「AI規程の作成って、士業の仕事になるの?」「作ってあげたら、それで終わりじゃないの?」「そもそも、いくらで売ればいいの?」
AIに関する社内ルールづくりの相談が増えてきた今、あなたはこんな疑問を抱えていませんか。
そこで本記事では、次の内容を解説します。
- なぜいま「AI規程づくり」が士業の新しい顧問業務になりつつあるのか(制度の現在地)
- 規程を作って納品するだけでは、月額契約にならない3つの理由
- 単発の作成支援を継続顧問に変える「7ステップ」の設計
- 月額15万円規模を狙うサービス設計と価格の作り方
- 競合の解説記事がまだ書いていない3つの空白地帯
- この顧問契約を獲得するための集客導線
読み終えたとき、あなたの手元には「AI規程を作ってあげる人」ではなく「AIの線引きを毎年引き直す立場を引き受ける人」としての商品設計図が残ります。単発30万円の作業請負と、月額15万円の顧問契約。この差がどこで生まれるのかが、はっきり見えるはずです。
1. なぜいま「AI規程づくり」が士業の新しい顧問業務になるのか
結論から言えば、追い風は制度側に実在します。ただし、多くの人が思っているのとは逆の理由で吹いています。
1.1 日本のAI法は「規制法」ではなく「推進法」である
まず、事実関係を正確に押さえましょう。
いわゆるAI法(AI推進法)は2025年5月28日に成立し、6月4日に公布されました。第3章・第4章を除く部分は公布日から施行され、全体が2025年9月1日から施行されています。さらに2025年12月23日には「人工知能基本計画」が閣議決定され、日本が目指す姿として「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」が掲げられました。
ここで多くの解説記事が踏み外すポイントがあります。この法律は、企業にAI規程の作成を義務づけていません。
日本のAI法は基本法型で、企業の義務にあたる部分は活用事業者の責務規定にとどまります。AIの提供者や利用者に細かい義務を課す海外の規制法とは、そもそも性質が違います。ですから、「法律で義務化されたので今すぐ規程を作りましょう」という営業トークは、事実として誤りです。少し詳しい経営者や法務担当に当たれば、その場で信頼を失います。
1.2 義務がないからこそ、企業は自分で線を引くしかない
では、なぜニーズが生まれているのか。ここが逆説です。
義務が定まっていないからこそ、企業は「どこまでやればセーフか」を誰にも教えてもらえない。だから自分で線を引かなければならない。この宿題を丸投げできる相手として、士業やコンサルタントが必要とされているわけです。
実際に企業が線引きを迫られる場面は、法律ではなく取引の現場にあります。
| 迫られる場面 | 聞かれる内容 |
|---|---|
| 取引先・親会社からの確認 | 当社の情報を生成AIに入力していないか。社内ルールはあるか |
| 入札・大手との新規取引 | AI利用に関する社内規程の写しを提出できるか |
| 情報漏洩が起きたとき | ルールを定めて周知していたか。個人の判断に任せていなかったか |
| 採用・社内説明 | AIを使ってよい業務の範囲はどこまでか |
どれも法的義務の話ではありません。説明責任の話です。だから「罰則があります」ではなく「聞かれたときに答えられますか」で切り込むのが正しい訴求になります。
1.3 参照すべき土台は「AI事業者ガイドライン第1.2版」
企業が線を引くとき、拠り所になるのが総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」です。2026年3月31日に第1.2版が公表され、これが現行の最新版となっています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」2026年3月)。
第1.2版では、AI法や国内外の動向が追記されたほか、AIガバナンスの構築に関する実際の取組事例が加えられました。さらに、AIエージェントについて「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」という定義が置かれています。
ここが実務的に効いてきます。世に出回っているAI規程の解説記事やテンプレートの多くは、2024年から2025年前半にかけて作られたもの。つまり、旧版ベースで止まっている可能性が高い。すでに規程を作った企業も同じです。「御社の規程、いつの版を参照して作りましたか」という問いは、それだけで営業になります。
そしてガイドラインは、対象者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに大別し、同一の事業者が複数に当たる場合もあると整理しています。この判定を自社でできる中小企業は、ほとんどありません。ここも士業の出番です。
2. 「規程を作って終わり」では月額にならない3つの理由
ここからが本題です。AI規程の作成支援を、単発の作業請負で終わらせるか、継続顧問に変えるか。分かれ目は3つあります。
2.1 理由1:土台となるガイドラインが毎年動く
AI事業者ガイドラインは、アジャイル・ガバナンスの考え方を参考にしたLiving Documentとして設計されており、継続的に更新されていく前提で作られています。1.0版、1.1版、そして1.2版と、実際に版が上がってきました。
土台が毎年動くなら、その上に建てた規程も毎年動きます。これが「単発30万円」ではなく「月額顧問」を正当化する、いちばん筋の通ったロジックです。
就業規則の顧問と同じ構造だと考えてください。法改正があるから、社労士の顧問契約は続く。AI規程も同じ。違うのは、就業規則よりも土台の更新頻度が高く、しかも参照すべき技術そのものが半年で様変わりする点です。更新の必要性は、就業規則より説明しやすいくらいです。
2.2 理由2:配布した瞬間から、質問が始まる
先行して社内規程を整えた企業の事例を見ると、共通した現象が起きています。初版を公開したあと、現場から質問が殺到するのです。
- 「どんな情報なら入力してよいのか」
- 「どこまでが社外秘に当たるのか」
- 「この使い方は、誰の許可を取ればいいのか」
規程の配布は、運用の開始ではなく、問い合わせ対応の開始です。ここを担当者が一人で抱えると、ほぼ必ず回らなくなります。判断できないから答えが遅れ、答えが遅れるから現場は勝手に使い始める。せっかく作った規程が、机の中で死にます。
この「答え続ける役割」を引き受けるのが顧問料の中身です。規程というPDFに値段を付けているのではありません。判断を代行する立場に値段を付けているのです。
2.3 理由3:社内利用とプロダクト組込みは、まったく別物
もう一つ、実装段階で必ずぶつかる論点があります。
ある大手企業の事例では、従業員が自分の業務でChatGPTを使う場面を中心に初版を作りました。ところが、生成AIを組み込んだプロダクトを開発する部門には、そのルールが合わなかった。結果として、ガイドライン自体の見直し要望が出ることになりました。
これは規模の大小に関係なく起きます。
| 用途 | 主な論点 | ガイドライン上の立場 |
|---|---|---|
| 社内業務での利用 | 情報入力の可否、出力の検証、著作権 | AI利用者 |
| 顧客向けサービスへの組込み | 説明責任、品質保証、事故時の責任分担 | AI提供者(開発者を兼ねる場合も) |
この2つを1本の規程で書こうとすると、必ず破綻します。逆に言えば、「御社は利用者ですか、それとも提供者にもなっていますか」という問いを立てられる士業は、初回の面談で一気に信頼を得られます。汎用テンプレを配っている競合が、まず書いていない論点だからです。
志師塾では、AI活用と伴走支援を組み合わせて高単価商品をつくる先生業の方向けに、先生業のためのWeb集客セミナーを開催しています。こうした新しいサービスを「どう見込み客に届けるか」で詰まっている方は、あわせてご覧ください。
3. AI規程づくりを顧問契約に変える7ステップ

ここからが実務です。以下は志師塾が、先生業のサービス設計とAI伴走支援の考え方から再構成した7ステップです。単に規程を作る手順ではなく、作ったあとに関係が続く形で設計してあるのが特徴です。
3.1 ステップ1:実態調査(シャドーAIの棚卸し)
最初にやるのは、規程の起草ではありません。いま社内で、誰がどのAIを何に使っているかの把握です。
従業員へのアンケートやヒアリングで、部署ごとに利用中のツール、業務目的、入力している情報の種類を洗い出します。ここで必ず出てくるのが、会社が把握していない利用、いわゆるシャドーAIです。無料版を個人アカウントで使っている、翻訳に顧客名を入れている、議事録を外部サービスに上げている。すでにリスクが発生しているケースが珍しくありません。
この調査には副産物があります。経営者が現場の実態を知って青くなるのです。ここで初めて「これは急ぐ」というスイッチが入る。営業的にも、この工程を最初に置くことが効きます。
調査票の設計や集計はAIに任せられます。設問案の作成、回答の分類、リスクの高い記述の抽出。ここを効率化して、あなたは「この結果は何を意味するのか」の解釈に時間を使ってください。
3.2 ステップ2:用途区分とリスク特定
調査結果を、先ほどの表のように「社内業務での利用」と「顧客向けサービスへの組込み」に分けます。そのうえで、扱う情報を区分します。
- 入力してよい情報(公開済み情報、社内の一般的な文書)
- 条件付きで入力できる情報(社内限定、上長承認が必要)
- 入力してはいけない情報(個人情報、顧客の機密、未公表の財務情報)
ここで大事なのは、禁止一覧を長くしないことです。禁止が多い規程は、現場から無視されます。「原則使ってよい。ただしこの3つは入れない」という形に絞り込めるかどうかが、その後の運用を左右します。
3.3 ステップ3:ツール別のデータ取扱い判定
社内で使うツールを決める段階で、データの保持期間、削除の可否、学習利用の有無といった方針を確認します。同じサービスでも、無料版と法人向けプランで扱いが変わることが多く、ここを曖昧にしたまま規程を書くと、規程と実態がずれます。
ChatGPT、Gemini、Claudeといった主要なサービスは、それぞれ設定や契約形態でデータの扱いが変わります。この確認を代行して「ツール別・可否判定表」として納品するだけで、顧客にとっての価値はかなり高い。しかもツールは増え続けるので、この表は放っておくと半年で古くなります。更新の必然性が、成果物そのものに埋め込まれるわけです。
3.4 ステップ4:規程・ガイドラインの起草
ここでようやく文書を作ります。最低限おさえる項目は次のとおりです。
| 項目 | 書くべき中身 |
|---|---|
| 目的 | 禁止ではなく活用促進とリスク管理の両立を明記 |
| 適用範囲 | 役員・社員・業務委託・派遣まで含めるか |
| 利用可能ツール | 承認済みリストと、新規追加の申請ルート |
| 入力情報の区分 | 可・条件付き・禁止の3分類と具体例 |
| 出力の取扱い | 人による最終確認、著作権・商標の確認、外部公開時の扱い |
| 責任と窓口 | 管理責任者、相談窓口、例外承認の決裁者 |
| インシデント対応 | 誤入力・誤公開が起きたときの初動と報告先 |
| 改定 | 見直し時期と、参照する外部基準の版を明記 |
最後の「参照する外部基準の版を明記」を必ず入れてください。「AI事業者ガイドライン第1.2版に基づく」と書いた規程は、版が上がった時点で見直し理由が自動的に発生します。これは顧客をしばる仕掛けではなく、更新を忘れて放置されることを防ぐ仕組みです。
そして、ハルシネーション対策は必ず盛り込みます。出力を鵜呑みにせず人が最終確認する、というプロセスの明文化です。地味ですが、事故が起きたときに「ルールを定めて周知していたか」を問われる場面で、ここが効いてきます。
3.5 ステップ5:教育とQ&A整備
社内ルールを作る目的は、禁止することではありません。効果的な使い方とリスクの両方を社員に伝える、啓発と教育にあります。規程だけ配って終わるのは、就業規則を配って「これで労務管理は済みました」と言うのと同じです。
ここで用意するのは3点セットです。
- 30分の説明会(録画して新入社員に使い回せる形にする)
- Q&A集(ステップ1の調査で出た実際の使い方をそのまま素材にする)
- 判断フローの1枚図(迷ったときに見る、入力してよいかの分岐図)
この工程は、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」がそのまま当てはまります。規程を渡すのは「言って聞かせて」だけ。やってみせ、させてみる工程が抜けると、現場は動きません。
3.6 ステップ6:運用窓口と例外承認フロー
ここが月額の中核です。運用開始後に発生する判断を、どう受けるか。
志師塾が「AI伴走士」の考え方として提唱しているのが、AI・顧客・先生業の三位一体の役割分担です。これをAI規程の運用窓口に当てはめると、こうなります。
| 担い手 | 担当する範囲 |
|---|---|
| AIボット(規程を学習させたもの) | 一次回答。「この情報は入力可か」など定型的な質問への即答 |
| 顧客(社内の管理責任者) | 社内周知、例外承認の一次判断、利用状況の記録 |
| 先生業(あなた) | 判断が割れる案件、事故対応、規程の改定、月次セッション |
ポイントは、あなたが全部の質問に答える設計にしないことです。定型的な質問はAIボットに任せる。マイGPTやDifyで、その会社の規程を読み込ませたチャットボットを作って渡します。そのうえで、判断が割れる案件と事故対応だけをあなたが引き受ける。
こうすると、月1回の定期セッションで運用が回ります。AIが問い合わせ量を吸収し、あなたは判断と関係づくりに集中する。この分担ができているかどうかで、顧問契約が続くか、途中で「もう自社でできます」と言われて終わるかが変わります。
3.7 ステップ7:年次更新とインシデント対応
最後に、更新と事故対応です。
年次更新では、ガイドラインの版の変更、新しく増えたツール、社内で起きたヒヤリハットを反映します。ここで前年の運用記録が効きます。「この1年で27件の相談があり、そのうち5件は規程の記載が曖昧だったことが原因でした」と示せれば、更新の必要性を説明する手間はゼロになります。
インシデント対応は、月額料金の保険的な価値そのものです。実際に顧客情報を入力してしまった、AIが作った文章に誤りがあって外部に出てしまった。こうした場面で、すぐ相談できる相手がいる価値は、平時の想像を超えます。契約書には「インシデント発生時の初動支援」を明記しておく。これが、なぜ毎月払うのかの答えの一つになります。
4. 月額15万円規模を狙うサービス設計と価格の作り方

さて、金額の話です。先にお伝えしておくと、月額15万円は「AI規程を作れば必ずこの額になる」という相場ではありません。そういう相場は存在しません。ここでお伝えするのは、その水準を狙える設計の考え方です。
4.1 単発30万円と月額15万円の決定的な差
同じ「AI規程」というテーマでも、売り方で年間の売上は10倍近く変わります。
| 項目 | 単発型 | 顧問型 |
|---|---|---|
| 売るもの | 規程という成果物 | 判断を引き受ける立場 |
| 単価イメージ | 20〜40万円 | 初期費用+月額10〜15万円 |
| 年間売上(1社) | 約30万円 | 約200万円前後 |
| 終わり方 | 納品で関係が切れる | 更新のたびに関係が続く |
| 次の仕事 | また探す | 研修・業務改善へ広がる |
差を生んでいるのは、能力ではなくコンセプトの立て方です。志師塾では、コンセプトを「誰に・何を・どのように」の3要素で定義します。同じ「何を」でも、「どのように」を単発納品にするか継続伴走にするかで、Before/AfterのGAPの大きさが変わる。GAPが大きいから、価格が上がるのです。
4.2 月額の中身を、目に見える形で並べる
月額15万円が高いと感じられるのは、中身が見えないときです。だから、パッケージとして並べます。
- 初期構築フェーズ(1〜2か月):実態調査、用途区分、ツール判定表、規程起草、説明会1回
- AIボットの提供:自社規程を読み込ませたQ&Aボット。社員が24時間質問できる
- 月次セッション(60〜90分):相談案件の判断、運用状況の確認、ヒヤリハットの共有
- 随時対応:メール・チャットでの照会。インシデント時の初動支援
- 年次更新:ガイドライン改定の反映、ツールリストの更新、規程改定
- 教育コンテンツ:新入社員向け説明動画、判断フロー1枚図の更新
この形が、志師塾がAI伴走士講座で扱っているAI伴走支援サービススキームそのものです。AIボット、コンテンツ、AIツール、そして先生業自身。この4つを組み合わせて1つのサービスにする。AIボットだけでは価格が付かず、人的支援だけでは工数が持たない。両方を束ねたときに、月額として成立します。
4.3 「AIに置き換わるのでは」への答えを用意しておく
この商品を提案すると、必ず聞かれます。「規程なんてChatGPTに書かせればいいんじゃないですか」と。
正直に答えていいと思います。たしかに、たたき台はAIが書けます。そのうえでこう続けます。
「では、社員から『この顧客リストを入れていいですか』と聞かれたとき、御社の誰が最終判断しますか。判断を間違えて漏洩したとき、責任を取るのは誰ですか」
ここが分かれ目です。志師塾では「AIは処理の相棒、人は意味の責任者」と整理しています。情報収集、たたき台の作成、分析はAIが担える。しかし、意志・判断・感情・責任の4つは人の側に残ります。AI規程という商品は、まさにこの「判断と責任」を売るものです。だからAIが進化するほど、この商品の必要性は上がります。
そしてもう一つ、志師塾が伴走支援で伝えている実践的な使い方があります。言いづらいことは、AIに言わせる。「この使い方は危ないですよ」と正面から言うと、担当者は自分を否定されたと感じます。そこで「AIに聞いてみたのですが、こういうリスクが挙がっていますね」と第三者の視点として置く。忖度しないAIを間に挟むことで、指摘が受け取られやすくなります。これは規程の運用支援では毎回使えるテクニックです。
5. 競合が書いていない3つの空白地帯
AI規程の解説記事は、すでにたくさんあります。社労士法人や法律事務所が先行して情報発信をしています。では、後から入るあなたはどこで差をつけるのか。空白は3つあります。
5.1 空白1:AIエージェント時代の規程
AI事業者ガイドライン第1.2版では、AIエージェントが「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義されました。ところが、「エージェントが自律的に外部システムを操作する場合、社内規程はどう書くべきか」を扱った記事は、ほとんど見当たりません。
ここは2026年の実務で最も詰まる論点です。エージェントがメールを送る、ファイルを更新する、外部APIを叩く。人が都度確認しない前提の仕組みに、「人による最終確認」というルールをどう当てはめるのか。承認の粒度をどこに置くのか。
答えはまだ固まっていません。だからこそ、この問いを立てられるだけで専門家として抜けます。「うちはまだエージェントは使っていません」と言われても構いません。「1年以内に必ず来ます。そのとき慌てないために、今の規程に拡張の余地を作っておきましょう」と言えばいい。これは未来の顧問料の予約でもあります。
5.2 空白2:「自社は開発者か、提供者か、利用者か」の判定
ガイドラインは対象者を3つに分け、同一事業者が複数を兼ねる場合もあると整理しています。しかし、この判定を読者にさせる記事は少ない。テンプレートを配って終わっています。
実際には、こういうケースが山ほどあります。
- 社内でAIを使っているだけのつもりが、成果物を顧客に納品しているので提供者に近い立場になっている
- 自社サービスにAPIを組み込んだ結果、提供者としての説明責任が発生している
- グループ会社にツールを配布していて、実質的に提供者になっている
この判定は、士業が最も価値を出せる場面です。初回面談で「御社の立場を整理しましょう」と切り出せば、それだけで「この人は分かっている」と伝わります。逆に、この整理をせずにテンプレを埋めた規程は、後から必ず作り直しになります。
5.3 空白3:すでに作った規程が、旧版で止まっている
3つ目は、いちばん営業しやすい空白です。
2023年から2025年にかけて、多くの企業が生成AIの社内ルールを作りました。急いで作ったので、当時の版を参照しています。そして、そのまま更新されていません。
ここへのアプローチはシンプルです。
「御社のAI利用規程は、いつ作られたものですか。参照している基準は何版でしょうか。AI事業者ガイドラインは2026年3月に第1.2版が出て、AIエージェントの定義やガバナンス構築の事例が追加されています。一度、差分を確認しませんか」
売り込みではなく、確認の提案です。そして「すでに作ってある企業」は、AI規程の重要性を理解済みという点で、ゼロから説明する相手よりはるかに話が早い。ここを狙わない理由がありません。
6. AI規程の顧問契約を獲得する集客導線
商品ができても、届かなければゼロです。志師塾が一貫して伝えている顧客獲得の型は「集めて・教えて・売る」です。AI規程というテーマは、この型と相性がとてもいい。理由は、経営者が「聞きたいけれど、誰に聞けばいいか分からない」テーマだからです。
6.1 まずは既存リストから。新規より先にやること
新しいサービスを作ると、つい新規開拓に走りたくなります。しかし順番が逆です。
マーケティングの世界では1対5の法則が知られています。新規顧客の獲得コストは、既存顧客の5倍かかるという経験則です。だから最初にやるのは、保有リストの洗い出しです。
- 過去に商品・サービスを買ってくれた人
- 過去にセミナーに来た人
- 過去に名刺交換した人
- SNSでつながっている人
- メルマガの読者
顧問先を持っている士業なら、さらに話は早い。既存の顧問先に「AI規程の確認をしましょうか」と提案するのが、いちばん成約に近い一手です。関係性ができているので、いきなり月額の追加提案が通ることも珍しくありません。
6.2 顧客獲得型セミナーで「集めて・教えて・売る」
リストへのアプローチと並行して、セミナーを設計します。ここで注意したいのが、情報提供型のセミナーにしないこと。
志師塾が伝えている顧客獲得型セミナーの構成は4ステップです。
| 構成 | AI規程セミナーでの中身 |
|---|---|
| 共感・インパクト | 「社員が無料版に顧客情報を入れています」という実態データを冒頭で出す |
| 問題定義 | 法的義務がないからこそ、説明責任を自分で果たすしかないという構造を示す |
| ノウハウ教育 | ステップ1〜3までを、狭く深く教える(実態調査のやり方まで渡す) |
| バックエンド誘導 | 「作ったあとの運用こそが本番」と伝え、個別相談へつなぐ |
ここで多くの先生業がはまるのが「教えたがり病」です。良い人であろうとして全部を教えてしまい、参加者は満足して帰り、契約にはならない。AI規程セミナーは特に危険です。テンプレートを配ってしまえば、参加者はそれで足りた気になります。
渡すのはステップ1〜3まで。実態調査のやり方は教える。そのうえで「調査すると、たいてい想定外の使い方が出てきます。そこからの判断が難しいところです」と伝える。狭く深く教えて、渇望感を残す。これが顧客獲得型の設計です。
6.3 個別相談では、解決策を出しすぎない
セミナーから個別相談に来てもらったあと。ここでも同じ罠があります。相談の場で「御社ならこう書けばいいですよ」と答えてしまうと、そこで終わります。
個別相談の目的は、関係性を構築して問題点を明らかにすることです。志師塾の個別相談6ステップでは、問題を明確化して合意し、深掘りし、解決意欲を確認したうえで選択肢を提示する流れになっています。解決策そのものを渡すのは、契約後です。
実際の面談で効くのは、この問いです。
「規程を作ったあと、社員から『これは入力していいですか』と質問が来ます。その判断は、社内の誰がしますか」
ほとんどの経営者は、ここで詰まります。答えられない。だから月額顧問が必要になる。この一問が、単発と顧問を分ける質問です。
7. 志師塾卒業生の事例
AI規程のような新しいテーマで顧問契約を取っていく先生業に共通しているのは、ノウハウの量ではなく、自分の立ち位置を決め切っていることです。
志師塾の卒業生である自己実現メンタルコーチの平真理子さんは、脳の使い方という切り口で自身のサービスを組み立て、単発の相談で終わらない継続的な支援の形をつくってこられました。詳しくは満足した人生を送りたいあなたに「正しい脳の使い方」を教えます! 〜自己実現メンタルコーチ・平真理子さん〜のインタビューをご覧ください。
ここから学べることは2つあります。
1つは、「誰に・何を・どのように」を言い切ると、専門家として選ばれるということ。AI規程で言えば、「中小企業の生成AI社内ルールを、作成から運用まで引き受ける専門家」と言い切れるか。「AIも法務も労務もできます」では、誰にも刺さりません。
もう1つは、継続する形で商品を設計すると、成果が出るまで付き合えるということ。単発で納品して離れると、顧客が本当に困る場面に立ち会えません。運用まで見届けるから、事例が積み上がる。事例が積み上がるから、次の顧客に説明できる。この循環に入れるかどうかが分かれ目です。
もう一つ紹介したいのが、士業向けにAI活用の支援をしている卒業生の事例です。時代の波に乗る力を、すべての士業へ。士業専門AI活用コンサルタント・西田明さんのインタビューでは、AIという変化の激しいテーマをどう自分の専門領域に落とし込んだかが語られています。AI規程という切り口で立とうとしている方には、参考になる部分が多いはずです。
8. AI規程の顧問契約でよくある質問
8.1 資格がなくても、AI規程の支援はできますか
規程の作成支援や運用支援そのものは、独占業務にはあたりません。ただし、個別の法律判断や労務判断に踏み込む場面は出てきます。社労士や弁護士と連携する形にしておくのが安全です。
逆に、有資格者の方はすでに持っている顧問関係が最大の資産です。ゼロから信頼を築く必要がないので、提案から契約までの距離が短い。ここを使わないのはもったいない。
8.2 AIに詳しくないと無理でしょうか
詳しさの中身が問題です。最新モデルの性能を追い続ける必要はありません。必要なのは、主要ツールのデータ取扱いを確認できることと、業務のどこにAIが入っているかを聞き出せることです。
志師塾では、先生業のAI活用を「使いこなす→教える→伴走する」の三段階レベルで整理しています。AI規程の顧問は、この3段目です。そして3段目で求められるのは技術力ではなく、AI機能と業務視点を融合させる力です。AIコンサルが機能の話しかできず、業務のことが分からないのと対照的に、先生業は業務を知っている。ここが強みになります。
8.3 顧客が「規程はもうあるので不要」と言ったら
むしろチャンスです。次の3つを聞いてください。
- 参照した基準は何版ですか(多くは1.0版か1.1版で止まっています)
- 社内利用と、顧客向けサービスへの組込み、両方をカバーしていますか
- この1年で、社員から何件の質問が来ましたか
3つ目で沈黙したら、そこが入口です。質問が来ていないのは、うまく運用できているからではなく、規程が読まれていないからです。
8.4 月額を提示すると、高いと言われます
比較対象が「規程というPDF」になっているからです。PDFに月15万は高い。当然です。
比較対象を変えます。「情報漏洩が1件起きたときの対応コスト」「AI利用の判断を社内で抱えている担当者の時間」「取引先に説明できない状態が続くリスク」。この3つと並べたとき、月額の見え方が変わります。
それでも高いと言われるなら、初期構築を先に受け、そのあと運用サポートを提案する2段構えにしてください。ステップ5の教育の段階で質問が殺到するので、そこで運用支援の必要性が顧客側から出てきます。売り込むより、体験してもらったほうが早い。
9. まとめ|売るのは規程ではなく、線を引き直す立場
本記事の要点を整理します。
- 日本のAI法は推進法であり、企業にAI規程の作成義務を課していない。だから「義務化された」と言ってはいけない
- 義務がないからこそ、企業は自分で線を引くしかない。ここに士業の役割がある
- 参照すべき土台はAI事業者ガイドライン第1.2版(2026年3月31日公表)。多くの既存規程は旧版のままで止まっている
- ガイドラインはLiving Documentとして更新され続ける。土台が動くなら規程も動く。これが顧問化の根拠
- 規程の配布は運用の開始ではなく、質問対応の開始。ここを引き受けるのが月額の中身
- 社内利用とプロダクト組込みは分けて設計する。「自社は開発者・提供者・利用者のどれか」の判定が価値になる
- 7ステップ(実態調査→用途区分→ツール判定→起草→教育→運用窓口→年次更新)で、作ったあとに関係が続く形をつくる
- 定型質問はAIボットに、判断と事故対応は人に。AI・顧客・先生業の三位一体で分担すると月額が成立する
- 集客はまず既存リストから。1対5の法則を思い出す。セミナーは狭く深く教えて、渇望感を残す
最後に、いちばん大事なことをもう一度。
AI規程は、士業にとって新しい業務というより、既存の顧問関係を更新する理由です。制度が推進法どまりで義務が薄いからこそ、企業は自分で線を引くしかなく、その線を毎年引き直す相手として、あなたが必要になります。
売るのは規程というPDFではありません。「どこまでが社外秘か、誰の許可が必要か」に、その都度答え続ける立場です。単発の作成報酬から月額顧問へ移す論理は、ここにしかありません。
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※本記事に記載した制度・ガイドラインの情報は、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月)および公表されている政府資料に基づいています。個別の法的判断については、専門家にご確認ください。