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概算要求7.8兆円|先生業が先読みする補助金3手

2026年8月末、経済産業省が財務省へ提出した令和9年度の概算要求は、約7.8兆円でした。令和8年度の当初予算がおよそ3兆円ですから、単純に見れば2.5倍。「過去最大」という言葉が各紙の見出しに並びました。

ただ、この数字を顧問先にそのまま伝えても、たぶん話は前に進みません。先生業に効いてくるのは金額そのものではなく、補助金が「いつ、どんな形で出てくるか」という前提のほうが動いている、という点だからです。

この記事では、令和9年度の概算要求で実際に何が変わったのかを整理したうえで、公募が始まる前に先生業が打っておける3手をお伝えします。志師塾は先生業に特化したビジネススクールとして、行政書士・中小企業診断士・社会保険労務士など、補助金や助成金の申請支援を手がける方の集客と単価づくりを支援してきました。卒業生のなかには、補助金申請支援を柱のひとつに据えて、事業承継の領域まで広げた行政書士もいます。

読み終えるころには、顧問先にいつ何を伝えるか、そのカレンダーが手元に残るはずです。まずは、今年の概算要求で何が例年と違うのかから見ていきます。

先に一点だけ。以下に出てくる金額は、すべて概算要求段階の「要求額」であって、決定額ではありません。ここが今回いちばん大事なところなので、記事のなかでも繰り返します。

Table of Contents

1. 令和9年度の概算要求7.8兆円は、例年と何が違うのか

経産省7.8兆円要求の中身

まず全体像から。今年の概算要求は、金額が大きいこと以上に「枠組みが変わった」年です。

1.1 「強く豊かな日本」投資枠には要求上限がない

2026年7月に閣議了解された令和9年度の概算要求基準では、通常の歳出とは別に「強く豊かな日本」投資枠が新しく設けられました。特徴は、要求上限(シーリング)を置かなかったことです。あわせて、金額を書かずに項目だけを挙げる「事項要求」も認められ、複数年度にまたがる計画を前提に組めるようになっています。(出典:内閣府 経済財政諮問会議 提出資料)

各省庁が上限なしで要求できるのですから、要求額が膨らむのは制度としての当然の帰結です。「過去最大」という見出しは、仕組みがそう設計されている以上、ある程度は自動的に出てくる結果でもあります。

1.2 経産省の要求額7.8兆円のうち、約8割が新設の投資枠

経済産業省の令和9年度概算要求は、一般会計と特別会計を合わせて約7.8兆円(7兆7,859億円)。このうち6兆3,116億円、およそ8割が先ほどの投資枠に乗っています。中身の柱はAIと半導体、そして脱炭素・エネルギー分野です。(出典:経済産業省「令和9年度概算要求」)

裏を返せば、投資枠を外した部分は例年と大きくは変わっていません。「2.5倍になった」という数字の大半は新しい枠が乗った分だ、と理解しておくほうが、顧問先への説明は正確になります。

1.3 中小企業・小規模事業者関係の補助金は約1.4兆円

先生業の実務に近いのは、中小企業庁が所管する部分です。令和9年度の中小企業・小規模事業者関係の要求額は、およそ1.4兆円(1兆3,841億円)。中小企業向けの投資支援に約9,000億円、中堅企業向けに約1,000億円という配分が示されています。(出典:中小企業庁「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等のポイント」)

個別の事業で目を引くのは、新事業進出補助事業とものづくり・商業・サービス補助事業を合わせた2,200億円です。省力化・デジタル化・AI、持続化、M&A・事業承継の3系統にも、まとまった額が要求されています。顧問先の業種によって、どの系統を見ておくべきかはここで分かれます。

1.4 要求額は、そのままの形では通らない

ここが、この記事でいちばん強調しておきたいところです。概算要求は、各省庁が「これだけ欲しい」と手を挙げた段階の数字にすぎません。9月から12月にかけて財務省の査定が入り、12月下旬に政府案が閣議決定され、年明けの通常国会での審議を経て、ようやく年度末に成立します。

補助金の情報サイトは、記事の性質上どうしても要求額を見出しに掲げます。それを読んだ経営者は「来年は補助金が増えるらしい」と受け取る。ここに、専門家が入る余地があります。「その数字は要求であって決定ではありません」と最初に言える人は、そのあとの話も信用されます。

2. 先生業が押さえておきたい補助金の再編と「補正脱却」

令和9年度に動く4つの前提

枠組みの次は中身です。令和9年度は、中小企業向け補助金の並びそのものが組み替えられようとしています。

2.1 省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金が一本化される方向

すでに令和8年度から、長く「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度は「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変わっています。そして令和9年度は、これと中小企業省力化投資補助金を統合し、「省力化・デジタル化・AI投資補助金」として一本化する方向が示されました。

ただし、これも概算要求段階の方向性です。補助上限、補助率、対象経費、申請枠の区分といった実務に必要な条件は、予算成立後の公募要領が出るまで確定しません。顧問先から「統合されるって本当ですか」と聞かれたときに、「方向は出ています。ただ、条件はまだ決まっていません」と答えられるかどうかで、受け取られ方はまるで変わります。

2.2 「補正脱却」で、年末の補正予算を待つリズムが崩れる

今年の報道のなかで、ひとつ毛色の違う指摘がありました。日本経済新聞は、経産省の要求が膨らんだ理由として「補正脱却」という言葉を使っています。これまで年末の補正予算で措置してきた事業を当初予算の要求に移した結果、総額が大きくなったという見方です。

補助金の支援に関わってきた方なら、この意味はすぐ分かるはずです。ものづくり補助金にせよ持続化補助金にせよ、多くは補正予算で財源が確保され、翌年の春から夏にかけて公募が始まるリズムで回ってきました。「秋に補正の中身を見て、年明けに顧問先へ提案する」という支援の型は、その前提の上に成り立っています。

前提が動くなら、支援側の年間スケジュールも組み替えが要ります。もっとも、当初予算に移ったからといって公募が必ず早まるとは限りません。当初予算は年度末に成立するものですから、国会の審議次第では、むしろ読みにくくなる面もあります。断定できる段階ではない、というのが正直なところです。だからこそ、9月の時点で「補正待ちの一本足」から降りておく価値があります。

2.3 賃上げ要件の見直しが、補助金審査の重心を動かす

中小企業庁の資料では、補助事業の賃上げ要件を抜本的に見直す方針が示されています。今後の数年を重点期間と位置づけ、給与総額の伸びなど、賃上げに関する要件を強めていく方向です。

これは申請支援の現場に直結します。事業計画の書きぶりを整えるだけでは足りず、賃金台帳や給与総額の推移といった実績データを、申請の前から揃えておく必要が出てくるからです。顧問先が社労士や税理士と別に付き合っているなら、そこと連携する段取りも早めに要ります。設備投資の話が、いつのまにか人件費と人事制度の話になる。この越境が起きるのが、令和9年度の補助金です。

2.4 「事項要求」が多いほど、専門家の説明が要る

先ほど触れた事項要求は、金額を書かずに項目だけを挙げる要求の形です。年末に向けて金額が入る前提ですが、入らないまま見送られることもあります。報道では「シーリングの骨抜き」と批判的に扱われ、事業者向けの解説では「上限なし=拡充」と前向きに扱われる。同じ事実が、媒体によって正反対の色で伝わっています。

先生業の役割は、この振れ幅の真ん中に立つことです。決まっていないことを決まっていないと言い、決まった瞬間に動く。当たり前のようで、できている専門家はそう多くありません。

補助金の再編は、制度を読める専門家にとっては追い風です。ただ、詳しくなるほどぶつかるのが「詳しさが伝わらない」という壁でした。補助金を探している経営者は、そもそも誰に相談すればいいか分からない状態で検索しています。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、専門性を「探している人に見つかる形」へ変える手順を扱っています。

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3. 先生業が先読みする補助金3手

公募前に動く先読みカレンダー

ここまでを踏まえて、公募開始を待たずに打てる手を3つに絞ります。どれも、9月から12月にかけての時期にしかできないことです。

3.1 第1手:9月から12月に、顧問先の投資計画を棚卸しする

公募が始まってから動き出すと、たいてい間に合いません。公募期間は1〜2か月ほど。そのあいだに事業計画をまとめ、必要書類を集め、電子申請の準備まで終える必要があります。

この時期にやっておけることは、はっきりしています。gBizIDプライムの取得、直近2期分の決算書の整理、賃上げ実績が分かる資料の準備、そして「何にいくら投資したいか」の言語化。この4つが揃っていれば、公募が出た週から着手できます。

gBizIDプライムは、マイナンバーカードを使う方法なら比較的短期間で取得できますが、書類を郵送する方法だと2週間前後かかります。公募の直後は申請が集中するため、余裕をみておくのが安全です。制度ごとの申請の流れは、新事業進出補助金第4回の獲得術をまとめた記事でも整理していますので、支援メニューを組み立てるときの参考にしてください。

3.2 第2手:12月の予算案で、事項要求が金額になったかを確認する

12月下旬、政府予算案が閣議決定されます。ここで初めて、要求のうち何が残り、何が削られ、事項要求だった項目に金額が入ったのかが分かります。

やることはシンプルです。8月末の概算要求資料と12月の予算案を並べ、自分の支援領域に関わる事業だけを突き合わせる。金額が減っていれば採択件数の想定も下がりますし、統合が確定していれば申請枠の見立てが変わります。そのうえで、秋に出した提案を差し替える。この一手間を入れる専門家は、体感としてかなりの少数派です。

そして差し替えの連絡そのものが、顧問先との接点になります。「先月お伝えした話が、こう変わりました」と言える相手は、そう何人もいません。

3.3 第3手:補助金と助成金をまたぐ年間カレンダーに組み替える

3つ目は、支援の設計そのものの話です。補正脱却が進むなら、「年末の補正を見てから動く」という型は使えなくなります。代わりに置きたいのが、8月末の概算要求、12月の予算案、年明けの国会審議、成立後の公募要領という4つの節目を軸にした年間カレンダーです。

さらにもう一段、経済産業省の補助金と厚生労働省の助成金を横に並べておくと、支援の幅が変わります。設備投資は補助金、人の採用・育成・処遇改善は助成金と、行政側では入口が分かれていますが、経営者の頭のなかでは同じ「使えるお金」です。2.3で触れた賃上げ要件の強化は、この2つを地続きにする動きでもあります。両方を1枚のカレンダーに載せられる専門家は、単発の申請代行ではなく、通年で相談される立場になります。

4. 補助金支援を単発で終わらせない先生業の事例

補助金支援が続く仕事に変わる3段階

制度を先読みできても、それが仕事につながるとは限りません。志師塾の卒業生のうち、制度や専門知識を入口にして事業を広げた2人の事例を紹介します。

4.1 補助金申請支援から事業承継へ広げた行政書士・小串滋彦さん

神奈川県横須賀市で行政書士小串滋彦事務所を営む小串滋彦さんは、2014年の開業以来、約10年にわたり地域に根ざして活動してきました。手がける業務は、建設業・産業廃棄物処理業・飲食業などの許認可申請、相続や遺言・成年後見の関連業務、そして補助金や給付金等の申請支援という3つの柱です。2023年には事業承継士の資格を取得し、この3本柱を総合的に扱う事業承継を新たな軸に加えています。

ただ、最初から順調だったわけではありません。開業1年目に受注できた仕事は1件だけ。それも12か月目に、知り合いから紹介されたものでした。「行政書士は何をいくらでやるのか」と聞かれても、業務の中身も価格設定も自分のなかで固まっておらず、うまく答えられなかったと振り返っています。支部の研修で法律の勉強はできても、仕事の獲得に直結する営業のノウハウは得られなかった、と。自分で仕事を取れるようになるまでには3〜4年かかっています。(出典:【卒業生インタビュー】先生業を加速させ、新たな領域へ 〜小串滋彦さん〜

補助金の申請支援は、それ単体では単発で終わりやすい仕事です。小串さんのように、許認可・相続・補助金を事業承継という文脈でつなぐと、1件の依頼が次の相談を呼ぶ構造になります。

4.2 別業種の例:支援先の売上を約5倍に伸ばした人事参謀・桒原徹也さん

もう1人は、補助金支援とは別業種の参考例です。株式会社RiCru代表取締役の桒原徹也さんは、リクルートで14年間、約2,000社の採用支援を手がけたのち、2023年8月に独立しました。従業員50名未満の建設会社を中心に、採用戦略の立案から代行、定着支援、人事制度の設計までを一気通貫で担う「人事参謀」です。独立後、支援先の売上を約5倍に伸ばした実績を持っています。

その桒原さんも、法人化したあとまで集客の壁が残っていたと語っています。志師塾で認知からクロージングまでを体系化するなかで、「稼ぐ職人組織の人事参謀」というコンセプトにたどり着きました。(出典:【卒業生インタビュー】建設業界の人手不足に挑む社長の参謀 〜桒原徹也さん〜

人材の採用と定着は、厚生労働省の助成金と隣り合わせの領域です。第3手で挙げた「補助金と助成金をまたぐ」立場は、こうした人の支援と組み合わせたときに効いてきます。

4.3 2人に共通するのは、制度の知識を入口にしていること

小串さんも桒原さんも、制度や専門知識そのものを商品にしているわけではありません。制度を入口にして、経営者の隣に居続ける形をつくっています。補助金の先読みが価値になるのは、この構造があってこそです。

逆に言えば、制度に詳しいだけでは相談は来ません。2人とも、詳しくなったあとに集客でつまずいた、と同じことを話しています。

あなたも、制度の知識を単発の申請代行で終わらせず、継続的な相談につなげていきたいなら、先生業のためのWeb集客セミナーで、専門性が選ばれる形に変わっていく過程を確かめてみてください。

5. 補助金の先読みで、先生業がつまずきやすい3点

つまずきを防ぐ4つの一手

最後に、実際の支援でよく起きるつまずきを3つ挙げておきます。どれも防げるものです。

5.1 概算要求の金額を、そのまま顧問先に伝えてしまう

「来年は1.4兆円です」と伝えた3か月後、予算案で減っていたら、その説明を自分でしなければなりません。要求額を伝えるときは、必ず「12月に確定します」を添える。この一言があるかどうかで、後々の信用の残り方が変わります。

5.2 gBizIDプライムの取得を後回しにする

公募が出てから顧問先にID取得を依頼すると、そこで数週間が消えます。しかも公募直後は申請が集中する時期です。制度の話をするより先に「IDだけ先に取っておきましょう」と言えるかどうかは、地味ですが差が出るところです。

5.3 補助金だけで完結させ、その後につなげない

採択されて実績報告まで終えると、関係がそこで切れてしまう。よくある形です。補助金で導入した設備や人が実際に利益を生んでいるかを見る役割まで引き受けると、話は続きます。設備投資のあとは資金繰りと収益構造の話になりますから、月額15万円の財務顧問を始める方法をまとめた記事も、支援メニューを広げるときの参考になります。

なお、補助金の申請支援は、勤めながら少しずつ始めやすい業務でもあります。独立前の助走として考えているなら、先生業の副業で毎月10万円の収入を手に入れる方法もあわせて読んでみてください。

まとめ|7.8兆円という数字より、変わったのはカレンダー

9月の今日から打てる3手

令和9年度の概算要求は、経済産業省で約7.8兆円、中小企業・小規模事業者関係でおよそ1.4兆円。要求上限のない投資枠が新設され、省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金は一本化の方向が示されました。ただし、いずれも要求段階の数字と方向性であって、決定ではありません。

先生業にとっての本題は、金額ではなくカレンダーのほうです。補正予算に頼ってきた構造が当初予算へ移りつつある以上、「年末の補正を見てから動く」という支援のリズムは、いったん疑ったほうがいい。今できるのは、顧問先の投資計画とgBizIDを先に整えること、12月の予算案で提案を差し替えること、そして補助金と助成金をまたぐ年間カレンダーに組み替えることの3手です。

公募が出てから声をかける専門家と、公募が出る前に声をかけられる専門家。経営者にとってどちらが相談相手になるかは、考えるまでもありません。

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この記事は、先生業専門のビジネススクール「志師塾」が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・講師業をはじめとする先生業に特化し、集客と事業づくりを支援してきたスクールです。卒業生は業種を越えたコミュニティを形成しており、修了後も互いに案件を紹介し合う関係が続いています。

ここまで読んで、年間カレンダーの形は見えたはずです。ただ、そのカレンダーを見せる相手が9月の時点で何人いるか、と考えると話は別になります。制度に詳しい先生ほど、詳しさそのものを伝えようとして、かえって「誰に相談すればいいか分からない」経営者から遠ざかってしまう。この距離を縮める手順は、制度の勉強とは別の技術です。

この記事について

執筆・監修:志師塾(株式会社エクスウィルパートナーズ)

志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチといった先生業に特化したビジネススクールです。代表の五十嵐和也(中小企業診断士)のもと、これまでに3,200名超の先生業の顧客獲得を支援してきました。本記事は、志師塾の講座で扱っている補助金を入口にした顧客獲得の設計手法と、公開されている官公庁データをもとに構成しています。

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