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相続で選ばれる税理士の5手順|特需3年の作り方

相続は、税理士にとって完全なレッドオーシャンだと言われます。ところが国税庁の統計を見ると、相続税の申告が必要になるのは、亡くなった方の約10人に1人だけ。残り9割の相続では「相続税の専門家」は呼ばれません。

それでも名刺に「相続専門」と刷る税理士は増え続けている。これが、相続は飽和していると感じる本当の理由です。

一方で、これからの3年間、相続まわりの相談は確実に増えます。理由はあとで3つ挙げますが、先に結論から。特需は来ます。ただしその特需が流れていくのは、相続税の計算ができる人ではなく、最初に相談された人のところです。

この記事では、相続で選ばれる税理士になるための5手順を、順番どおりに解説します。扱うのは次の5つ。

  • 手順1:相続での「選ばれる理由」を決める(誰の、どの困りごとに当てるか)
  • 手順2:相続のドアノック商品をつくる(いきなり申告を売らない)
  • 手順3:最初に相談される「コンダクター」になる(紹介の設計)
  • 手順4:顧客獲得型セミナーとWeb発信で見込み客を集める
  • 手順5:単発の申告を「面」に変えて、特需が終わっても残る収入にする

志師塾は、先生業(士業・コンサルタント・コーチ・講師)専門のビジネススクールとして、これまで3,200名を超える先生業の顧客獲得を支援してきました(2026年8月時点)。税理士の卒業生も多く、相続・事業承継・業種特化で道を開いた事例が蓄積されています。本記事は、その現場で何度も再現されてきた型に、国税庁・法務省・厚生労働省の公的データを重ねて構成しました。

読み終えるころには、「相続に強い税理士です」という名乗りを、具体的な依頼が発生する導線に組み替える順序が見えているはずです。まずは「特需3年」が何を指すのかから整理します。

ただ、ここから先の5手順は相続の知識の話ではありません。相続で選ばれる設計の話です。実務ができることと、依頼が来ることは別の問題。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、決めた専門を依頼につなげる導線の作り方を、先生業の事例で解説しています。

「専門は決めた。でも相談が来ない」。その差は実務力ではなく、相談される前にどう知られているかで決まります。

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Table of Contents

1. 相続で選ばれる税理士が少ない理由|「特需3年」の正体

相続特需3年を生む3つの期限

最初に、相続市場の実像を数字で押さえます。感覚で「相続は儲かるらしい」「もう飽和しているらしい」と判断すると、打ち手がずれます。

1.1 相続税の申告は年約15万件、税理士は約8万人|数字で見る相続市場

国税庁「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税の課税割合は9.9%。被相続人一人あたりの税額は1,930万円です。日本の年間死亡数は160万人前後で推移していますから、課税対象となる被相続人は年間およそ15万人台という規模になります。

一方、税理士の登録者数は8万人を超えています。単純に割り算をすると、税理士1人あたり年間2件に届きません。

項目 数値 意味するもの
相続税の課税割合 9.9% 相続の約9割は「相続税申告がない相続」
被相続人1人あたり税額 1,930万円 1件あたりの金額インパクトは大きい
年間の死亡数 160万人前後 母数そのものは増え続けている
税理士登録者数 8万人超 単純平均では1人年2件未満

もちろん、実際には相続専門をうたう一部の事務所に案件が集中していて、平均値はあまり意味を持ちません。ここから読み取るべきは別のことです。

相続税申告という「後工程」だけを狙うと、少ないパイを8万人で奪い合うことになります。これが、相続が飽和して見える構造です。しかし相続税申告が不要な9割の相続にも、遺産分割、名義変更、不動産の売却、空き家、生前の贈与設計といった相談は確実に存在します。そこが手つかずの領域です。

出典:国税庁 統計情報/厚生労働省 人口動態調査

1.2 これからの3年に起きること|相続特需を作る3つの期限

「特需3年」と呼んでいるのは、期限のある制度変更が重なる期間のことです。制度に期限があれば、見込み客には「今、動く理由」が生まれます。

(1)相続登記の申請義務化と、2027年3月31日という締切

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記申請が義務化されました。見落とされやすいのが、施行前に発生していた相続も対象になることです。その期限が2027年3月31日。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

何年も前に親から相続したまま名義を変えていない不動産が、全国に大量に残っているわけです。しかもその持ち主は、期限が迫らないと動きません。

(2)生前贈与の加算期間が3年から7年へ

2024年1月1日以後の贈与から、相続財産に加算される生前贈与の期間が、段階的に3年から7年へ延長されます。完全に7年加算になるのは2031年1月1日以後の相続ですが、2027年1月1日以後に発生した相続から、加算期間は実質的に3年を超えはじめます(延長された4年分には、合計100万円の控除があります)。

同時に、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が設けられました。「どちらを使うべきか」「いつから始めるべきか」という判断が、新たに必要になったわけです。この判断は、資産家本人には下せません。

(3)母数そのものが増え続けている

いわゆる団塊世代は2025年までに全員が75歳以上になりました。年間の死亡数は2040年前後にピークを迎えると推計されています。相続の発生件数は、少なくとも今後十数年は増加基調です。

出典:法務省 相続登記の申請義務化特設ページ/国税庁タックスアンサー No.4161 贈与財産の加算

1.3 特需が来ても、あなたに相続の相談が来るとは限らない

ここが本題です。制度に期限があり、母数が増える。市場環境としては追い風しかありません。それでも、相談が殺到する事務所と、まったく電話が鳴らない事務所に分かれます。

志師塾では、先生業が選ばれなくなる状態を「他の先生でもいいや」と言われている状態と呼んでいます。相続税の計算ができる税理士は8万人います。実務の正確さで差をつけようとしても、見込み客はその差を見極められません。相手が比較できるのは、腕ではなく「自分の悩みと、どれだけ近いことを言っているか」だけです。

だから必要なのは、実務の深掘りではなく、選ばれる理由(キラーコンテンツ)の言語化になります。順番に見ていきましょう。

2. 【手順1】相続で選ばれる税理士の「選ばれる理由」を決める

相続の小人(ターゲット)5候補

5手順の1番目は、もっとも地味で、もっとも効きます。ここを飛ばして集客だけ頑張ると、問い合わせは増えても価格でしか比べられません。

2.1 「相続に強い税理士」は、名乗ったうちに入らない

「相続に強い税理士」「相続専門」。この表現には、情報がほとんど含まれていません。資格名や専門分野名をそのまま肩書にしても、相手の頭には何も残らないからです。

志師塾代表の五十嵐も、中小企業診断士として開業した当初は資格名を肩書にして、まったく選ばれませんでした。その後、経営コンサルタント、研修講師、ITコンサルタント、Webマーケティングコンサルタントと開業1年のうちに肩書を変え続けて、ようやく仕事になったという経緯があります。

名乗りに必要なのは、資格名でも専門分野名でもなく、「誰の、どんな状態を、どう変えるのか」です。

2.2 相続の小人(ターゲット)を一人に決める

志師塾では、サービスを届ける具体的な一人の人物像を「小人(こびと)」と呼んでいます。単価を決めているのは腕ではなく、この小人の設定だという考え方です。

実際、ある音楽の演奏家は、技術は一切変えないまま、訴求する相手と課題設定を変えただけで単価が375倍になりました。あるボイストレーナーは「歌が上手くなりたい人」から訴求対象を変え、同じ技術のまま単価が8倍になっています。

相続に当てはめると、小人の候補はこれだけ分かれます。

小人の候補 その人の頭の中にある言葉 支払原資
賃貸不動産を持つ70代の大家さん 「このアパート、子どもに残して大丈夫か」 家賃収入・納税資金
後継者のいないオーナー社長 「自社株をどうするか決められない」 会社の経費
親の介護をしている50代の長女 「兄ともめたくない」 相続財産
実家が空き家になった遠方居住者 「名義も変えていない。売れるのか」 売却代金
すでに申告を終えた相続人 「払いすぎていないか不安だ」 還付される税金

この5人は、悩みの言葉も、相談するタイミングも、相談する相手も違います。全員に向けて書かれたメッセージは、誰にも届きません。「なんでもやります」は「何屋さんか分からない」と同じです。

2.3 前工程へシフトする|相続の「前」で悩んでいる人を取りに行く

志師塾がよく使う打ち手が「前工程へのシフト」です。本命の仕事(後工程)で正面から競争せず、その一歩手前で悩んでいる人に特化して、結果として本命の仕事を受注する考え方になります。

分かりやすい例があります。ある税理士は、独立当初から「大家さん専門税理士」として業種特化しました。相続の専門家だとは一切打ち出していません。ところが大家さんの顧問先が増えた結果、相続の相談がひっきりなしに入るようになりました。顧問先は500件に達し、新規は断っている状態です。

理由は単純で、賃貸不動産を持っている人は、ほぼ全員が相続の当事者だから。「相続税の専門家」と名乗って相続相談を待つよりも、相続が発生する前の層と日常的につながっているほうが、確実に先に相談されます。

相続の前工程は、たとえばこう整理できます。

  • 不動産オーナーの賃貸経営・法人化(→ 相続)
  • オーナー社長の財務・資金繰り(→ 自社株・事業承継)
  • 医院・歯科など個人事業の経営支援(→ 承継・相続)
  • 高齢者の家計・保険の見直し(→ 生前贈与・納税資金)

2.4 相続で選ばれる理由を一文にする

ここまでを一文にまとめます。穴埋めで構いません。

「〇〇(小人)の、△△(困りごと)を、□□(あなた固有の経験・切り口)で解決する税理士です」

□□に入るのが、志師塾でいうキラーコンテンツです。元国税調査官としての調査現場の経験、不動産業界での実務、金融機関での融資経験、相続でもめた当事者だった実体験。経歴の中にある非対称な情報が、そのまま選ばれる理由になります。

注意点をひとつ。この一文は、一度作って終わりではありません。志師塾でも、商品内容も価格も定期的に見直しています。反応を見ながら半年単位で磨き直してください。

3. 【手順2】相続のドアノック商品をつくる|税理士の業務特化戦略

相続のドアノック商品6例

選ばれる理由が決まったら、次は入口の商品です。ここでつまずく人がとても多い。

3.1 いきなり相続税申告を売らない

法人開拓で「いきなり顧問契約を狙わない」のと同じで、相続でもいきなり相続税申告を売ろうとすると、ほぼ受注できません。相続税申告は、相続が発生してはじめて必要になる商品です。発生するまで、こちらからは何もできません。待っている間に、葬儀社や金融機関や不動産会社が先に相続人と会ってしまいます。

志師塾が法人開拓で使う考え方に「業務特化戦略」があります。顧問契約のようにまとめて請け負う商品ではなく、特定の業務に絞った商材でまず入り込む。その入口商品をドアノック商品と呼びます。

人材採用支援をドアノック商品にしている中小企業診断士は、採用セミナー → 採用コンサル → 人事制度コンサル・研修と、受注が連鎖する流れを作っています。相続でも同じ設計ができます。

3.2 相続のドアノック商品7例

相続で使えるドアノック商品を挙げます。共通点は、相続が発生する前、または発生直後に、相手に「今やる理由」があることです。

ドアノック商品 今、動く理由 後ろにつながる仕事
相続税の簡易試算・財産目録の作成 金額が分からないこと自体が不安 生前対策・申告
二次相続まで含めた分け方シミュレーション 一次だけで決めると損をする 遺言・申告
贈与プランの設計(7年加算・精算課税の選択) 制度移行期で判断が変わる 毎年の贈与サポート
相続登記の期限チェック(2027年3月31日) 過料の対象になる 譲渡・空き家売却・申告
自社株評価と承継の現状診断 社長の年齢という締切がある 事業承継・顧問
申告済み案件のセカンドオピニオン 払いすぎ・調査リスクの不安 更正の請求・顧問
不動産オーナー向け「相続に備える賃貸経営」診断 空室・修繕・納税資金が同時に迫る 法人化・顧問・相続

この中で、2026年から2028年にかけてもっとも強い「今、動く理由」を持つのが、相続登記の期限チェックと、贈与プランの設計です。どちらも期限が決まっているため、相手が先延ばしにできません。

3.3 相続の値付けは「原資に乗っかる」

志師塾が法人開拓で言い続けている鉄則が、「お客さんがすでに払っているお金(=原資)に乗っかる」です。ゼロから「専門家に払う予算」を作ってもらうのは大変でも、すでに動いているお金に乗るだけなら、相手のハードルは一気に下がります。

相続は、この条件が揃っている領域です。納税額、不動産の売却代金、仲介手数料、登記費用、葬儀費用。どれも相続の場面で動くお金。「その納税額を数百万円圧縮します」という提案は、最初から原資の上に乗っています。

逆に、支払能力のない層をターゲットにすると、どれだけ丁寧に対応してもビジネスになりません。志師塾は高額商品の条件を3つ挙げています。強いニーズがあること、支払能力があること、競合に勝てる分野であること。この3つが揃っていないと、先生業はボランティア化していきます。

3.4 相続の商品は「創って・売って・作る」の順で

商品開発で最もよくある失敗が、売れるかどうか分からないうちに資料を作り込むことです。志師塾では順番を「創って・売って・作る」と教えています。コンセプトを創り、先に売り、受注してから中身を作る。

相続のドアノック商品なら、A4一枚のサービス案内と、簡単なヒアリングシートがあれば提案できます。分厚いレポートの雛形を先に作らないでください。形になっていないから伝わらないのは事実ですが、必要なのは分厚さではなく、見える化されているかどうかです。

ドアノック商品が決まったら、次は「それを誰に、どう届けるか」。ここでつまずく税理士がとても多い。紹介をお願いする相手も、伝える言葉も決めないまま動いてしまうからです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、商品ができてから受注に至るまでの導線を、順番として整理して解説しています。先生業のためのWeb集客セミナーの内容を見てみる

4. 【手順3】相続で最初に相談される「コンダクター」になる

相続の紹介が生まれる3ステップ

3番目の手順は、紹介の設計です。相続は、紹介で動く領域の代表格です。

4.1 相続はプレイヤーが多い|だから指揮者が必要になる

ひとつの相続には、驚くほど多くの専門家が関わります。

  • 遺産分割でもめたら弁護士
  • 不動産の名義変更は司法書士
  • 農地や許認可は行政書士
  • 不動産の売却は不動産会社、評価は不動産鑑定士
  • 納税資金・遺留分対策は生命保険
  • 遺品整理、空き家管理、施設の精算、墓じまい

当事者である相続人から見ると、これは「誰に、どの順番で頼めばいいのか分からない」状態です。だから彼らが本当に欲しいのは、個別の高度な専門知識ではなく、全体像を示して、取り組む順番を教えてくれる人になります。

志師塾ではこれをコンダクター(指揮者)戦略と呼んでいます。専門を深く掘るのではなく、最初に相談される窓口になる。窓口になれば、仲間の専門家に仕事を渡せるので、紹介が返ってくる好循環も回りはじめます。

相続・終活や事業承継のように、専門家が複数絡む領域ほど、この戦略が効きます。

4.2 相続の紹介は、紹介者にとってリスクである

紹介がほしいとき、多くの人がいきなり「相続の案件があったら紹介してください」と言ってしまいます。これはほぼ機能しません。

理由は単純で、紹介は紹介者にとってリスクだからです。紹介した相手の仕事が雑だったら、紹介者自身の信用が傷つきます。とくに相続は、家族の資産とプライバシーに踏み込む領域。生半可な信頼では紹介できません。

志師塾では「紹介とは、紹介者の信用をお借りして提案する行為」だと説明しています。紹介者は、あなたの信用をティーアップしてくれる存在です。だからこそ、順番は知ってもらう → 信頼してもらう → そこではじめて紹介が出るであって、最初から紹介をお願いしないことが鉄則になります。

4.3 相続の紹介が生まれる3ステップ

志師塾では、紹介の仕組み化を3ステップで整理しています。

ステップ やること 相続での具体例
① 個を強くする 何屋か一言で伝わる状態にする 1分自己紹介・顧客獲得型名刺を作り直す
② 紹介者を増やす 先に自分が紹介する 司法書士・保険・不動産に案件を回す
③ 紹介チームを作る 窓口一本化のチームを組む 共催セミナー・ワンストップ相談会

②の「先に自分が紹介する」が、もっとも実行されていません。交流会で信頼を得る最良の方法は、自分が紹介すること。Giveより先にTakeを求める人(クレクレ星人)には、誰も案件を回しません。

志師塾の卒業生には、独立から数か月は法人契約が1件だけで悩んでいた不動産経営アドバイザーが、3か月で120回以上の対話を重ねて想いの合う専門家とチームを作り、短期間で法人3件・個人2件を受注した例があります。相続・シニア領域で、チーム構築が受注に直結した形です。

4.4 先生業の一番の顧客は、隣の先生業|相続のリストホルダー戦略

志師塾には「先生業の一番の顧客は隣の先生業」という言い方があります。同業・隣接業は、血で血を争うライバルではなく、市場を広げる仲間だという捉え方です。

相続では、これがリストホルダー戦略として効きます。相続の見込み客リストを持っているのは、実は税理士ではありません。生命保険の営業担当者、不動産会社、金融機関、葬儀社、介護事業者です。

ある事業承継コンサルタントは、直接クライアントを探しても成果が出ませんでした。そこで、生命保険の営業担当者などのリストホルダーに対して「事業承継ニーズの掘り起こし方」を教える講座を始めたところ、案件のほうが自然に流れてくるようになり、年商3,000万円ペースに乗せています。

相続でも同じ構図が作れます。「相続案件をください」とお願いするのではなく、「あなたのお客様の中から相続の相談を引き出す方法」を教える側に回る。立場が逆転すると、紹介は仕組みになります。

このとき必要になるのが、相手に売り込まず、情報提供として話す力です。実際に独立直後に年額300万円の委託契約を受注した士業の方法は、士業・コンサルタントの営業トークの作り方で詳しく解説しています。

5. 【手順4】相続の見込み客を集める|顧客獲得型セミナーとWeb発信

相続の見込み客を集める4経路

紹介の土台ができたら、次は自分で見込み客を集める導線です。相続は、セミナーとWebの相性がきわめて良い領域です。

5.1 相続セミナーの3分類|なぜ「勉強になりました」で終わるのか

相続セミナーを開いたのに仕事につながらない。これは本当によく聞く話です。志師塾代表の五十嵐も、2010年に初めて主催したセミナーで17名を集客しながら、仕事につながったのは0人でした。

志師塾では、セミナーを3つに分類しています。

種類 話す内容 相続セミナーでの典型
自己満足型 自分が言いたいこと 税制改正の条文解説を延々と
情報提供型 相手が知りたいこと 「相続税の基礎知識」で満足して帰る
顧客獲得型 相手を行動させるために話す 「自分の家は危ない」と気づいて個別相談へ

相続セミナーの9割は情報提供型です。親切で、分かりやすくて、感謝される。そして、契約には至りません。「ありがとう、勉強になりました」で終わる構造になっているからです。

5.2 相続の顧客獲得型セミナーをどう設計するか

顧客獲得型に変える要点は、ゴールから逆算することです。

  1. ゴールを「個別相談の申込」に固定する(受注をその場で狙わない)
  2. 自分ごと化させる:一般論ではなく「こういう家は危ない」のチェックリスト形式にする
  3. 行動しない痛みを具体化する:期限、過料、払いすぎた税額、もめた家族の実例
  4. 個別相談の中身を明示する:何を持参すると、何が分かるのかを言う
  5. 最後に必ず行動要請をする:ここを言わないから「感謝されたのに契約ゼロ」になる

志師塾の実測では、セミナーを顧客獲得プロセスに入れていた人は、そうでない人と比べて単価が平均170%でした。また、2,917人分のデータから、フロントセミナーの最適人数は5~8人と分かっています。5~8人は、9~15人の1.4倍、16~25人の2倍ほど成約率が高い。相続セミナーは、大人数で集めるほど成果が落ちます。

ある税理士が主催した相続対策セミナーでは、参加者の65%以上が次のステップに申し込みました。人数ではなく、設計の問題です。

5.3 相続税理士のWeb導線|ホームページで何を書くか

相続は、Web検索との相性が良い分野です。悩んだ人は必ず検索します。ただし、「相続税申告 〇〇市」のような大きなキーワードは、大手の相続専門事務所とポータルサイトが押さえています。

小規模事務所が勝つなら、手順1で決めた小人に合わせて絞り込むことです。

  • 「アパート 相続 法人化」「空き家 名義変更 期限」など、状況が具体的なキーワード
  • 相談に来た人が実際に口にした言葉で書かれた記事
  • あなた自身の経歴(国税・金融機関・不動産など)が前面に出たプロフィール

ホームページの構成そのものに迷っているなら、先生業ホームページの作り方6ステップが参考になります。問い合わせが来るページの順番を、先生業向けに整理しました。

また、相続の個別相談はオンラインでも十分成立します。遠方の相続人(実家が地方、本人は都市部)という典型パターンがあるためです。Zoomや動画を組み合わせた仕組み化については、先生業のオンライン集客術7選にまとめています。

5.4 相続の1分自己紹介と名刺を作り直す

地味ですが効果が大きいのが、自己紹介と名刺です。相続の見込み客や紹介者と会う機会は、交流会、異業種の勉強会、金融機関の担当者との面談など、日常の中に散らばっています。

そこで「税理士の〇〇です。相続を中心にやっています」と言うと、相手の頭には何も残りません。「で、この人は何をしている人なの?」で終わります。

志師塾では顧客獲得型名刺と呼んでいますが、名刺に資格名と事務所名しか書かれていないなら、それは自己紹介型名刺。「どんな人の、どんな場面で役に立つのか」を名刺の裏に書くだけで、受け取った相手が勝手に思い出してくれるようになります。

6. 【手順5】相続の単発受注を「面」に変える|税理士のストック化

相続の単発を「面」に変える4段階

最後の手順です。ここを設計しないと、特需が終わった瞬間に売上が落ちます。

6.1 点の問題から、面の問題へ

相続税申告は、典型的なスポット(単発)商品です。1件あたりの金額は大きいものの、同じ家族から再び依頼が来るのは、早くても十数年後。だから毎年、新規集客に走り続けることになります。

志師塾では、顧客が口にする「点」の問題から、長期継続する「面」の問題を設定し直すことを勧めています。頭痛薬を出して終わりにせず、体質改善の指導までセットにする、という比喩で説明される考え方です。

では、相続の「面」とは何でしょう。相続は終わりではなく、新しい資産管理の始まりです。この視点に立つと、申告の後ろに仕事が並びます。

6.2 相続申告の「後ろ」に並ぶ仕事

タイミング 発生する仕事 型
申告の直後 相続した不動産の譲渡所得・取得費加算 スポット
相続した翌年から 不動産所得の確定申告 ストック
1~2年以内 資産管理会社の設立・法人化と顧問 ストック
相続後すぐ 配偶者の二次相続対策・毎年の贈与サポート ストック
相続人が事業者の場合 本業の税務顧問・財務支援 ストック
常時 士業・保険・不動産向けの相続研修/勉強会 ストック

相続税申告は、見方を変えれば「資産家の全財産を把握できる唯一の機会」です。この情報量を持った状態で、次の提案をしないのはもったいない。

ただし、申告が終わってから提案しても遅い。初回の面談時点で、「今すぐの受注」「リピートにつながる要素」「将来にわたって継続する要素」の3つを聞いておきます。年商5,000万円超のある経営コンサルタントは、この3観点のヒアリングを雛形化していて、受注のほとんどが継続受注につながっています。

6.3 スポット:ストック=5:5を目指す

志師塾が示している目安はスポット型:ストック型=5:5です。年間目標売上の半分が、1年が始まる前に確定している状態をつくる、ということになります。

スポット収入はボーナス、ストック収入は毎月の給料だと考えると分かりやすい。相続特需の3年間は、ボーナスがたくさん降ってくる期間です。そのボーナスを、給料に変換できるかどうかで、2029年以降の景色が変わります。

加えて、数字の裏付けもあります。既存顧客からの受注は、新規顧客の獲得コストの5分の1。リピート商品を設計すると、生産性(時給)は3倍程度に上がります。

6.4 「ガチ時給」で自分の働き方を点検する

最後に、特需期こそ確認してほしい数字があります。志師塾ではガチ時給と呼んでいます。客前に立っている時間の時給ではなく、営業・移動・資料作成・事務処理まで含めた、正味の時給のことです。

志師塾代表の五十嵐も、年商1,000万円の頃は月商80万円に対して労働時間が月400~500時間、ガチ時給は約2,000円でした。本人の言葉を借りれば「セルフブラック」です。

相続案件は単価が大きいぶん、1件にかかる工数も大きい。特需で案件が増えると、売上は上がったのに時給は下がるという事態が普通に起こります。年商3,000万円は、年商1,000万円の延長線上にはありません。同じやり方のまま件数を倍にしても、忙しさが倍になるだけです。

だから手順5で、ストック型の商品を同時に仕込んでおく。これが、特需を一過性で終わらせないための設計になります。

7. 相続・専門特化で道を開いた志師塾卒業生の事例

ここまでの5手順が、実際にどう形になるのか。志師塾の卒業生の中から、3名を紹介します。

7.1 元国税調査官の強みを「選ばれる理由」にした税理士・村川雄三さん

村川雄三さんは、東京国税局・税務署で長年にわたり相続と不動産の税務調査に携わってきた税理士です。17年間の国税勤務の中で、10,000件以上の相続税申告の中から調査先を選んできたという経歴を持っています。

注目したいのは、その経歴の使い方。村川さんは「相続に強い税理士」とは名乗っていません。「相続と不動産」専門と打ち出し、税務署が疑問に思うポイントを先回りして対応することで、調査のリスクを減らし、必要以上の納税額にならないようにサポートする、という切り口で立っています。

調査する側にいた人間だけが持っている視点を、そのままキラーコンテンツにした形です。大学時代に先輩から言われた「調査の裏側を知っている税理士は、お客さんの用心棒になれる」という言葉が、そのままポジショニングになっています。

志師塾では、自分のビジネスを言語化することと、人脈づくりでWin-Winの関係をつくることを学ばれました。詳しくは村川雄三さんのインタビュー記事をご覧ください。

7.2 「美容業しかやらない税理士」として絞り込んだ宇佐見紘且さん

宇佐見紘且さんは、2019年7月に独立開業し、現在は「美容業しかやらない税理士」として活動されています。美容室経営者に対して、創業支援、税務申告、経営分析から、資産運用や事業承継までを一気通貫で支援しています。

開業当初は飲食業と美容業の両方を対象にしていました。新規開業率が高い業界を狙うほうが、新参者でも顧問契約を取りやすいと考えたからです。その後、美容業に絞った事務所へ転換しています。専門性を高めたほうが経営者にとってメリットが大きいと判断したためでした。

この「やらないことを決める事業戦略」は、本記事の手順1そのものです。そして注目すべきは、事業承継までを支援範囲に含めている点。美容室経営者が60歳を超えても安心して続けられる店づくりという前工程に立つことで、承継・相続の相談が自然に入ってくる構造になっています。

志師塾では「知っている」から「できる」「やっている」への転換と、伝達力を学ばれました。詳しくは宇佐見紘且さんのインタビュー記事をご覧ください。

7.3 税務から経営課題の解決まで広げた横尾将司さん

横尾将司さんは、20代で税理士資格を取得後、税理士法人勤務、東証プライム上場メーカーの経理・税務、さらに商社の起業(現在4社を経営)を経て、2023年6月に税理士事務所を開設しました。「経営者目線の利益UP税理士」として、小規模事業者を支援しています。

成果も具体的です。中小企業に合った資金繰り術をアドバイスすることで、コンサル初年度から100万円以上の資金繰り改善を、いくつもの会社で達成されています。

横尾さんのケースで参考になるのは、一般的な税理士業務にとどまらず、経営課題の解決まで踏み込んでいる点。これは手順5の「点から面へ」に重なります。志師塾では、先生業の仕組みづくりの大切さと、専門用語を捨てて分かりやすく説明することを学ばれました。詳しくは横尾将司さんのインタビュー記事をご覧ください。

3名に共通しているのは、相続や税務の知識量で差をつけたのではなく、「誰の、どんな場面に立つのか」を先に決めたことです。あなたの経歴の中にも、同じように言語化されていない選ばれる理由が眠っているはずです。その掘り起こし方と、決めた専門を依頼に変える導線は、先生業のためのWeb集客セミナーで具体的に扱っています。

8. 相続で選ばれる税理士に関するよくある質問

8.1 相続の実務経験が少なくても、相続を打ち出していいですか

打ち出して構いません。ただし「相続専門」とだけ名乗るのは避けてください。経験の少なさが露呈するのは、広く浅く名乗ったときだからです。

むしろ、前職や得意分野と掛け合わせて絞るほうが安全。「金融機関出身だから納税資金の相談に強い」「不動産に詳しいから評価と売却まで見通せる」という形にします。志師塾では「掛け合わせで、新しいコンテンツができる」と言っています。足りないピースは、紹介チームの仲間に任せればいい。コンダクターの役割は、全部を自分でやることではありません。

8.2 相続のポータルサイトに登録するのと、自社サイトを作るのはどちらが先ですか

ポータルサイトは即効性がありますが、比較されるのが前提の場です。そこに並ぶと、最終的に価格で選ばれやすくなります。

手順を踏むなら、先に自社サイトで「選ばれる理由」を言語化するほうが有利。ポータル経由で来た見込み客も、ほぼ必ずあなたの事務所サイトを見に来ます。そのときに、他と同じことしか書いていなければ、「他の先生でもいいや」になります。

8.3 相続税申告の報酬は、どう決めればいいですか

遺産総額の0.5~1%程度が目安とされることが多い分野です。ただ、この相場だけを見て値付けすると、価格競争に巻き込まれます。

志師塾の考え方は「価格=価値」「価格アップ=サービス品質アップ」。形のないサービスは品質が見えにくいため、価格そのものが品質のシグナルになります。安くすると、お客様の本気度も下がります。

やるべきは、価格以外の判断基準を教育することです。二次相続まで見た分け方の提案、税務調査リスクへの先回り、申告後の資産管理まで含めたサポート。何が含まれているのかを見える化して、松竹梅の3段階で提示する。志師塾自身、松竹梅の価格戦略を導入して単価が1.5倍近く上がりました。

8.4 相続特需が終わる2029年以降は、どうすればいいですか

まず前提として、相続の件数自体は2040年前後まで増加基調です。終わるのは「期限によって一斉に人が動く」という特殊な状態のほうです。

だからこそ、手順5のストック化を特需期のうちに仕込んでおく。不動産所得の申告、資産管理会社の顧問、二次相続対策、同業・隣接業向けの研修。特需の3年間で得た顧客リストと実績を、継続収入に変換しておく。これが2029年以降の答えになります。

9. まとめ|相続で選ばれる税理士の5手順と、特需3年の使い方

最後に、5手順を整理します。

手順 やること これをやらないと
1. 選ばれる理由を決める 小人を一人に絞り、前工程へシフトする 「他の先生でもいいや」になる
2. ドアノック商品をつくる 期限のある入口商品を作り、原資に乗る 相続が発生するまで待つだけになる
3. コンダクターになる 先に紹介し、紹介チームを組む 他の専門家に先に相談される
4. 見込み客を集める 顧客獲得型セミナー+絞ったWeb導線 感謝されて終わる
5. 面に変える スポット:ストック=5:5に設計する 特需が終わると売上が落ちる

相続登記の経過措置は2027年3月31日まで。生前贈与の加算期間は2027年から実質的に伸びはじめ、2031年に7年加算へ完全移行します。相続の件数そのものは増え続ける。環境としては、これ以上ないほど整っています。

それでも、特需は「相続税の計算ができる人」ではなく「最初に相談された人」のところへ流れます。その差を作るのは、知識量ではなく設計です。

5手順を並べてみると、手を動かすべきは手順1と手順2だと分かります。誰の、どの困りごとに立つかを決めて、期限のある入口商品を1つ作る。ここさえ決まれば、紹介もセミナーもWebも、同じ一本の線の上に並びます。逆に、ここが決まらないまま集客だけ増やすと、問い合わせの数は増えても価格でしか比べられません。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、この「決める」から「依頼が来る」までを、先生業の実例で順番に解説しています。

「相続に強い税理士です」を、依頼が来る一言に変える

志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、本記事の手順1~2にあたる「選ばれる理由の決め方」と「入口商品のつくり方」を、先生業の事例で具体的に扱います。相続という競合の多い分野で、価格ではなく専門性で選ばれるための順番が整理できます。参加は無料です。

先生業のためのWeb集客セミナーの詳細・お申し込みはこちら

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この記事について

この記事は、先生業専門のビジネススクール「志師塾」が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・コーチ・講師といった先生業の顧客獲得を専門に支援し、これまで3,200名を超える方々が受講されました(2026年8月時点)。税理士をはじめとする卒業生のインタビュー記事を125本以上公開しており、本記事で紹介した事例もその一部です。

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