以上で続いています。
【成功事例】個人や企業の潜在的な力を引き出す専門家 ~言語化トレーナー 山内麻衣さん~
9.フリーランスに関するよくある質問
9.1 フリーランスになるのに資格や届出は必要ですか?
フリーランスは法令上の用語ではなく、フリーランスという資格や登録制度があるわけではありません。ただし、個人で事業を始めたら、税務署への開業届などの手続きが必要です。
士業のように、業務を行うために資格や登録が必要な仕事もあります。届出の期限は、7.3で挙げた国税庁のページで確認できます。
9.2 フリーランスと業務委託は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。フリーランスは働き方を指し、業務委託は仕事を受けるときの契約の形を指します。
ガイドラインでは、業務委託契約(請負契約や準委任契約)で働く人をフリーランスに含めています。消費者にサービスを販売する人も含まれます。
9.3 会社員の副業でもフリーランスといえますか?
副業で受けている仕事については、フリーランスとしての働き方といえます。総務省の統計でも、副業のみフリーランスの人は約48万人とされています。
ただし、勤務先との関係は雇用契約なので、会社の仕事はフリーランスには当たりません。
9.4 一人で会社を作ってもフリーランスですか?
ガイドラインの定義には「一人社長」が含まれているため、働き方としてはフリーランスに当たります。
フリーランス法でも、代表者1人以外に役員がなく、従業員を使用しない法人は、特定受託事業者に含まれます。
10.まとめ
フリーランスとは何か、先生業の場合の働き方と始め方を振り返ります。
- フリーランスとは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長で、自分のスキルで収入を得る人
- フリーランスは働き方、個人事業主は事業の形態、業務委託は契約の形を表す
- 本業がフリーランスの人は209万人。選んだ理由の1位は「専門的な技能等を生かせるから」
- 先生業の仕事の受け方は、業務委託・個人向けサービス・自主講座の3つ
- 開業届や青色申告、年金・健康保険の手続きは自分で行う
フリーランスとして長く働くには、専門性を「誰の何を解決するか」という形にして、仕事が続く仕組みを作ることが欠かせません。
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