「単価を上げたいのですが、まだ実力が足りなくて」
先生業の方から、よく聞く言葉です。
ただ、腕が上がれば単価も上がるかというと、これは別の話です。
【単価を決めているのは、腕ではありません】
実際に、技術は何ひとつ変えないまま、単価が8倍になった方がいます。志師塾の卒業生で、ボイストレーナーをされている方です。
もうひとつ、よく聞く言葉があります。「うちの分野は、相場が決まっているから」。値上げの話になると、たいていここで止まります。士業でも、コンサルでも、コーチでも、講師でも変わりません。
この記事では、単価が決まる仕組みと、それを動かす4つの打ち手を解説します。
単価が腕で決まらないのなら、次に決めるのは「誰に、何を届けるか」です。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、その決め方から、相手に届くまでの全体像を3時間で解説しています。
1.単価は腕では決まらない|値段を決めている「2枚」
あなたは、歯医者の腕を見極められますか
あなたは、歯科医の腕を正しく見極められるでしょうか。ほとんどの人には難しいはずです。分かるのは、痛くなかったか、説明が丁寧だったか、待たされなかったか。腕そのものではなく、その周辺だけ。
売り手は自分の腕を知っていて、買い手にはそれが見えない。情報の非対称性(=売り手と買い手で持っている情報に差がある状態)です。先生業は、この差がとりわけ大きい仕事でしょう。税理士が作った申告書の出来を、社長は評価できません。
では、腕が見えない買い手は、何を見て金額を決めているのか。
自分の側で起きることです。
- 放っておいたら、いくら損をするか
- 手に入ったら、どう変わるか
この2つが大きいほど、出せる金額は上がります。逆にこの2つが小さければ、どれだけ腕が良くても金額は上がりません。
単価は、2枚で決まる
ここから、単価が決まる仕組みが見えてきます。志師塾では、2枚に分けて整理しています。

| 枚 | 問い | 決めているもの |
|---|---|---|
| 1枚目 | いくらまで出せるか(天井) | 相手の悩みの大きさ |
| 2枚目 | そこまで取り切れるか | 器と、並ぶ相手 |
1枚目が、天井を決めます。決めているのはあなたの腕ではなく、相手の悩みの大きさ。深夜に歯が痛くなった人にとって、痛みが消えることの価値は跳ね上がっています。変わったのは、歯科医の腕ではありません。
2枚目は、その天井にどこまで手が届くかを決めます。見ているのは2つ。ひとつは器。1時間いくらで売れば、いくら価値が大きくても、受け取れるのは1時間分で切られます。もうひとつは、並ぶ相手。同じ入口に似た顔ぶれが並んでいれば、買い手は比べる。比べられたら値段は削られます。
ここで「相場」の正体が見えてきます。相場とは、市場が決めた絶対的な数字ではありません。同じ入口に人が並んでいる間だけ成立する、その場所のルールです。
2.単価を決めている4つのこと
単価を動かす打ち手は、4つです。
- 誰に売るか
- どう組み立てるか
- どう見せるか
- どうリピートしてもらうか
上の1つだけ、性質が違います。並べると横並びのチェックリストに見えますが、効く場所が違います。

| 打ち手 | 何をするか | 効く場所 |
|---|---|---|
| 1. 誰に売るか | 当てる悩みを選び直す | ◎ 1枚目と2枚目の両方 |
| 2. どう組み立てるか | 売り方の形を変える(パッケージ化) | 2枚目(器) |
| 3. どう見せるか | 比べられ方を変える | 2枚目(並ぶ相手) |
| 4. どうリピートしてもらうか | 付き合いの長さを設計する | 2枚目(器) |
1枚目に届いているのは、1つ目の「誰に売るか」だけです。当てる悩みを選び直せば、相手が抱えている損も、手に入れたい変化も、まるごと入れ替わる。並ぶ相手まで変わり、悩みが大きくなれば、いまの器にも載らなくなります。だから1つ目は、2枚目の両側にも効く。4つのうち、2枚とも動かせるのはこれだけです。
残りの3つに、天井を付け替える力はありません。
だから、順番が決まります。まず1つ目で天井を上げ、そのあと残りの3つで取り切る。逆になっている方は、驚くほど多い。パッケージを作り直しても数字が動かないのは、努力が足りないからではなく、天井の低い場所で努力しているからです。
3.誰に売るか(強い悩みに当てる)
強く悩んでいない人に、どれだけ良い提案を持っていっても、単価は上がりません。たとえば、起業家のお悩みトップ3。
- 売上アップ
- 資金調達
- 人の採用
ここへ、セキュリティ対策の提案を持っていったらどうなるか。内容がどれだけ良くても、優先度が低いので高くは売れません。
× 自分が提供できることを売る
= 悩みが弱いと、値段も上がらない
○ 相手のお悩みトップ3に当てる
= 同じ技術でも、単価が変わる
ただし、強い悩みに当てるだけでは足りません。強い悩みほど、同じことを言う人が集まっているからです。売上も資金調達も採用も、たしかに強い悩み。だからこそ、そこには銀行もコンサルも同業の士業も並んでいます。天井は高いのに、取り切れない。
ここまでを、1本の式にするとこうなります。
実際に取れる金額 = 悩みの強さ × 供給の薄さ
左が1枚目、右が2枚目の「並ぶ相手」です。天井が高くても、同じ入口に人が並んでいれば削られる。どちらかがゼロに近ければ、答えもゼロに近づきます。
痛みが激しい夜、開いている歯科が1軒だけなら、値段を比べるでしょうか。悩みが強く、供給が薄い。この2つが重なった瞬間だけ、相場が効かなくなります。
では、供給の薄い場所へどう移るのか。志師塾では、肩書きを足し算で作ることをお伝えしています。
専門領域 + 一般名称
「ボイストレーナー」「経営コンサルタント」「研修講師」。一般名称だけの肩書きは、行列の最後尾に並ぶ宣言になります。そこへ専門領域を1つ足す。「話し声」を足せば、話し声ボイストレーナー。
これは見せ方の工夫ではありません。誰に売るかを決め直した結果を、そのまま名前にしたものです。当てる悩みが変われば、並ぶ場所も変わります。
4.同じ技術のまま、単価が8倍になった話
先ほどのボイストレーナーの方の話です。
もともとは「歌が上手くなりたい人」にレッスンをされていました。1時間いくら、の世界です。
そこで、歌ではなく話し声へ、訴求を変えます。
「営業の話し方で、成績が変わる」
これで、単価が2倍になりました。
さらに、もう一段変えます。30代後半の女性に向けて、
「声が変わると、思考が変わる。そして、生き方が変わる」
ここまで来て、単価は8倍。2倍から8倍まで、1年かかっていません。
この2つの段は、分けて見てください。
一段目は、当てる悩みを変えただけ。売り方は1時間いくらのまま。動いたのは1枚目だけでした。
二段目は、その1枚目がもう一段上がっています。相手は30代後半の女性へ、悩みは営業成績から生き方へ。天井が、また付け替わりました。
そして、器が動きます。「生き方が変わる」は、1時間という器に載りません。だから、まとめて売る形に組み替えました。いわゆるパッケージ化です。
結果、時間あたりの単価も上がり、ひとりのお客様からいただく金額も上がりました。どちらか一方ではなく、両方です。
読み取ってほしいのは、順番です。1つ目(誰に売るか)を2回動かし、2回目は器まで動かさざるを得なくなった。先にパッケージを作ったのではありません。
そして、この方が抜け出せた理由は、悩みの強さだけではありません。「生き方を変えたい」という悩みに、“声”から入る人が、ほかにいなかった。悩みの強さと、供給の薄さ。掛け算の両方がそろっています。
これは、士業でもコンサルでも同じ。登記も、記帳も、研修も、「誰の、どの悩みに当てるか」で値段が変わります。
8倍という数字より、持ち帰れるのは手順のほうでしょう。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、当てる悩みの選び直し方を、集客の全体像とあわせて扱っています。
5.残りの3つは、動画で解説しています
2つ目から4つ目は、上がった天井を取り切るための打ち手です。
- どう組み立てるか。器そのものを作り直します(パッケージ化)
- どう見せるか。比べられ方を変える工夫(個別対応)
- どうリピートしてもらうか。1回でなく、付き合い全体で考える
この3つは、マクドナルドのセット販売、高級仕出し弁当、歯医者さんという身近な例で動画にしています。各3〜6分です。
▼まずは全体像:顧客単価の考え方
▼1つ目:誰に売るか(ニーズ選び)
▼2つ目:どう組み立てるか(マクドナルドに学ぶパッケージ化)
▼3つ目:どう見せるか(高級仕出し弁当に学ぶ個別対応)
▼4つ目:どうリピートしてもらうか(歯医者さんに学ぶ)
まとめて見たい方は、再生リストからどうぞ。
6.既存のお客さんは、そのままでいい
いちばん引っかかるのは、ここでしょう。「新しい入口を作るのは分かった。でも、いまのお客さんはどうするのか」
先ほどのボイストレーナーの方は、歌の生徒さんをそのまま続けています。既存のお客さんに値上げを伝えたわけではありません。別の入口を、1枚ふやしただけです。
値上げに申し訳なさを感じるのは、同じ相手に、同じ悩みのまま、値札だけを動かそうとしているから。この居心地の悪さは、がまんで越えるものではありません。越えるのではなく、そもそも発生しない場所を作る。
新しい入口から来た人には、最初からその値段で伝わります。比べる相手も、前の値段も、そこにはいません。誰かを切り捨てる必要はないのです。
7.単価を上げるのは、自分のためだけじゃない
最後に、ひとつだけ。
単価が低いままだと、件数で埋めるしかなくなります。1件あたりに使える時間が減り、疲れた状態で良いサービスは出せません。
単価を上げるのは、自分のためだけではありません。余裕ができた分を、目の前のお客様に返せるようになります。そう考えたら、遠慮する理由はないでしょう。
もう一度。単価を決めているのは腕ではなく、2枚です。1枚目が天井を決め、2枚目が、そこまで届くかを決める。2枚とも動かせるのは、4つのうち「誰に売るか」だけ。
今日、手を動かすなら、この2つを書き出すところからです。
- あなたの技術が、いちばん強く効く悩みはどれか
- その悩みに、同じ入口から入る人は何人いるか
2つ目の答えが「大勢いる」なら、いま行列の中にいます。ずらすのは、腕ではなく入口です。
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