
行政書士は、扱える仕事の幅がとても広い資格です。建設業許可や産業廃棄物、飲食店の営業許可といった事業者向けの手続き。相続や遺言、離婚協議書、外国人の在留資格といった個人向けの手続き。自動車の登録から補助金の申請まで、対象はさらに広がります。
その広さが、そのまま集客の壁になります。何でも引き受けられる人は、相手の記憶の中で「何の専門家でもない人」になってしまうからです。行政書士の集客は、手法を選ぶ前に「何の専門家か」を決めるところから始まります。
結論を先に、3つだけ。
- 順番1:誰の・どんな手続きを・どう引き受けるか。まずはこの一文から
- 順番2:Web・ブログ・ホームページ・Facebook・Instagram・YouTube・セミナー・営業の8つを、役割で使い分ける
- 順番3:単発の許認可で終わらせない。更新と家族と紹介で、続く関係に変えていきます
この記事では、これまでに3,200名を超える先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師など)の集客・顧客獲得を支援してきた志師塾が、この3つの順番を、明日から手を動かせる粒度まで分解して解説します。独立開業したばかりの方にも、開業から数年たって単発の仕事の繰り返しに疲れている方にも役立つ内容です。
目次
行政書士は、扱える手続きの多さがそのまま強みにはなりません。多いほど、相手の記憶には何も残らないからです。だから8つの手法より先に決めるのは、どの手続きの人として覚えてもらうか。その1つをどう選ぶのか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーは、そこから始まります。
1. 行政書士の集客が難しい3つの理由
行政書士の集客とは、許認可や相続といった手続きを必要としている人に見つけてもらい、依頼として受け止めるまでの一連の活動です。それが難しくなる原因は、努力の量ではありません。資格そのものが持つ、3つの構造。ここを先に押さえておくと、あとの打ち手がぶれなくなります。
1.1 業務範囲が広すぎて、何の専門家か伝わらない
行政書士が扱える書類は、官公署に提出するものだけでも膨大な種類にのぼります。この幅広さは資格の魅力でもあるのですが、伝える側から見ると厄介です。ホームページに「許認可から相続まで幅広く対応します」と書いた瞬間、読んだ人の頭には何も残らなくなってしまいます。
依頼する側の立場で考えてみてください。建設業許可を取りたい社長が探しているのは「行政書士」ではなく「建設業許可に詳しい人」です。広く書けば広く届くのではなく、広く書くほど誰にも届かなくなります。行政書士がポジショニングを他の士業以上に大切にしなければならない理由が、ここにあります。
日本行政書士会連合会の公表によると、全国の行政書士(個人会員)は54,186名(各都道府県の行政書士会所在地・会員数等/令和8年4月1日現在)。しかも分布は均等ではありません。東京都行政書士会だけで8,573名、大阪府が4,028名、愛知県が3,447名。いっぽう鳥取県は212名です。都市部ほど「同じ資格の人」が視界に入りやすく、資格名だけの名乗りは埋もれます。

1.2 「行政書士です」だけでは選ばれない
登記なら司法書士、税務なら税理士、労務なら社労士。それぞれの資格には「これを頼むならこの人」という分かりやすい看板があります。行政書士の看板は、その分だけ輪郭がぼやけてしまうのです。
加えて、許認可の申請は本人が自分で行うこともできます。役所の窓口や無料の相談会も競合になるわけです。「頼まなくても何とかなるかもしれない」と思われている前提に立つと、伝えるべきことが変わってきます。資格名を名乗るだけでは足りないのです。時間を買ってもらう理由と、任せたほうが確実になる理由を、自分の言葉で言い切れるかどうかが分かれ目になります。
ここは他の士業と決定的に違うところ。税理士に「自分で申告するので結構です」と言う社長はいても、そもそも比較の土俵にすら乗らない場面は多くありません。行政書士の場合、「本人申請」という無料の選択肢が、常に隣に置かれているのです。
1.3 単発で終わる仕事が多い
許可が下りれば、その案件は終わります。遺産分割協議書ができあがれば、そこで関係も途切れる。税理士の顧問契約のように、毎月の関係が自動的に続く形にはなりにくいのです。
だから、常に新しい依頼を探し続けることになります。売上は積み上がらず、いつまでも走り続ける感覚が抜けません。ここを変えないかぎり、集客の負担は減らないと考えてください。行政書士にとっては、獲得したあとの設計こそが経営の分かれ目になります。

2. 行政書士の集客は「専門分野を決める」ところから
ポジショニングとは、無競争の状態で顧客に選ばれる独自の場所を見つけることです。志師塾では、発信や広告といった手法より先に自分の立ち位置を固める「ポジショニング先行」の考え方を大切にしています。行政書士の場合、この順番を守る効果がとりわけ大きく出るのです。
2.1 「誰の・どんな手続きを・どう引き受けるか」で言い切る
専門分野を決めるといっても、複雑に考える必要はありません。「都内の建設会社の許可取得と更新を、決算変更届まで見届ける行政書士」「外国人を雇う中小企業の在留資格を、採用の段階から一緒に組み立てる行政書士」。この形で一言に収まれば十分です。
絞ると仕事が減りそうに感じるかもしれません。実際には逆で、絞った人のほうに相談が集まります。決め方に迷ったら、これまでに受けた依頼を書き出し、そのうち「成果が出て、しかも自分が面白かったもの」に印を付けてみてください。共通する業種と手続きが、そのまま専門分野の候補になります。
誤解しやすいのは、絞るのは「実際にやる業務」ではなく「相手に覚えてもらう場所」だということです。この記事の7.3で取り上げる大西祐子さんは、「中国語が話せる行政書士」と名乗りを絞ったうえで、会社設立から在留資格、社会保険の手続き、労務対応までをまるごと引き受けています。入口を1つにすることと、仕事の幅を狭めることは別の話です。
2.2 2軸の掛け算で「1万人に1人」の場所をつくる
1つの専門性で全国トップになるのは、現実的ではありません。志師塾が使うのは掛け算の考え方です。100人に1人のものを2つ組み合わせれば、1万人に1人になります。まったく新しいものを生み出すのではなく、すでに手元にあるものを組み合わせる。これがニューコンビネーションという発想です。
行政書士は、この掛け算がとりわけ効く資格だと考えてください。前職の経験が多様で、扱える手続きも多いからです。軸の取り方には、次のような切り口があります。
- 業種:建設業、産廃、飲食店、運送業
- 相手の状態で切る:はじめて許可を取る会社、外国人を初めて雇う会社、二代目に代替わりした会社
- 使える言語や文化はあるか:中国語が話せる、ベトナム語の窓口がある、英語で契約書が読める
- 前職の経験を掛ける:金融機関出身なら融資、旅行業出身なら観光事業者、施工管理出身なら建設業
- 地域:スキーリゾートの外国人スタッフ、港湾地区の運送会社
軸を選ぶときの注意点は2つ。相手の頭の中にすでにある判断基準を使うこと、そして軸は2つまでにすることです。3つ4つと重ねると、依頼する側が覚えられません。

2.3 目指すのは「この手続きならあの人」という第一想起
第一想起とは、その分野の話題が出たときに最初に名前が挙がる状態のことです。「この手続きといえば、あの行政書士さん」と思い出してもらえれば、紹介も口コミもそこから生まれます。
行政書士の依頼は「必要になった瞬間」に発生します。産廃の許可が要ると分かった日、相続の相談を受けた日、外国人スタッフを採用すると決めた日。その瞬間に名前が挙がるかどうかで、仕事の流れは変わってしまうのです。日ごろの発信は、この一瞬のために積んでおくものだと考えてください。
第一想起をつくる近道が、「一番乗り」を取ること。7.4で取り上げる明山崇さんは、コロナ禍でも多くの外国人が残っているニセコで、行政書士事務所を見かけないことに気づきました。そこから在留手続きを扱う最初の一人になっています。自分と同じ専門の人がその場にいなければ、それだけで一番乗り。地域でも、業種でも、集まりの中でも変わりません。
2.4 「自分でやれば無料」と比べられる前提で理由をつくる
依頼する側は、他の事務所とだけでなく「自分で申請する」という選択肢とも比べています。値段だけで勝負すると、行き着く先は消耗戦です。
言葉にしておきたいのは、次の3つ。手続きにかかる時間をどれだけ短くできるか、差し戻しや不許可をどう避けられるか、そして許可が下りたあとに何が続くか。ここを先に用意しておけば、価格は自分で決められるものになります。専門特化で単価を上げる考え方は、行政書士が単価10万円を取れる専門領域の記事でも解説しています。
ここまでが、手法より先に決めておくことです。ただ、絞ることへの不安は、頭の中だけでは消えません。消えるのは、絞った人が実際にどうなったかを見たときです。この記事の7章では、実際に名乗りを絞った行政書士4人の話を並べています。
3. 行政書士の価値を1秒で伝える3点セット
ポジショニングが決まったら、次は伝える形にします。志師塾が価値伝達の3点セットと呼んでいるのが、肩書き・キャッチコピー・プロフィールの3つ。名刺でも、ホームページの一番上でも、交流会の自己紹介でも、この3つが土台になります。
3.1 肩書きは13文字。「行政書士」だけでは何屋か伝わらない
肩書きとは、あなたの価値を1秒で伝える言葉です。目安は13文字。公式は「専門領域+一般名称」です。
行政書士の場合、一般名称は「行政書士」でかまいません。弁護士や税理士と並んで、名前は広く知られている資格だからです。問題は前半の専門領域のほう。「建設業専門の行政書士」「外国人雇用の行政書士」「相続手続き専門の行政書士」のように、手続きの名前か、相手の属性を先頭に置きます。
逆に避けたいのが「街の法律家」「頼れる行政書士」といった形容だけの名乗りです。誰が言っても成立してしまう言葉は、選ぶ材料になりません。
とはいえ、13文字の枠に何を入れるかを一人で決めるのは、堂々めぐりになりがちです。名乗りを絞ってから相談が増えた先生業の例は、志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで並べて見てもらえます。
3.2 キャッチコピー25文字は3つの要素で組む
キャッチコピーは25文字が目安です。志師塾が使うのは、次の3つの組み立て。
- メリット提示:相手にどんな良いことが起きるのか。「許可が取れる」で止めず、「工事を受注できるようになる」まで書く
- 具体性:数字で見せる。「差し戻しゼロ」「申請から取得まで最短○週間」のように
- To Meメッセージ:地域・業種・規模を名指しする。「都内の一人親方の方へ」で、自分ごとになります
この3つに、常識をひっくり返す好奇心をひとつまみ足してください。「なに?」と思わせられたら、読み手の指が止まります。
「丁寧な対応を心がけています」「お客様に寄り添う事務所です」では、読んだ人は動きません。書いたコピーを見返して、他の行政書士が同じ言葉を使っても成立するなら、それは売りになっていないと考えてください。
3.3 プロフィールは相手のために書く
プロフィールは、自分が書きたいことを書く場所ではありません。相手が「この人に任せて大丈夫か」を判断する材料です。志師塾では、伝えたいメッセージを先に2つ決めて、そのメッセージが伝わる出来事を選ぶという順番で組み立てます。
行政書士のプロフィールで効くのは、前職と資格取得の理由です。施工管理をしていたから現場の話が通じる。旅行会社で外国人の手続きに関わっていたから入管の実務が分かる。資格の前にあった経験こそが、他の行政書士との違いになります。合格年と登録年だけを並べたプロフィールでは、そこが伝わりません。

4. 行政書士の報酬は、相場ではなく設計で決まる
行政書士の報酬とは、書類の作成や手続きの代理に対して依頼者から受け取る対価のことです。この報酬には相場があると、多くの方が考えています。ただ、実際の統計を開くと違う景色が見えてきます。同じ手続きでも、受け取っている金額は驚くほど幅があるのです。
4.1 同じ手続きでも、報酬は数十倍に分かれている
日本行政書士会連合会は、5年に一度、全国の会員を対象に報酬額の統計調査を行っています。令和7年度の調査結果(令和8年1月実施)から、代表的な業務を見てみましょう。
| 業務 | 回答者数 | 平均 | 最小値 | 最大値 | 最頻値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 遺産分割協議書の作成 | 705 | 69,752円 | 1,000円 | 1,000,000円 | 55,000円 |
| 遺言書の起案及び作成指導 | 459 | 76,855円 | 3,000円 | 304,400円 | 50,000円 |
| 建設業許可申請(法人・新規)知事 | 512 | 151,341円 | 30,000円 | 365,000円 | 165,000円 |
| 産業廃棄物収集運搬業 許可申請〔積替保管を除く〕 | 257 | 125,112円 | 16,500円 | 750,000円 | 110,000円 |
| 永住許可申請 | 141 | 145,323円 | 10,000円 | 440,000円 | 100,000円 |
出典:日本行政書士会連合会「報酬額の統計」令和7年度報酬額統計調査の結果(令和8年1月実施)
目を引くのは遺産分割協議書です。同じ書類なのに、最小1,000円から最大1,000,000円まで開いています。価格を決めているのは手続きの種類ではなく、引き受け方のほうだということ。この統計は、そこをはっきり示しています。

分布を見ると、2万円未満が10.5%。10万円以上は21.7%を占めています。境目の金額どうしを単純に割れば、その差は5倍。同じ書類を、5倍高い帯で引き受けている行政書士が2割いることになります。
もう1つ、事業者向けと個人向けで様子が違うところにも目を向けてください。建設業許可の申請(法人・新規・知事)は、15万円以上20万円未満に43.6%が集まり、5万円未満はわずか0.6%です。相場らしい相場ができています。相場が薄いのは、相続や遺言のような個人向けの手続きのほう。ここは引き受け方しだいで金額が動く領域だということです。
4.2 値付けの目安は「価格の3倍のメリット」
では、どう決めるのか。志師塾が使っている目安は、提示する価格の3倍のメリットを相手に示せるかどうかです。10万円の報酬なら、30万円ぶんの意味を説明できるか。説明できるなら、その価格で通ります。
説明できないときに疑うべきは、価格の高さではありません。材料の不足です。この手続きを自分でやったら何時間かかるか。差し戻しになったら再申請までどれだけ延びるか。そして、許可が1か月早く下りたときに前倒しになる売上。相手の言葉で数えられる形にしたとき、はじめて金額に意味が乗ります。
4.3 単価を上げたいなら、手続きの先を売る
報酬を上げる方法は、値上げの交渉ではありません。売るものを変えることです。書類の作成だけを売っていると、比べられるのは金額と納期だけになってしまいます。
建設業許可なら、許可の取得ではなく「公共工事に参加できる状態」を売る。経営事項審査や入札参加資格の申請まで一続きで設計すれば、単価も関与期間も変わります。在留資格なら、ビザの取得ではなく「外国人が定着して働き続ける状態」を売る。依頼者が本当に欲しいのは書類ではなく、その先にある状態です。年収の考え方は行政書士の年収を上げていく方法でも整理しています。
5. 行政書士の集客方法8選|役割で使い分ける
行政書士の集客方法とは、依頼が必要になった人と出会い、任せてもらうまでを運ぶ手段のことです。立ち位置と伝え方が決まったら、いよいよここに入ります。行政書士の集客方法は大きく8つ。ただし、8つ全部に同時に取り組む必要はありません。それぞれの役割を知り、自分の専門分野に合う組み合わせを選ぶことが大切です。
| 手法 | 主な役割 | ポイント |
|---|---|---|
| Web集客 | いま頼み先を探している人と出会う | 手続き名で探されている |
| ブログ | 判断の物差しを見せる | 手続き解説だけでは埋もれる |
| ホームページ | 依頼を受け止める窓口 | 料金と対応地域を隠さない |
| 紹介元との関係を保つ | 新規開拓の道具ではない | |
| 個人のお客様に見つかる | 相続・在留など分野を選ぶ | |
| YouTube | 会う前に人柄を伝える | 再生数は目標にしない |
| セミナー | まだ困っていない人に届く | 共催で集客の負担が減る |
| 営業(個別相談) | 依頼を決めてもらう場 | 会う前の準備で決まる |
5.1 出会う:Web集客・ブログ・ホームページ
行政書士の依頼は、必要になった人が自分で検索するところから始まることが多くあります。この「いま頼み先を探している人」を受け止める入り口が、Web集客・ブログ・ホームページの3つです。
検索されているのは資格名ではありません。「建設業許可 決算変更届」「配偶者ビザ 不許可」のような、手続きの名前と困りごとの組み合わせです。ここに合わせて言葉を用意できるかどうかで、届く量は大きく変わります。
3つの役割も分けておきましょう。ブログは記事ごとに検索から人を連れてくる係。ホームページは、連れてこられた人が「任せて大丈夫か」を確かめる係です。Web集客は、その2つに広告や外部サイトを組み合わせて、流れを1本にする設計を指します。
5.2 深める:Facebook・Instagram・YouTube
SNSの使い分けを決めるのは、専門分野が事業者向けか個人向けかという線引きです。建設業許可や産廃のような事業者向けの仕事なら、Facebookで紹介元とのつながりを保つほうが効きます。相続や在留資格のような個人向けの仕事であれば、Instagramで見つけてもらう道も開けるでしょう。
在留資格の分野は、市場そのものが動いています。出入国在留管理庁の公表では、令和7年末の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から35万6,418人(9.5%)増え、初めて400万人を超えました(令和7年末現在における在留外国人数について)。本人と家族が探す場面が増えるということは、個人が自分でスマートフォンから探す入口が広がるということでもあります。

YouTubeの役割は、この2つとは少し違います。目的は再生数ではなく、会う前に人柄を伝えること。任せて大丈夫な相手かどうかを測っている人にとって、話す様子が見える動画は強い判断材料になるのです。
5.3 決める:セミナー・営業(個別相談)
セミナーは、まだ困っていない人に先回りできる手法です。相続や事業承継のように「そのうち必要になる」テーマとの相性がよく、金融機関や不動産会社、商工会との共催なら集客の負担も軽くなります。
個別相談は、売り込みの場ではありません。「この人にお願いしたい」を確認してもらう場です。志師塾では、個別相談を「解決策を教える場ではなく、問題点を明らかにして解決したい気持ちを高める場」と位置づけています。その場で解決策を全部話してしまうと、「ありがとうございます、自分でやってみます」で終わってしまうからです。
行政書士の場合、ここは特に注意したいところ。手続きの進め方を丁寧に説明すればするほど、「それなら自分で申請できそうだ」と相手に思わせてしまう危険があります。伝えるのは手順ではなく、どこでつまずくかのほうです。
5.4 8つのうち、最初に手を付ける2つの選び方
8つを同時に走らせると、どれも中途半端になります。志師塾がすすめるのは、すぐ効くものと、時間がかかるものを1つずつ持つことです。
すぐ効くのは、人を介する手法。紹介、交流会、共催セミナー、他士業との連携です。数週間で反応が返ってきます。時間がかかるのは、検索から人が来る手法。ブログとホームページは、育つまでに半年から1年かかると思ってください。
開業したばかりなら、人を介する手法で今月の売上をつくりながら、検索の入口を育てる。この二本立てが現実的です。8つの中でどれとどれを選ぶかは、専門分野が事業者向けか個人向けかで決まります。

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6. 独立開業後の行政書士が、単発の依頼で終わらせないために
行政書士が単発の依頼で終わらせないための設計とは、一度引き受けた仕事を、更新・家族・紹介の3つの経路で次につなげる仕組みのことです。経営を安定させる鍵は、この獲得したあとの設計にあります。ここを変えると、毎月ゼロから探し直す消耗から抜け出せるのです。
6.1 開業資金は「何に使うか」で意味が変わる
独立開業を控えた方から、開業資金の相談をよく受けます。登録にかかる費用や事務所まわりの準備は避けられませんが、悩みどころは残りの使い道です。
削っても困りにくいのは、立派な内装や高機能な複合機。反対に削るべきでないのは、専門分野を伝える受け皿づくりと、最初の半年から1年を食いつなぐ生活費です。開業資金は「開業するための費用」ではなく「依頼が来るまでを支える資金」だと考えると、配分の判断がしやすくなります。開業までの流れは、行政書士の独立開業ガイドで詳しく解説しています。
6.2 更新のある許認可は、そのまま継続の芽になる
建設業許可や産業廃棄物の許可、外国人の在留資格。これらには期限があり、決められた時期に更新や届出が必要になります。ここが行政書士の大きな強みです。
この強みが数字にも出ています。国土交通省の調査では、令和7年度中に建設業許可が失効した業者は17,998社。そのうち更新の手続きを行わなかったことで失効した業者が9,725社あり、前年度の4,595社から111.6%増えました(建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在))。全国の許可業者483,823社という母数の中で、更新を落とす会社が1年で2倍以上に増えていることになります。

やることは単純で、受任した案件の期限を一覧にしておくだけ。更新の数か月前に自分から連絡すれば、相手にとっては「忘れずに教えてくれる人」になります。単発の許認可が、期限のたびに戻ってくる関係に変わるわけです。分野によっては、年に一度の届出をまとめて引き受ける形も組めます。

6.3 相続の依頼には、家族の中に次がある
相続の手続きは、一度きりに見えます。ただ、依頼してくださった方には配偶者がいて、子や兄弟がいる。今回の相続を丁寧に終えた相手は、次に遺言を考えるとき、あるいは次の世代の相続が起きたときに、まず思い出してくれます。
大切なのは、手続きが終わった時点で関係を切らないことです。年に一度の便りでも、状況を尋ねる短い連絡でも構いません。依頼が終わったあとの数年が、次の依頼と紹介を生む時間になります。
では、紹介はどこから生まれるのか。志師塾は、感情だと考えています。メリットがあるだけでは紹介は出ません。自慢したくなること、感謝を伝えたくなること、人に話したくなる面白さ、期待を超えた感動。この4つのどれかが相手の中に残ったときに、名前が誰かに渡ります。手続きの正確さは前提であって、紹介の理由にはなりにくいところです。
6.4 他士業との連携と、AIとの分担を決める
登記が絡めば司法書士、税額の判断が絡めば税理士、争いになれば弁護士。扱えない部分を正直に伝えたうえで、任せられる相手をその場で挙げられる行政書士は、相談の一次窓口として選ばれます。連携先を持つことが、そのまま営業力になるのです。
AIとの分担も、早めに決めておきましょう。定型的な書類づくりや文章の下書きは、AIに寄せられる領域が増えています。反対に、要件を満たすかどうかの判断や、窓口との調整、依頼者の事情の聞き取りは人の仕事です。下ごしらえはAIに、判断と説明は人に。この考え方は、AI代替93%と行政書士が生き残る5つの道でも掘り下げています。
7. 行政書士の集客に成功した志師塾卒業生4人の実例
ここまでの話が実際にどう形になるのか。志師塾で学んだ行政書士4人の取り組みを、公開済みのインタビュー記事から引いて見ていきます。
7.1 越阪部龍矢さん|「契約書専門」をやめ、融資と財務に絞った
東京都目黒区でOSA行政書士事務所を営む越阪部龍矢さん。新卒で電子機器部品メーカーの法人営業を担当しながら資格を取り、2022年8月に独立されました。専門は融資サポートと財務コンサルティングです。
開業直後は苦しい時期が続きました。「FAXDM、郵送DM、手書きDM&テレアポなど、主にアナログな方法を中心に集客を試みていましたが案件獲得はゼロ」。一日中集客に時間を使っても結果が出ず、お金だけが減っていく。テレアポで断られ続けた時期は、独立は無理だったかと思うこともあったそうです。
転機は、名乗りを変えたところにありました。もともと目指していたのは「契約書専門の行政書士」。志師塾のフロントセミナーで五十嵐塾長に相談したところ、「予防系のビジネスは難しいですよね」と指摘され、中小企業の経営者には売りにくいモデルだと気づきます。最初のお客様から受けた「コロナ融資の返済が始まると、あと数ヶ月で資金ショートする」という相談も重なり、融資と資金繰りに専門を絞ることを決めました。
成果には個人差がありますが、結果は開業からわずか5ヶ月程度での事業の安定化。志師塾では前半のMVPと後半の実践大賞をダブル受賞されています。実践大賞の理由は商工会議所のセミナー講師の依頼を獲得したことで、きっかけは担当者がブログを読んで気に入ってくれたことでした。2.1で書いた「絞る」と、5.1の「記事で入口を作る」が同時に効いた形です。詳しくは越阪部龍矢さんのインタビュー記事をご覧ください。
7.2 吉村猛さん|「遺言×エンターテインメント」で唯一の場所をつくった
大阪市鶴見区を拠点に、2015年から吉村行政書士事務所を営む吉村猛さん。遺言や相続、在留資格の申請を手がけています。
開業当初の方針は「地域に根ざすこと」でした。文房具屋やリサイクルショップにチラシを置いてもらい、経営者が集まると聞けばスナックにも足を運ぶ。それでもすぐには案件につながらず、資金を切り崩す日々が続きます。
もう1つ悩みがありました。自作の歌やコントをつくる表現活動です。始めると気持ちが引きずられ、行政書士の仕事が手につかない。「仕事も軌道に乗っていないのにこんなにギター触っていていいのかな」と自責の念が募っていったといいます。
志師塾の個別コンサルティングで清永講師から返ってきたのは、意外な一言でした。「行政書士の活動と表現活動を混ぜましょう」。当初は抵抗があったものの、自分の経歴を20以上の質問で掘り下げる授業を経て、「遺言×エンターテインメント」という誰にも真似できない立ち位置にたどり着きます。2.2で書いた2軸の掛け算が、そのまま形になった例です。
卒業後は、コントや歌を交えた遺言作成セミナーを数十回開催。「展開が気になるのでつい話に聞き入ってしまう」といった声が届いています。事務所への相談も年々増え、直近では新たに人を雇わないと案件が回せないほど。成果には個人差がありますが、志師塾で決めた立ち位置が、そのまま今の相談量につながっています。詳しくは吉村猛さんのインタビュー記事をどうぞ。
7.3 大西祐子さん|「中国語が話せる行政書士」と名乗り続けた
大西祐子さんは、行政書士と社会保険労務士の2つの資格を持ち、中国人経営者の支援を専門にされています。会社設立から経営管理ビザの取得、社会保険の手続き、従業員のビザ申請や労務対応まで、バックオフィスの機能をまるごと引き受ける形です。本格的な独立は2017年。以来、中国人経営者に寄り添う専門家としての道を歩み続けています。
注目したいのは、名乗りを先に立てたことです。入管業務に取り組み始めた当時、対応している行政書士はまだ多くありませんでした。大西さんは実績が少ない時期から「中国語が話せる行政書士」と名乗り、ブログでその強みを発信し続けます。「やりたい」という姿勢を出し続けたことが「やっている」「できる」というイメージにつながり、紹介が舞い込むようになったといいます。3.1で書いた肩書きの話が、そのまま結果に出た形。
もう1つ、失敗から学んだ話も参考になります。外国人雇用をテーマに初めて開いたオンラインセミナーに集まったのは、経営者ではなく同業の行政書士や社労士ばかり。「経営者は法律を知りたくないんですよね。知りたいのは、同業者だったんです」。その気づきから講座化へ舵を切り、受講者2名から始めて、価格は10万円から20万円へ上がっていきました(成果には個人差があります)。詳しくは大西祐子さんのインタビュー記事をご覧ください。
7.4 明山崇さん|地域と手続きを掛け合わせ、開業直後から案件が続いた
北海道のニセコで行政書士事務所を開業した明山崇さん。旅行業界に19年勤め、札幌支店長まで務めた経歴の持ち主です。新卒で入った会社ではイタリア・ミラノに赴任し、留学生のビザ取得を現地でサポートしていました。
独立のきっかけは、コロナ禍でニセコを訪れたときの気づきでした。多くの外国人が働いているのに、行政書士事務所を見かけない。「この人たちはどうやってビザをとっているのかな」という疑問から、合格したまま使っていなかった資格を思い出します。世界的なスキーリゾート×外国人の在留手続きという、他の誰とも重ならない場所がそこにありました。
初めての補助金申請は、志師塾の同期に頼んで「お試し」でやらせてもらったそうです。結果は採択。さらに何人かの同期の申請を支援し、こちらもほとんどが採択されました。実績ができると、今度は同期からお客様となる事業者を紹介してもらえるようになります(成果には個人差があります)。いまは積極的な営業活動をしなくてもよいほど、多くの案件が全国から届いているとのこと。詳しくは明山崇さんのインタビュー記事で読めます。
7.5 4人に共通していたこと
専門分野も地域も、前職もばらばらです。それでも、共通点が3つありました。
- 資格の外にあるものを掛けている:越阪部さんは法人営業、吉村さんは表現活動、大西さんは中国語、明山さんは旅行業と地域
- 名乗りを先に変えた:4人とも、業務のやり方より先に「何の人か」を言い直しています
- 入口は1つ、仕事は広い:絞ったのは覚えてもらう場所だけ。実際に引き受ける範囲は狭めていません
行政書士の資格そのものは、4人とも同じです。違ったのは、資格の前にあった経験をどこに掛けたか。では、あなたの前職や趣味は、どの手続きに掛かるのでしょうか。その掘り出しから、手続きへの掛け合わせまでを一緒にやるのが、志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーです。
8. 行政書士の集客でよくある質問
行政書士の集客について、志師塾によく寄せられる質問を7つにまとめました。相談が集まるのは、着手の順番・絞り方・報酬・手法の優先順位の4つです。
8.1 行政書士の集客は、何から始めればよいですか?
専門分野を一文で言い切るところからです。「誰の・どんな手続きを・どう引き受けるか」を決めてから、手法を選びます。順番を逆にすると、発信の量だけが増えて反応が返ってこない状態になります。
8.2 専門分野を絞ると、仕事が減りませんか?
減りません。絞るのは「覚えてもらう場所」であって、「実際に引き受ける業務」ではないからです。建設業許可の専門家として認知された行政書士に、その社長から相続や補助金の相談が持ち込まれることは普通にあります。入口を1つにするほど、入ってからの幅は広がります。
8.3 開業したばかりで実績がありません。それでも集客できますか?
できます。実績の数より、相談する側が「自分のことだ」と感じる一文があるかどうかで決まるからです。志師塾の卒業生には、入管業務の実績がまだ少ない段階から「中国語が話せる行政書士」と名乗り続け、紹介を得ていった方がいます。実績が足りないうちは、前職の経験や、自分が深く関わってきた業界を材料にしてください。
8.4 行政書士の報酬額はどう決めればよいですか?
相場に合わせて決めると、いつまでも相場のままになります。日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査では、遺産分割協議書の作成だけでも最小1,000円から最大1,000,000円まで開きがありました。目安は、提示する価格の3倍のメリットを相手に示せるかどうか。示せないなら、価格が高いのではなく説明する材料が足りていません。
8.5 ホームページとSNS、どちらを先に手を付けるべきですか?
ホームページが先です。SNSで興味を持った人は、必ず事務所の情報を確かめに来ます。そのとき受け止める場所がないと、せっかくの関心が消えてしまう。ホームページに料金の決まり方と対応地域、依頼の流れを載せてから、SNSに手を広げてください。
8.6 行政書士の集客の成果が出るまで、どのくらいかかりますか?
手法によって違います。紹介・交流会・共催セミナーは数週間で反応が出ることもあり、ブログの検索流入は半年から1年かかるのが普通です。だからこそ、すぐ効くものと時間がかかるものを同時に走らせます。目先の売上を人のつながりでつくりながら、検索の入口を育てる。この二本立てが、開業後の現実的な進め方です。
8.7 AIが普及すると、行政書士の仕事は減りますか?
定型的な書類作成の割合は減っていきます。ただ、要件を満たすかどうかの判断、窓口との調整、依頼者の事情を聞き取る場面は残ります。減るのは作業であって、仕事そのものではないのです。下ごしらえをAIに任せて空いた時間を、相談と設計に振り向けられるかどうかが分かれ目になります。
9. 行政書士の集客方法を手法別に深掘りする
ここまでで全体像はつかめたはずです。志師塾では、行政書士の集客方法を手法別に解説した記事を用意しています。取り組みたいところから読み進めてください。
9.1 まず土台を整える:ホームページ・ブログ
依頼を受け止める窓口と、判断の物差しを見せる発信。土台になるのは、この2つ。
- 行政書士のホームページ集客4視点|依頼が届く設計:料金と流れの見せ方
- 行政書士のブログ集客4つのコツ|依頼につながる書き方:手続き解説で埋もれないために
9.2 出会いを増やす:Web集客・SNS
土台ができたら、見つけてもらう量を増やしていきましょう。専門分野が事業者向けか個人向けかで、選ぶ場所も変わります。
- 行政書士のWeb集客4手順|許認可で指名される仕組み:入口から依頼までを1本にする
- 行政書士のFacebook集客4手順|紹介が続く使い方:紹介元との関係を保つ
- 行政書士のInstagram集客4手順|相続・在留で選ばれる:個人のお客様との出会い方
- 行政書士のYouTube集客4手順|会う前に信頼を作る:話す姿が判断材料になります
9.3 依頼を決める:セミナー・営業(個別相談)
最後は、出会いを依頼に変える場面です。実際に独立後の仕事を積み上げた行政書士の取り組みは、行政書士の成功事例インタビューで読めます。
- 行政書士のセミナー集客4手順|相談が生まれる設計:まだ困っていない人に届ける
- 行政書士の営業4経路|開業直後から仕事を得る方法:売り込まずに依頼をいただく
10. まとめ:行政書士の集客は「何の専門家か」を決めることから
行政書士の集客のポイントを、5つに整理しました。
- 業務範囲が広いからこそ、専門分野を決めないと誰にも届かない:全国に54,186名。資格名だけの名乗りでは埋もれます
- 2軸の掛け算で、1万人に1人の場所をつくる。前職も地域も語学も、掛ける材料になります
- 「自分でやれば無料」と比べられる前提で、任せる理由を用意する
- 報酬は相場ではなく設計で決まる。同じ手続きでも金額は数十倍に分かれています
- 8つの手法は役割で使い分ける:すぐ効くものと時間がかかるものを、1つずつ
そして、いちばん効くのが獲得したあとの設計です。更新のある許認可、家族の中に次がある相続、紹介を生む4つの感情。この3つを持っておけば、毎月ゼロから探し直す必要はなくなります。
順番さえ守れば、行政書士の集客は着実に積み上がるものです。安さで選ばれるのではなく、「この手続きなら、あなたにお願いしたい」と言われる状態を今日から設計していきましょう。
明日から手をつけるなら、この3つからどうぞ。
- まずは、これまでに受けた依頼の書き出しから。成果が出て、しかも自分が面白かったものに印を付けます
- その印から「誰の・どんな手続きを・どう引き受けるか」を一文にして、知人に読んでもらう
- 受任済みの案件の更新期限を一覧にして、直近3件に連絡する日を決めてください
いちばん時間がかかるのは、最初の一文です。どの手続きの人として覚えてもらうか。この1つを決めきれずに、発信だけ増やしてしまう行政書士は少なくありません。一文の決め方から、単発の依頼を続く関係に変えるところまで。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーは、その順番で組み立ててあります。
更新のたびに戻ってくる関係を、いまの依頼からつくりたい行政書士の方へ
許可が下りた時点で関係が終わるかどうかは、受任する前の設計で決まります。その組み立て方を、志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで持ち帰ってください。参加費は無料です。
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- 行政書士の専門特化|単価10万の領域7選|絞る場所を具体的に決めたい方へ
- 行政書士として独立開業するには?開業資金・手続きの流れ・平均年収を紹介|開業前に必要な準備の一覧
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この記事について
監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)。士業・コンサルタント・コーチ・講師といった「先生業」に特化した集客・顧客獲得支援を行い、これまでに3,200名を超える先生業の方を支援してきました。本記事は、行政書士の受講生・卒業生への支援で得た知見と、日本行政書士会連合会・国土交通省・出入国在留管理庁の公表資料をもとに構成しています(公的データの確認日:2026年8月30日/支援人数の原本確認日:2026年8月16日)。掲載した卒業生の成果は個人の実績であり、同じ成果を保証するものではありません。