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弁理士が1400人減る10年|単価を上げる5領域

弁理士は、これから10年で約1,400人減る可能性があります。廃業ラッシュが起きるからではありません。新しく入ってくる人が、少なすぎるからです。

弁理士試験の志願者は、2008年の約1万人から近年は3,000人台へ。合格者も574人から200人前後まで落ちました。一方で登録者の高齢化は進みます。「人が減るなら、仕事はこちらに回ってくる」と思いたいところですが、話はそう単純ではありません。同じ期間に、特許出願件数も減っています。減るパイを、減る人数で分ける。これが弁理士業界の10年です。

この記事では、次の5つを順番に整理します。

  • 数字で見る現状:志願者・合格者・登録者・出願件数に、いま何が起きているか
  • 単価が上がらないのは、腕のせいではありません。件数商売・資格名の名乗り・AIによる作業の値崩れという3つの構造を分解します
  • 単価を上げる5領域:どの領域で、誰に向かって名乗り直すか
  • 進め方は4ステップ。小人(ターゲット)の設定から、ドアノック商品、セミナー、商品構成まで順に見ていきます
  • 最後に、志師塾卒業生の弁理士3名が実際に何を変えたのかを紹介します

志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチといった「先生業」専門のビジネススクールとして、これまで3,295名(2026年8月時点)の顧客獲得を支援してきました。卒業生アンケートでは平均年商1,703万円、年商1,000万円超の割合は約50%。弁理士の卒業生も複数います。数字の出どころは特許庁・日本弁理士会の公表データと、この支援現場の蓄積です。

読み終えるころには、「自分はどの領域で名乗り直すか」の候補が2つ3つに絞れているはずです。まず、足元の数字から押さえていきましょう。

弁理士の数も出願件数も減る前提で考えると、次に決めるのは「どの領域で、誰に名乗るか」です。ただ、名乗りを変えても、それが相手に届かなければ案件は動きません。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、専門性を価格比較ではなく指名で選ばれる形に変える手順を、先生業の事例で解説しています。

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Table of Contents

1. 弁理士が1,400人減る10年|数字で見る現状

弁理士を取り巻く4つの数字

弁理士を取り巻く10年の変化とは、「人も、案件も、同時に減る」局面に入ったということです。どちらか一方が減るだけなら話は簡単ですが、両方が同時に減ると、1人あたりの仕事は増えません。まずここを正確に押さえます。

1.1 弁理士試験の志願者は15年で3分の1になった

弁理士試験の規模は、この15年で大きく縮みました。特許庁が公表している弁理士試験の実施状況を並べると、変化がはっきり見えます。

年 志願者数 合格者数
2008年(ピーク期) 約1万500人 574人
2015年前後 約5,000人台 300人前後
2023年 約3,400人 188人

出典:特許庁「弁理士試験の実施状況」(特許庁公表資料をもとに整理)

志願者は3分の1、合格者もおよそ3分の1。毎年入ってくる弁理士が、200人を切る年もあるという水準です。この数字は、独立を考える弁理士にとって悪い話ばかりではありません。ただし、それを有利に使えるかどうかは、後述する「どこで名乗るか」で分かれます。

1.2 弁理士が1,400人減るという試算の中身

弁理士の登録者数は、現在およそ1万2,000人。長く増え続けてきましたが、増加ペースは年々鈍り、ここ数年はほぼ横ばい圏に入りました。増加が止まった次に来るのは、減少局面です。

試算してみましょう。

  • 新規登録:年200人前後(合格者数の推移から)
  • 登録抹消:登録者の年齢構成が上がるにつれ増加。年340人ペースになると仮定
  • 差:年140人の純減 × 10年 = 約1,400人

念のため書いておきます。これは確定した将来予測ではなく、「いまのペースが続いたらどうなるか」の試算です。抹消のペースが緩やかなら減りは小さくなり、団塊層の引退が重なれば減りは大きくなります。それでも、弁理士人口が増える10年ではないという方向性は、志願者数の推移からほぼ固まっています。

1.3 特許出願件数も減り、1人あたりの案件は増えない

ここが肝心なところです。供給(弁理士数)が減るなら単価は上がるはず。そう考えたくなりますが、需要側の数字も同時に減っています。

特許庁の特許行政年次報告書によれば、国内の特許出願件数は2001年ごろの約44万件をピークに減少し、近年は約30万件前後で推移しています。ピーク時の7割ほどの水準です。商標・意匠を含めた出願全体でも、右肩上がりの構図には戻っていません。

出典:特許庁「特許行政年次報告書」(特許行政年次報告書 一覧)

弁理士が1割減っても、出願件数が2割減れば、1人あたりの案件数は減ります。「人が減るから仕事が回ってくる」という期待は、需要が横ばいのときにしか成立しません。

1.4 減る市場で最初に起きるのは、値下げ競争

案件が減った市場で事務所が最初に手を出すのは、たいてい価格です。定額パック、出願一式いくらの表示、相見積もりへの対応。顧客が「弁理士を比べる基準」を価格しか持っていないと、比較は価格でしか起きません。

志師塾では、先生業のサービスは品質が外から見えにくいため、価格そのものが品質の判断材料になると考えます。だからこそ「価格=価値」であり、下げた価格は「その程度の仕事」というメッセージとして相手に届きます。弁理士が1,400人減っても、この構図のままでは単価は上がりません。

2. 弁理士の単価が上がらない3つの構造

弁理士業務のAI時代3段階

単価が上がらない3つの構造

腕が足りないから単価が低い。そう考える弁理士ほど、技術書を買い直し、明細書の書き方を磨き直します。ところが実際に単価を押し下げているのは、たいてい売り方の構造のほうです。志師塾が先生業3,295名を支援してきて繰り返し見てきた3つのパターンを、弁理士に当てはめて整理します。

2.1 出願「件数」で値段が決まっている

出願1件あたりいくら、中間対応1回いくら。この積み上げで売上を作ると、売上は作業量に比例します。作業量に比例する売上には天井があります。自分の手が動く時間の上限が、そのまま年商の上限になるからです。

ここで一度、ガチ時給を計算してみてください。志師塾でいうガチ時給とは、客だしの時給(作業単価)ではなく、営業活動・見積作成・打ち合わせ・事務処理・請求管理まで含めた、正味の時給のことです。

志師塾代表の五十嵐も、年商1,000万円だった時期は月商約80万円に対して労働時間が月400~500時間。ガチ時給はおよそ2,000円でした。本人の言葉を借りれば「セルフブラック」です。弁理士の場合、明細書作成という高度な作業が中心なので、忙しさと単価の低さが同時に成立してしまう点に注意が必要です。

2.2 「弁理士です」が選ばれる理由になっていない

名刺に「弁理士」と書く。これは資格の表示であって、選ばれる理由ではありません。志師塾では、選ばれる理由をキラーコンテンツと呼びます。ここが甘いと、Web集客でも紹介でも営業でも、何をやっても同じ壁に当たります。「他の先生でもいいや」と言われるからです。

五十嵐自身、中小企業診断士として開業した当初は資格名を肩書にしていました。結果は「まったくダメ、選ばれません」。そこから経営コンサルタント、研修講師、ITコンサルタント、Webマーケティングコンサルタントへ。開業1年で肩書を変え続けて、ようやく食べられるようになっています。

弁理士の場合、この構造はさらに厳しく働きます。顧客が「特許を取りたい」と言った時点で、比較される軸は費用と納期に絞られているからです。名乗りを変えるというのは、比較される土俵そのものを変える作業です。士業が資格名から一歩出て単価を上げた例は、行政書士が単価10万円の領域へ専門特化した事例でも同じ形で起きています。

2.3 AIが作業を削り、判断が「作業の値段」で売られている

先行技術調査、類似商標の一次スクリーニング、明細書の下書き。AIが得意な領域は、弁理士業務の中核と重なります。すでに調査ツールや文章生成を業務に入れている事務所も増えました。

志師塾では、コンサルティングの仕事を「作業代行」「アドバイス」「伴走」の3段階で捉えます。この3つは、同じ知識を使っていても単価が10倍変わることがあります。そして、AI時代に起きているのはこうです。

段階 弁理士業務の例 AI時代の行き先
作業代行 調査、書類作成、期限管理 △ 値崩れしやすい
アドバイス 出願するか否か、書く範囲の判断 ◎ 残る
伴走 知財を売上に変える過程に関与 ◎ 単価が上がる

志師塾の言い方をすると、AIに奪われたのは「作業」で、「判断」は先生業に残っている。ところが多くの人が、残った判断を「チェック」という作業の値段で売ってしまいます。判断を作業料金で売るのが、いま一番もったいない売り方です。

ここまでで、単価が上がらない理由が腕ではなく売り方にあることは見えたと思います。では、何をどう名乗り直せば、判断と伴走にお金が付くのか。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、価格で比べられない伝え方の作り方を、士業の実例とあわせて扱っています。次の章の5領域を読む前に、先生業のためのWeb集客セミナーの内容も目を通しておくと、選ぶ基準が持てます。

3. 弁理士が単価を上げる5領域

弁理士が単価を上げる5領域

弁理士が単価を上げる領域とは、「権利を取る手続き」の外側にある領域です。手続きの内側で戦うと比較されるのは費用と納期。外側に出ると、比較の基準が変わります。

志師塾では、単価は技術力ではなく小人(こびと)の設定、つまり「誰の、どの悩みに当てるか」で決まると考えます。同じ技術のまま単価が8倍になったボイストレーナー、時給800円から1回30万円になった箏の演奏家。どちらも変えたのは技術ではなく、訴求する相手と課題の設定だけです。以下の5領域も、同じ発想で読んでください。

領域 誰に(小人の設定) 価格のつけ方
1. 知財の収益化支援 特許は持っているが売上に結びついていない製造業 顧問+成果連動
2. 営業秘密・ノウハウ管理 技術情報の流出に不安のある中小メーカー 診断+規程整備+研修
3. 中小企業の知財戦略顧問 新商品・新事業を進めたい社長 月額顧問
4. 国際知財と紛争解決 海外展開・模倣被害に直面する企業 案件単位の高単価
5. AI時代の知財ガバナンス 生成AIを業務に入れ始めた企業 規程整備+継続伴走

3.1 領域1:弁理士が知財を収益化する支援|「取る」から「稼がせる」へ

特許を取ったのに、売上が1円も増えていない会社は珍しくありません。権利は防御の道具であって、そのままでは収益になりません。ここに踏み込むのが収益化支援です。

やることは、たとえばこうです。保有権利の棚卸し、使っていない権利のライセンス先探索、権利範囲を使った営業トークの設計、競合が入りにくい商品設計への助言。「この特許があるから、この価格で売れる」という説明を、社長と一緒に作る仕事です。

価格の付け方は、月額顧問に成果連動を組み合わせる形。志師塾でいう高額商品の3条件(強いニーズ、支払能力、競合に勝てる分野)のうち、この領域は「強いニーズ」がいちばん立ちやすいところにあります。理由は単純で、売上に直結する話だからです。志師塾では、単価を上げている先生業の共通点は、顧客の優先度が高い悩み(売上・お金・人)に当てていることだと整理しています。

注意点は1つ。収益化を語るなら、権利の話だけでは足りません。相手の商売の構造を聞き取る力が要ります。ここを飛ばすと「特許を活かしましょう」という一般論で終わります。

3.2 領域2:弁理士が営業秘密・ノウハウ管理を売る|「出願しない」提案が価値になる

特許出願は、出願日から1年6か月で内容が公開されます。つまり出願は「独占の代わりに情報を開示する」取引です。ここを理解せずに出願すると、競合にヒントを渡して終わることがあります。

だからこそ、「これは出願しない方がいい」「この部分は書かずに残す」と言える弁理士は、依頼側から見て別の存在です。志師塾では、これを「売らない」という差別化と呼びます。目の前の出願案件を手放してでも、相手の利益に立つ。その一貫性が指名につながります。

商品としては、営業秘密管理の現状診断、秘密管理規程の整備、社員向け研修、退職者対応のルール作りまで束ねられます。経済産業省が営業秘密管理指針を公表しており、「何をもって秘密管理性が認められるか」という基準が明文化されているので、診断のフレームは作りやすい領域です。

出典:経済産業省「営業秘密管理指針」(経済産業省公表資料)

3.3 領域3:弁理士が中小企業の知財戦略顧問になる|前工程へのシフト

出願の依頼が来るのは、開発がほぼ終わってからです。これは後工程です。後工程で呼ばれる限り、仕事は手続きの代行になり、価格で比べられます。

志師塾では、この解決策を前工程へのシフトと呼びます。顧客がその前段階で悩んでいることに入り込む。新商品の企画段階、他社製品の分析、補助金申請の事業計画、共同開発の契約検討。「最初に相談される人」になると、後工程の出願案件は比較されずに入ってきます。

専門家が複数絡む領域で全体の窓口になる発想を、志師塾ではコンダクター戦略と呼んでいます。オーケストラの指揮者のように、弁護士・税理士・中小企業診断士・デザイナーをつなぐ立ち位置です。知財は、事業・契約・補助金・デザインが交差する領域なので、この戦略が効きます。

月額顧問の価格は、月3万円のライトな枠から、経営会議に入る月15万円クラスまで設計できます。志師塾の卒業生には、財務領域で月額15万円の顧問を8件獲得し、開業1年目に年商1,200万円超、顧問更新率100%という例もあります。専門知識の深さより、経営者に寄り添う姿勢が効いたケースです。この考え方は、制度変更を単価アップの入口に変えた社労士の3つの再定義とも重なります。

3.4 領域4:弁理士が国際知財と紛争解決で選ばれる|奥行きの強み

海外出願、外国での模倣品対応、現地代理人との連携、紛争の実務。この領域は「負けたときの損失が大きい」ため、価格ではなく実績で選ばれます。高額商品の3条件のうち「競合に勝てる分野」が成立しやすいのがここです。

志師塾では、強みを間口の強み(幅広く対応できる)と奥行きの強み(特定領域で深い)に分けます。国際知財は典型的な奥行きの強み。参入できる人が限られるので、件数を追わなくても単価が立ちます。

とはいえ、自分で全部やる必要はありません。現地の弁護士・弁理士とチームを組み、日本側の窓口として経営判断に関与する形でも成立します。中小企業の海外展開はジェトロなどの支援制度も整っており、「海外で攻める・守る」の相談窓口が足りていない状況です。

3.5 領域5:弁理士がAI時代の知財ガバナンスに伴走する|規程と運用まで入る

生成AIを業務に入れた企業は、いまこんな問いに直面しています。社内の技術情報をAIに入れていいのか。次に出てくるのが、AIが関与した成果物の権利の帰属です。さらに、AIの出力が他社の権利を侵していないことを誰がどう確認するか、という点。

これは知財の専門家が答えるべき問いですが、答えを1回出して終わる仕事ではありません。社内ルールを作り、社員が守れる形に落とし、運用を点検し続ける。つまり伴走型の仕事です。志師塾の言葉でいえば、相談を奪われたら判断へ、作業を奪われたら戦略へという移り方をここで実践できます。

商品の組み立て方は、AI利用規程の整備をスポットで受け、その後を月額の運用サポートにつなげる形が作りやすいです。ここでAIの使い方講座に寄せすぎると、単価は下がります。売るのはAIの操作方法ではなく、その企業の知財を守りながらAIを使える状態です。志師塾が立ち上げに関わる一般社団法人AI伴走士協会でも、専門知識×AI×伴走支援の掛け合わせを軸に置いています。弁理士の専門知識は、この掛け算の土台としてかなり強い部類です。

4. 弁理士が単価を上げる4ステップ

弁理士が単価を上げる4ステップ

領域を選んだら、次は手順です。小人(ターゲット)を決め直し、ドアノック商品を1つ作り、顧客獲得型セミナーで集め、最後に商品構成を組む。この順番を守ると、迷っている時間が短くなります。逆にすると、誰にも使われない資料だけが手元に残ります。

4.1 ステップ1:弁理士としての小人(ターゲット)を決め直す

最初にやるのは、市場調査ではなく決断です。誰の、どの悩みに当てるか。「中小企業」では広すぎます。「従業員30~100名の部品メーカーで、主力製品が模倣され始めている会社」まで絞ると、言葉が具体的になります。

絞り方の手順は2つ。内部環境として自己棚卸し(これまで担当した技術分野・業種・案件の種類・成功体験)、外部環境として調査(その市場に困っている人がどれだけいるか)。志師塾では、強みを機会に投入するという言い方をします。

ここで「なんでもやります」は、「何屋さんか分からない」と同じという原則を思い出してください。弁理士は対応できる範囲が広い資格なので、全部書きたくなります。書くほど、選ばれなくなります。

4.2 ステップ2:弁理士のドアノック商品を1つだけ作る

顧問契約をいきなり狙わない。これが法人開拓の鉄則です。志師塾では、入口になる商品をドアノック商品と呼びます。単発で受けやすく、しかも次の仕事が派生する商品です。

弁理士のドアノック商品の例を挙げます。

  • 知財棚卸し診断:保有権利と未出願技術を一覧化し、収益化の候補を出します
  • 模倣リスク簡易チェック。主力製品のどこが守れていて、どこに穴があるのかを可視化します
  • 営業秘密管理の現状診断:経済産業省の指針の項目に沿って、社内の実態を点検
  • すでにある社内規程に知財の視点を足すだけの短期案件として、AI利用規程の知財レビューも作れます

いずれも半日~数日で終わり、報告書が残り、必ず「次にやること」が出てきます。もう1つの鉄則は、顧客がすでに払っているお金(原資)に乗ること。知財予算がゼロの会社に新しい予算を作ってもらうより、開発費・販促費・法務費として動いているお金の一部を振ってもらう方が早い。

作る順番にも注意点があります。志師塾では「創って・売って・作る」の順だと言い続けています。売れるかどうか分からない段階で、分厚い資料やツールを先に作り込まないこと。コンセプトを創り、まず売ってみて、それから中身を作る。逆にすると時間だけが溶けます。

4.3 ステップ3:顧客獲得型セミナーで「最初に相談される弁理士」になる

弁理士が単価を上げるうえで、セミナーは相性の良い手段です。理由は簡単で、知財は「教えられると価値が分かる」領域だからです。特許の費用対効果も、出願公開のリスクも、説明されるまで顧客は知りません。

志師塾が支援した先生業のデータでは、セミナーを顧客獲得プロセスに入れていた人は、入れていない人より平均的に単価が170%高かったという結果が出ています。売り込むのではなく教えることで信頼を得て、お願いされて売れる状態を作る。これが志師塾のいう先生業ポジションです。

ここでのポイントは、セミナーの種類です。志師塾では3つに分けます。

種類 話す内容 結果
自己満足型 言いたいことだけ話す 相談につながらない
情報提供型 知りたいことだけ話す 満足で終わる
顧客獲得型 行動させるために話す ◎ 相談・契約に進む

制度解説を丁寧にやるほど「勉強になりました」で終わります。参加者が自社の状況を当てはめ、放置するリスクに気づき、次の一歩を決める構成にする。ここが設計の分かれ目です。なお、志師塾の実測では、フロントセミナーの成約率が最も高いのは5~8人規模。大人数を集めることが目的ではありません。

4.4 ステップ4:弁理士の商品構成をフロー型とストック型で組む

出願案件だけで売上を作ると、毎月の着地が読めません。志師塾では、商品サービス群をフロー型(高額だが安定しない)とストック型(低額だが安定継続)の組み合わせで設計し、比率の目安をスポット型:ストック型=5:5とします。スポット型はボーナス、ストック型は毎月の給料です。

弁理士に置き換えると、フロー型は出願・紛争・海外案件、ストック型は月額顧問・管理サポート・研修の年間契約。ここに既存顧客からの受注は、新規顧客獲得コストの5分の1で済むという数字が効いてきます。新規集客に疲れている人ほど、ストック型と既存顧客向け商品の設計が先です。

年商の上限は、業種ではなく商品構成で決まります。1対1の労働集約モデルは年商1,000万円前後で頭打ちになりやすく、年商3,000万円は年商1,000万円の延長線上にはありません。同じやり方で件数を倍にしても、忙しさが倍になるだけです。士業が年収を積み上げる順序については、行政書士が年収を上げていく方法でも段階ごとに整理しています。

5. 弁理士が単価を上げるときにやりがちな失敗

弁理士がやりがちな失敗

単価を上げようと動き出した弁理士が、半年後に「まったく反応がありません」と相談に来る。志師塾の支援現場でよく見る展開です。詰まっている場所は、たいてい相手選び・伝え方・方向性の3つのどこかに集まります。順に見ていきましょう。

5.1 支払能力のない相手に高額商品を当てている

高額商品の3条件を思い出してください。強いニーズ、高額の支払能力、競合に勝てる分野。このうち抜けやすいのが支払能力です。

「知財の大切さを分かってくれる小規模事業者」は、話が合います。ただ、話が合うことと払えることは別問題です。志師塾では、理想の顧客を選ぶ第一の判断基準を「あなたの先生サービスにお金を払うことができるか」としています。ここを外すと、善意の仕事が積み上がって、ビジネスがボランティア化します。

5.2 値上げの前に「元を取るストーリー」を語っていない

価格を上げるとき、多くの人は「実績が増えたので」と説明します。これは自分側の理由です。顧客が聞きたいのは、払った分がどう戻ってくるかです。

「模倣が1件防げれば、失う売上はいくらか」「権利範囲を1文変えることで、競合の参入がどれだけ遅れるか」。この元を取るストーリーを語れると、価格は障害になりません。志師塾自身、最初の期の受講料は12,000円でしたが、10年余りで118.1万円まで上げてきました。約98倍。松竹梅の価格設計を入れたときは、それだけで単価が1.5倍近く上がりました。

そして値上げは、顧客のためにもなります。1件あたりの単価が上がれば、その案件に使える時間が増える。サポートが厚くなる。志師塾ではこれを「価格アップ=サービス品質アップ」と表現しています。

5.3 専門をさらに深める方向にしか進まない

単価が上がらないとき、多くの弁理士はもっと深い専門性を身につけようとします。悪いことではありません。ただ、深さで差をつけるのは、その領域に顧客が押し寄せているときだけ有効です。案件が減る市場では、深さを競っても比較の土俵から出られません。

志師塾の答えは逆向きです。深く掘るより、前工程に出て「最初に相談される人」になる。「相続税の専門家」ではレッドオーシャンだが、その前段階の悩みに特化すると比較されずに本命の仕事が入ってくる。相続・事業承継の領域で確認されてきたこの構図は、知財でもそのまま当てはまります。

5.4 忙しさを理由に、名乗り直しを後回しにする

もう1つ挙げておきます。目の前の案件が回っているうちは、名乗り直しの必要を感じません。動くのは案件が減ってからになります。ところが、コンセプトを作り直して案件が動き出すまでには時間がかかります。減ってから始めると、資金の余裕がない状態で値下げに手を出すことになるわけです。志師塾では、商品サービスの内容と価格を都度見直し続けることを勧めています。作って終わりのものではありません。

6. 志師塾卒業生の弁理士に学ぶ、単価の上げ方

ここまでの内容を、実際の弁理士がどう形にしているか。志師塾の卒業生インタビューから3名を紹介します。いずれも公開済みの記事があるので、詳細はリンク先で読めます。

6.1 木村高明さん|中小企業知財を一貫対応する「マーケット独占プロデューサー」

至誠国際特許事務所の弁理士・木村高明さんは、30歳から40年以上にわたり弁理士として活動してきました。小規模事務所で約200件の特許に関わってノウハウを固め、大手事務所で国際部門を統括。ある中小企業が世界11か国で取得した画期的な特許をめぐる紛争では、ドイツに10回、中国に5回渡って現地の弁護士・弁理士・大学教授とチームを組み、半年かけて反論を練り上げ、欧州特許庁での結審で全面勝利を収めています。

木村さんのキャッチコピーは「中小企業知財の調査から登録、紛争解決、外国登録、外国紛争解決まで一貫対応」。「弁理士です」ではなく、対応範囲と立ち位置が一文で伝わる名乗りになっています。志師塾では弁理士のマーケティングとビジネスモデルの確立に取り組み、メルマガも活用して発信を続けています。本記事の領域4(国際知財と紛争解決)を、中小企業向けに束ね直した形です。

詳しくはこちら:【卒業生インタビュー】中小零細企業を知財で支援〜至誠国際特許事務所 弁理士 木村高明さん

6.2 山田成喜さん|「出願しない選択」まで提案するノウハウ漏えい防止コンサルティング

弁理士の山田成喜さんは、弁理士事務所と複数の事業会社の知財部門の両方を経験し、2023年8月に独立開業しました。強みは、事務所勤務で培った「幅広い分野の技術的知識への理解力」「最短3日で特許出願できるスピード」に、事業会社側で身につけた知財戦略の思考と管理経験が重なっている点です。

山田さんが打ち出しているのは、ノウハウ漏えい防止コンサルティング。「本当に品質が良い特許は、問題を起こさない特許」という定義を持ち、出願書類に不必要な情報を入れず、必要最低限の記載で権利範囲を明確にする。指示どおりに書くのではなく、公開によって競合にヒントを渡さないところまで踏み込みます。まさに本記事の領域2そのもので、「出願するかどうか」の判断を売っている形です。志師塾では、仲間に共有しながら自分の目標とビジネスモデルを磨き、塾のネットワークを通じて仕事も獲得しました。

詳しくはこちら:【卒業生インタビュー】知的財産管理の最適なソリューションを提供 ~弁理士 山田成喜さん~

6.3 須藤修三さん|事務所存続の危機から「知財の収益化コンサルタント」へ

弁理士の須藤修三さんは、大手時計メーカーでX線分析や計測、センサーなどの研究開発に従事したエンジニア出身。NASAの研究所への開発委託プロジェクトを担当した際、技術を製品に結びつける支援者がいなかったために、発明の核を活かした特許が取れなかった経験から、弁理士を志しました。2006年12月に資格を取得し、現在は特許業務法人MTS国際特許事務所に所属しています。

転機は、弁理士登録から10年が経ったころ。主要クライアントの流出という、事務所存続の危機に直面します。集客の課題を抱えた時期に志師塾と出会い、そこから打ち出したのが「知財の収益化コンサルタント」。アイデアの発掘から収益化までを一貫して支援し、成功報酬型を基本に据えました。約5年前から商標の調査・出願にも対応し、令和3年からは補助金コンサルタントとして事業計画作成支援も手がけています。収益力にこだわるコンサルティングで、顧問先から全幅の信頼を得ています。領域1と領域3を掛け合わせた形です。

詳しくはこちら:【卒業生インタビュー】知財の収益化コンサルタントとしてサポートする 〜弁理士・須藤修三さん~

3名に共通しているのは、腕を上げたことではありません。「誰に、何を、どう名乗るか」を組み替えたことです。あなたも同じ順番で動けます。ただ、名乗りを変えた後に「どうやってその相手に届けるか」でつまずく人が一番多い。志師塾の先生業のためのWeb集客セミナーでは、卒業生が実際にたどった集客の導線を、設計図の形で解説しています。

弁理士の単価アップに関するよくある質問

実務経験が浅いうちから、顧問や収益化支援に踏み込んでいいのでしょうか

踏み込めます。ただし条件があります。顧客の課題を構造化して、次の一手を一緒に決められること。志師塾の卒業生には、財務知識がゼロの状態から月額15万円の顧問を8件獲得した例もあり、そこで効いたのは知識の深さより経営者に寄り添う姿勢でした。とはいえ弁理士の場合、専門判断の誤りは顧客の損害に直結します。自分で判断できる範囲と、他の専門家と組む範囲を最初に線引きしておいてください。

既存クライアントへの値上げは、どう伝えればいいですか

値上げの案内だけを出すと、話が価格だけで終わります。順番を変えてください。まず、提供内容を1つ足す。次に、その内容が顧客にとっていくらの得になるかを数字で示す。価格を提示するのは、そのあとです。志師塾のいう「元を取るストーリー」を先に置く形ですね。全件を一度に上げる必要もありません。松竹梅の3段構成にして、上位プランを新設するやり方でも単価は動きます。

事務所に勤務している弁理士でも、この5領域は始められますか

始められます。勤務のまま、所内で新しい領域の担当を作る形が一番リスクが小さいです。営業秘密管理の診断メニューやAI利用規程のレビューは、既存クライアントへの追加提案として持ち込めます。所内で実績が数件たまってから独立を検討するほうが、立ち上がりは速い。志師塾が支援した先生業の3年後生存率は96.4%ですが、その多くは準備段階で顧客獲得の型を作ってから独立しています。

AIで出願費用の相場が下がる流れには、どう向き合えばいいですか

下がる部分と下がらない部分を分けて考えてください。調査や下書きといった作業の相場は下がります。一方、「出すか出さないか」「どこまで書くか」という判断は残ります。問題は、その判断をチェック作業の値段で売ってしまうことです。判断と伴走に値段を付け直す。これがAI時代の単価対策です。

5つの領域のうち、どれから手をつけるべきですか

これまでの案件で「一番喜ばれたこと」と「一番リピートが来たこと」を書き出して、重なるところから選んでください。志師塾では、強みの棚卸しと市場の機会を突き合わせて決めます。2つ以上を掛け合わせると独自性が出ますが、最初に打ち出すのは1つに絞るほうが伝わります。掛け合わせは、1つ目が回り出してからです。

まとめ|弁理士が1,400人減る10年を、単価を上げる10年にする

この記事の要点を整理します。

  • 弁理士試験の志願者は2008年の約1万人から3,000人台へ。合格者も574人から200人前後に。新規登録200人・抹消340人のペースが続けば、10年で約1,400人の純減という試算になる
  • ただし特許出願件数もピークの7割前後まで減っているため、人が減っても1人あたりの案件は増えない
  • 単価が上がらない理由は腕ではなく、件数商売・資格名の名乗り・判断を作業の値段で売っている、という3つの構造にある
  • 単価を上げる5領域は、知財の収益化/営業秘密・ノウハウ管理/中小企業の知財戦略顧問/国際知財と紛争解決/AI時代の知財ガバナンス
  • 進め方は4段階。小人(ターゲット)を決め直し、ドアノック商品を1つ作り、顧客獲得型セミナーで最初に相談される人になり、最後にフロー型とストック型を5:5で組む

弁理士が減る10年は、残る弁理士にとって追い風にも向かい風にもなります。分かれ目は「手続きの内側にいるか、前工程に出ているか」の一点です。前工程に出れば、価格ではなく指名で選ばれます。

そして、名乗りを決めた後に必ず出てくる問いがあります。「その相手に、どうやって届けるのか」。志師塾が先生業3,295名を支援してきて、最も多くの人がつまずくのがここです。

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この記事について

この記事は、先生業専門のビジネススクール『志師塾』が執筆・監修しています。志師塾は、士業・コンサルタント・講師・コーチといった「先生業」の顧客獲得を専門に支援するビジネススクールとして、これまで3,295名(2026年8月時点)の受講生を支援してきました。卒業生アンケートでは平均年商1,703万円、年商1,000万円を超える割合は約50%。弁理士・税理士・社労士・行政書士など、知財や法務の専門家も多数在籍する卒業生コミュニティを運営しています。

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