ICUで過ごした48時間が、人生を大きく変えました。
今回お話をうかがったのは、「人生と経営の伴走家」として、経営者や士業に向けた伴走型支援を行う岩切宏樹さんです。
かつては経営者として事業の成長を追い続け、多忙な毎日を送っていました。しかし、心肺停止という予期せぬ出来事を経験し、ICUで過ごした48時間の中で、自らの生き方と向き合うことになります。
志師塾での学びを通じてサービスを磨き上げ、肩書きを再定義し現在は「人生と経営の伴走家」として、多くの経営者の人生に寄り添っています。
今回は、人生を大きく変えた転機、志師塾で得た学び、そして「イキイキした大人を増やしたい」という未来への想いについて、お話をうかがいました。
1.「ICUで過ごした48時間」が人生を変えた
現在、「人生と経営の伴走家」として経営者のライフコーチを務める岩切さん。その原点には、人生を大きく変えた壮絶な体験がありました。
かつては、アパレル事業をはじめ、カルチャースクールや託児所、コンビニエンスストア、EC事業、YouTuber支援事業など、幅広い事業を展開する経営者として多忙な日々を送っていました。
売上や業績、社員や取引先のことを最優先に考え、自分自身のことは後回し。心身を休める時間もないまま、走り続けていたといいます。
しかし、その日常は突然終わりを迎えます。急性心筋梗塞で倒れ、一時は命の危険にさらされる事態となったのです。幸い一命は取り留めたものの、ICUで過ごした48時間は、それまでの人生を見つめ直す時間となりました。
「このままの働き方を続けているとまた倒れてしまう」
仕事が人生の中心であることが当たり前だと思っていた価値観が少しずつ揺らぎ始め、自分自身や家族と向き合う時間を十分に持てていなかったことにも気付かされました。この経験をきっかけに、岩切さんは長年経営してきた会社を譲渡するという大きな決断を下します。
会社を手放した後、改めて自分自身に問いかけました。
「これから、自分は何をして生きていきたいのか」
そこで見えてきたのは、かつての自分と同じように、仕事を優先するあまり人生を見失っている経営者たちの姿でした。
「私自身が倒れたからこそ、伝えられることがある」
経営ノウハウを教えるだけではなく、経営者自身が「本当に大切なものは何か」を考えるきっかけをつくりたい。その想いが、ライフコーチという新たな道へ進む原動力となりました。
かつての自分は、仕事を優先するあまり、子どもの成長を十分に見守ることができず、「気付けば10歳になっていた」という後悔も残りました。現在は、意識して家族と過ごす時間を確保し、自分自身の人生も大切にする生き方へと舵を切っています。
心筋梗塞によって突然倒れた経験は、決して望んだものではありません。しかし、ICUで過ごした48時間があったからこそ、「会社を成長させる人生」から人の人生に寄り添う人生へと歩みを変えることができました。その経験は、現在の「人生と経営の伴走家」という使命へとつながっています。

2.「人生と経営の伴走家」という新しい仕事
2.1 脱属人化して企業価値を高める
「多くの経営者は、責任感の強さから、仕事を自分一人で抱え込んでしまいがちです。『元気なうちは働き続ける』と考える方もいますが、万が一に備えて、元気なうちから仕事を任せられる体制を整えておくことが、会社や社員を守ることにつながると思います」
これは、「48時間のICU」を経験した岩切さんだからこその実感です。
「もし明日、自分がいなくなったら会社はどうなるのか」その問いと向き合った経験から、仕事を周囲に任せ、自分は経営者として本来果たすべき役割に集中すること、そして引退する時期をあらかじめ見据えて経営することの重要性を強く感じるようになりました。
属人化を解消し、経営者がいつ退いても事業が継続できる体制を築くことは、事業承継を円滑にするだけでなく、企業価値の向上にもつながります。
「それが、50歳を過ぎた経営者のあり方だと思います」
岩切さんは、そのような視点で人生の後半戦を見据えた経営を提案しています。
2.2 経営者の人生に寄り添う伴走という仕事
ライフコーチの仕事をしていくうえで生まれたのが、「人生と経営の伴走家」という新しい肩書きです。
一般的なコンサルタントは、売上や利益を伸ばす方法を提案します。コーチは目標達成を支援します。しかし岩切さんが目指しているのは、そのどちらでもありません。経営だけではなく、その人自身の人生にも寄り添う存在でありたいと考えています。
「人生そのものが仕事になってはいけない。仕事の先に何かが得られるから働いているのです」
経営者には、会社を守る責任があります。その責任感ゆえに、自分の健康や家族との時間を犠牲にしてしまう人も少なくありません。
「その働き方、いつまでできますか?」
「あなたが倒れて困るのはあなたではないんですよ」
経営者が倒れてしまえば、会社も社員も守ることはできません。この経験を経て、経営と人生の両方を見つめながら伴走する存在が必要だと考えています。
2.3 自身の経験が最大の説得力になる
岩切さんは、自身の経験こそが、この仕事における最大の強みだと語ります。経営理論や成功事例は、本やインターネットから学ぶことができます。しかし、経営者として悩み、苦しみ、人生の転機を乗り越えてきた経験は、実際に歩んできた人にしか語ることができません。
経営者だった頃は、従業員同士の人間関係やメンタル不調など、組織運営におけるさまざまな課題と向き合ってきました。さらに、自ら心肺停止を経験し、生死の境をさまよったことで、「仕事とは何か」「人生で本当に大切なものは何か」を深く考えるようになったといいます。
現在支援している経営者の中には、かつての取引先や、同じような悩みを抱える人も少なくありません。岩切さんが向き合うのは、売上や利益だけではなく、「このままの人生で本当にいいのか」という経営者自身の問いです。
こうして、自身の経験を新しい支援サービスとして形にする方法を模索していた岩切さん。そんな中、あるご縁をきっかけに志師塾で学ぶ機会を得ました。そこで得た気づきや仲間との交流が、サービスの提供方法や肩書きを見直す転機となります。
3.志師塾で得た学び
3.1 一番印象に残った「渡り鳥」の話
「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければ、みんなで行け」
岩切さんが志師塾で最初に受けた講義の中で、もっとも印象に残ったのがこの言葉でした。
講義では、「渡り鳥」の話が紹介されました。渡り鳥は、V字隊形を組んで長い距離を飛び続けます。先頭の一羽が飛び続けるのではなく、疲れたら後方へ回り、別の仲間が先頭を引き継ぎます。そうして互いに支え合うことで、一羽ではたどり着けない遠い目的地まで飛び続けることができる。そんな話でした。
志師塾には仲間同士が支え合い、互いの成長を応援する文化があります。そうした志師塾ならではの風土は、岩切さんにとって非常に新鮮であり、大きな共感を覚えたそうです。
これまで仕事中心だった岩切さんは、志師塾での学びをきっかけに、自身の生き方や価値観をSNSで発信するようになりました。こうした発信も、学びを行動へとつなげた取り組みの一つです。

3.2 志師塾の学びがもたらした変化
志師塾での学びは、考え方だけでなく、ビジネスそのものにも大きな変化をもたらしました。
それまで岩切さんは、経営者がゆとりある人生を送れるよう、1対1のライフコーチングを提供していました。しかし、個別支援には時間や収入、価値の拡大のスピード感に限界があり、「もっと多くの人に価値を届ける方法があるのではないか」と考えるようになります。
さらに、税理士などの士業は、経営者に最も近い立場にいながら、その専門性を十分に発揮できていないケースも多いと感じていました。例えば税理士は、会社経営の根幹である財務を担う重要な存在です。しかし、日々の業務は作業中心になりがちで、その一部は将来AIに代替される可能性もあります。
「もっと経営者に深く関わり、伴走することで、やりがいや収入も高められる。それこそが私の提供すべきサービスではないかと思ったんです」
その考えから、サービスは1対1のコーチング中心からスクール形式へと大きく転換しました。1つの講座で3人くらいが受講できるようになり、自分自身のキャパシティを広げることができました。
さらに講座内容も、志師塾で学びを重ねる中でブラッシュアップされていきました。「もっと経営者に深く関わり、伴走することで、やりがいや収入も高められる。それこそが私の提供すべきサービスではないかと思ったんです」
その考えを講座に盛り込んだのです。
また、自身の肩書きも大きく変わりました。以前は「ライフチェンジャー」と名乗っていましたが、それだけでは自分が何をする人なのかが十分に伝わりませんでした。志師塾の仲間からも
「その名前にピンとこない」
と言われました。色々な名前の候補を考えていく中で、たどり着いたのが「人生と経営の伴走家」という肩書きです。岩切さんがやりたいことは、伴走という思いがあり、その言葉を直接盛り込む形にしました。この言葉には、経営や人生に寄り添って伴走したいという想いが込められています。
4.人生の後半をもっと自由に
4.1 団塊ジュニアは人生のハーフタイムを取ろう
岩切さんが今、特にメッセージを届けたいと考えているのが、ご自身と同じ団塊ジュニア世代です。団塊ジュニアは、同世代の人口の多さから、受験や就職氷河期など厳しい競争を強いられてきた世代で、熱心に働く人が多いです。
最近出したnote本「48時間のハーフタイム」でも、メッセージを発信しています。サッカーではハーフタイムの使い方が重要です。ここで後半戦の内容が大きく変わります。
団塊ジュニアにも、一度ハーフタイムをとって人生後半の戦略会議をすることをおすすめしています。それが後半の逆転につながるかもしれないし、前半が充実していた人はより最高の後半を迎えるかもしれません。
いったん自分の棚卸しをして、充実した人生につなげてほしい、岩切さんはそう願っています。

4.2 イキイキした大人を増やしたい
岩切さんが目指しているのは、イキイキした大人を一人でも多く増やすことです。
仕事に追われるだけではなく、自分らしく人生を楽しむ大人が増えれば、その姿を見た子どもたちも「自分もあんな大人になりたい」と思える社会になるはずだと考えています。
そのために、自らが伴走するだけでなく、「伴走」という考え方を広げ、同じ志を持つ仲間を増やしていきたい。それが岩切さんの次の目標です。
「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければ、みんなで行け」
志師塾で出会ったこの言葉は、今も岩切さんの活動の原点になっています。人生は一人で走り続けるものではなく、人とつながり合い、支え合いながら歩んでいくもの。その想いを胸に、今日もまた、一人ひとりの人生と経営に寄り添い続けています。

5.岩切宏樹さんのプロフィール
人生と経営の伴走家
株式会社クロスロードを2026年7月設立。1973年横浜生まれ。
ハードワーク経営者の働き方変容を支える専門家。2010年に創業し累計売上50億円以上を達成するも、2024年12月、過労により急性心筋梗塞で心肺停止に。奇跡的に生還し、家族と自分を優先する人生へのシフトを決意。
この原体験に脳科学、心理学、経営実績を融合した独自のコーチングを確立。現在は「断捨離・守破離」を軸に、「過労で倒れる経営者ゼロ」を目指し、50歳以上の経営者の豊かな働き方を支援。100人の伴走型士業を育成することで、人生後半が輝かく1万人の元気な経営者を輩出し、中高年から日本を元気にすべく活動中。
48時間のハーフタイム=死の淵で導き出した人生後半の戦略ノート= https://note.com/lc_design/n/n01c5a2c6cc32
文:野村英樹(中小企業診断士)/編集:志師塾編集部
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