facebook

教材づくり20時間を7時間に|AI活用4ステップ

1時間の講座教材を作るのに、平均で22時間。これは2010年にChapman Allianceが約250組織・4,000人規模の学習担当者を対象に行った調査(eLearning Industryによる解説)で示された、集合研修(講師主導型)の開発工数のベンチマークです。しかも22時間は「シンプルな内容」の場合。標準的な案件になると43時間、複雑な題材だと82時間まで跳ね上がります。

つまり、あなたが90分のセミナー教材づくりに20時間を溶かしているのは、能力不足でも段取りの悪さでもありません。それが業界の標準値です。

この記事では、その20時間を7時間まで縮めるためのAI活用4ステップを解説します。扱うのは次の内容です。

  • 20時間の内訳を工程別に分解し、どこにAIが効いてどこに効かないかを特定する方法
  • AI活用4ステップ(設計・素材投入・生成・自分の言葉化)の具体手順とプロンプト
  • AIに渡してはいけない3つの工程と、その理由
  • 削減した13時間を、集客と単価アップに転換する使い道

志師塾はこれまで3,200名を超える先生業(士業・コンサルタント・講師・コーチ)の顧客獲得を支援してきました(2026年8月時点の実受講者数)。その中で見えてきたのは、教材づくりに時間を奪われた講師ほど、集客と営業に手が回らず単価が上がらないという構造です。教材の質は高いのに、稼働時間で計算すると時給が驚くほど低い。この悪循環を断ち切る出口が、AI活用にあります。

読み終わるころには、あなたの教材づくりのどの工程を削り、どの工程に時間を厚く残すべきかが、はっきり判断できるようになっているはずです。まずは「20時間の正体」から見ていきましょう。

Table of Contents

1. 教材づくりの20時間はどこに消えているのか

90分セミナー教材20時間の内訳

時間を削る前に、まず何に使っているかを知る必要があります。「なんとなく忙しい」の状態では、AIをどこに投入すべきか判断できません。

1.1 前提条件を固定する:90分セミナー1本をゼロから作る

教材づくりの工数を語るとき、多くの記事が前提を書かずに「大幅に短縮できます」とだけ主張します。これでは読者が自分に置き換えられません。

この記事では前提を次のように固定します。

  • 成果物:90分のセミナー・研修1本(スライド30〜40枚+講師用台本+ワークシート1枚)
  • 形式:集合またはオンラインでのライブ研修(eラーニング動画教材は工数構造が違うため除外)
  • 状態:既存資料の流用なし、ゼロベースで新規作成
  • 作業者:講師本人がひとりで作る

eラーニングを混ぜて語る記事が多いのですが、動画教材は収録・編集・LMS実装が入るため、先ほどのChapman Allianceの調査でも1時間あたり49〜184時間と桁が変わります。先生業の主戦場はライブ研修なので、ここに絞ります。

1.2 20時間の工程別内訳

90分セミナー1本を、従来のやり方で作った場合の内訳です。

工程 作業内容 時間
① 企画・設計 受講対象の設定、学習目標の言語化、90分の全体構成づくり 3時間
② リサーチ データ収集、他社事例の確認、統計の裏取り 4時間
③ スライド作成 30〜40枚の作成、図解づくり、レイアウト調整 7時間
④ 台本・原稿 スライドごとの話す内容、時間配分、つなぎのセリフ 3時間
⑤ ワーク設計 演習課題、ワークシート、想定される回答パターン 2時間
⑥ リハーサル・修正 通し練習、時間オーバーの調整、誤字脱字の確認 1時間
合計 20時間

この内訳を見ると、時間を食っているのが③スライド作成(7時間)と②リサーチ(4時間)だと分かります。合わせて11時間、全体の55%です。ここがAIの主戦場になります。

1.3 なぜ「なんとなく」では時間が減らないのか

志師塾の受講生と話していて多いのが、「AIを使ってみたけど、思ったより速くならなかった」という声です。

理由ははっきりしています。工程を分けずにAIに丸投げしているからです。「◯◯についての研修資料を作って」と投げると、AIは平均的で無難な一般論を返してきます。それを見て「これは使えないな」と思い、結局ゼロから作り直す。AIを触った時間が純粋に上乗せされて、むしろ21時間になる。

時間を減らすには、20時間を6つの工程に分けたうえで、AIに渡す工程と自分が握る工程を明確に線引きする必要があります。この線引きこそが、この記事の中心テーマです。

1.4 20時間は「盛った数字」ではない

念のため補足しておくと、20時間という数字は決して大げさではありません。冒頭で触れたChapman Allianceの調査(2010年)では、集合研修のシンプルな内容で1時間あたり22時間。90分の講座なら単純計算で33時間になります。

調査自体が2010年のもので、オーサリングツールの進化を考えれば現在はもう少し速いはずです。それでも、90分の講座を20時間で仕上げているなら、あなたはすでに業界標準より効率的に作れているということになります。

問題は「20時間かかること」ではありません。その20時間が、あなたの単価に反映されていないことです。次の章では、その構造を見ていきます。

2. 教材づくりの時間が講師の単価を下げている構造

教材づくりの効率化は、単なる作業短縮の話ではありません。あなたのビジネスモデルそのものに直結します。

2.1 ガチ時給で計算すると見えてくるもの

志師塾では「ガチ時給」という考え方を教えています。表面上の講師料を、その仕事に費やした全時間で割った、本当の時給です。

たとえば90分の研修を10万円で受注したとします。見せ時給は「1.5時間で10万円だから、時給6万7,000円」。立派な数字です。

しかしガチ時給で計算すると、こうなります。

項目 時間
教材づくり 20時間
打ち合わせ・事前ヒアリング 3時間
当日の登壇・移動 4時間
アンケート集計・報告書作成 2時間
合計 29時間

10万円÷29時間=ガチ時給3,448円。悪くはありませんが、「講師」という響きから想像する数字とは違うはずです。

そしてこの計算には、その仕事を取ってくるための集客・営業の時間が一切入っていません。名刺交換、フォローメール、企画書づくり、提案の打ち合わせ。ここまで含めると、ガチ時給は2,000円台に落ちることも珍しくありません。

2.2 教材づくりに埋もれるほど、集客の時間が消える

ガチ時給が低いこと自体が問題なのではありません。問題は、その状態から抜け出す時間が確保できないことです。

教材づくりに20時間かかっていると、月に3本の研修を受注しただけで60時間が消えます。フルタイムで働いている感覚なのに、売上は30万円。ここから集客活動に時間を割こうとしても、体力も気力も残っていません。

結果として何が起きるか。紹介と下請けだけで仕事を回すようになります。研修会社から回ってくる案件を受け、単価は先方の言い値。断ると次が来ないので断れない。教材は毎回ゼロから作る。この状態を志師塾では「業者先生」と呼んでいます。専門家ではなく、作業を請け負う業者になってしまっている状態です。

2.3 削減した時間の使い道を決めてから着手する

ここが重要なのですが、AIで13時間を削減しても、その時間を「休む」に使うと単価は1円も上がりません

もちろん休息は必要です。ただ、教材づくりの効率化を単価アップに転換するなら、空いた時間の行き先をあらかじめ決めておく必要があります。

  • 集客の仕組みづくり(3時間):ブログ記事1本、セミナー告知ページの改善
  • 既存顧客への深掘り提案(3時間):研修後のフォロー面談、次の課題のヒアリング
  • コンテンツの独自化(4時間):自分にしか語れない事例の掘り起こし、独自メソッドの言語化
  • 予備・バッファ(3時間):想定外の修正、当日のトラブル対応

この配分を決めてからAI活用に着手すると、削減した時間が「消える」ことがありません。

教材づくりの20時間をAIで7時間に縮められたとして、次に出てくるのは「では空いた13時間で、何をすれば単価が上がるのか」という問いです。ここは作業効率の話ではなく、AIをどう自分のビジネスに組み込むかという設計の話になります。志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、先生業がAIを使って業務を効率化するだけでなく、その先の「顧客にAI活用を伝える側」に回って単価を上げる道筋を解説しています。

AI伴走士養成セミナーを見てみる

3. 教材づくりでAIに渡す工程と、人が握る工程

AIに渡してはいけない3工程

4ステップの手順に入る前に、線引きをはっきりさせておきます。ここを飛ばすと、速くは作れても中身が薄い教材ができあがります。

3.1 AIは「処理の相棒」、人は「意味の責任者」

志師塾では、AIと人の分業をこう整理しています。AIは処理の相棒、人は意味の責任者

AIが得意なのは、情報を集める、たたき台を作る、量産する、体裁を整えるといった処理の仕事です。一方で人にしかできないのは、何を目指すかを決める、これでいくと判断する、受講者の感情を読む、結果に責任を持つといった意味づけの仕事です。

教材づくりに当てはめると、こうなります。

工程 AI/人 理由
学習目標の設定 受講後にどう変わってほしいかは、受注時のヒアリングでしか掴めない
全体構成の決定 (AIは案出しのみ) どの順番で腹落ちさせるかは、講師の現場勘
情報収集・下調べ AI 検索と要約は圧倒的に速い(ただし裏取りは人)
スライドのたたき台 AI 構成が決まっていれば量産できる
図解・レイアウト AI パターン化された作業
演習問題の案出し AI(採否は人) 量は出せるが、難易度と学習効果の判定は人
自分の事例・失敗談 AIは持っていない。ここが講師の価値の源泉
事実確認・権利確認 AIは平然と間違える。責任は講師が負う
最終判断 この教材で登壇していいかを決める

3.2 AIに渡してはいけない3つの工程

特に注意したいのが、次の3つです。

①学習目標の設定。「この90分で受講者に何ができるようになってほしいか」は、発注元の課題と現場の温度を知らないと決められません。AIに聞くと「コミュニケーション能力の向上」のような、当たり障りのない目標が返ってきます。これを起点にすると、以降の工程がすべて一般論になります。

②自分の事例・失敗談。受講者が最も記憶するのは、講師自身の生々しい経験です。「私も同じ失敗をしました。そのとき何が起きたかというと」から始まる話には、AIが生成した優等生的な事例が絶対に敵いません。ここを手抜きすると、教材は速く作れるのに研修の評価が下がります。

③事実確認。AIは存在しない統計や、実在しない書籍を平然と出してきます。研修の場で誤った数字を出せば、講師としての信頼が一発で崩れます。数字と固有名詞は、必ず一次情報に当たって確認してください。

3.3 「線引き」があるから7時間で止まる

この線引きを理解すると、なぜ「20時間→7時間」であって「20時間→2時間」ではないのかが分かります。

AIに渡せない工程が、7時間の下限を決めているのです。学習目標を練る時間、自分の事例を思い出して構成に組み込む時間、数字を裏取りする時間、リハーサルで通す時間。ここは削れませんし、削ってはいけない部分です。

逆に言えば、7時間まで縮めた教材は、20時間かけた教材より質が高くなる可能性があります。スライドの体裁づくりに費やしていた7時間が、事例の掘り起こしとリハーサルに回るからです。

3.4 AIは「自社事情を知らない優秀な新人」と考える

AIとの向き合い方で、しっくりくる比喩があります。AIは、知識は豊富だがあなたの顧客も業界事情も知らない、優秀な新人アシスタントだという捉え方です。

優秀な新人に仕事を頼むとき、あなたは何をするでしょうか。まず背景を説明し、過去の資料を渡し、こういう方向で頼むと指示を出すはずです。「よろしく」だけで丸投げしたら、一般論の資料が返ってくるのは当然です。

この発想が、次章のステップ2「自分の素材を食わせる」に直結します。

4. 教材づくりを7時間にするAI活用4ステップ

教材づくりを7時間にする4ステップ

ここからが本題です。従来の6工程を、AI前提の4ステップに組み替えます。

ポイントは、作業順ではなく設計順に並べていることです。よくある「構成案→スライド→本文→テスト→確認」という5ステップは、単に従来の作業をAIに置き換えただけ。それでは大きくは縮みません。

4.1 ステップ1:設計(人が2時間・AIは補助)

最初にやるのは、AIを開くことではありません。紙とペンで、この研修のゴールを決めることです。

決めるのは次の4つです。

  1. 受講者は誰か:役職、経験年数、現在困っていること、この研修に来た理由
  2. 受講後にどう変わるか:「〜が分かる」ではなく「〜ができるようになる」で書く
  3. 最も伝えたい一言:90分終わって1つだけ持ち帰ってもらうならこれ、という核
  4. 大枠の流れ:導入→問題提起→解決策→ワーク→まとめ、の中身を箇条書きで

ここでAIを使うなら、決めるためではなく、抜けをチェックするために使います。

あなたは企業研修の設計に詳しいインストラクショナルデザイナーです。
以下の研修設計案を読み、受講者視点で「これが抜けていると腹落ちしない」という論点を5つ指摘してください。改善案は不要です。指摘だけ挙げてください。
【受講者】〜
【受講後の変化】〜
【最も伝えたい一言】〜
【大枠の流れ】〜

「案を出して」ではなく「抜けを指摘して」と頼むのがコツです。案を出させると、AIの平均的な発想に引きずられます。

4.2 ステップ2:素材投入(人が1時間)

ここが競合記事にほとんど書かれていない、最も差がつく工程です。

やることは、AIに自分の一次情報を食わせること。具体的には次のような素材を集めて、AIに読ませます。

  • 過去に登壇した類似テーマの資料(PDF・PowerPoint)
  • 過去の研修アンケートの自由記述欄(受講者の生の言葉)
  • クライアントとの事前ヒアリングのメモや議事録
  • 自分がブログやSNSで書いた、このテーマに関する投稿
  • 受講者からよく出る質問のリスト

この工程を、ChatGPTの「マイGPT」機能やGeminiの「Gem」機能を使って仕組み化しておくと、次回以降が劇的に速くなります。マイGPTには「知識」として資料をアップロードでき、以後の会話で毎回参照してくれます。

志師塾で教えているマイGPT作成のプロンプト構成は、次の6パートです。

  1. 役割:「あなたは〜の研修教材を作る専門家です」
  2. 留意事項:やってはいけないこと、避けるべき表現
  3. 入力情報:毎回もらう情報の項目定義
  4. 作業手順:どういう順番で処理するか
  5. 表現ルール:文字数、語調、書式
  6. 開始メッセージ:使い始めるときの案内文

この6パートで自分専用の教材づくりアシスタントを作っておけば、毎回ゼロから指示を書く必要がなくなります。初回の構築に1〜2時間かかりますが、2回目以降はこの工程が15分で終わります。

4.3 ステップ3:生成(AI主導・人が2時間で監修)

設計が固まり、自分の素材を渡したら、ようやく生成に入ります。

ここで大事なのは、一気に全部作らせず、パートごとに区切って生成することです。「90分の研修資料を作って」と投げると、全体が薄くなります。

生成の順番は次のとおりです。

①目次・スライド構成の生成(30分)

【設計】に基づいて、90分研修のスライド構成を作成してください。
・スライド枚数は35枚前後
・各スライドに「タイトル」と「そのスライドで伝えること(1文)」を記載
・時間配分(何分目〜何分目か)も併記
・アップロードした知識(過去資料・アンケート)にある独自の考え方やエピソードを最優先で反映
・一般論のスライドは入れない

②スライド本文の生成(60分)

構成が固まったら、5〜8枚ずつ区切って本文を生成させます。「同様に、次のパートも出力してください」と繰り返すだけです。

③演習・ワークの案出し(20分)

このパートの学習内容を定着させるための演習を5案出してください。各案について「所要時間」「難易度」「この演習で気づいてほしいこと」を併記してください。

5案出させて、その中から1〜2案を選ぶ。採否の判断は必ず人が行います。

④図解の生成(10分)

Canvaのスライド作成AIなど、テーマや文章から構成・文章・デザインを自動生成してくれるツールを使うと、レイアウト作業が大幅に減ります(Canva公式)。PowerPointやPDFで書き出せるので、後の編集も可能です。

4.4 ステップ4:自分の言葉化・検証(人が2時間)

最後の工程が、教材の質を決めます。ここを飛ばすと、AIっぽい教材のまま登壇することになります。

やることは3つです。

①自分の事例を差し込む(60分)

AIが作った説明パートに、あなたにしか語れない話を入れます。目安として、スライド5枚に1つは自分のエピソードを置く。失敗談、クライアントとのやりとり、想定外だった出来事。この密度が、研修の満足度を決めます。

②事実確認(30分)

AIが出した数字・統計・固有名詞を、一次情報で確認します。出典が示せないものは削るか、「一般に〜と言われています」と表現を弱める。ここを面倒がると、後で取り返しがつきません。

③リハーサル(30分)

実際に声に出して通します。読み上げてみると、AI特有の硬い言い回しがすぐ分かります。「〜において」「〜が不可欠です」といった表現は、口に出すと明らかに浮きます。話し言葉に直しましょう。

4.5 4ステップの時間内訳

ステップ 担当 時間 従来
① 設計 人(AIは抜けチェック) 2時間 3時間
② 素材投入 1時間 (リサーチ4時間に相当)
③ 生成 AI主導 2時間 12時間(スライド7+台本3+ワーク2)
④ 自分の言葉化・検証 2時間 1時間
合計 7時間 20時間

注目してほしいのは、④の時間が1時間から2時間に「増えている」点です。削れる工程を削って、削ってはいけない工程に時間を戻す。これが4ステップの設計思想です。

4.6 2回目以降は3時間まで落ちる

さらに言えば、同じテーマで2回目の登壇をするときは、もっと速くなります。

  • ステップ1(設計):前回の設計を流用+クライアント固有の調整 → 30分
  • ステップ2(素材投入):マイGPTに前回教材を追加するだけ → 15分
  • ステップ3(生成):変更パートのみ生成 → 45分
  • ステップ4(自分の言葉化):前回アンケートを踏まえた改善 → 1時間30分

合計3時間。マイGPTという資産を積み上げることで、教材づくりはストック型のビジネスに変わります。ここが「毎回ゼロから作る業者先生」との決定的な差になります。

5. 教材づくりのAI活用でやりがちな失敗と対策

志師塾の受講生から実際に上がってくる、つまずきポイントを整理します。

5.1 失敗1:一般論の教材ができあがる

最も多い失敗です。原因はステップ2の素材投入を飛ばしていること。

AIは学習データの平均値を返します。「リーダーシップ研修の資料を作って」と頼めば、世の中にあるリーダーシップ研修の平均が出てきます。それは、あなたが登壇する必要がない内容です。

対策:ステップ2を絶対に飛ばさない。最低でも「過去のアンケート自由記述」と「事前ヒアリングメモ」の2つは読ませる。この2つには、教科書に載っていない現場のリアルが詰まっています。

5.2 失敗2:AIが出した数字をそのまま使ってしまう

研修の場で誤った統計を出すのは、講師にとって致命傷です。

AIは「それらしい数字」を作り出す性質があります。出典を聞くと、実在しない論文名や、リンク切れのURLを返してくることもあります。

対策:数字と固有名詞は例外なく一次情報で確認する。官公庁の統計、業界団体の調査、企業の公式発表。確認できないものは使わない。この作業に30分かけるのは、削減した13時間から見れば安いコストです。

5.3 失敗3:クライアントの機密情報をAIに入れてしまう

企業研修では、事前に受講企業の内部資料を渡されることがあります。組織図、業績データ、社内の課題ヒアリング結果。これをそのままAIに入れるのは危険です。

対策:次の3段階で判断してください。

  1. 契約を確認する:秘密保持契約(NDA)に第三者提供の禁止条項があれば、AIへの入力も原則NG
  2. 入力前に匿名化する:企業名・個人名・具体的な数値を伏せ字か仮名に置き換える
  3. 設定を確認する:ChatGPTなら「モデルの改善に使用しない」設定、法人プランならデータ学習の対象外。使う前に一度確認しておく

不安なら、クライアントに「教材作成にAIを補助的に使いますが、御社の固有情報は入力しません」と一言伝えておくと安心です。

5.4 失敗4:AI特有の文体が残ったまま登壇する

スライドの文言が「〜において」「〜が不可欠です」「体系的に」だらけになっていませんか。

読み手には、なんとなく人間味がないと伝わります。特に研修は対面のコミュニケーションなので、資料と話し言葉の温度差が出ると違和感になります。

対策:ステップ4のリハーサルで声に出す。読み上げて口が回らない言い回しは、すべて書き直す。「〜において」は「〜で」、「不可欠です」は「欠かせません」。この置き換えだけで、資料の印象が変わります。

5.5 失敗5:ツール探しに時間を使いすぎる

「もっといいAIツールがあるはず」と探し続けて、肝心の教材ができていないケースです。

対策:まずはChatGPTかGeminiのどちらか1つに絞る。志師塾では、教材づくり用途なら次のように使い分けを案内しています。

  • ChatGPT:壁打ち、文章生成、マイGPTでの仕組み化。日本語の言い回しが自然
  • Gemini:Googleドキュメント・スライドとの連携、長い資料の読み込み
  • Claude:長文の資料を読ませて要約・分析させる用途

ツールは1つで十分成果が出ます。比較検討に3時間使うより、1つのツールで3本教材を作ったほうが速く上達します。

6. 教材づくりの時間を、単価アップに転換する

削減した13時間の使い道

ここまでで13時間が空きました。この時間をどう使うかで、1年後の状況が変わります。

6.1 AI活用の三段階レベルで自分の位置を知る

志師塾では、先生業のAI活用を三段階で整理しています。

レベル 状態 単価への影響
① 使いこなす 自分の業務にAIを使い、効率化できている コスト削減。単価は変わらない
② 教える 顧客にAI活用を伝え、導入を支援できる 新しい商品が作れる
③ 伴走する AIを活用して顧客を継続支援し、成果に繋げる 継続契約・高単価化

この記事で扱った教材づくりの効率化は、レベル①の段階です。ここで止まると、確かに楽にはなりますが、収入は増えません。むしろ「AIで作れるなら単価を下げてほしい」と言われるリスクすらあります。

実際、志師塾が現場で聞く声にはこういうものがあります。「顧客が自らAIで調べ始めたので、発注量が減ってきました」(コンサルタント)「コンテンツの価値が相対的に下がったからか、研修単価を減らされました」(講師業)。

AIが普及すると、情報を持っていること自体の価値は下がります。だからこそ、レベル②③へ進む必要があります。

6.2 「教える側」に回ると新しい商品ができる

教材づくりでAIを使いこなせるようになると、その経験そのものが商品になります。

たとえば人事研修を提供している講師なら、「研修担当者のためのAI活用講座」を作れます。営業研修の講師なら、「営業資料をAIで作る実践ワークショップ」。あなたが実際にやって時間を削減した経験は、そのまま顧客が知りたいことです。

ここで効いてくるのが、山本五十六の「やってみせ、言ってきかせて、させてみて」という考え方です。志師塾では顧客へのAI活用支援を、この順番で設計するよう教えています。

  1. やってみせる:相手の業務をヒアリングし、その場でAIを使って楽にしてみせる
  2. 言って聞かせる:なぜAIを使うべきか(Why)→ 何を導入するか(What)→ どう導入するか(How)の順で説明する
  3. させてみる:実際に相手に手を動かしてもらい、できたら承認する

この流れを1時間のセッションに落とし込めば、それだけで有料商品になります。

6.3 伴走支援に進むと継続契約になる

さらに一歩進むと、単発の研修から継続的な伴走支援へ移行できます。

研修の課題は「その日は盛り上がるが、翌週には元に戻る」ことです。志師塾ではこの解決策として、伴走支援の7ステップ(顧客理解→信頼構築→課題特定→解決立案→目標設定→継続実行→評価自走)を教えています。

研修を入口にして月次のフォローセッションを設計すれば、単発30万円の仕事が、年間契約200万円の仕事に変わります。教材づくりで浮いた13時間は、この設計を考える時間に使うのが最も投資対効果が高いはずです。

6.4 AIに代替されない領域はどこか

結局のところ、AI時代に人が担う役割は3つに集約されます。責任を取ること、実行すること、感情をサポートすることです。

教材は速く作れるようになりました。情報も瞬時に集まります。しかし、受講者が明日から本当に行動を変えるかどうかは、まったく別の問題です。

そこに火をつけ、伴走し、つまずいたら支え、できたら承認する。この部分は当面AIに置き換わりません。教材づくりの時間を削るのは、この人間にしかできない領域に時間を集中させるためです。

7. 志師塾卒業生の事例

教材づくりや業務の効率化が、単価とビジネスモデルの変化にどう繋がるのか。志師塾の卒業生の実例を紹介します。

7.1 自己実現メンタルコーチ・平真理子さんの事例

脳科学をベースにしたメンタルコーチングを提供している平真理子さんは、「正しい脳の使い方」を教えるという独自のポジショニングを確立されました。

コーチング業は、教材や個別セッションの準備に時間がかかりやすい業種です。ひとりで対応できる人数に限りがあるため、準備時間を圧縮できないと売上の天井がすぐに来ます。

平さんが取り組まれたのは、自分の提供価値を言語化し、「誰に・何を・どのように」のコンセプトを固めることでした。ここが定まると、セッションのたびに内容を組み直す必要がなくなり、標準パッケージとして提供できるようになります。

詳しくは【卒業生インタビュー】満足した人生を送りたいあなたに「正しい脳の使い方」を教えます! ~自己実現メンタルコーチ・平真理子(たいらまりこ)さん~をご覧ください。

7.2 標準パッケージ化が時間を生む

平さんの事例から見えてくるのは、AI以前の問題として「毎回オーダーメイドで作る」構造そのものが時間を奪っているということです。

志師塾では商品サービスのパッケージ化を、次の3ステップで教えています。

  1. ネタ出し:自分が提供できることをすべて書き出す
  2. 手順化:それを実施する順番に並べる
  3. 体系化:グループに束ねて全体像を1枚の図にする

この体系図があると、教材づくりのステップ1(設計)が大幅に速くなります。毎回ゼロから構成を考えるのではなく、体系図から必要なパートを抜き出して並べ替えるだけになるからです。

7.3 AI活用と商品設計は両輪で回す

ここまでの話をまとめると、教材づくりの時間短縮には2つのアプローチがあります。

  • AI活用:作業そのものを速くする(この記事の4ステップ)
  • 商品設計:毎回作り直さなくていい構造にする(パッケージ化)

この2つは両輪です。AI活用だけだと「速く作れる業者先生」で終わりますし、商品設計だけだと個別対応の負荷が残ります。両方やって初めて、20時間が7時間になり、さらに2回目以降は3時間になります。

8. 関連記事もあわせて

教材づくりのAI活用をさらに深めたい方は、次の記事も参考にしてください。

9. まとめ|教材づくり20時間を7時間にする4ステップ

最後に、この記事の要点を整理します。

20時間は業界標準であり、あなたの段取りが悪いわけではない。Chapman Allianceの調査(2010年)でも、集合研修の教材開発は1時間あたり22〜43時間が標準値です。問題は時間がかかることではなく、その時間が単価に反映されていないことです。

AIに渡す工程と、人が握る工程を線引きする。学習目標の設定、自分の事例、事実確認の3つは絶対にAIに渡さない。ここが7時間の下限を決めています。

4ステップは設計順で組む。①設計(人が2時間)→②素材投入(人が1時間)→③生成(AI主導で2時間)→④自分の言葉化・検証(人が2時間)。作業順ではなく設計順に並べることで、13時間が削れます。

マイGPTで仕組み化すると、2回目以降は3時間になる。自分の過去資料・アンケート・ヒアリングメモを知識として持たせた専用GPTを作れば、教材づくりがストック型に変わります。

削減した13時間の使い道を、先に決めておく。集客の仕組みづくり、既存顧客への深掘り提案、コンテンツの独自化。休息に消えると単価は1円も上がりません。

そして最も大事なことを繰り返します。教材づくりの効率化は、AI活用の三段階レベルでいうとレベル①「使いこなす」の段階です。ここで止まっていると、AIが普及するほど「安く早く作れるはずだ」という圧力にさらされます。

レベル②「教える」、レベル③「伴走する」へ進むこと。それが、AI時代に先生業として単価を上げ続ける唯一の道です。

教材づくりの効率化から、「AIを教える側」へ進みたい研修講師・コンサルタントの方へ

志師塾のAI伴走士養成セミナーでは、この記事で解説したレベル①「使いこなす」の先にある、レベル②「教える」・レベル③「伴走する」への進み方をお伝えします。顧客のAI活用を支援する商品の作り方、伴走支援で継続契約に繋げる設計まで、先生業に特化して解説します(参加費は無料です)。

AI伴走士養成セミナーの詳細・お申し込みはこちら

PAGE TOP
MENU
体験セミナー

TEL:03-5937-2346

カスタマーサポート(9:00 - 18:00 土日祝日除く)