定年後に資格で月20万円。結論から言えば、これは十分に届く数字です。ただし「資格を取れば届く」ではありません。届く人と届かない人を分けているのは、取った資格の種類ではなく、開業する前に3つの条件を決めてあるかどうかです。
この記事では、65歳前後で資格を活かして開業し、毎月20万円の収入をつくるために必要な条件を、次の順番で解説します。
- 月20万円=年240万円という金額が、65歳開業にとってどのくらいの水準なのか
- 2026年4月の年金制度改正で、定年後の開業がどう有利になったのか
- 65歳開業を成立させる3条件(絞る/顧客の出どころ/固定費)
- 開業までの6か月ロードマップと、志師塾卒業生の実例
志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチといった「先生業」専門のビジネススクールとして、これまで3,295名(2026年8月時点)の顧客獲得を支援してきました。50代・60代で会社員から独立した方も少なくありません。この記事では、そこで見えてきた共通点と、年金・雇用に関する公的データを合わせて整理します。
読み終えるころには、「どの資格を取ろうか」ではなく「誰に・いくらで・何件売るのか」という順番で考えられるようになっているはずです。まずは、月20万円という金額の位置から確認していきましょう。
「月5万円の顧問を4社」と置けば、月20万円は机の上で成り立ちます。ただ、実際に詰まるのは、その4社がどこから来るのかのほうです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、売り込まずに依頼が来る導線の作り方を、先生業の事例で解説しています。
先生業が依頼を受けるまでの導線を、事例つきで持ち帰れます。
1. 定年後に資格で月20万円は現実的か|65歳開業の収入の目安

定年後に資格で月20万円とは、年商に直せば240万円です。会社員時代の年収と比べると小さく見えるかもしれません。ですが、開業したばかりの事業としては標準ゾーンの入口にあたります。夢物語でも、自虐でもない等身大の目標です。
1.1 月20万円は「単価×件数」に分解すると見え方が変わる
月20万円という数字をそのまま眺めていても、何をすればいいのかは見えてきません。やるべきことは単価と件数への分解です。
| 単価 | 必要な件数(月) | 仕事のイメージ |
|---|---|---|
| 3万円 | 7件 | 単発の手続き代行・書類作成 |
| 5万円 | 4件 | 許認可申請・就業規則の整備など |
| 10万円 | 2件 | まとまった案件・短期のコンサル |
| 月5万円の顧問 | 4社 | 継続契約(毎月の相談・訪問) |
同じ月20万円でも、必要な動き方はまったく違います。単価3万円で7件を毎月新しく集め続けるのと、月5万円の顧問を4社持つのとでは、営業の負荷が何倍も変わります。定年後の開業で狙いたいのは、言うまでもなく後者です。
1.2 60歳以上の開業は全体の6.4%|少数派だからこそ埋もれない
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表、有効回答2,165社)では、開業者に占める60歳以上の割合は6.4%でした(出典:日本政策金融公庫「2025年度新規開業実態調査」)。これは公庫の融資を受けて開業した人の構成なので、自己資金だけで始めた人は含まれていません。それでも、60代の開業が少数派であることは読み取れます。
少数派であることは、不利な材料に見えて実は追い風です。60代で開業する同業者は多くありません。同世代の経営者から「同じ年代で、話が早い人に頼みたい」と選ばれる場面は確実にあります。志師塾でも、60代で開業した方が、同世代の経営者の事業承継や相続の相談を受けて軌道に乗るケースをよく見ています。
1.3 「食える状態」の目安は月商50万円、その前段が月20万円
志師塾では、先生業として食べていける状態の一つの目安を月商50万円と置いています。定年後の月20万円は、年商にすると600万円。ここを越えると年商1,000万円が見えてきます。では、月20万円という水準はどう位置づけられるのか。これは生活の柱を年金に置いたうえで、事業を立ち上げる助走区間と考えるのが正確です。
助走区間の目的は2つあります。1つは収入。もう1つは実績と紹介元の蓄積です。月20万円を安定して回せるようになると、たいてい次の依頼が勝手に乗ってきます。そこから月30万円、月50万円へ伸びていく方が多いのは、新規開拓の負荷が下がるからです。
1.4 見落としがちな「ガチ時給」で検算する
志師塾では、営業時間や事務処理まで含めた実際の時間単価を「ガチ時給」と呼んでいます。お客様の前にいる時間だけで計算した時給は、たいてい実態と合いません。
たとえば月20万円を稼ぐのに、作業50時間・営業30時間・事務20時間で合計100時間かかっていたら、ガチ時給は2,000円です。志師塾代表の五十嵐も、年商1,000万円の時期は月400時間近く働いてガチ時給は約2,000円でした。定年後に時間を切り売りする働き方を選ぶと、体力が落ちた時点で売上も落ちます。だからこそ、最初から単価と件数の設計が要るわけです。先生業の年商と課題の関係は、先生業117名への年商別課題アンケートの結果でも整理しています。
2. 定年後の開業が有利になった3つの制度変化|年金と雇用のいま

定年後に働いて稼ぐことをためらわせる最大の理由は、「稼ぐと年金が減るのではないか」という不安です。この点について、2025年から2026年にかけて制度が大きく動きました。結論として、個人事業で開業する人にとって環境は明確に良くなっています。
2.1 在職老齢年金の基準額が月51万円から65万円へ(2026年4月)
在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら年金を受け取る場合に、収入が一定額を超えると年金の一部が止まる仕組みです。基準額は令和7年度が月51万円でしたが、令和7年年金制度改正法により令和8年(2026年)4月から月65万円に引き上げられました(出典:日本年金機構「在職老齢年金の見直し」)。
計算の形は変わっていません。基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超えた分の2分の1が、基本月額から支給停止されます。つまり、合計65万円に届かなければ年金は1円も減りません。
2.2 個人事業の所得は、そもそも在職老齢年金の判定に入らない
さらに重要な点があります。在職老齢年金の判定対象になるのは、厚生年金に加入して得る給与・賞与・役員報酬です。個人事業主として得た事業所得は、原則としてこの判定に含まれません。
定年後に資格で開業し、個人事業として月20万円を稼いだとしても、それが理由で年金が止まることは基本的にありません。これは「働くほど損」という前提が、個人事業なら構造的に外れるという話です。
ただし注意点があります。法人を設立して自分に役員報酬を出すと、厚生年金の被保険者となり判定の対象に戻ります。節税のために早めに法人化を考える方もいますが、年金との関係も含めて判断してください。制度の適用はご自身の加入状況で変わるため、具体的な金額は年金事務所や社会保険労務士に確認するのが確実です。
2.3 年金の繰下げ受給は70歳で42%増、75歳で84%増
月20万円を事業でつくれると、もう一つの選択肢が現実味を帯びます。年金の繰下げ受給です。
繰下げの増額率は1か月あたり0.7%。最大120か月(10年)繰り下げられるので、70歳まで待てば42%増、75歳まで待てば84%増になります(出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」)。しかも、この増額は一生続きます。
生活費の一部を事業収入でまかなえる人だけが、この選択肢を取れます。言い換えると、月20万円を稼ぐことは小遣い稼ぎではなく、年金の増額オプションを買う行為でもあるのです。
2.4 「会社に残る」側の条件は厳しくなっている
一方で、会社に残る選択の条件は良くなっていません。確認しておきたい変化が2つあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 高年齢雇用継続給付の縮小 | 60歳到達日が令和7年3月31日以前は賃金の最大15%だったが、令和7年4月1日以降に60歳に到達した人は最大10%へ縮小(出典:厚生労働省「高年齢雇用継続給付」) |
| 70歳までの就業確保措置 | 実施済みの企業は34.8%(厚生労働省「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」令和7年6月1日時点)。65歳までの雇用確保措置は99.9% |
65歳までは、ほぼすべての企業が受け皿を用意しています。しかし70歳まで働ける環境を整えている企業は3社に1社。多くの人にとって、65歳は「一度切れる」年齢です。切れたあとに何をするかを、切れる前に決めておけるかどうか。これが定年後の分かれ道になります。
3. 65歳開業の条件1|仕事を1つに絞り、単価×件数で月20万円を設計する

ここから本題の3条件です。1つ目は「絞る」。定年後の開業でいちばん多い失敗は、「これまでの経験を活かして、幅広くご相談に応じます」という案内で始めてしまうことです。
3.1 まずは「資格名を言わない自己紹介」をつくる
志師塾が開業前後の方に必ず伝えているのが、「資格名を言わない自己紹介」です。資格名は、あなたが何をできるかを説明しません。
志師塾代表の五十嵐も、中小企業診断士に合格して独立した当初は「中小企業診断士です」と名乗っていましたが、まったく選ばれませんでした。開業1年のあいだに経営コンサルタント、研修講師、ITコンサルタント、Webマーケティングコンサルタントと肩書を変え、ようやく仕事が回り始めたという経緯があります。
定年後の開業でも同じです。「行政書士です」ではなく「製造業の外国人材の受け入れ手続きを専門にしています」。「社会保険労務士です」ではなく「従業員50人前後の会社で、人事部の立ち上げをお手伝いしています」。言い方を変えるだけで、相手が「あ、それならあの会社に紹介できる」と思い出せる形になります。志師塾ではこれを先生ポジションの確立と呼んでいます。
3.2 絞ると、月20万円に必要な件数が数えられるようになる
絞ることの実務的な効果は、自分が追う件数が数えられるようになることです。
たとえば「建設業の許可申請」に絞ったとします。日本行政書士会連合会は会員向けに報酬額の統計調査を公表しており、業務区分ごとの相場が数百項目にわたって示されています。自分が受ける業務の相場がわかれば、「単価いくら×月何件で20万円」の式が立つ。式が立てば、その件数を集めるために誰に会うべきかも決まります。
逆に「幅広く対応します」のままだと、単価も件数も決まりません。決まらないので何から手をつければいいのか分からず、名刺交換の数だけが増えていきます。
3.3 絞るほど紹介が増えるという逆説
「絞ったら仕事の幅が狭まって、かえって食えなくなるのでは」と心配される方は多いです。実際には逆のことが起こります。
志師塾の卒業生で、宅地建物取引士の松本直之さんは、独立から3か月で売上が20万円程度という状態から、相続・終活に特化した不動産業というポジションを一つ作ったことで紹介が大きく増え、5か月で売上1,000万円に到達しました。本人の言葉を借りれば「ただ相続のコンサルやります、不動産会社やりますでは難しい」。絞ったからこそ、周囲が紹介しやすくなったわけです。
人は、思い出せる人にしか仕事を回せません。絞るのは選択肢を捨てる行為ではなく、相手の頭の中に一行で入る行為です。
3.4 やりがちな失敗|前職の肩書と「全部できます」
定年後の開業で起こりやすい失敗を2つ挙げます。
- 前職の肩書を持ち込む:「元◯◯株式会社 部長」は、相手にとって判断材料になりません。年下の経営者に対して上から物を言う印象を与えると、二度目の相談は来ません
- 経験の棚卸しを「できること」のリストで終える:できることの一覧ではなく、誰のどんな困りごとを解決してきたのかに書き換える必要があります
この「絞る」の作業は、一人でやると手が止まります。自分の経験は自分にとって当たり前すぎて、価値が見えないからです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、経験を顧客の困りごとの言葉に翻訳する手順を扱っています。先生業のためのWeb集客セミナーの内容を見る
4. 65歳開業の条件2|顧客の出どころを、資格を取る前に決めておく

2つ目の条件は「顧客の出どころ」です。シニア起業の失敗要因として繰り返し指摘されるのが、未経験分野への参入と集客の見通しのなさ。この2つは、顧客の出どころを決めていないことから生まれます。
4.1 未経験分野に飛び込まず、前職と地続きの領域を選ぶ
志師塾がはっきり伝えているのは、50代を超えてから未経験分野で勝負するのは分が悪いということです。50歳を越えて「これから新しい業界で一から人脈を作ります」というのは、残り時間に対して投資が重すぎます。
定年後の開業の強みは、30年以上かけて蓄えた業界知識と、名前を知っている人の多さにあります。その2つが効く場所を選ぶのが合理的です。経理で長く働いた人が財務の相談を受ける。工場の管理をしていた人なら、製造現場の改善がそのまま商品になります。人事にいた人なら、採用と定着の相談が来る。どれも、最初の数件が前職の縁から生まれます。
4.2 「お願いされて売れる」状態をつくる導線
志師塾では、売り込んで売るのではなく「お願いされて売れる」状態をつくることを土台に置いています。先生業は売り込みと最も相性が悪い商売です。先生に売り込まれると、相手は一歩引きます。
では、どうやって依頼が来る状態をつくるのか。順番はこうです。
- 教える(セミナー・勉強会・小冊子・ブログで、困りごとの解き方を先に渡す)
- 相談を受ける(個別相談で、その人の状況に合わせて整理する)
- 依頼される(「それ、お願いできますか」と言われる)
これが志師塾の言う「教えることで集客する」という考え方です。定年後の開業は、この導線と非常に相性が良い。長年の経験があるので、教える材料をすでに持っているからです。
4.3 紹介だけに頼る開業は、2年目に伸び悩む
一方で、紹介だけを前提にするのは危険です。前職の縁は、最初の1年はよく効きますが、2年目以降は細ります。相手も異動し、定年を迎えていくからです。
だからこそ、紹介に加えて自分で見込み客に出会える手段を1つは持っておく必要があります。志師塾の卒業生では、士業交流会を活用して5か月で売上1,000万円を達成した事例のように、人が集まる場を集客の入口として設計している方もいます。ブログやセミナーのようなWebの導線と、交流会のようなリアルの導線を、両方小さく回すのが堅実です。
4.4 開業前にやっておく「誰に会うか」のリスト化
資格の勉強をしながら、同時にやってほしいことが1つあります。開業したら最初に声をかける相手を、名前で30人書き出すことです。
元同僚、取引先の担当者、取引先の社長、同業の知り合い、地域のつながり。この30人の中に、見込み客ではなく「見込み客を紹介してくれそうな人」が何人いるかを数えてください。そこが3人以下なら、顧客の出どころがまだ決まっていないということです。資格の勉強より先に、そこを埋めるほうが成果に近づきます。
5. 65歳開業の条件3|固定費を月5万円以下に抑え、退職金を投下しない

3つ目の条件はお金の守りです。定年後の開業で致命傷になるのは、売上が立たないことではありません。売上が立たない期間に、固定費と初期投資が家計を削ることです。
5.1 退職金は事業に入れない
定年後の開業でいちばん多い後悔が、退職金を元手に店や設備を用意して、数か月で行き詰まるパターンです。退職金でカフェを開き、8か月で閉店したという事例が各種メディアで紹介されています。
資格を活かした先生業が定年後に向いているのは、まさにここです。在庫も設備も店舗も要りません。パソコンと電話と、自分の経験があれば始まります。退職金は老後の生活資金として手をつけず、事業は毎月のキャッシュフローの中で回す。これを原則にしてください。
5.2 月5万円以下で始める固定費の組み方
定年後の開業であれば、固定費は月5万円以下に収まります。目安を示します。
| 項目 | 月額の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 事務所 | 0円~1万円 | 自宅開業が基本。来客はレンタル会議室で足りる |
| ホームページ | 1,000円~3,000円 | サーバー+ドメイン。制作外注は売上が立ってから |
| 会費・会報 | 5,000円~2万円 | 資格の登録料・会費は資格によって差が大きい |
| 通信・ツール | 5,000円前後 | オンライン会議、会計ソフト、生成AIなど |
| 交通・交際 | 1万円~2万円 | 動く月と動かない月の差が大きい変動費 |
積み上げても月2万円台から5万円弱。動く月は交通・交際費を調整して5万円以内に収めます。
この水準なら、仕事が止まっても事業が家計を圧迫しません。固定費が低いことは、定年後の開業で最大の防具です。焦って安い仕事を取る必要がなくなり、価格競争に巻き込まれにくくなります。
5.3 小規模企業共済は「節税」には効くが「受取」には時間がかかる
開業後の節税策としてよく紹介されるのが小規模企業共済です。掛金は月1,000円から7万円まで、全額が所得控除になります。
ただし65歳開業の場合は注意が必要です。老齢給付を受けるには65歳以上かつ掛金の納付期間180か月(15年)以上という要件があります。65歳で加入すると、要件を満たすのは80歳です。任意解約では元本割れの可能性もあります。
小規模企業共済は「毎年の所得控除を取るための仕組み」として使うなら有効、「数年後に受け取る貯蓄」として期待すると噛み合わないということです。加入条件や給付の詳細は中小機構の案内と税理士に確認してください。
5.4 「創って・売って・作る」の順番を守る
お金を守るうえで、もう一つ大事なのが順番です。志師塾では事業の立ち上げを「創って・売って・作る」という順で考えます。
うまくいかない人は、売れるかどうか分からない段階で研修資料やツールを作り込みます。うまくいく人は、先にサービスの構想を創り(企画)、先に売って(受注)、それから必死で作る(納品物)。期日があれば人は作れます。順番を逆にすると、時間とお金が先に出ていき、売上が最後まで来ません。
定年後の開業は、時間こそ最大の資産です。作り込みに半年使うより、売りに半年使ったほうが早く立ち上がります。
6. 定年後の資格開業で選ばれやすい組み合わせ|資格迷子にならないために
どの資格を取るかは、3条件を決めたあとに考える話です。順番を間違えると「資格迷子」になります。志師塾では、資格を取り続けて使えないまま終わる状態を資格迷子・資格ジプシーと呼んでいます。
6.1 士業系|手続きという明確な入口がある
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士などは、依頼の入口が手続きとして明確です。「建設業の許可を取りたい」「就業規則を直したい」という形で相談が来るので、最初の案件を取りやすいのが利点です。
注意点は、手続きの代行だけだと単価が上がりにくいこと。月20万円を超えて伸ばすには、手続きを入口にして相談・顧問に接続する設計が必要になります。
6.2 コンサル・講師系|経験そのものが商品になる
中小企業診断士や、業界経験に基づくコンサルティング・企業研修は、定年後の経験と最も相性が良い領域です。会社員時代にやってきたことが、そのまま商品の中身になります。
中小企業診断協会の活動状況アンケートでは、年間100日以上コンサルティングに従事している層の約3分の2が売上501万円以上と報告されています。資格の有無より、稼働の設計が収入を決めていることが読み取れる数字です。定年後に週3日稼働でも、単価が設計できていれば月20万円は十分に射程に入ります。
6.3 コーチ・カウンセラー系|人間性で選ばれる領域
コーチングやカウンセリングは、資格が仕事を保証しない領域です。だからこそ「選ばれる理由」をどう作るかがすべてになります。
志師塾では、先生業は専門性と人間性の両輪で選ばれると伝えています。どれほど専門性が高くても人として信頼されなければ依頼は来ませんし、人柄が良くても専門が見えなければ相談されません。定年後の開業は、人生の経験値という面で人間性の側に強みがあります。足りないのはたいてい専門の見せ方のほうです。
6.4 資格を増やす前に、使い方を決める
資格を活かして先生ビジネスを始めた人の3年後の継続率は約30%と言われます。一方、志師塾が支援した方の3年後の生存率は96.4%でした。差は才能ではありません。
志師塾がくり返し伝えているのは、成功と失敗を分けるのは「誰でもできることを徹底的に実践したかどうか」だということです。資格を2つ目、3つ目と足す前に、いま持っている1つの使い方を決める。これが定年後の限られた時間を最も有効に使う方法です。
7. 定年後に資格で開業するまでの6か月ロードマップ

3条件を踏まえて、実際の進め方を時間軸で整理します。可能なら在職中に着手するのが理想です。収入があるうちは、判断を焦らずに済みます。
7.1 開業6~4か月前|経験の棚卸しと顧客の出どころの確認
やることは3つです。
- 経験の棚卸し:これまで解決してきた困りごとを、できるだけ具体的に書き出す。志師塾の受講生は、自己棚卸しで3万字近く書く方もいます
- 名前で30人リスト:開業したら最初に連絡する相手を実名で書く
- 資格名を言わない自己紹介の試作:一行で伝わる形にして、人に言ってみる
7.2 開業3~2か月前|サービスと価格を先に決める
この段階で、単価×件数で月20万円の式を立てます。「月5万円の顧問を4社」「10万円の案件を月2件」。どちらを狙うかで、やることが変わります。
同時に、価格を紙に書いて決めてしまってください。価格を決めずに相談を受けると、ほぼ確実に安く引き受けます。定年後だから安くてもいい、という発想は、相手にとっても判断しづらい材料になります。
7.3 開業1か月前~開業後1か月|教える材料を1つ用意する
「お願いされて売れる」導線をつくるために、教える材料を1つ用意します。小冊子(A4で10ページ程度)、60分のセミナー、ブログ記事5本。どれでも構いません。
大事なのは完成度ではなく、相手の困りごとに先に答えていることです。この材料が、名刺交換のあとに渡せる「売り込まない一手」になります。
7.4 開業後2~6か月|数字で振り返る指標を3つに絞る
開業後は、次の3つだけを毎月記録してください。
| 指標 | 見るポイント |
|---|---|
| 相談件数 | 月に何件、具体的な相談を受けたか(名刺交換の数ではない) |
| 受注率 | 相談のうち何件が依頼になったか。低いなら価格か伝え方の問題 |
| ガチ時給 | 売上÷(作業+営業+事務の合計時間)。下がり続けているなら設計の見直し |
この3つが毎月そろっていれば、何を直すべきかが自分で判断できます。定年後の開業は、気力が続くうちに手を打てるかどうかが勝負です。記録がない状態で頑張ると、何が効いたのか分からないまま時間だけが過ぎます。
8. 志師塾卒業生の事例|絞って依頼が来る形にした3名
ここでは、定年後の開業を考える方のヒントになる志師塾卒業生の事例を3名紹介します。いずれも年代や業種は異なりますが、「絞る」「顧客の出どころ」「順番」の3点で参考になる実例です。
8.1 相続・終活に絞って紹介が倍増|宅建士 松本直之さん
不動産と終活のお悩み解決パートナー、松本直之さんは、2020年6月に相続・終活の支援をしたいと独立しました。しかし集客ができず、最初の3か月の売上は20万円程度という状況でした。
志師塾で学んだのは、売り手の論理で商品を押しつけていたこと。本人は「売り手脳だったから売れなかった」と振り返っています。そこから相続・終活に特化した不動産業というポジションを一つ作った結果、紹介が大きく増え、入塾から約5か月で売上1,000万円に到達しました。
「ただ相続のコンサルやります、不動産会社やりますでは難しい」という本人の言葉は、定年後の開業にそのまま当てはまります。詳しくは宅建士が5か月で売上1,000万円を達成した成功事例インタビューをご覧ください。
8.2 会社員経験を財務支援に転換|中小企業診断士 清水謙伍さん
経営者と未来の数値を創る経営パートナー、清水謙伍さんは、建設機械メーカーで8年勤めた後、中小企業診断士として2021年2月に清水ビジネスパートナー株式会社を設立。独立開業1年目で年商3,000万円を達成しました。
注目したいのは、新規顧客のほとんどが紹介で広がっている点です。中小企業の財務パートナーとして、お金に関する困りごとを解決するという役割がはっきりしているため、周囲が紹介しやすい状態ができています。前職の業界知識が製造業のコンサルティングで効いているのも、経験と地続きの領域を選んだ結果です。詳細は独立1年目で年商3,000万円を達成した中小企業診断士のインタビューにあります。
8.3 10回の挑戦で資格を取り、人事部立ち上げ支援へ|社労士 塚元雄平さん
ネクストステップ社会保険労務士事務所の塚元雄平さんは、社会保険労務士試験に10回挑戦して合格し、事務所で実務経験を積んだ後に独立しました。
塚元さんが掲げているのは「働く人が定着する職場をつくる」こと。労務相談や就業規則の整備に加え、従業員50人以上の企業に対する人事部立ち上げ支援を柱に据えています。志師塾での自己棚卸しは3万字に及び、そこから商品が形になりました。
独立後の顧問先は、前職で労働基準監督署への対応を担当していた際の顧客から「直接、塚元さんにお願いしたい」と声がかかった企業です。積み重ねた仕事が、そのまま独立後の顧客につながった典型例です。人事部立ち上げを支援する社会保険労務士のインタビューもあわせてご覧ください。
3名に共通しているのは、資格を取ったあとに「誰のどんな困りごとに答える人なのか」を決め直したことです。そして決め直す作業は、どなたも一人では進められていません。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、この決め直しの手順と、決めたあとに依頼が来る形にする導線を解説しています。先生業のためのWeb集客セミナーの日程を確認する
9. 定年後の資格開業によくある質問
65歳から資格を取るのは遅すぎませんか?
遅くはありません。資格を取る時間と、顧客の出どころを作る時間を、同時に進めてください。合格してから集客を考えると、その分だけ立ち上がりが遅れます。なお志師塾では、メーカーに33年勤めて57歳で退職した後にWebを学び直し、69歳でAIを研究して中小企業のDX支援をしている方の例も見ています。年齢より、学び方と実践量です。
月20万円稼ぐと、年金は減りますか?
個人事業として得た事業所得は、原則として在職老齢年金の判定対象になりません。また判定の基準額自体も、2026年4月から月65万円へ。ただし法人化して役員報酬を受け取る場合は判定対象に戻ります。ご自身の年金の種類と加入状況によって扱いが変わるため、年金事務所での確認をおすすめします。
どの資格がいちばん稼げますか?
資格の種類で収入は決まりません。志師塾が見てきた限り、収入を決めているのは1. 絞り方 2. 顧客の出どころ 3. 単価の設計の3つです。同じ資格で年商300万円の人と3,000万円の人が同時に存在するのは、この3つの差です。
開業の実績がゼロでも、仕事は来ますか?
来ます。ただし「実績があります」とアピールして取るのではなく、教えることで信頼を得る流れを作る必要があります。小冊子やセミナーで先に価値を渡し、相談を受け、そこから依頼される。この順番であれば、開業初月からでも受注は起こります。
体力的に、何歳まで続けられますか?
先生業は体力に頼らない仕事です。だからこそ定年後と相性が良い。ただし、時間を切り売りする形だと体力の低下がそのまま売上の低下になります。単価を上げる、継続契約にする、オンラインを使う。この3つを早めに設計しておくと、長く続けられます。
一人で開業して、途中で不安になったらどうすればいいですか?
志師塾が繰り返し伝えているのは、「独立」という言葉に反して、独立こそ仲間がいないと続かないということです。代表の五十嵐も、2009年の独立時に仲間が離れて一人になり、朝から夕方まで誰とも話さず、夜の交流会で第一声が出なかった日があったと語っています。同じ段階の人と話せる場を、開業前に見つけておいてください。
10. まとめ|定年後に資格で月20万円をつくる3条件
定年後に資格で月20万円。この記事の要点を整理します。
- 月20万円は単価×件数に分解する。「月5万円の顧問を4社」なら、新規開拓の負荷は大きく下がる
- 2026年4月、在職老齢年金の基準額は月65万円へ。個人事業の所得は原則、判定の対象外です。繰下げ受給なら70歳で42%増、75歳で84%増
- 厳しくなったのは、会社に残る側の条件。高年齢雇用継続給付は上限10%に縮小し、70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%
- 条件1:絞る。資格名を言わない自己紹介をつくり、相手の頭に一行で入る形にする
- 条件2:顧客の出どころ。未経験分野へ飛び込まず、前職と地続きの領域で「お願いされて売れる」導線を作る
- 条件3:固定費を月5万円以下に。退職金は事業に入れず、「創って・売って・作る」の順番を守る
3条件のうち、一人でやりにくいのは最初の「絞る」です。自分の経験は自分にとって当たり前すぎて、どこに値段がつくのか見えません。ここを他人の目で言葉にし直せた人が、定年後の開業で早く立ち上がっています。
資格名を言わなくても、依頼が来る自己紹介へ
志師塾の「先生業のためのWeb集客セミナー」では、自分の経験を顧客の困りごとの言葉に言い換える手順をお伝えします。決めたあとに、売り込まずに依頼が来る導線も先生業の事例で解説します。参加費は無料です。
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この記事について
この記事は、先生業専門のビジネススクール『志師塾』が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチといった先生業の顧客獲得を支援し、これまでに3,295名(2026年8月時点)の方が受講。卒業生コミュニティは1,000名を超え、50代・60代で会社員から独立した方の事例も多数蓄積しています。なお、年金・保険・税制の具体的な適用については、年金事務所や税理士など専門機関での確認をおすすめします。