商圏人口5万人の町にも、事業所はおよそ2,000あります。月商100万円に必要なのは、月5万円の顧問契約が20社。つまり商圏のおよそ1%です。
「地方だから食べていけない」という話は、ほとんどの場合、人口の問題ではありません。母数ではなく、1件あたりの単価と、翌月も続く仕組みの話です。
この記事では、地方で独立開業する先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師)に向けて、商圏人口から売上を逆算する考え方、地方開業でつまずく4つのパターン、そして商圏5万人で月100万円をつくる5つの型を解説します。
志師塾は、先生業専門のビジネススクールとして3,200名を超える方の顧客獲得を支援してきました(実数3,295名・2026年8月時点)。卒業生は都市部だけでなく、地方都市・郊外で開業している方も多数います。あわせて、総務省の経済センサスや中小企業庁の公表データなど、公的統計も根拠として使います。
読み終えるころには、「自分の商圏で、どの単価のどの商品を、何件取れば目標に届くのか」が数字で見えているはずです。まずは、地方開業が不利だという前提そのものを、数字で分解していきます。
ただ、母数が足りていると分かっても、次に残るのは「その1%の人に、どうやって自分を見つけてもらうか」です。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、商圏に左右されない専門性の伝え方と、集客に取り組む順番を解説しています。
地方でも「他の先生でもいいや」と言われない、言葉のつくり方が分かります
地方・都市を問わず、先生業が選ばれるかどうかは「他の先生でもいいや」と言われない理由を持っているかで決まります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで、その組み立て方をご覧ください。
1. 地方開業は本当に不利なのか|商圏5万人の市場を数字で分解する

地方開業とは、都市部に比べて商圏人口が少ない地域で事務所やサロンを構え、その地域を主な顧客基盤として事業を営むことです。地方開業の不安はほぼ例外なく「顧客の数が足りないのではないか」に集約されます。そこで最初に、商圏の母数を数字で押さえます。
1.1 商圏5万人には、事業所がおよそ2,000ある
総務省・経済産業省の令和3年経済センサス-活動調査(確報)によると、日本全国の民営事業所数は515万6,063事業所、企業等の数は368万4,049(いずれも2021年6月1日現在)です。
これを総人口(約1億2,500万人)で機械的に割ると、人口1万人あたりの事業所数は約410、企業等は約295という概算になります。地域差はありますが、全国平均で割った目安としてはこうなります。
| 商圏人口 | 事業所数(概算) | 企業等の数(概算) |
|---|---|---|
| 3万人 | 約1,200 | 約880 |
| 5万人 | 約2,050 | 約1,470 |
| 10万人 | 約4,100 | 約2,950 |
| 20万人 | 約8,200 | 約5,900 |
※経済センサス(令和3年6月1日現在)の全国値を総人口で割った概算値です。実際の数は産業構造や周辺市町村からの流入で上下しますので、ご自身の商圏は後述のとおり市町村別データで確認してください。
個人顧客が対象の場合は、さらに母数が大きくなります。商圏5万人のうち、たとえば「60代以上で持ち家があり、相続を意識し始めた層」が数千人規模で存在します。
1.2 地方開業で月商100万円に必要なのは、商圏の約1%
月商100万円=年商1,200万円を、単価と件数に分解してみます。志師塾の見方は「単価×件数×継続期間」。この3つのどれを動かすかで、必要な顧客数はまったく変わります。
| 組み立て方 | 必要な件数 | 商圏5万人に対する比率 |
|---|---|---|
| 月額3万円の顧問 | 34社 | 事業所の約1.7% |
| 月額5万円の顧問 | 20社 | 事業所の約1.0% |
| 月額10万円の顧問 | 10社 | 事業所の約0.5% |
| 月額15万円の顧問 | 7社 | 事業所の約0.3% |
| 単価20万円のスポット案件 | 月5件(年60件) | |
| 単価30万円の講座 | 年40名 |
月額15万円の財務顧問を7社持てば、それだけで月商100万円を超えます。志師塾の受講生には、財務知識ゼロの状態から始めて月額15万円の顧問を8件獲得し、開業1年目で年商1,200万円超、顧問更新率100%という方もいます。本人が言うには「深い財務知識よりも、経営者に寄り添う姿勢があれば大丈夫」でした。
ここで押さえておきたいのは、月商100万円は商圏の1%前後で届くという事実です。商圏5万人は「少なすぎる」のではありません。1%を取りに行く設計になっていないだけです。
1.3 顧客が薄い地域は、専門家も薄い
地方の商圏を語るとき、需要側だけを見ると見落とすものがあります。供給側も同じように薄いという事実です。
弁護士・税理士・社会保険労務士といった専門家は、東京・大阪など大都市圏への集中が顕著です。裁判所の支部管轄区域に登録弁護士が0人または1人しかいない「弁護士ゼロ・ワン地域」という言葉が存在するほど、地方の専門家の密度は低くなっています。
これは、地方開業の先生業にとっては追い風です。都市部で「相続に強い行政書士」と名乗っても検索結果の何十番目にしか出てきませんが、商圏5万人の地域で同じことを名乗れば、そのポジションは実質的に一人勝ちになります。志師塾ではこれを尖んがりポジショニングと呼んでいますが、尖らせる難易度は地方のほうが低いのです。
さらに、支援ニーズは確実に存在します。中小企業庁の集計では、2021年6月時点の中小企業数は336.5万者。また、国が設置する中小企業の無料経営相談所「よろず支援拠点」では、令和3年度の全国相談対応件数が458,440件に達しています(財務省の予算執行調査資料より)。相談内容の多くは売上拡大と経営改善です。
つまり、地方にも相談したいことは山積みで、相談を受ける人が足りていない。この構図を自分の商圏で確かめることが、地方開業の出発点になります。
1.4 自分の商圏の数字は、市町村別データで確認する
概算は目安にすぎません。自分の商圏の実数は、次の3つで確認できます。
- 事業所数・産業構成:e-Statの経済センサス市町村別集計。製造業が多いのか、建設業が多いのか、小売・飲食が多いのかで、売れる商品が変わります
- 人口構成:総務省「住民基本台帳に基づく人口」。高齢化率が高ければ、相続・終活・事業承継のニーズが厚い
- 開業・廃業の動き:地域の信用金庫・商工会議所が出す景況調査。創業支援・補助金のニーズが読めます
この作業を志師塾では「外部環境:調査」と呼び、自己棚卸しで整理した自分の強み(内部環境)を、どの機会に投入するかを決める材料にします。強みを棚卸ししただけでは商品になりません。その強みを、自分の商圏に実在する悩みへ投入して初めて商品になります。
2. 地方開業でつまずく4つのパターン

数字の上では届くはずの月商100万円に届かない。地方開業でこうなるとき、原因はだいたい次の4つに絞られます。いずれも「人口が少ないから」とは無関係です。
2.1 地元の相場に合わせて値付けしてしまう
最も多いのがこれです。「この地域で月5万円の顧問料は高い」「東京と違って、そんな単価は通らない」。こうして自分で天井を作ってしまいます。
志師塾が繰り返し伝えているのは、単価を決めているのは腕ではなく、小人(=ターゲット)の設定だということです。象徴的なのが、箏の演奏家が「箏回想士」というポジションへ転換した例です。音楽療法として福祉施設で演奏していたときの時給は800円。ところが、施設側の課題設定を変え、高齢者を「社会的弱者」ではなく「ニコッと笑っただけで周囲が笑顔になる存在」と再定義したところ、1回30万円の仕事になりました。技術は何も変えていません。変えたのは誰のどの悩みに当てるかだけです。
同じ構造は地方開業にも当てはまります。「この地域の社長」とひとまとめに考えると相場に引きずられますが、「後継者が決まっていない、従業員20名規模の製造業の社長」まで絞れば、その悩みの切迫度に応じた価格が成立します。
2.2 「なんでもやります」で何屋か分からなくなる
商圏が小さいと、仕事を取りこぼしたくない心理が働きます。結果として「地域のことなら何でもご相談ください」になる。これは志師塾が最も警戒する状態です。
「なんでもやります」は、「何屋さんか分からない」と同じです。そして何屋か分からない先生は、紹介されません。紹介とは「この件ならあの先生」と誰かの頭の中で検索されることなので、検索ワードがない人は検索結果に出てこないのです。
志師塾代表の五十嵐も、中小企業診断士として開業した当初は資格名を肩書にして「まったく選ばれなかった」経験があります。経営コンサルタント→研修講師→ITコンサルタント→Webマーケティングコンサルタントと、開業1年で肩書を変え続けて、ようやく食えるようになりました。資格名や職業名をそのまま肩書にしても、「他の先生でもいいや」と言われるだけです。
2.3 ガチ時給が下がり続ける「セルフブラック」
3つめは、売上は立っているのに手元に残らず、時間もないパターンです。志師塾では、客前に立っている時間だけでなく、営業・移動・事務処理も含めた正味の時給をガチ時給と呼んでいます。
地方開業はここが落とし穴になりやすい。訪問に片道1時間かかる顧客を、月1回3万円で支援すると、移動2時間+訪問2時間+資料準備2時間で、ガチ時給は5,000円です。これを10社抱えると、売上30万円のために月60時間が消えます。
五十嵐自身、年商1,000万円の頃は月商約80万円に対して、労働時間は月400時間超(多い月は500時間)。400時間で割ると、ガチ時給は約2,000円でした。本人の言葉を借りればセルフブラックです。ここから抜け出すきっかけになったのが、1対1の支援を講座化してガチ時給を約10倍(2,000円→20,000円)にしたことでした。
地方開業なら、移動時間の設計はもっと重要になります。訪問の価値が高い仕事だけ訪問し、それ以外はオンラインに寄せる。この線引きができているかどうかで、同じ売上でも残る時間がまったく変わります。
2.4 紹介が止まったときに、打つ手がない
地方開業の初期は、前職の人脈や地縁で仕事が回ることがあります。問題は、それが尽きたときです。志師塾が支援してきた中にも、開業3か月は紹介頼みで年商500万円だったものの、サラリーマン時代の人脈が尽きたところから集客を組み立て直し、1年目で年商3,000万円まで持っていった法人向けコンサルタントがいます。
紹介は強力ですが、自分で蛇口をひねれない集客経路です。紹介が回っているうちに、自分で動かせる経路を2つ3つ作っておく。これが地方開業の生命線になります。
3. 商圏5万人で月100万円をつくる売上設計

ここからは設計の話に入ります。地方開業で月商100万円を安定させるには、商品の並べ方そのものを変える必要があります。
3.1 高額商品の3条件を、自分の商圏に当てる
志師塾では、高額商品が成立する条件を3つに整理しています。
- 強いニーズ・悩みが存在する(「なんとなくあればいいかな」程度では高額化できない)
- 高額を支払える能力がある(支払余力のない相手を狙っても高単価は成立しない)
- 競合に勝てる分野である
高額商品がないと、先生ビジネスは少しずつボランティア化していきます。理想の顧客を選ぶときの第一基準は「あなたのサービスにお金を払えるか」です。
商圏5万人でこの3条件に当てはまりやすいのは、社長の3大お悩み(ヒト・カネ・売上)に直結する領域です。具体的には、採用・定着、資金繰り・財務、事業承継、販路開拓、補助金。いずれもすでにお金が動いている領域であり、だから単価が立ちます。
3.2 法人開拓は「すでに払っているお金」に乗る
地方の法人開拓でよくある失敗は、いきなり顧問契約を提案することです。顧問契約は「新しい予算を作ってもらう」行為なので、ハードルが高くなります。
志師塾が勧めるのは、業務特化のドアノック商品から入る方法です。鉄則は「お客さんがすでに払っているお金(=原資)に乗っかる」こと。
たとえば人材採用です。求人広告費・人材紹介手数料として、すでに支出が発生しています。ここに採用支援というドアノック商品で入れば、新規予算の説明が不要になります。そして採用支援から、社内研修の講師依頼、顧問契約、人事制度コンサルティングへと受注が連鎖していきます。実際、採用支援を軸にした支援者で採用成功率94%・支援実績500社以上という実績を積んでいる方もいます。
ちなみに人手不足を感じる企業の割合は、コロナ直後の29%から2023年には約52%へと、1.8倍に増えました。人口減少が先に進む地方では、この課題はより切実です。
3.3 フロー型とストック型を5:5で組む
「来月、売上が上がるかな…」という不安が消えないのは、商品がフロー型(スポット型)だけで構成されているからです。
| 種類 | 特徴 | 例(地方開業) |
|---|---|---|
| フロー型 (ボーナス) |
高額だが安定しない | 許認可申請、補助金申請支援、就業規則の整備、事業承継の設計、単発研修 |
| ストック型 (毎月の給料) |
低額だが安定継続 | 月額顧問、月1回の社内勉強会、会員制サービス、オンラインスクール |
目安はフロー型:ストック型=5:5です。ストック型が半分あれば、月初の時点で売上の半分が見えている状態になります。
ストック型は、必ずしも訪問を伴う必要はありません。志師塾自身、既存コンテンツを使った月額3,650円の動画クラスを立ち上げたところ、1年で会員約90名・年間利益約331万円になりました。投下時間は配信作業などで約15時間です。こども発達支援分野の専門家が月額3,000円のオンラインスクールを立ち上げ、1年で会員400名を超えた例もあります。
地方開業であっても、ストック型の設計を間違えなければ、商圏の外から会員を集めることができます。
3.4 既存顧客からの受注コストは、新規の5分の1
「新規集客に疲れたなぁ」と感じ始めたら、商品の方を見直すタイミングです。
既存顧客からの受注にかかるコストは、新規顧客獲得コストの約5分の1とされています。リピート商品を設計すると、生産性(自分の時給・効率性)は3倍くらいに上がります。商圏が限られる地方開業では、この発想がとくに効きます。商圏の1%を取ったら、次は同じ1%に2つ目・3つ目を売るのです。
そのために有効なのが成功ステップ別に商品をつくるという考え方です。たとえば採用支援で入った顧客には、次に定着(評価制度・就業規則)、その次に育成(研修)、さらに次に承継(事業承継)という順で、顧客の成長段階に沿った商品を並べます。
ここまでで、商圏5万人でも月商100万円に届く算段は見えたと思います。残る問題は、その20社・7社とどうやって出会うかです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、商圏の大きさに関係なく機能する集客の順番を、先生業の実例で解説しています。先生業のためのWeb集客セミナーの内容を見てみる
4. 地方開業の勝ち筋5つの型

ここまでの内容を、実行の型として5つに整理します。商圏5万人で月商100万円を目指すなら、この順番で組み立てるのが最短です。
4.1 型1:業種特化×業務特化で、商圏内のシェアを取る
商圏が小さいほど、絞り込みが効きます。絞るほど「まさに自分向けだ」と相手の記憶に残るからです。
絞り方は2軸あります。業種特化(誰を支援するか)と業務特化(何を支援するか)です。
- 業種特化の例:建設業、運送業、介護事業所、農業法人、歯科医院、地場の製造業
- 業務特化の例:採用、評価制度、資金繰り、許認可、補助金、販路開拓
この2つを掛け合わせると「建設業の採用に強い社労士」「運送業の許認可と労務に強い行政書士」というポジションができます。商圏5万人なら、この掛け合わせを名乗る人は、まずいません。
参考になるのが「大家さん専門税理士」の例です。独立当初から業種を絞り込み、顧問先500件(新規はお断り中)、年間セミナー80回以上で2,000名が受講という規模になりました。興味深いのは、「相続税の専門家」とは打ち出さなかった点です。にもかかわらず、大家さんに特化したことで相続の相談がひっきりなしに来るようになりました。
4.2 型2:前工程にシフトして「最初に相談される人」になる
専門を深く掘るより、全体像を示す窓口になったほうが選ばれる場面があります。志師塾ではこれをコンダクター戦略と呼びます。オーケストラの指揮者のように、複数の専門家をまとめる立ち位置を取るという意味です。
相続・終活、事業承継のように専門家が複数絡む領域では、深い専門知識よりも「最初に相談される人」の価値が高くなります。「相続税の専門家」として戦えばレッドオーシャンですが、お客様がその前段階で悩んでいること(実家をどうするか、きょうだいでどう話し合うか、親にどう切り出すか)に特化すれば、比較されずに本命の仕事を受注できます。これが前工程へのシフトです。
地方ではこの戦略の効きがさらに強くなります。相続・終活の分野では、隣の専門家からの紹介が顧客獲得の9割を占めるケースもあるからです。窓口になれば、紹介の流れの上流に立てます。
4.3 型3:地上戦を先に固める(紹介・交流会・商工会)
志師塾は集客を空中戦(Web)と地上戦(紹介・交流会)に分け、先生業はまず地上戦から固めるべきだと伝えています。空中戦から入って手応えが出ないまま時間と広告費を使ってしまう人が多いからです。
地方開業なら、地上戦の優位性はさらに高まります。商工会議所、法人会、青年会議所、業種別の組合、地元金融機関。すでにそこに人が集まっている場があり、都市部より顔が覚えられやすく、紹介が回り始めるまでの距離が短い。
ただし、やり方を間違えると空振りします。詳しくは次の章で扱います。
4.4 型4:空中戦で、商圏の外から仕事を受ける
地上戦で地元の信用を作りながら、同時にWebで商圏の外へ広げる。この二層構造が、地方開業の売上の天井を外します。
オンライン前提の商品(オンライン顧問、オンライン講座、会員制サービス)を1つ持っておくと、商圏人口の制約そのものが外れます。志師塾の受講生には、Instagramを一から育てて開業6か月で月商100万円超を実現した方もいます。やり方は開業6か月で月商100万円を実現したInstagram集客のコツで詳しく紹介しています。
4.5 型5:ストック型とリピートを仕組みにする
最後が、第3章で触れた商品サービス群の設計です。地方開業は人間関係が濃いため、一度信頼を得れば継続率が高くなります。この特性を活かさないのは損です。
志師塾では、先生の成長段階を職人型先生(自分が動いて稼ぐ)とオーナー型先生(仕組みが稼ぐ)に分けています。年商3,000万円は、年商1,000万円の延長線上にはありません。同じモデルのまま月商50万円を100万円にしようとすると、忙しさが倍になるだけです。地方開業で移動時間という制約を抱えているなら、この転換はより早く必要になります。
5. 地方開業の集客は地上戦から|商圏5万人で紹介が回る順番

志師塾は集客を「見込み客を、目の前にお連れする行為」と定義しています。そして、①リストを集める ②関係性を築く ③目の前に来てもらう、の3ステップに分解します。言葉が曖昧だと思考が曖昧になり、行動も曖昧になるからです。
5.1 交流会で、最初から顧客獲得を狙わない
地方の交流会で成果が出ない人の共通点は、最初から顧客獲得を狙いすぎていることです。順番は、知ってもらい、信頼してもらい、そこで初めて紹介が出る。この順番を飛ばせません。
そして、交流会で信頼を得る最も良い方法は自分が紹介することです。GiveよりTakeが多い「クレクレ星人」になると、商圏の狭い地域では評判がすぐに回ります。逆に紹介する人として認識されれば、紹介は返ってきます。
志師塾の受講生には、交流会を研究して3つの交流会と7つの勉強会を主催するようになり、交流会だけでトータル1億円以上の利益、紹介で年間200件の契約を生んでいる方がいます。1回の交流会で5名の見込み客を獲得し、年間250名超を集め続けている講師もいます。鍵は参加者から主催者へのレベルアップです。
5.2 同業は、ライバルではなく市場を拡げる仲間
商圏が狭いと、同業を競合と見てしまいがちです。志師塾の見方は、まったく逆。同業は血で血を争うライバルではなく、市場を拡げる仲間です。
とくに先生業は隣の先生同士の相互紹介が最も強い集客経路になります。税理士から司法書士へ、行政書士から社労士へ、不動産業から税理士へ。業務特化して絞り込んでおくと、自分が受けない仕事が明確になるので、紹介が双方向に回り始めます。絞り込みは、受注機会を減らすのではなく紹介機会を増やす行為です。
5.3 顧客獲得型セミナーを、5~8人で小さく回す
「商圏5万人ではセミナーに人が集まらない」と考える方が多いのですが、志師塾の実測データは逆のことを示しています。
セミナーには3種類あります。自己満足型(講師の言いたいことだけ話す)、情報提供型(受講者の知りたいことだけ話す)、顧客獲得型(受講者を行動させるために話す)。仕事につながるのは最後の1つだけです。そして調査では、セミナーを顧客獲得プロセスに入れていた人は、そうでない人に比べて平均単価が170%高いという結果が出ています。
人数の設計も効きます。志師塾が2,917人の実証結果をもとに集計したところ、フロントセミナーの最適人数は5~8人でした。5~8人は、9~15人の1.4倍、16~25人の約2倍の成約率です。
つまり、商圏5万人で6人集まれば、それは最適な規模のセミナーです。人数が集まらないことを嘆く必要はまったくありません。情報提供型と顧客獲得型の決定的な違いは、先に「断られる理由」を洗い出して、セミナーという場で消し込んでいくかどうかです。
5.4 アナログ社長には、Webより郵送DM
地方の中小企業の社長に多いのが「Webはあまり見ないけれど、届いた郵送物はちゃんと見る」というタイプです。この層に対しては、郵送DMが有効に働きます。
郵送DMは参入している会社が少ないため、独占状態が生まれやすいという特徴があります。金もコネも実績もゼロの状態から6年間で法人1,000社超を新規開拓した例では、100社に送ると5社の社長とアポが取れるという手応えでした。商圏5万人なら対象企業は1,400社ほど(1.1の概算)。全部に送ることもできる規模です。
ポイントは決裁権者に直接届くことと、広告を「ラブレター」だと考えることです。宣伝したいことをそのまま書くと「あぁ、売込みね」でゴミ箱一直線になります。小人さん(=理想の顧客)にラブレターを書くように、相手の悩みから書き始めてください。
6. 地方開業でもWebで商圏を広げる|空中戦の設計

地上戦が回り始めたら、空中戦を重ねます。地方開業のWeb集客には、都市部にはない有利さがあります。
6.1 地名キーワードは、競合がそもそも薄い
「相続 相談」では全国の事務所と競合しますが、「○○市 相続 相談」なら競合数が一桁になることも珍しくありません。供給が薄い地域では、検索でも上位を取りやすい。これは地方開業の構造的なメリットです。
先生業は名前がブランドなので、交流会で名刺を渡した相手は、ほぼ確実にあなたの名前をGoogleで検索します。そこで「この先生、本当に大丈夫かな…」と思われないだけでも、地上戦の歩留まりが変わります。
6.2 ホームページの反応が出ない原因は、デザインではなく言葉
ホームページを作り直しても反応が出ない場合、原因はたいていデザインではなく言葉です。
志師塾が最初に作ったホームページのキャッチコピーは「私たちは、日本を元気にする専門家集団」でした。4年間運用して、問い合わせは0件。これを「先生業が最短90日で新規顧客を2倍にする7つの能力」に変えて、流れが変わりました。
ホームページには2種類あります。自己紹介型(自分が何者かを説明する)と問題解決型(相手の悩みの解決先だと分かる)です。地方開業で「地域密着」「誠実に対応します」と書いてあるだけのサイトは、前者です。Webの世界は3秒で決まります。読むか、読まないか。実際の作り方は問い合わせ0件から月10件へ変えた集客サイトの勝ちパターンで解説しています。
6.3 AIは「書き手」ではなく「聞き手」にする
発信を続けるのがしんどいからAIに書かせる。これが、かえって反応を落とします。
AIが書く文章は、世の中にすでにある情報の平均値です。二次情報の寄せ集めなので、読んでも「で、この人に相談したい」とはなりません。刺さるのは、あなたにしか書けない一次情報、つまり現場での経験・失敗・気づきです。
だからAIを「書き手」ではなく「聞き手」にする。AIに考えさせるのではなく、あなたの中身を引き出させて、整えてもらう。地方開業の先生業であれば、その地域の産業構造や経営者の悩み方という、検索しても出てこない現場智を持っています。そこが勝負どころです。
なお、地方企業のデジタル化ニーズは確実に伸びています。日本政策金融公庫の調査(2025年5月公表)では、デジタル化に「かなり積極的+積極的」と答えた企業が43.6%、AIについては「導入予定」が17.8%で全ツール中最多でした。支援する側にとっては、入り口が増えているということです。
6.4 商圏の外から受けるなら、商品側を先に変える
オンラインで商圏外の仕事を受けるには、商品が「訪問前提」から外れている必要があります。
- 成果物が明確(診断レポート、制度設計書、計画書など)
- 進行がオンラインで完結する(面談、資料共有、チャット)
- 期間と回数が決まっている
志師塾では商品化の順番を「創って・売って・作る」と教えています。コンセプトを創り、売れるか確かめてから、資料を作る。売れるか分からないのに研修資料を大量に作るのは、順番が逆です。
7. 志師塾卒業生の事例|限られた商圏で成果を出した3名
ここからは、実際に商圏や条件の制約がある中で成果を出した志師塾卒業生の例を紹介します。
7.1 宅建士・松本直之さん|相続・終活に特化して5か月で売上1,000万円
不動産と終活のお悩み解決パートナーとして活動する松本直之さんは、2020年6月に相続・終活の支援をしたいと考えて独立しました。ところが集客と売上がまったく立たず、最初の3か月の売上は約20万円でした。
松本さんが志師塾で学んで痛感したのは、「選ばれる理由が明確でないと売れない」ということでした。本人の言葉を借りれば、「ただ相続のコンサルやりますよ、不動産会社やりますよ。これでは難しいですよね」。さらに、自分の商品を押し付ける「売り手脳」だったことに気づき、買い手の立場から求められる商品設計へ組み替えていきます。
結果、相続・終活に特化した不動産業というポジションを確立し、入塾から5か月で売上約1,000万円に到達しました。本人が成果の理由として挙げているのが「紹介がすごく頂けるようになった」こと。前章で触れた「絞り込みが紹介機会を増やす」が、そのまま起きた例です。
→ 宅建士が5か月で売上1,000万円|相続・終活に特化して紹介が倍増(インタビュー全文)
7.2 社会保険労務士・塚元雄平さん|「人事部立ち上げ支援」という商品をつくる
ネクストステップ社会保険労務士事務所の所長を務める塚元雄平さんは、社会保険労務士試験に10回挑戦して合格し、事務所で実務経験を積んだ後、30代で独立しました。
塚元さんが掲げているのは「働く人が定着する職場をつくる」という使命です。現在は製造業のグループ企業を顧問先に持ち、労務相談から労働基準監督署への対応まで支援しています。この顧問先は、前職時代の仕事ぶりを見ていた顧客から「直接、塚元さんにお願いしたい」と声をかけられて生まれたものでした。
志師塾での学びで最も苦労したのが3万字の自己棚卸しでした。そこから「人事部立ち上げ支援」という商品が形になります。対象は従業員50人以上で、採用や定着に課題を抱える企業。評価制度を作り直して離職率を下げ、社会保険料や退職金を整備し、助成金も活用しながら採用につなげる。制度を作って終わりではなく、企業の中に人事機能が根付くところまで支援する設計です。
これは第4章の「業種特化×業務特化」と「前工程へのシフト」が同時に効いている例です。手続き代行という後工程ではなく、「人事部をどう立ち上げるか」という前工程に立つことで、比較されない立ち位置ができています。
→ 「働く人が定着する職場」をつくる社会保険労務士・塚元雄平さん(インタビュー全文)
7.3 【別業種の参考例】パーソナルトレーナー・中谷圭太郎さん|店名と中身のズレを直して「勝ち筋」を見つける
先生業とは業種が異なりますが、商圏が物理的に限られる事業の例として参考になるのが、「ピラティス&コンディショニングスタジオhc-life」代表の中谷圭太郎さんです。中谷さんは現在、新規入会がキャンセル待ちとなっている人気スタジオの代表パーソナルトレーナーとして活躍されています。
中谷さんはスポーツジム時代に月間100件のパーソナルトレーニングを担当する人気トレーナーになりましたが、指名が増えるほどレッスンとマネジメント業務が膨らみ、長時間労働で体調を崩しました。前章の「ガチ時給」の話と重なる状況です。
2017年に自分のスタジオを開業。前職でWeb集客を担当していたため集客には自信があり、実際に入会は続きました。ところが課題は店名にありました。パーソナルトレーニングと聞いた顧客が期待するのは「筋トレ」。しかしスタジオにマシンはなく、姿勢改善やピラティスのメニューが中心。本人も「やっている内容と店名がズレていました」と振り返ります。
志師塾でとことん自己棚卸しに向き合い、4回目の正直で腹落ちしたビジネスの軸を見つけたことが転機になりました。言葉と中身を揃えることが、商圏の広さ以上に効くという例です。
→ 4度目の正直でビジネスの「勝ち筋」を見つけた整体×ピラティスのパーソナルトレーナー・中谷圭太郎さん(インタビュー全文)
3名に共通しているのは、商圏を広げたのではなく、言葉と商品を変えたという点です。あなたの商圏でも、同じ順番で変えられます。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、この「言葉と商品を変える」具体的な手順を、先生業の事例で解説しています。先生業のためのWeb集客セミナーの詳細を確認する
8. 地方開業に関するよくある質問
8.1 商圏人口が3万人を切る地域でも月100万円は可能ですか
可能です。第1章の概算では、商圏3万人で事業所は約1,200あります。月額15万円の顧問を7社持てば月商100万円を超えるので、必要なシェアは約0.6%です。ただし商圏が小さいほど、単価と継続期間の設計が効いてきます。件数で積む発想では苦しくなるので、高額商品の3条件に合う領域を選ぶことが前提になります。あわせて、オンラインで商圏外から受けられる商品を1つ用意してください。
8.2 地方では高い単価が通らないと言われます
「地域の相場」は、同じ商品を同じ相手に売っている人たちの間の相場です。ターゲットと提供価値を変えれば、相場の外に出られます。先生業のサービスは品質が分かりにくく、価格がその判断基準。だから志師塾は「価格アップ=サービス品質アップ」だと考えています。志師塾自身、最初の講座は12,000円でしたが、10年超で118.1万円になりました。値上げに合わせてサポートを厚くし、顧客の本気度も上がっています。
8.3 地方開業で、最初に取り組むべき集客は何ですか
紹介と交流会、つまり地上戦です。先生業の仕事獲得経路で最も多いのは人脈であり、Webから入って手応えが出ないまま時間を使う人が少なくありません。ただし交流会で最初から顧客獲得を狙わないこと。知ってもらい、信頼してもらい、そこで初めて紹介が出ます。地上戦が回り始めたら、空中戦を重ねてください。Webは大切ですが、Webが全てではありません。
8.4 都市部へ移った方が有利ではないですか
供給も集中しているため、必ずしも有利とは言えません。都市部は顧客数が多い反面、同業も多く、比較されやすい環境です。地方は顧客の密度が薄い一方で、専門家の密度も薄く、ポジションを取りやすい。さらに紹介が回りやすく、継続率も高くなる傾向があります。移動するより、商圏の中で尖らせるほうが早いのが実際です。
8.5 地方開業で法人の顧問契約を増やすにはどうすればよいですか
顧問契約を最初に提案しないことです。業務特化のドアノック商品から入り、すでに支出が発生している領域(採用、資金繰り、許認可、補助金)に乗る。そこで成果を出してから顧問へ移行します。採用支援をドアノック商品にした場合、セミナー講師の依頼、顧問契約、人事制度コンサルティング、研修へと受注が連鎖していく流れが作れます。
9. まとめ|商圏5万人でも、月100万円は手が届く
最後に、この記事の要点を整理します。
- 商圏5万人には、事業所がおよそ2,000ある(経済センサスの全国値からの概算)。母数は足りています
- 月商100万円に必要なのは、商圏の約1%。月額5万円の顧問20社、月額15万円の顧問なら7社です
- つまずく原因は人口ではなく、地元の相場に合わせた値付け・「なんでもやります」・ガチ時給の低下・自分で動かせない集客経路の4つ
- 高額商品には強いニーズ・支払能力・競合に勝てる分野の3条件が必要。法人開拓はすでに払っているお金に乗る
- 商品はフロー型:ストック型=5:5で組む。既存顧客からの受注コストは新規の5分の1
- 勝ち筋は5つ。業種特化×業務特化/前工程へのシフト(コンダクター戦略)/地上戦を固める/空中戦で商圏外へ/ストック型を仕組みにする
- 集客は地上戦が先。顧客獲得型セミナーは5~8人が最適で、商圏5万人でも十分に成立します
志師塾がずっと伝えているのは、売上は、感謝の総量であるという考え方です。商圏5万人の町にも、相談したい人は確実にいて、相談を受ける人が足りていません。その人たちに「他の先生でもいいや」ではなく「この先生の代わりはいない」と言ってもらえるかどうか。地方開業の勝ち負けは、ここで決まります。
とはいえ、自分の商圏で誰に何をどう届けるかを一人で決めるのは、思いのほか難しい作業です。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、商圏の大きさに左右されない「選ばれる理由」のつくり方と、地上戦から空中戦へつなぐ集客の順番を、先生業に絞って解説しています。
商圏を広げずに、「この先生の代わりはいない」と言われる
地方は顧客の密度が薄い一方で、専門家の密度も薄いため、尖らせる難易度はむしろ低くなります。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その尖らせ方と、地上戦から空中戦へつなぐ集客の順番を解説します。
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この記事について
この記事は、先生業専門のビジネススクール「志師塾」が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師といった先生業の顧客獲得を専門に支援し、これまで3,200名を超える方の独立開業・売上拡大に関わってきました(実数3,295名・2026年8月時点)。卒業生コミュニティには都市部から地方まで幅広い地域の先生業が参加しており、本記事の内容は、その支援現場で蓄積した知見と公的統計にもとづいています。