同じ「先生業」という括りの中に、1案件5万円の仕事と、1案件400万円の仕事が並んでいます。資格の難易度でも、実務経験の年数でも、作業量でもなく、です。
この記事では、士業・コンサルタント・講師・コーチといった先生業の業務を、1案件あたりの受注単価が高い順にTOP15でランキングにしました。あわせて、単価ランキングと「実際の時給」のランキングがまったく一致しないという現実、そして下のゾーンから上のゾーンへ移るための手順までを扱います。
相場レンジの土台にしているのは、志師塾が3,200名を超える先生業を支援してきた中で見てきた受注実態と、卒業生へのヒアリングです。卒業生アンケートの平均年商は1,703万円、年商1,000万円超の割合は約50%。独立3年後の生存率は一般に3割前後といわれる中、志師塾が支援した方の3年後生存率は96.4%でした。公的な統計も必要な箇所で併記します。
読み終えるころには、「自分の今の単価が、なぜその水準に止まっているのか」と「次にどの業務へ階段をかけるのか」が、具体的な金額のイメージとセットで見えているはずです。まずは全体の早見表から見ていきましょう。
ランキングを見渡すと、たいていの方が「上のゾーンの業務は、自分には縁がない」と感じます。ただ実際に上と下を分けているのは能力ではなく、見込み客と出会う入口の設計です。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、価格競争に巻き込まれない見込み客の集め方を、先生業の事例で解説しています。
単価の階段をかける順番を、先に知っておきたい方へ
先生業のためのWeb集客セミナー(オンライン開催)で、受注力の全体像を解説しています。
1. 先生業の業務別単価相場ランキングTOP15【早見表】

まず全体像です。並び順は「1案件あたりの受注単価」。月額の継続契約は年換算で比較しています。
| 順位 | 業務 | 単価レンジの目安 | 課金の形 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 事業承継・M&A支援 | 300万円~数千万円 | プロジェクト+成功報酬 |
| 2位 | 人事評価制度の構築コンサルティング | 50万~400万円 | プロジェクト |
| 3位 | 補助金・資金調達の支援 | 着手金10万~30万円+成功報酬5~15% | 成功報酬型 |
| 4位 | 経営顧問・財務顧問(パートナーCFO型) | 月15万~30万円(年180万~360万円) | 月額顧問 |
| 5位 | 協会・認定講師ビジネス | 認定1名30万~100万円+更新料 | ライセンス型 |
| 6位 | 高額講座・スクール | 1名15万~120万円 | 期・パッケージ |
| 7位 | 企業研修(直接受注) | 1日20万~50万円/年間シリーズ100万~300万円 | 日額・年間契約 |
| 8位 | 会員制コミュニティ・ストック型サービス | 月3,000円~7万円(年3.6万~84万円) | 月額継続 |
| 9位 | 相続・遺言・成年後見・終活支援 | 遺言10万~30万円/相続手続30万~100万円 | スポット |
| 10位 | 許認可申請(建設業・運送業・産廃など) | 10万~60万円(更新・変更届で継続) | スポット+更新 |
| 11位 | 就業規則・各種規程の整備 | 20万~50万円 | スポット |
| 12位 | 個人向けコーチング・カウンセリング | 1回5,000~3万円/継続20万~60万円 | 回数券・パッケージ |
| 13位 | 記帳代行・定型の申告業務 | 月1万~5万円 | 月額(定型) |
| 14位 | 単発セミナー登壇(主催者案件) | 3万~10万円/回 | 都度 |
| 15位 | 執筆・記事監修・コラム | 1万~5万円/本 | 成果物単発 |
1.1 このランキングの基準
比較軸は「1案件あたりでいくら受注できるか」です。月額顧問や会員制のような継続課金は、1年間続いた場合の年換算で並べました。
この表が示しているのは「取引の大きさ」の順位。あとで触れますが、儲かる順でも、楽な順でもありません。そこを混同すると、順位の高い業務に手を伸ばして体力だけ削られます。
1.2 単価相場の出どころ
レンジの根拠は2つです。1つは志師塾が支援してきた先生業の受注実態。もう1つは、公開されている統計です。
参考に、全体の水準を押さえておきます。国税庁の申告所得税標本調査をもとに整理すると、事業所得者の平均所得は約419万円。士業に絞っても概ね650万円程度の水準です。先生業全体の平均は、ランキング下位ゾーンの単価で積み上げた数字だと考えてください。
注意していただきたいのは、この表は「公的な相場表」ではないということです。先生業の単価には公定価格がありません。同じ業務名でも、誰に、どんな文脈で提供するかで倍以上動きます。
1.3 早見表の正しい読み方
読み方のコツは1つ。単価を決めているのは業務の種類ではなく、その業務を買う相手です。
たとえば11位の就業規則の整備は、従業員5名の会社なら20万円前後、グループ全体で人事制度まで見直す会社なら50万円近くまで上がります。作業の中身は地続きなのに、金額は2倍以上違う。この差を生んでいるのは、相手が抱えている課題の深さと、その課題にいくら払う余力があるかです。
同じことが9位の相続分野でも起きています。遺言書の文案作成だけなら10万円台。ところが、不動産を複数持つ家族の全体設計から入れば、関連手続きを含めて100万円規模の案件になります。業務名は同じ「相続」でも、入口の置き方で桁が変わる。
志師塾ではこの「理想の顧客」を小人(こびと)と呼びます。小人の設定をどこに置くか。それが単価の大半を決めています。順位が下のものから順に、その構造を見ていきましょう。
2. 先生業の単価相場ランキング15位~11位(5万~50万円ゾーン)

まず下位5つです。このゾーンの共通点は、成果物が「作業の完了」になっていることです。顧客の経営成果とのつながりが見えにくいため、価格の比較対象が同業者だけになり、値下げ圧力を受け続けます。
2.1 15位:執筆・記事監修・コラム(1万~5万円/本)
文字単価・本数単価の世界です。1本1万円で月5本書いても5万円。時間を売っているだけなので、どれだけ上手くなっても単価は跳ねません。
ただし、執筆には別の使い道があります。単体の売り物ではなく、信頼の証明として使うのです。専門誌への寄稿や書籍の出版があると、同じ顧問契約でも「この人なら」と言われて価格の比較から外れます。執筆で5万円を稼ぐのではなく、執筆実績で月額顧問の単価を5万円上げる。発想を入れ替えると、15位の業務が4位への橋になります。
この考え方は先生業と出版の関係についての記事でも詳しく扱っています。
2.2 14位:単発セミナー登壇(3万~10万円/回)
商工会議所や主催者からの依頼で登壇するパターンです。1回3万円から、実績がつくと10万円前後。準備に10時間かければ時給は数千円です。
最大の問題は金額ではありません。集客を主催者がやっているため、参加者リストが自分の手元に残らないことです。何度登壇しても見込み客が蓄積しません。
処方箋は、自主開催へ切り替えること。志師塾の調査では、セミナーを顧客獲得プロセスに組み込んでいた方は、そうでない方に比べて平均単価が170%高いという結果が出ています。志師塾ではこれを顧客獲得型セミナーと呼んで区別しています。言いたいことを話す自己満足型、知りたいことを話す情報提供型とは、設計が別物です。
2.3 13位:記帳代行・定型の申告業務(月1万~5万円)
クラウド会計とAIによって、もっとも単価圧力を受けている領域です。作業そのものの価値が下がり続けている。
コンサルティングの仕事は「作業代行」「アドバイス」「伴走」の3段階に分かれます。作業代行と伴走では、単価が10倍変わることもある。AIに奪われたのは作業で、判断は先生業に残っています。
にもかかわらず、残った判断を「チェック」という作業の値段で売ってしまう。これが単価が戻らない典型パターンです。
2.4 12位:個人向けコーチング・カウンセリング(1回5,000~3万円)
個人のお客様が相手になるため、支払余力に天井があります。1回3万円でも、月に20セッション入れて60万円。そこから先は体力の限界です。
打ち手は2つ。1つは成果物を決めてパッケージ化し、「セッション◯回」ではなく「◯が手に入る6か月プログラム」として20万~60万円で売ること。もう1つは法人へ回ること。同じ技術でも、個人向けから企業研修やマネジメント支援に持ち込むと単価は数倍になります。
2.5 11位:就業規則・各種規程の整備(20万~50万円)
スポット業務としてはまとまった金額です。ただし終わると関係も終わりやすい。
ここは上位ゾーンへの入口として優秀です。規程整備で社内の実態が全部見えているので、そのまま労務顧問、人事評価制度の構築、採用支援へと話が伸びます。志師塾ではこうした入口商品をドアノック商品と呼びます。11位の業務を11位のまま終わらせるか、2位への入口にするかは設計の問題です。
3. 先生業の単価相場ランキング10位~6位(30万~300万円ゾーン)

中位ゾーンに入ります。ここから「1対1で時間を売る」以外の型が混ざってきます。
3.1 10位:許認可申請(10万~60万円)
建設業、運送業、産業廃棄物処理業、飲食業など。許認可は、顧客が「やらないと事業が始まらない」領域なので、ニーズが強く、価格交渉になりにくい業務です。
さらに、5年ごとの更新、決算変更届、役員変更といった手続きが定期的に発生します。1件の受注が「取り切り」で終わらず、継続的な接点になる。ここが下位ゾーンのスポット業務との大きな違いです。
単価を上げる軸は業種特化です。運送業に特化すれば、Gマーク(安全性優良事業所)の取得支援や労務管理まで話が広がります。許認可で入って、相続・事業承継という上位ゾーンへ進む経路は、後ほど卒業生の事例で紹介します。
3.2 9位:相続・遺言・成年後見・終活支援(10万~100万円)
高齢化を背景にニーズは伸び続けています。ただ、参入者も多い。「相続の専門家」という打ち出しだけでは、比較され、値段で選ばれます。
志師塾が勧めるのは前工程へのシフトです。相続手続きの前段階で、家族がまだ言語化できていない不安に特化する。そして複数の専門家をまとめる窓口になる。オーケストラの指揮者になぞらえてコンダクター戦略と呼んでいます。深い専門知識よりも「最初に相談される人」の価値が高い領域です。
3.3 8位:会員制コミュニティ・ストック型サービス(月3,000円~7万円)
単価で見れば8位。しかし後述する時給で見ると、このランキングで最上位に跳ね上がる業務です。
志師塾自身の数字を出します。既存コンテンツを使った月額3,650円の動画クラスは、1年で会員約90名・年間利益約331万円。そこから3名が本講座へ進み、合計で約595万円の収益効果になりました。投下時間は配信作業などで約15時間です。
他にも、月額3,000円のオンラインスクールが1年で会員400名を突破した例、展示会営業のコンサルタントが月額7万円の会員制コミュニティを運営している例があります。先生業にとってストック型は「毎月の給料」、スポット型は「ボーナス」。この2つの比率が収入の安定度を決めます。
3.4 7位:企業研修(1日20万~50万円)
ここに、先生業の単価構造がもっともはっきり表れます。
研修会社を経由した下請けの登壇は1日5万~10万円。企業から直接受注すると1日20万円が水準です。同じ講師、同じ中身、同じ1日。違うのは、顧客と直接つながっているかどうかだけです。
年間シリーズで複数回まとめれば100万~300万円の契約になります。資料は使い回しが効くので、2回目以降は時給も上がっていきます。
この業務の単価差は、研修スキルの差ではなく「誰から仕事を受けているか」の差です。直接受注に切り替えるには、自分で見込み客に出会う導線を持つしかありません。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、下請けから抜け出すための集客の型を、先生業の実例で解説しています。先生業のためのWeb集客セミナーの内容を見る
3.5 6位:高額講座・スクール(1名15万~120万円)
自分のノウハウを手順と体系に落とし込み、1対多で提供する型です。
志師塾の講座は、2011年の1期が12,000円でした。そこから98,000円、148,000円、198,000円と段階的に上げ、10年超で118.1万円に。98倍です。松竹梅の価格設計を導入した時点でも、単価が1.5倍近く上がりました。
別の例では、公認会計士の方が単価194,400円・5名からスタートし、値上げを繰り返しながら1年半で累計100名超。単価は45万円以上まで上がっています。
この型が効くのは、時給が跳ねるからです。志師塾代表の五十嵐も、1対1の支援中心だった年商1,000万円時代はガチ時給が約2,000円でした。コンテンツを講座化した結果、時給は20,000円へ。約10倍です。
4. 先生業の単価相場ランキング5位~1位(100万~数千万円ゾーン)

上位5つです。共通点は、顧客の「ヒト・カネ・売上」に直接触れていること。社長の3大お悩みの領域に入ると、単価の天井が一段上がります。
4.1 5位:協会・認定講師ビジネス(認定1名30万~100万円)
自分のノウハウを他の人が提供できるようにライセンス化する型です。いわば先生業のフランチャイズ化。認定料に加えて更新料や教材費が乗るので、年間収益の積み上がり方が他の業務とは別物になります。
ただし、手順と体系が固まっていないノウハウを協会化すると破綻します。属人的な勘を他人に再現させることはできません。志師塾自身も、4年間21期・250名超を卒業させた人気講座を、赤字という理由で閉じる判断をしています。価値提供と黒字化。この両方を同時に満たすのが前提です。
4.2 4位:経営顧問・財務顧問(月15万~30万円)
月額15万円の顧問を8件持てば、年間1,440万円。実際に、財務知識ゼロの状態から月額15万円の顧問を8件獲得し、開業1年目で年商1,200万円超、顧問更新率100%を実現した例があります。本人の言葉は「深い財務知識よりも、経営者に寄り添う姿勢があれば大丈夫」でした。
人事の領域でも同じ動きが起きています。月額5万円だった顧問契約が月額30万円にアップした例では、半年で退職率が90%減少し、売上が50%向上しました。単価は提供した労力ではなく、顧客に残った成果で決まるという構造が、この順位帯でははっきり出ます。
4.3 3位:補助金・資金調達の支援(成功報酬5~15%)
着手金10万~30万円に、採択額の5~15%の成功報酬が乗る形が一般的です。1,000万円規模の補助金が通れば、1件で50万~150万円。
この領域で突き抜けた例では、採択率100%を8件連続、年間50件以上、補助金獲得総額6億円以上、資金調達22億円以上という実績が出ています。ただし同じ方の独立初年度の年収は約180万円で、そのほとんどがアルバイト代でした。上位ゾーンの業務であっても、顧客と出会えなければ金額はゼロです。
補助金支援には制度依存のリスクがあります。公募要領が変われば受注構造が変わる。このゾーンを柱にするなら、採択後の実行支援や顧問契約へ流れる設計を、最初から組んでおいてください。
4.4 2位:人事評価制度の構築コンサルティング(50万~400万円)
1案件で50万~400万円。5年で上場企業20社超の人事制度を構築し、同時並行で13社を支援、新規案件はほとんど断っている方がいます。
もともとこの方は、研修講師として独立を目指していました。ところが研修講師は激戦区で、受注できない。そこで人事評価制度の構築へ転換したところ、単価が一桁変わりました。単価を決めているのは、腕ではありません。どの課題に当てるかです。
人事評価制度が高額になる理由は明確です。離職は経営に直接ダメージを与える。だから「なんとなく整えたい」ではなく「今すぐ止めたい」という強いニーズになり、予算も確保されます。
4.5 1位:事業承継・M&A支援(300万円~数千万円)
堂々の1位です。株式の評価、親族内承継の設計、第三者承継の仲介まで、1案件で数百万円から数千万円が動きます。
市場の背景も追い風です。中小企業庁の中小企業白書でも、経営者の高齢化と事業承継は継続的に主要課題として扱われています。
ただし、この業務は1人では完結しません。税理士・弁護士・司法書士・金融機関が絡みます。だからこそ、ここでも効くのはコンダクター戦略です。全部を自分でやるのではなく、社長が最初に相談する窓口になり、専門家チームをまとめる。志師塾では事業承継コンダクターという打ち出し方を扱っています。
注意点は、案件化までに数年かかることと、不成立なら成功報酬がゼロになることです。これが次のテーマにつながります。
5. 先生業の単価相場ランキングと「ガチ時給」ランキングは一致しない
ここまで単価で並べてきましたが、順位をそのまま目標にすると危険です。理由は、単価が高い業務ほど時給が高いわけではないから。
5.1 ガチ時給とは何か
志師塾ではガチ時給という言葉を使います。客出しの時給ではなく、営業活動、提案書作成、移動、事務処理、請求、すべてを含めたリアルな時給のことです。
五十嵐自身、年商1,000万円の頃は月商約80万円、労働時間は月400~500時間。ガチ時給は約2,000円でした。体調を崩したことをきっかけに構造を変えています。この状態を志師塾ではセルフブラックと呼びます。
5.2 時給で見ると順位が逆転する
先ほどのランキングを、時給の目安に置き換えてみます。
| 業務 | 単価順位 | 時給の見え方 |
|---|---|---|
| 事業承継・M&A | 1位 | △ 案件化に数年。不成立リスクを織り込むと見た目より下がる |
| 補助金・資金調達 | 3位 | △ 不採択はゼロ円。申請期ごとの繁閑差も大きい |
| 経営顧問・財務顧問 | 4位 | ◎ 月1回訪問で月額15万円なら時給は高水準。更新で安定 |
| 高額講座・スクール | 6位 | ◎ 1対多。講座化で時給2,000円から20,000円になった実例あり |
| 会員制・ストック型 | 8位 | ◎ 年間利益331万円/投下時間約15時間(志師塾の実測) |
| 個人向けセッション | 12位 | △ 稼働と売上が完全比例。空き枠が出た月は即減収 |
見てのとおり、単価8位の会員制サービスが、時給では最上位に来ます。単価1位の事業承継は、時給では中位以下に落ちることもある。この逆転を知らずに「とにかく高単価の仕事を取りにいこう」と動くと、売上は増えて手元の時間がなくなります。
5.3 時給を上げる4つの視点
順番に効く打ち手は4つです。
- 単価アップ:同じ作業を、もっと深い課題に当てられないか
- 時間削減:標準パッケージ化して、毎回ゼロから作らない
- スピードアップ:手順と体系があれば、提案も提供も速くなる
- 人に任せる:自分が動かなくても回る部分はどこか
五十嵐の実測では、6か月でフロントセミナーを月8回から2回、セールス面談を月44回から2回に減らしながら、講座単価を58.8万円から118.1万円へ約2倍にしています。稼働を減らして単価を上げる。順番を間違えなければ両立します。
時給や単価の推移を数字で追う具体的なやり方は、先生業が見るべきPDCA項目をまとめた記事で詳しく解説しています。
5.4 年間収益シートで検証する
価格を決めたら、必ず検算してください。計算式は単純です。
価格 ÷ 投下時間 = 時給
例として、2位の人事制度構築(1案件50万円)を年6件受注したとしましょう。売上は300万円。提供時間が1件80時間、新規開拓の営業時間が1件40時間なら、投下時間は年720時間。ガチ時給は約4,100円です。ここに提案書作成、移動、請求事務を足せば、さらに下がります。
営業時間を甘く見ている方が少なくありません。新規開拓では、営業時間が提供時間とほぼ同じだけかかることも珍しくない。逆にリピート商品なら営業時間はほとんど発生しないので、同じ売上でも時給が倍以上変わります。
この計算を年間ベースで積み上げたものを、志師塾では年間収益シートと呼んで受講生に必ず作らせます。「売れた」と「儲かった」は別物だからです。
6. 先生業の単価相場を決めている3つの条件

では、どうすれば上のゾーンへ行けるのか。志師塾は高額商品の3条件として整理しています。
6.1 条件1:強いニーズ・悩みが存在する
「なんとなくあればいいかな」程度のニーズでは、高額にはなりません。ランキング上位の業務を見てください。離職が止まらない、資金が足りない、会社を誰に渡すか決まっていない。どれも放置すると事業が傷む課題です。
逆に下位ゾーンは「できれば整えたい」の領域が多い。ここが単価の分水嶺です。
6.2 条件2:支払い能力がある
支払余力のない相手に、高単価の提案はできません。志師塾が理想の顧客選びの第一基準に置いているのは「あなたの先生サービスにお金を払うことができるか」です。ここを外すと、どれだけ良いサービスを作ってもボランティアになります。
法人開拓の鉄則はすでに払っているお金に乗っかること。採用広告費、研修予算、顧問料。ゼロから「コンサルに払う予算」を作ってもらう必要がなくなります。
6.3 条件3:競合に勝てる分野である
3つ目が、選ばれる理由です。志師塾ではこれをキラーコンテンツと呼びます。
資格名をそのまま肩書にしても、返ってくるのは「他の先生でもいいや」。五十嵐自身、中小企業診断士として開業したときは「まったく選ばれなかった」と振り返っています。開業1年で、経営コンサルタント、研修講師、ITコンサルタント、Webマーケティングコンサルタントと肩書を変え、ようやく食べられるようになりました。
6.4 小人の設定を変えるだけで単価は動く
技術をそのままにして単価だけが変わった例を2つ挙げます。
1つは箏の演奏家の方。音楽療法として福祉施設に提供していたときの報酬は時給800円でした。訴求する課題設定を変え、高齢者を「社会的弱者」ではなく「笑顔が周囲に伝わる存在」と再定義したところ、1回30万円に。1回の実働はおよそ1時間ですから、同じ尺度で並べると375倍です。紹介も毎月15件コンスタントに発生するようになりました。
もう1つはボイストレーナーの方。「歌が上手くなりたい人」向けから「営業の話し方で成績が変わる」に変えて2倍、さらに「声が変わると思考が変わり、生き方が変わる」と30代後半の女性に向けて単価8倍。技術は同じです。
ランキングを見て「自分の業務は下位だから」と諦める必要はありません。変えるのは業務の種類ではなく、誰のどの悩みに当てるかです。
7. 先生業が単価相場の上のゾーンへ移る手順

ここからは実務です。志師塾が受講生に取り組ませている順番で並べます。
7.1 成果物を決める(知りたいもの、から、手に入るもの、へ)
高額販売の鍵はここです。「知りたいもの」を「手に入るもの」に変換する。
悪い例と良い例を並べると分かりやすい。「営業トークの知識」ではなく「シーン別トーク集」。「人事制度の考え方」ではなく「評価シートと等級表一式」。成果物が具体的だと、高額でも売れます。
志師塾の受講生に、外国人労務に特化した弁護士の方がいます。顧問契約を取れたクライアントから、こう言われたそうです。「チラシを読んでいたら、サービスを受けたときの成果物がはっきり書かれていて、誠実な人だと思った」。経歴ではなく、成果物の明示が決め手になったわけです。
7.2 手順と体系に落とし込む
成果物を出すには、提供プロセスが固まっている必要があります。志師塾の手順・体系を作る3ステップはこうです。
- ネタ出し:小人が知りたがっていることと、気づいていないが本当は必要なことを、まず全部書き出す
- 手順化:並び替えて、各段階の成果物を決める
- 体系化:似たものをカテゴリーにまとめ、因果関係や時系列でつないで1枚の図へ
パッケージ化すると、4つ変わります。提供価値が明確になって売りやすくなる。自分の土俵で戦えるので、無駄な時間が減って時給が上がる。繰り返すうちに品質が磨かれていきます。そして、人に任せられる再現性が生まれる。
「コンサルティングは毎回カスタマイズだから標準化できない」と言われることがあります。それでも標準パッケージは作ってください。基準がないと、顧客から言われたい放題になり、追加対応も無料で飲み込むことになります。基準があれば「ここからはカスタマイズ料をいただきます」と言えます。
7.3 ドアノック商品から入る
法人開拓で、いきなり顧問契約を狙うとほぼ通りません。業務に特化したフロント商品から入るのが順番です。
たとえば人材採用支援をドアノック商品にすると、セミナー講師の依頼が来て、顧問契約になり、人事制度コンサルや研修に広がります。入口を小さくすると、出口が大きくなる。この逆転が法人開拓の勘所です。
ドアノック商品を選ぶときの判断軸は3つあります。顧客に今やる理由があるか。すでに払っているお金(原資)があるか。そして3つ目が、そこから次の仕事へ派生するかどうか。3つ揃っている業務から入ると、単価の階段が自然につながっていきます。
7.4 前工程へシフトする
専門を深く掘るより、顧客が悩みはじめる手前に立つほうが、比較されずに受注できる場面があります。
相続税の専門家はレッドオーシャンです。でも、相続税の計算の前に家族が抱えている不安には、名前のついた専門家がいない。前工程を取ると、本命の仕事(後工程)が自動的に流れてきます。1位の事業承継も9位の相続も、この発想でまったく違う商売になります。
7.5 フロー型とストック型を5:5で組む
1対1の労働集約モデルは、年商1,000万円前後で頭打ちになります。年商3,000万円は、年商1,000万円の延長線にはありません。同じモデルで月商50万円から100万円を目指しても、忙しさが倍になるだけです。
そこで、高額だが安定しないフロー型と、低額だが継続するストック型を組み合わせます。目安はスポット型:ストック型=5:5。既存顧客からの受注コストは新規獲得の5分の1です。リピート商品を設計すると生産性は3倍くらいに上がります。
7.6 段階的に値上げする
最後は値付けです。先生業のサービスは品質が分かりにくいため、価格が品質判断の基準になります。だから価格アップ=サービス品質アップです。
志師塾が12,000円から始めて98倍にした道のりも、1期ごとの積み上げでした。値上げで得られるものは売上だけではありません。お客様の本気度が上がり、サポートを厚くでき、余力時間が生まれ、その時間を次の投資に回せます。
実績が弱い時期は、価格を抑える代わりにサポートを強力にする。これが鉄則です。個別相談、メール相談、添削、グループコンサルティング。コンテンツの実績が足りないぶんを、関わりの濃さで埋めます。
8. 志師塾卒業生の事例|業務の組み合わせで単価の階段をかけた3名
ランキングの下位から上位へ、実際に階段をかけた方々を紹介します。業種はそれぞれ違いますが、設計の考え方は共通しています。
8.1 行政書士・事業承継士/小串滋彦さん
横須賀で行政書士小串滋彦事務所を営む小串滋彦さん。2014年の開業後、地域に根差した活動を続けてこられました。
いまの事務所の業務は3本柱です。建設業・産業廃棄物処理業・飲食業などの許認可申請(ランキング10位)、相続・遺言・成年後見(9位)、そして補助金・給付金の申請支援(3位)。さらに2023年に事業承継士の資格を取得し、この3本柱を総合的に扱う事業承継(1位)が業務に加わりました。
つまり小串さんは、中位ゾーンの業務を複数持ち、それを束ねる形で最上位ゾーンに入っていったわけです。コンダクター型の広がり方の典型といえます。
ただ、最初から順調だったわけではありません。開業1年目の仕事は1件だけ。それも12か月目に知り合いから紹介された案件でした。「行政書士は何をいくらでやるのか」と聞かれても、業務内容も価格設定も自分の中で固まっておらず、うまく答えられなかったといいます。
「支部の研修会などで法律の勉強はできても、仕事獲得に直結する情報、営業のノウハウやスキルは得られなかった」。この言葉は、相場表を調べている多くの先生業に刺さるはずです。単価の前に、答えられる自分の商品が必要でした。
8.2 社会保険労務士/塚元雄平さん
ネクストステップ社会保険労務士事務所の所長、塚元雄平さん。「働く人が定着する職場をつくる」を使命に掲げています。
試験への挑戦は10回。合格後に社会保険労務士事務所で実務経験を積み、30代で独立されました。現在は製造業のグループ企業を顧問先に持ち、労務相談から労働基準監督署への対応まで支援しています。前職時代の仕事ぶりを見ていた顧客から「直接、塚元さんにお願いしたい」と声がかかり、グループ全体の顧問を任されたという経緯です。
注目したいのは、志師塾での取り組み。3万字の自己棚卸しという苦労の末に生まれた商品が「人事部立ち上げ支援」でした。
就業規則の改定や各種手続き(ランキング11位・13位)だけで終わらせず、評価制度をつくり直して離職率を下げ、社会保険料や退職金まで整備し、助成金も活用しながら採用につなげる。制度を作って終わりではなく、企業の中に人事機能が根付き、採用した人材が定着するところまでを成果物に設定したわけです。想定している対象は、従業員50人以上で採用・定着に課題を抱える企業。小人の設定も具体的です。
これは、11位の業務を2位のゾーン(人事評価制度の構築)へ接続する設計そのものです。
8.3 作業療法士/三宮孝太さん
もう1名、士業ではない領域から。北海道岩見沢市で23年間、作業療法士として医療・介護の現場に立ってきた三宮孝太さんは、2026年5月に株式会社DIALOGを設立しました。
展開しているのは、北海道の中小建設業に特化した現場介入型の事業支援です。中心となる健康経営支援「ぱとす」では、従業員の健康上の問題を調査し、欠勤やパフォーマンス低下による労働損失額を円単位で可視化します。ワークエンゲージメントも点数化して示す。経営者が生産性の現状を正確に把握し、対策を打てる状態にするところまでが提供価値です。
個人の身体を診る仕事から、企業の採用・定着という経営課題へ。同じ専門知識を、支払能力のある相手の優先度の高い悩みに当て直した例です。三宮さんは志師塾の自己棚卸しで「ゼロから仕組みを生む力」という自分の強みに気づいたと振り返っています。
3名に共通しているのは、資格名や業務名を並べるのをやめて、「誰の、どの課題を、どこまで解決するか」を言語化したこと。あなたの手元にある業務も、組み合わせ方と当てる相手を変えれば単価のゾーンが変わります。その設計の進め方は、志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーで、受注力7つの能力という全体像とあわせて解説しています。Web集客セミナーの詳細を確認する
9. 先生業の単価相場に関するよくある質問
9.1 実績がゼロでも、上位ゾーンの単価は狙えますか?
最初から上位の価格をつける必要はありません。志師塾の講座も1期は12,000円でした。ただし、段階的に上げる前提で設計しておいてください。低い価格だけを書いてしまうと、あとから上げにくくなります。
実績が弱い時期は、価格を抑える代わりにサポートを厚くします。そして「今の期だけこの価格です」という理由を正直に伝える。実績作りの期間だと明示すれば、お客様も納得して協力してくれます。
9.2 値上げしたら、顧客が離れませんか?
離れる方は出ます。ただ、残った方の本気度は上がる。
志師塾の実測では、セミナー回数とセールス面談を大幅に減らしながら、単価を約2倍にしています。当時の五十嵐も「稼働しなくなることで売上が下がったらどうしよう」という恐怖があったと振り返ります。それでも、結果は逆。価格は価値のシグナルだからです。安すぎる価格は、品質が低いという情報まで一緒に発信してしまいます。
9.3 1人でどこまで年商を伸ばせますか?
1対1の提供だけなら、年商1,000万円前後が壁になります。日本政策金融公庫総合研究所の新規開業実態調査でも、開業後に苦労したこととして顧客・販路の開拓が上位に挙がり続けています。集客に時間を取られるほど、提供に使える時間が減る。これが構造的な天井です。
超えるには、1対多(講座)とストック型(会員制・顧問)を商品群に組み込むしかありません。実際に、週3日稼働・社員なしで年商3,000万円超という方もいます。時間を売る職人型先生から、仕組みで提供するオーナー型先生へ。志師塾ではこの転換を、年商の壁を超える前提条件として扱っています。
9.4 AIが普及すると、先生業の単価相場は下がりますか?
作業の単価は下がります。判断の単価は下がりません。
AIが奪ったのは作業であって、判断は先生業に残っている。問題は、残った判断を「チェック」という作業の値段で売ってしまうことです。相談を奪われたら判断へ、作業を奪われたら戦略へ。ランキング13位の定型業務が苦しくなるのに対して、4位の顧問や2位の制度構築が残るのは、この違いによります。
9.5 50代からでも、単価の高いゾーンに入れますか?
入れます。むしろ上位ゾーンの業務は、経験の厚みがそのまま価値になる領域です。事業承継も人事制度も、若さより「社長と対話できること」が効きます。年齢を軸にしたキャリアの組み替えについては、50歳からのライフシフトと先生業の相性についての記事も参考にしてください。
10. まとめ|先生業の単価相場ランキングTOP15から見えること
最後に、この記事の要点を5つに絞ります。
- 単価の差は、資格や作業量ではなく、当てる課題の深さで決まる。上位5つはすべて顧客の「ヒト・カネ・売上」に触れている
- 単価ランキングと時給ランキングは一致しません。単価8位の会員制が時給では最上位、単価1位の事業承継は時給で中位以下に落ちることもあります
- 上のゾーンへ行く条件は3つ。強いニーズ、支払能力、競合に勝てる分野。どれか欠けると高額化しない
- 業務を変えなくても単価は動く。技術は同じまま単価が8倍、375倍になった例がある。変えたのは小人の設定だけ
- 手順は、成果物を決めること、ドアノック商品で入ること、前工程へシフトすること、フロー型とストック型を5:5で組むこと、段階的に値上げすること。この順番を崩すと、売上は増えても時間がなくなります
相場表は目安でしかありません。あなたの単価を決めているのは市場の平均ではなく、あなたが誰のどの悩みに、どんな成果物を約束しているかです。
単価の階段を、どこからかけるか決めきれない先生業の方へ
ランキングの構造が分かっても、「では自分はどの業務を入口にして、どの単価ゾーンへ進むのか」は一人では決めにくいところです。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、成果物の決め方からドアノック商品の設計、価格を上げても選ばれる伝え方までを、先生業3,200名超の支援事例をもとに解説しています。オンライン開催・参加費は無料です。
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この記事について
この記事は、先生業専門のビジネススクール「志師塾」が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチなど3,200名を超える先生業の受注力向上を支援してきました。卒業生コミュニティの平均年商は1,703万円、年商1,000万円超の割合は約50%です(卒業生アンケートより)。